「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.32 ★ 中国に「世界中の投資家」が失望…「裏切りの金融政策」で習近平政権ますます大ピンチに

2024年01月28日 | 日記

現代ビジネス(真壁 昭夫:多摩大学特別招聘教授)

2024年1月22日

photo by gettyimages

投資家の期待は裏切られた

 中国の金融市場では、1月15日に中国人民銀行(中央銀行)が、経済対策の一環として中期貸出制度(MLF)の1年物金利を引き下げるとの期待が盛り上がっていた。

  財政政策に加えて、利下げによって景気は回復に向かうことを期待した一部の投資家は、先回りして景気に敏感な銅先物などを買った。  ところが、15日に中国人民銀行は1年物の金利を2.50%に据え置いた。一部投資家の期待は見事に裏切られた。  ただ、経済対策への期待が本格的に高まっていたかといえば、必ずしもそうではないようだ。  

投資家は、元々、動きの鈍い政府の対応に半ば諦めていたといえるかもしれない。  というのは、期待が本当に高まっていたのであれば、金利が据え置きになった瞬間、株価や銅の先物価格は大きく下落するはずだ。  

しかし、実際の反応はむしろ限定的だった。15日の発表は、中国政府の景気対策に対する投資家の期待値がそれほど高くない証拠ともいえる。

そろそろ動き出さないと

 中国が年央以降の景気回復を目指すのであれば、そろそろ中国政府は不良債権処理や景気対策を本格的に進めることが必要なはずだ。  

しかし、中国政府の動きは緩やかなままだ。それに対して、多くの投資家も冷ややかな反応しか示さない。  

こうした状況が続くと、中国の経済・金融市場の先行き懸念は高まるばかりだろう。  1月10日のニューヨーク市場では、銅の先物価格が前日の3.76ドルから3.78ドルに上昇した。  

2023年を通して銅の先物価格は下落基調で推移した。相場の流れとして反発が出やすい地合いではあった。  それ以上に注目されたのは、中国人民銀行が1年物の貸出金利の追加引き下げを実施するのではと一部投資家の期待が盛り上がったことだ。

欠かせない基礎資材のひとつ

 1年物の金利引き下げは、主要銀行の貸出金利や中国の国債流通利回り(金利)の低下に大きく影響する。  実際に中国人民銀行が追加の利下げを実施すれば、銀行のリスク許容度は一時的に高まるはずだ。  

それは、地方政府の債券発行の増加を支え、インフラ投資も積み増しやすくなると一部の投資家はみた。  その期待に反応し銅の先物価格は上昇した。銅は、中国経済の成長にとって欠かせない基礎資材の一つだ。

 リーマンショック後、中国政府はマンションや道路、鉄道などの建設(投資)を増やし経済成長率を高めた。電線などに使われる銅需要は増加した。  銅の先物価格は、中国の生産活動の予想を反映しやすくなった。それでなくても、銅価格は世界経済の水先案内人ともいわれ、“ドクター・カッパー”と呼ばれるゆえんである。  

1月11日以降、銅価格反発を追いかけるように、中国の上海総合株価指数や香港ハンセン株価指数が反発する時間帯もあった。  中国人民銀行が金融緩和を強化し、「中国政府が経済を立て直すための経済・産業政策を実行に移すのではないか」との観測も一部で浮上した。ただ、中国人民銀行は、今回も金利を据え置いた。

デフレ圧力が高まっている

 昨年来、中国政府は財政支出を拡大し、金融政策も緩和的に運営することによって内需を拡大する考えを強調した。  それを実現するためには、金融緩和に加え、経営体力が低下した企業や金融機関への公的資金注入、不良債権や過剰生産能力の処理を実行することが必要だ。  

また、先端分野であるAI、量子コンピューティングや、半導体など成長期待の高い領域で民間企業のリスクテイクを支援する政策も必要だ。  公的資金を用いた不良債権処理と規制緩和などによる成長産業の育成は迅速に実行するべきである。  

12月の消費者物価指数は前年同月比0.3%下落した。3ヵ月連続の下落で、デフレ圧力が高まりつつある証拠だ。  内需拡大で景気回復を模索するのであれば、金融緩和の強化を手始めに、政策を総動員するくらいの勢いが必要だ。

抜本的な対策が出てこない

 しかし、15日の金利据え置きで分かるように、なかなか抜本的な対策が出てこない。今回も、期待した一部の投資家は肩透かしを食らった。  今後、投資家の期待値は盛り上がらない状況に落ち込んでいくことが懸念される。習政権は経済分野に手が回っていないとの懸念も高まる可能性がある。  さらなる金融・経済環境の悪化を防ぐことができるか否か、中国政府の経済政策はかなり重要な局面を迎えているといえるだろう。

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No.31 ★ 中国日本商会アンケート 中国は「一番重要な市場」と「三つの重要な市場の一つ」が51%

2024年01月28日 | 日記

CGTN Japanese/AFPBB News

2024年1月20日

中国日本商会による記者会見の様子(2024年1月15日提供)。(c)CGTN Japanese

 

【1月20日 CGTN Japanese】

中国日本商会が15日に行った最新の発表で、同商会会員企業を対象として実施したアンケート調査の結果、2024年以降の中国市場について、「一番重要な市場」および「三つの重要な市場の一つ」と答えた企業が51%となり、半数を超える日本企業が今後も中国市場を重要な市場と位置付けていることが分かりました。  

同商会は昨年9月、四半期ごとに実施する調査として、1回目の「会員企業景気・事業環境認識アンケート」を実施し、10月にその結果を発表しました。今回は同じテーマで行った2回目の調査で、基調としては多くの項目で前期より「小幅な改善をしている」という認識が示されました。  

中でも、売上については「減少」および「やや減少」が47%(前期比8ポイント減)で「増加」および「やや増加」の27%(前期比2ポイント増)を上回り、「変化なし」は26%(前期比5ポイント増)でした。

また、事業環境に対する満足度は「非常に満足」および「満足」が54%と、前回より3ポイント増えています。さらに国内企業と「同等に扱われている」という回答も71%と、前回より2%増えています。

同商会の本間哲朗会長は同日の記者会見で、「製造業・非製造業共に、今年の投資を前年と同額程度か、増やすという企業が依然として5割超で、厳しい環境下でも中国ビジネスに前向きな意欲を示す日系企業が半数以上を占めている」と紹介しました。その上で、2回の調査結果から読み取れるメッセージとして、「改革開放45年を経て、在中国日本企業の事業活動は成熟度を増し、したたかさを兼ね備えている」という見方を示しました。  

同商会の宮下正己企画委員長は席上、記者からの質問に対し、北京やその他の各地で中央政府および地方政府関係者と交流する中で、政府関係者からは「日本企業を含めた外国企業から課題をヒヤリングし、それを吸い上げていく」という声を多数聞いているという実体験を紹介し、中国政府の外資と向き合う姿勢に現れた変化をポジティブに評価した上で、中国国務院が昨年8月に発表した「外資誘致の24項目措置」で、政府調達や標準策定において外資を平等に扱うことを強調したことが結果に結びつくことへの期待感を示しました。  

なお、今回のアンケートは中国日本商会の会員企業8300社を対象に行われ、回収した有効回答は約1700件ということです。

(c)CGTN Japanese/AFPBB News

 


No.30 ★ 中国の高齢化、新たな経済成長モデルへの転換に暗雲

2024年01月28日 | 日記

ロイター

2024年1月20日

中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。写真は北京の公園を訪れる高齢者。16日撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

Farah Master [香港 18日 ロイター] –

中国の高齢化は国内消費の拡大と膨れ上がる債務の抑制という政府の目標を脅かし、長期的な経済成長見通しに深刻な課題を突きつけている。 2023年の出生率が過去最低となり、新型コロナウイルスによる死亡が相次いだ結果、2年連続で人口が減少。労働人口も大幅に減ることなどにより、政策当局者が懸念する構造的不均衡が悪化する。

中国経済に占める家計消費の割合はすでに世界で最も低い水準にあるほか、年金や高齢者福祉を担う地方政府の多くは数十年にわたる信用による投資主導型成長の結果、多額の債務を抱えている。

ビクトリア大学(メルボルン)政策研究センターのシニアリサーチフェロー、シウジェン・ペン氏は「中国の年齢構成の変化は経済成長を減速させるだろう」と述べた。

今後10年間では、現在50─60歳の約3億人(中国最大の年齢層集団で米国のほぼ全人口に匹敵)が退職する見込みだ。ただ、中国科学院によると、35年までに年金制度が資金不足に陥ると予想されている。 

<低い定年>

中国は定年が世界で最も低い国の一つであり、男性は60歳、ホワイトカラーの女性は55歳、工場で働く女性は50歳となっている。今年は過去最高の2800万人がリタイアする予定だ。

無職のリー・ジューリンさん(50)は、国有企業でキャリアを積んだ夫が27年にリタイアした後、月約5000─7000元(697─975ドル)の年金だけに頼ることに不安を感じている。 リーさんは一人娘の「負担を減らそう」と出費を減らすなど余念がない。「娘が結婚すれば自分の家族を養うだけでなく、(夫婦双方の父母)4人の高齢者の面倒を見ることになる。それがどんなに大変なことか想像もできない」と語る。

中国社会は伝統的に、親が年をとっても子どもが経済的に支え、同居して介護することを期待してきた。 しかし、多くの欧米諸国と同様、急速な都市化によって若者は大都市に移り住み、親元を離れるようになった。自身や政府の給付に頼る高齢者が増えている。

米ウィスコンシン大学マディソン校の人口統計学者、イー・フーシェン氏は、20年には1人の退職者を支える労働者が5人いたが、35年には2.4人、50年には1.6人にまで減少すると予測。「中国の年金危機は人道的大惨事に発展する」と述べた。

日本政府によると、同国ではこの比率が22年に2対1で、70年には1.3対1になると予測されている。しかし、日本は高齢化が加速する以前から高所得国だった。  

<消費者の高齢化>

中国第2の年齢層集団である30─49歳の約2億3000万人は、住宅や自動車を購入できるほどキャリアを積み、子どもの教育に出費し始める消費の最盛期を迎えている。 この層が50歳代に達すると、子どもは就学を終え、自分で収入を得るようになるため、国内消費への参加は少なくなると予想される。 将来的にこの層に代わることになる現在の20歳代の人口は飢饉(ききん)があった1950年代以降で最も少なくなっている。1980年から2015年までの一人っ子政策の結果だ。

マッコーリーの中国担当チーフエコノミスト、ラリー・フー氏は「日本の経験は生産年齢人口の割合が減少するにつれて住宅需要も減少することを示している」と述べた。

<生産性鈍化>

人口統計学者によれば、どの経済体でも子どもの数が域内消費と直接相関しているという。 前出のペン氏は国内市場の縮小が中国の輸出依存度を高めるだろうと話す。中国はすでに信用フローを不動産業から製造業へと切り替えている。 ただ同氏は、労働人口の高齢化によって「イノベーションを起こすインセンティブが低下し、生産性の向上は速まるどころか鈍化している」と指摘する。

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No.29 ★ ダボス会議で中国・李強首相の熱弁に世界のVIPが冷たい眼差しを向けた理由 ー 東アジア「深層取材ノート」(第219回)

2024年01月28日 | 日記

JBpress (近藤 大介)

2024年1月20日

1月16日、スイスで開催されたダボス会議で演説する中国の李強首相(写真:AP/アフロ)

聴衆のしらけた表情

 その映像を見ていて、思わず目を疑った。これは、いかなるものの成れの果てだろう?

 1月16日午前、スイスの寒村ダボスで行われた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(通称「ダボス会議」)の開幕式。欧米の政財界のVIPたちを始め、1500人もの聴衆が集まった大広間の中央の壇上では、わざわざ遠く北京から駆けつけた、中国ナンバー2の李強首相が熱弁を振るっていた。

 だが、聴いているVIPたちの、しらけ切った表情と、疑心暗鬼の眼。習近平政権の外交を評して、「戦狼外交」(狼のように吠える外交)と言われるが、彼らは壇上中央の弁者を、まるで「狼少年」のように見ているようだった。

 思えば、いまから20年前、ダボス会議の最大の話題は、伸び盛りの中国経済だった。2001年末にWTO(世界貿易機関)に加入し、2008年北京オリンピックと2010年上海万博を控えた中国の経済は、どこまで伸び行くのだろう? それで、2004年から2006年までの予備的な北京フォーラムを経て、2007年から毎年9月に、中国(大連と天津で隔年)で「夏のダボス」を開催することにしたのだ。

 私は、2004年の北京フォーラムから2013年の大連での「夏のダボス」まで、10年連続で参加し、温家宝首相や李克強首相のスピーチを、会場で聴いてきた。あの時の欧米のVIPたちの期待と羨望の眼差しを生で体感しているだけに、ダボスの外の雪景色のように冷え切った李強首相の演説風景に、驚きいってしまったのだ。

李強首相が主張した光り輝く中国経済

 李強首相は、いまの中国政府の「官製流行語」で言うなら「中国経済光明論」を、切々と説いた。箇条書きすると、以下のような内容だ。

・中国は全世界の発展の重要な牽引役であり、この数年、世界経済成長の3割前後を貢献してきた。

・2023年の中国経済は総体的回復傾向にあり、GDP成長率は5.2%前後になり目標値の5%前後を達成する。

・中国は製造業の世界成長の約3割を占め、14年連続1位。200以上の成熟した産業グループを形成している。

・中国の「人口ボーナス」は「人材ボーナス」に昇華しており、人材資源総数・科学技術人材資源・研究開発人員総数などは世界トップだ。毎年の資本形成額は全世界の約3割に上っている。

・中国のデータ産業は巨大で、データ資源は豊富で、世界第2位の「データ埋蔵国」だ。

・先端技術を持った企業は約40万社に上りユニコーン(企業価値10万ドル以上の非上場企業)数は世界2位だ。

・現在、中国の中間層は4億人を超え、今後十数年で8億人に達する。

・3億人近い農民が市民化への過程にある。

・全世界の新エネルギー車の過半数は中国で走っており、新エネルギー車保有数は2000万台を超える。

・中国はすでに、140カ国・地域の主要貿易パートナーであり、関税の総平均は7.3%まで下降した。

中国の公式発表に世界が疑いの目

 だが、上述のように、会場は極めて冷淡だった。20年前の「熱気」は、いまや「冷気」に変わっていた。現場を取材した西側メディアの記者に聞くと、「昨年は中国の外相と国防相が忽然と姿を消したが、今年は首相のあの人の番ではないか、などと囁かれていた」という。

昨年3月11日、中国・北京の人民大会堂で行われた第14期全国人民代表大会(全人代)第1回会議の第4回総会で李強氏と握手する習近平氏。李強氏は習近平主席の指名を受けてこの会議で中国首相に承認された(写真:新華社/アフロ)

 この翌日、1月17日には、北京で国家統計局の康義局長が、高らかに述べた。

「初期の概算によれば、全国の国内総生産(GDP)の増加値は、126兆582億元で、物価変動を入れない数値で、年率5.2%成長した。これは、当初の目標値である5.0%前後を上回るものだった」

 この速報が出た直後、ある大手企業の中国担当部署の知人が、SNSを送ってきた。

「いま、ウソだろうってざわついている」

失速は明らかなのに…

 よくよくこの日の国家統計局の発表を読み込めば、以下のような内容も盛り込まれていた。

・1月~11月の全国規模以上工業企業利潤は-4.4%

・通年貨物貿易の輸入額は-0.3%

・12月の住民消費価格(CPI)は-0.3%

・12月の若年層(16~24歳)失業率は14.9%

・昨年末全国人口は14憶967万人で、-208万人。通年出生数は902万人で1000万人割れ

・労働年齢人口(16~59歳)は61.3%に減り、65歳以上は15.4%に増加

・全国不動産開発投資は-9.6%。うち住宅投資は-9.3%

・不動産開発企業家屋施行面積は-7.2%。うち住宅施行面積は-7.7%

・不動産開発企業家屋新規工事開始面積は-20.4%。うち住宅新規工事開始面積は-20.9%

・商品家屋販売面積は-8.5%。うち住宅販売面積は-8.2%

・商品家屋販売額は-6.5%。うち住宅販売額は-6.0%

・昨年末の商品家屋売れ残り面積は6億7295万m2で+19%。住宅売れ残り面積は3億3119万m2で+22.2%

・不動産開発企業手元資金は-13.6%。うち国内融資-9.9%、外資-39.1%、自己資金-19.1%

・12月の不動産開発景気指数は93.36で、過去一年で最悪

・12月の70大中都市新築商品住宅販売価格は、前月比でプラス7都市、マイナス62都市、変化なし1都市。同じく70大中都市中古住宅販売価格は、70都市すべてでマイナス

 このように、特に「GDPの3割を支える」不動産業界は、まだ「V字回復」にはほど遠いことが分かる。いくら中国が「光明論」を説いても、世界は実態を直視している。

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No.28 ★ 中国経済、2024年に向けて足踏み 不動産市場と所得の伸びがより安定するまで、成長率は正常化しない 見通し

2024年01月28日 | 日記

DIAMOND online  (The Wall Street JournalNathaniel Taplin

2024年1月19日

Photo:NurPhoto/gettyimages

 中国の2023年の経済成長率は5.2%となり、3%にとどまった前年から拡大した。新型コロナウイルス禍前は6%以上の成長率が当たり前になっていた投資家にとって、これは極めて低い水準だ。大きな政策転換がない限り、24年も同じような状況が続くだろう。

 17日発表された昨年12月分の中国経済指標には、好材料もいくつかあった。固定資産投資は10月まで8カ月連続で伸びが減速していたが、11月に横ばいとなり、12月にはやや加速した。これは11月以降に金融環境がやや緩和したこととも合致している。12月の社会融資総量は前年同月比9.5%増と、5月以来の伸びとなった。

だが、全体として見れば状況はまだ厳しい。

 公式統計によると、昨年の都市部の可処分所得は実質で4.8%増にとどまった。2020年と2022年を除けば、これは少なくとも2002年以来の低い伸びであり、2016~19年の四半期平均をほぼ1ポイント下回る水準だ。消費者心理は低迷したままで、消費者金融はほとんど伸びておらず、住宅価格は下がり続けている。

 金融環境が緩めば、地方自治体に加え、債務を過剰に膨らませた信託銀行などの「シャドーバンク(影の銀行)」が債務を借り換えやすくなり、本格的な金融危機を防ぐことができるかもしれない。しかし、経済成長が力強さを取り戻す兆しや、重要な不動産セクターが完全に底入れした兆しはほとんど見られない。

 だからといって、政府の金融政策を通じた対応が最小化されるわけではなく、その一部は次第に不動産へと波及するだろう。短期借入金利と中国国債利回りは、いずれも昨秋の終わりには懸念されるほど高水準で推移していたが、足元では低下している。

 その理由の一つは、中国人民銀行(中央銀行)が特別融資制度による資金供給を拡大したことにある。人民銀は昨年11月、中期貸出制度(MLF)を通じて正味8000億元(約16兆6300億円)を銀行システムに供給した。1カ月の総額としては過去最大となった。さらに、担保付き補完貸出(PSL)制度を通じて3500億元を供給した。

 PSL制度は、2015年に前回の不動産暴落が起きた後、中国の政策銀行が通称「スラム再開発」を通じて家計、ひいては不動産開発会社を支援するためにこの制度を利用したことから注目される。

 今回も同じような展開になるかは定かでない。政府の数年にわたる住宅投機対策がそれを阻むかもしれない。とはいえ、PSL融資が増え続けるとすれば、それは政策当局が本気で不動産セクターの落ち込みに歯止めをかけようとしていることの表れだろう。


 少なくとも現時点では、中国の不動産市場はまだ深刻な問題を抱えている。ゴールドマン・サックスによると、昨年12月の加重平均不動産価格は季節調整済み年率換算で2.4%下落し、11月の2倍の下落率となった。新築住宅販売(床面積ベース)と不動産投資は昨秋にやや持ち直していたが、いずれも12月には再び前年比のマイナス幅が拡大した。

 最後に、労働市場はなお不安定に見える。中国国家統計局が発表した昨年12月の購買担当者指数(PMI)によると、建設業の雇用見通しが改善した一方、製造業とサービス業では悪化した。

 不動産以外の投資は安定しているようだ。これは朗報である。ただし、不動産市場・サービス部門の雇用・所得の伸びがより安定するまでは、中国の成長率はかつての「当たり前」に比べて鈍いものにとどまるだろう。

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