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自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

レガシィワゴン2.0GT DIT 試乗記 その2

2012-12-19 03:11:10 | クルマ評


 FA20ターボエンジン以上に気に入ってしまったのが、その足回りである。『レガシィが帰ってきた!』という感想は、エンジンよりもむしろ足回りから感じたことであった。

 レガシィワゴン2.0GT-DITの足回りはビルシュタイン製ダンパーに18インチタイヤ、という組み合わせである。これは今までのBM/BR前期型の2.5GTと全く同じ組み合わせだ。ところが、走らせた印象はまるで違う。そのあまりの違いに僕は驚いてしまった。
 まず、走らせてすぐに違いを感じる。これまでの2.5GTは荒れた路面を走ると足回りがかすかにバタつく感じが残っていた。これは18インチという大径タイヤ/ホイールの重さによるもので、前モデルであるBP/BL型ではバタバタ、そしてBM/BR前期型でもバタッ、という感じだった。しかし今回のDITはそのバタつきが見事に消えている。荒れた路面を滑らかに走っていくのである。僕は「ひょっとして17インチなのか?」と思い、クルマを止めてわざわざタイヤサイズを確認したほどだった。ビルシュタイン製ダンパーと18インチ、という組み合わせがこのDITでようやく完成した。その滑らかでありながら引き締まった乗り心地は、まさに上質そのものである。

 峠ではこれぞレガシィ、ともいうべき走りが見事に蘇っていた。今までのBM/BR前期型の2.5GTでは足回りのレスポンスやダイレクト感が全体的にやや乏しく、このためコーナーでなんとも味気無い走りだったのである。おまけに攻め込んでいくとVDC(横滑り防止装置)がすぐに作動して、強制的に弱アンダーステアのまま曲がらせようとする。つまりブレーキとアクセル、そしてステアリングの操作をいろいろと変化させても、毎回必ず同じ弱アンダーステアの挙動が待ち構えているのである。こちらが命令を下しても、足回りはその命令を完全無視。まるで「いろいろと操作されていますが、それが何か?」とクルマ側から平然と言われているかのようだった。コーナーリングスピード自体は決して遅くはないのだが、これでは走っていて楽しいわけがない。
 ところが、このDITはまるで違う。足回りのレスポンスやダイレクト感が格段に向上しているのである。おまけにVDCが邪魔をしないため、足回りの挙動がとてもナチュラルだ。例えばコーナーで弱アンダーステア状態であっても、アクセルを緩めるとクルマが素直にニュートラルステアの挙動を見せてくれる。そして、そこからコーナー出口に向かって再びアクセルを踏んでいくとそれに素早く呼応してリアのサスペンションとタイヤがギュっとしなり、恐ろしいほどのスタビリティの高さを保ったままきれいにコーナーを抜けていく。特にこのリアサスペンションのレスポンス、ダイレクト感はとても印象的なものだった。DITの足回りのレベルの高さ、そして楽しさは文句無く『史上最強、そして最良のレガシィである』、と表現できる。それにしても細部のチューニングだけでここまで激変させるとは正直言って驚いた。担当したエンジニアの方は間違いなく天才、だろう。

 CVTも非常に完成度が高い。僕はもともとCVTのフィーリングがあまり好きではなく、このためレガシィにはセミATがいいのではないかとずっと思ってきた。なんとなくかったるい感じのするCVTよりも、歯切れのいいセミATこそレガシィにふさわしいと感じていたのである。ところが、今回スバルがDIT専用に開発したこのCVTはかったるさなど微塵も感じなかった。燃費を重視したインテリジェントモードであっても、悪い意味でのCVTらしさを全く感じないのである。あまりに自然なフィーリングのために、僕は乗り始めてからしばらくの間はCVTであることをすっかり忘れていたほどだった。さらに印象的だったのがスポーツ・シャープモードでマニュアル操作をした時である。このDIT専用のCVTはマニュアルモード時には8段変速に切り替わるのだが、その変速スピードが猛烈に速い。さらに歯切れの良さも抜群なのである。このCVTならばセミATの必要性など全く感じない。むしろ構造がシンプルなため、信頼性なども含めてこのCVTのほうがセミATよりも利点が多いのではないだろうか。セミATにありがちな『クセ』が無いのも好感が持てる。
 スバルがセミATではなくCVTを選んだことに対して、僕は当初「なんで?」という思いでいた。それはヨーロッパ車のトレンドが完全にセミATになりつつあったからである。しかし今回レガシィワゴンDITのCVTを体感するうちに、スバルの考え方がなんとなく理解できたような気がした。それは決してセミATの開発を諦めた、などという単純なものではなく、量産車であればセミATよりもCVTのほうが利点が多い、という確信に至ったからこそのCVTだったのではないだろうか。
 「我々はセミATよりもCVTのほうが優れていると思っている」
 運転しながら、なんとなくスバルにそう言われているような気がした。

 
 さらに次回へ続く(ここまではベタ褒めですが、次回は欠点を指摘します)