先日、スバルサンバーがその長き歴史に幕を閉じた。僕は富士重工業を代表するクルマはレガシィではなく、このサンバーであったと思っている。
サンバーは独創性の固まりのようなクルマである。ラダーフレームを持つ強固なボディ、リアエンジンレイアウト、四輪独立サス、四気筒エンジン。これらはみな軽商用車では唯一のメカニズムであり、なおかつ四気筒エンジン以外のメカニズムは実に51年間も守り続けてきた。これほど製造コストをかけた軽商用車は今までも、そしてこれから先も存在することはないと思う。
ジムニーのところでも述べたが、ラダーフレームを備えている理由は負荷に対する強度が優れているという点にある。軽商用車の最大積載量は350kgと決められているのだが、恐らくサンバーはキャパシティに相当な余裕があると思っていい。それにしても、わずか百万円そこそこの軽商用車であるサンバーがコストのかかるラダーフレームを備えているというのは常識では考えられないことだ。なにせあれほど高価なハイエースでさえ、単純なモノコックボディなのである。
リアエンジンである一番大きな理由は、やはり初代サンバーがスバル360をベースに開発されたからだろう。それでも、そこから51年間も変わらずリアエンジンにこだわり続けたのにはわけがある。まずは前後の重量配分だが、例えばサンバーバン2WDのスーパーチャージャーAT仕様でフロント荷重が450kg、リア荷重が460kgとほぼ完璧な50対50となっている。その誤差がわずか10kgなどという数値は、僕はサンバー以外のクルマでは見たことが無い。
この完璧な重量配分からくるバランスの良さは、様々な場所で真価を発揮する。例えば雪が積もった道での坂道発進。エブリィやハイゼット、ミニキャブは人もエンジンもフロント荷重になるためにリアが極端に軽く、このためトラクション不足からホイールスピンを起こしやすい。逆にフルブレーキング時には今度はリアタイヤがロックしやすくなるのである。当然重量配分に優れているサンバーならそんなリスクははるかに少ない。もっとも、他の軽商用車も後ろに荷物を積んでいればどちらも軽減するだろうが、そのために常時荷物を積んで走るというわけにもいかない。
次に静粛性でも大きなメリットがある。サンバーはエンジンと運転手との距離が他の軽商用車と比べて一番離れているために静かなのだ。特に60km/hくらいになるととても静かになる。さらに荷物を満載している時などは、とても軽商用車とは思えないほどだ。ある赤帽の運転手の方は、サンバーは静かだから長距離を走っても疲れない、と言っていた。確かに騒音は疲労度に大きく影響してくるものである。
四輪独立サスは安定性に大きなメリットがある。全幅に対してあれほど全高が高いにもかかわらず、コーナーで思ったほどロールは少ない。加えて四輪の接地感が比較的しっかりしているために恐怖感はなく、むしろ面白さを感じるほどだ。思えばスバルのクルマはすべて四輪独立サスだったのだが、そこには強いこだわりがあったのだろう。
実は一年ほど前に僕はサンバーを買った。生産終了となる前にどうしても欲しくて、それまで乗っていた下駄代わりのワゴンRを処分して購入したのである。前述したサンバーバン2WDのスーパーチャージャーATとは僕のクルマのことだ。本当はマニュアルが欲しかったのだが、共同で使用する家族の猛反対に遭い、しかたなくATにした。これがマニュアルだったら、と今でも乗るたびに残念に思う。そう思わせるほど、サンバーは乗っていて楽しい軽商用車である。四気筒エンジンはスムーズによく回り、おまけにスーパーチャージャー付きだからトルクがある。四輪独立サスと相まって実に活発によく走るのである。
加えてキャブオーバー型のボディのために荷室がライバルと比べて広いのもいい。サンバーバンはデカいバイクも載るのである。僕はバイクも趣味だからバイクを売ったり買ったりと運ぶこともあるためにこいつはとてもありがたい。キャブオーバー型で不安になるのは衝突安全の面なのだが、JNCAPが実施した2010年度の自動車アセスメント評価によるとサンバーは運転席、助手席ともに6段階中3という成績だった。例えばスズキエブリィの運転席4、助手席6という成績よりは低いが、ホンダバモスはサンバーと全く同じ成績で、両席ともに3である。これを見てわかるようにサンバーはキャブオーバー型でありながらそれほど悪くない成績だ。その理由はやはり強固なラダーフレームを装備しているからこそなのだろう。
数年前まで僕は軽商用車なんてどれも同じで、みな退屈なクルマばかりだと思っていた。そんな僕にサンバーの優秀さを教えてくれたのは岡山に住む短大時代からの親友である。仕事に使用している彼のサンバートラックは車高を落とし、ワイドな鉄チンホイールを履き、エンジンは赤帽仕様、マフラーは自作のスーパートラップ、というとてつもないもの。そんなに楽しいクルマか?と僕は冷めた目で見ていたのだが、いざ所有すると彼の気持ちがよく分かった。楽しいクルマで、楽しいからこそいじりたくなる。彼のサンバーには足元にも及ばないが、僕もあちこちをいじっている。できれば僕も赤帽仕様のチューニングエンジンを入手したいな。
サンバーは独創性の固まりのようなクルマである。ラダーフレームを持つ強固なボディ、リアエンジンレイアウト、四輪独立サス、四気筒エンジン。これらはみな軽商用車では唯一のメカニズムであり、なおかつ四気筒エンジン以外のメカニズムは実に51年間も守り続けてきた。これほど製造コストをかけた軽商用車は今までも、そしてこれから先も存在することはないと思う。
ジムニーのところでも述べたが、ラダーフレームを備えている理由は負荷に対する強度が優れているという点にある。軽商用車の最大積載量は350kgと決められているのだが、恐らくサンバーはキャパシティに相当な余裕があると思っていい。それにしても、わずか百万円そこそこの軽商用車であるサンバーがコストのかかるラダーフレームを備えているというのは常識では考えられないことだ。なにせあれほど高価なハイエースでさえ、単純なモノコックボディなのである。
リアエンジンである一番大きな理由は、やはり初代サンバーがスバル360をベースに開発されたからだろう。それでも、そこから51年間も変わらずリアエンジンにこだわり続けたのにはわけがある。まずは前後の重量配分だが、例えばサンバーバン2WDのスーパーチャージャーAT仕様でフロント荷重が450kg、リア荷重が460kgとほぼ完璧な50対50となっている。その誤差がわずか10kgなどという数値は、僕はサンバー以外のクルマでは見たことが無い。
この完璧な重量配分からくるバランスの良さは、様々な場所で真価を発揮する。例えば雪が積もった道での坂道発進。エブリィやハイゼット、ミニキャブは人もエンジンもフロント荷重になるためにリアが極端に軽く、このためトラクション不足からホイールスピンを起こしやすい。逆にフルブレーキング時には今度はリアタイヤがロックしやすくなるのである。当然重量配分に優れているサンバーならそんなリスクははるかに少ない。もっとも、他の軽商用車も後ろに荷物を積んでいればどちらも軽減するだろうが、そのために常時荷物を積んで走るというわけにもいかない。
次に静粛性でも大きなメリットがある。サンバーはエンジンと運転手との距離が他の軽商用車と比べて一番離れているために静かなのだ。特に60km/hくらいになるととても静かになる。さらに荷物を満載している時などは、とても軽商用車とは思えないほどだ。ある赤帽の運転手の方は、サンバーは静かだから長距離を走っても疲れない、と言っていた。確かに騒音は疲労度に大きく影響してくるものである。
四輪独立サスは安定性に大きなメリットがある。全幅に対してあれほど全高が高いにもかかわらず、コーナーで思ったほどロールは少ない。加えて四輪の接地感が比較的しっかりしているために恐怖感はなく、むしろ面白さを感じるほどだ。思えばスバルのクルマはすべて四輪独立サスだったのだが、そこには強いこだわりがあったのだろう。
実は一年ほど前に僕はサンバーを買った。生産終了となる前にどうしても欲しくて、それまで乗っていた下駄代わりのワゴンRを処分して購入したのである。前述したサンバーバン2WDのスーパーチャージャーATとは僕のクルマのことだ。本当はマニュアルが欲しかったのだが、共同で使用する家族の猛反対に遭い、しかたなくATにした。これがマニュアルだったら、と今でも乗るたびに残念に思う。そう思わせるほど、サンバーは乗っていて楽しい軽商用車である。四気筒エンジンはスムーズによく回り、おまけにスーパーチャージャー付きだからトルクがある。四輪独立サスと相まって実に活発によく走るのである。
加えてキャブオーバー型のボディのために荷室がライバルと比べて広いのもいい。サンバーバンはデカいバイクも載るのである。僕はバイクも趣味だからバイクを売ったり買ったりと運ぶこともあるためにこいつはとてもありがたい。キャブオーバー型で不安になるのは衝突安全の面なのだが、JNCAPが実施した2010年度の自動車アセスメント評価によるとサンバーは運転席、助手席ともに6段階中3という成績だった。例えばスズキエブリィの運転席4、助手席6という成績よりは低いが、ホンダバモスはサンバーと全く同じ成績で、両席ともに3である。これを見てわかるようにサンバーはキャブオーバー型でありながらそれほど悪くない成績だ。その理由はやはり強固なラダーフレームを装備しているからこそなのだろう。
数年前まで僕は軽商用車なんてどれも同じで、みな退屈なクルマばかりだと思っていた。そんな僕にサンバーの優秀さを教えてくれたのは岡山に住む短大時代からの親友である。仕事に使用している彼のサンバートラックは車高を落とし、ワイドな鉄チンホイールを履き、エンジンは赤帽仕様、マフラーは自作のスーパートラップ、というとてつもないもの。そんなに楽しいクルマか?と僕は冷めた目で見ていたのだが、いざ所有すると彼の気持ちがよく分かった。楽しいクルマで、楽しいからこそいじりたくなる。彼のサンバーには足元にも及ばないが、僕もあちこちをいじっている。できれば僕も赤帽仕様のチューニングエンジンを入手したいな。