前回はデリカ・スペースギアのシートが折れた件を紹介したが、シートとともにそのディーゼルエンジンもまた非常に出来の悪いものだった。
デリカ・スペースギアの4M40と呼ばれる2.8リッターディーゼルターボエンジンはとにかくパワーが無い。なにしろ関越自動車道の関越トンネルへ向かう上り坂で、フルスロットルでもたったの90キロしか出ないのである。もちろん七名もの人間が乗ってはいるのだが、それでもフルスロットルで90キロというのはあまりに情けない。はっきり言って精神的苦痛を感じるほどの非力さなのだ。しかたがないので登坂車線を走っていると、大型トレーラーにさえあっさりと追い抜かれる始末。おまけにマフラーからは後続車の姿がバックミラーで確認できなくなるほどの大量の黒煙を吐き出しているのである。その大量の黒煙を見ているうちに、僕は小学生の頃にあった『ラリーX』というゲーム機を思い出してしまった。このゲームはクルマを走らせて追ってくる敵を排気ガスで撃退しながらコース上の旗を取っていく、というものだったが、デリカ・スペースギアはまさに実車版ラリーXである。僕は後続車が排気ガスによって視界を妨げられて、このラリーXのように本当に事故を起こしてしまうのではないかと心配になってしまった。
例えばトヨタのハイエース・レジアスなどに搭載されていた1KZ-TEという3.0リッターディーゼルターボエンジンは、六名乗車でも東北道を驚くほどのスピード(ここでは言えないほどのスピード)で走行できたし、黒煙も非常に少なかったことをよく覚えている。おまけにとても静かでスムーズでもあった。この1KZ-TEエンジンと三菱の4M40エンジンはほぼ同時期のエンジンなのだが、同時期であることがとても信じられないほどの性能差がある。その性能差はまさに『雲泥の差』という表現が最もふさわしい。
さらに4M40エンジンよりもはるかに劣悪なディーゼルエンジンだったのが4D55と4D56というエンジンである。4D55は2.4リッター、4D56は2.5リッターで、どちらも自然吸気仕様とターボ仕様とが存在する。主にパジェロとデリカに搭載されていたディーゼルエンジンだった。
この4D系エンジンはとにかくよくぶっ壊れる、という悪名高きエンジンである。もはやパワーが無いとか黒煙の量がすごいとか音がうるさい、などというレベルの話ではない。トヨタのL系やC系のディーゼルエンジンもよく壊れたが、4D系エンジンはそれ以上にひどいものだった。なにしろ中古エンジンというものが全く存在しない。需要が多すぎて中古エンジンの供給が追い付かない状態だったのである。中古エンジンの需要が多い、つまり修理する側が中古エンジンをまるごと欲しがる場合が多い、ということは、それほどまでに派手に壊れる、という意味である。簡単なトラブルなら中古エンジンがまるごと必要になるなんてことは無い。さらに中古で売り物になるような程度の良い4D系エンジンなど滅多にない、という現実も4D系中古エンジンの希少さに拍車をかけた。ごく稀に程度が良い4D系中古エンジンが見つかれば、それこそ日本全国で争奪戦が始まる。決して大袈裟な話などではない。
僕は一度だけこの4D56ターボエンジンを搭載したパジェロに仕事で接したことがある。そのパジェロは走行距離が二万キロほどだったから、エンジンはまだ程度が良い状態だった。簡単な整備を済ませた後、僕は試しに中古部品会社の知り合いに「もしこの4D56ターボエンジンを買うとしたら、いくらで買う?」と電話で聞いてみた。するとその知り合いは即答で「三十万円!」という返事。お客さんのクルマだからもちろん売りはしなかったが、中古部品会社の買値が三十万円というのは中古エンジンとしては破格の値段である。売値はもちろん四十万円近くしたのだろう。
4D系エンジンはいったい何が問題なのか。僕はその答えを知りたくて、例によってあちこちに電話をかけた。快く教えてくれたのは三菱自動車を主に扱う自動車販売、修理のお店。そこのおじさんによると、この4D系エンジンはエンジンヘッドの強度が極端に低く、しかも熱によって変形しやすい、との事だった。
びっくりするほどの粗悪ぶりである。たぶんエンジン開発時にまともなテストなど一切していないのだろう。「面倒くさいから、こんなもんでいいや」といったノリで作られたエンジンだったのではないか。
これは三菱自動車に対する僕からのアドバイスだが、エンジンの開発を真面目にやる気が無いのなら、一刻も早くただの電気自動車メーカーになったほうがいい。やる気が無いなら、エンジン作りなどやめてしまえばいいのだ。こういう時に限って「電気自動車だけでは商売にならない」、と『真面目』に反論してきそうだが、はっきり言ってそんなことは僕の知ったことではない。
今現在でも4D系エンジンのパジェロ、デリカに乗っている、という方がいるかもしれない。その方に対してここで注意しておきたいことは4D系エンジンで高速道路を使用してのロングドライブなどは避けたほうがいい、ということだ。長時間連続して高負荷運転を続けるようなことがあれば、この4D系エンジンはヘッドに必ずダメージが及ぶ。高速道路でのロングドライブは違うクルマで行くことをおすすめする。
さらに次回へ続く
デリカ・スペースギアの4M40と呼ばれる2.8リッターディーゼルターボエンジンはとにかくパワーが無い。なにしろ関越自動車道の関越トンネルへ向かう上り坂で、フルスロットルでもたったの90キロしか出ないのである。もちろん七名もの人間が乗ってはいるのだが、それでもフルスロットルで90キロというのはあまりに情けない。はっきり言って精神的苦痛を感じるほどの非力さなのだ。しかたがないので登坂車線を走っていると、大型トレーラーにさえあっさりと追い抜かれる始末。おまけにマフラーからは後続車の姿がバックミラーで確認できなくなるほどの大量の黒煙を吐き出しているのである。その大量の黒煙を見ているうちに、僕は小学生の頃にあった『ラリーX』というゲーム機を思い出してしまった。このゲームはクルマを走らせて追ってくる敵を排気ガスで撃退しながらコース上の旗を取っていく、というものだったが、デリカ・スペースギアはまさに実車版ラリーXである。僕は後続車が排気ガスによって視界を妨げられて、このラリーXのように本当に事故を起こしてしまうのではないかと心配になってしまった。
例えばトヨタのハイエース・レジアスなどに搭載されていた1KZ-TEという3.0リッターディーゼルターボエンジンは、六名乗車でも東北道を驚くほどのスピード(ここでは言えないほどのスピード)で走行できたし、黒煙も非常に少なかったことをよく覚えている。おまけにとても静かでスムーズでもあった。この1KZ-TEエンジンと三菱の4M40エンジンはほぼ同時期のエンジンなのだが、同時期であることがとても信じられないほどの性能差がある。その性能差はまさに『雲泥の差』という表現が最もふさわしい。
さらに4M40エンジンよりもはるかに劣悪なディーゼルエンジンだったのが4D55と4D56というエンジンである。4D55は2.4リッター、4D56は2.5リッターで、どちらも自然吸気仕様とターボ仕様とが存在する。主にパジェロとデリカに搭載されていたディーゼルエンジンだった。
この4D系エンジンはとにかくよくぶっ壊れる、という悪名高きエンジンである。もはやパワーが無いとか黒煙の量がすごいとか音がうるさい、などというレベルの話ではない。トヨタのL系やC系のディーゼルエンジンもよく壊れたが、4D系エンジンはそれ以上にひどいものだった。なにしろ中古エンジンというものが全く存在しない。需要が多すぎて中古エンジンの供給が追い付かない状態だったのである。中古エンジンの需要が多い、つまり修理する側が中古エンジンをまるごと欲しがる場合が多い、ということは、それほどまでに派手に壊れる、という意味である。簡単なトラブルなら中古エンジンがまるごと必要になるなんてことは無い。さらに中古で売り物になるような程度の良い4D系エンジンなど滅多にない、という現実も4D系中古エンジンの希少さに拍車をかけた。ごく稀に程度が良い4D系中古エンジンが見つかれば、それこそ日本全国で争奪戦が始まる。決して大袈裟な話などではない。
僕は一度だけこの4D56ターボエンジンを搭載したパジェロに仕事で接したことがある。そのパジェロは走行距離が二万キロほどだったから、エンジンはまだ程度が良い状態だった。簡単な整備を済ませた後、僕は試しに中古部品会社の知り合いに「もしこの4D56ターボエンジンを買うとしたら、いくらで買う?」と電話で聞いてみた。するとその知り合いは即答で「三十万円!」という返事。お客さんのクルマだからもちろん売りはしなかったが、中古部品会社の買値が三十万円というのは中古エンジンとしては破格の値段である。売値はもちろん四十万円近くしたのだろう。
4D系エンジンはいったい何が問題なのか。僕はその答えを知りたくて、例によってあちこちに電話をかけた。快く教えてくれたのは三菱自動車を主に扱う自動車販売、修理のお店。そこのおじさんによると、この4D系エンジンはエンジンヘッドの強度が極端に低く、しかも熱によって変形しやすい、との事だった。
びっくりするほどの粗悪ぶりである。たぶんエンジン開発時にまともなテストなど一切していないのだろう。「面倒くさいから、こんなもんでいいや」といったノリで作られたエンジンだったのではないか。
これは三菱自動車に対する僕からのアドバイスだが、エンジンの開発を真面目にやる気が無いのなら、一刻も早くただの電気自動車メーカーになったほうがいい。やる気が無いなら、エンジン作りなどやめてしまえばいいのだ。こういう時に限って「電気自動車だけでは商売にならない」、と『真面目』に反論してきそうだが、はっきり言ってそんなことは僕の知ったことではない。
今現在でも4D系エンジンのパジェロ、デリカに乗っている、という方がいるかもしれない。その方に対してここで注意しておきたいことは4D系エンジンで高速道路を使用してのロングドライブなどは避けたほうがいい、ということだ。長時間連続して高負荷運転を続けるようなことがあれば、この4D系エンジンはヘッドに必ずダメージが及ぶ。高速道路でのロングドライブは違うクルマで行くことをおすすめする。
さらに次回へ続く