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自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

今年もよろしくお願いします

2013-01-03 04:15:22 | その他
 この『自動車学』を開始してから、あっという間に一年が経ちました。

 現在、画面右下に表示されているアクセス数のカウンターは一日当たりおよそ300回前後というところですが、実際の総アクセス数は一日当たり600回前後、時には700回を超えることもありました。つまり単純に解釈すると、閲覧してくださった方は平均で一日に二回ずつ、この自動車学にアクセスしてくださっているということになります。この数値は僕の予想を超えるものとなりました。もちろん賛否両論はあると思いますが、いずれにしても閲覧してくださったすべての方に対して改めて感謝申し上げます。

 文章を書くこと自体は昔から得意だったのですが、いざこの自動車学をやってみると毎回脳がショートして頭から煙を出しながら記事を書いているような気分になります。悪戦苦闘しているので読みにくい点や文章的、表現的におかしいところもあるかもしれません。特に初期の頃は雑な文章がありますが、手直しのしようがないのでそのまま掲載してあります。「へたくそだなぁ」と思われるかもしれませんが、頭から煙を出しながらがんばっているんだねと、大目に見ていただけたら幸いです。

 頭から煙を出しながらもこの自動車学を続ける理由、それはこの日本に魅力的なクルマが満ち溢れるため、そして人々が笑顔で楽しそうにクルマと接するようになるため、です。
 大袈裟だと思われるかもしれませんが、僕は本気でそう考えています。

 2013年1月3日

 

もしスラッジが溜まってしまったらどうするのか

2012-11-08 03:32:33 | その他
 スラッジの話を長らくしてきたが、いよいよ今回で最後にしようと思う。もしスラッジが大量に溜まってしまったらどうしたらいいのか。このことについても書いておかなければならない。

 前回で僕はエンジンのフィラーキャップを開けてエンジン内部を定期的に見るように、と書いた。エンジン内部を見てスラッジの有無を確認すれば、それまでのオイル交換サイクルがそのエンジンに対して適正であるかどうかが判断できるためだ。そしてこの時にキャップの裏側やエンジン内部に微量のカスのようなものが付着していれば、それはスラッジ発生の初期段階である、と説明した。さらにこの程度であればエンジンフラッシングでなんとかなる、とも述べた。
 しかし、キャップを開けてエンジン内部の部品、例えばカムホルダーの取り付けボルトの形状が見えなくなるほどスラッジが溜まっていたとしたら、これはとても厄介なことになる。こういった場合はエンジンフラッシングではどうにもならない場合が多い。それどころか、むしろエンジンフラッシングを行うことによってエンジンが焼付いてしまう恐れすらある。スラッジが大量に溜まってしまったエンジンは、非常に深刻、かつシビアな問題に直面することになるのだ。

 以前にネットのあるサイトで気になる書き込みを目にしたことがあった。
 書き込みをされた方はオーストラリア在住。所有しているトヨタRAV4を現地のディーラーに点検に出した。走行距離は十万キロ。するとディーラーから「スラッジが多いのでフラッシングをしたほうがいい」と言われたそうだ。ディーラーからそう言われたら、どんな人でも「それじゃあ、お願いします」と言うだろう。その方ももちろん言われるままにフラッシングを依頼。するとエンジンはものの見事に焼き付いてしまったそうだ。ディーラーの人間がフラッシング後に試験走行を実施。その走行中にエンジンが焼き付いたそうである。「元気に出かけていった家族が死んだ、というほどのショックでした」と書かれていたが、まさにそうだろうと思う。

 なぜエンジンは焼き付いてしまったのか。その答えは簡単である。静かに堆積していたスラッジがフラッシングを行うことによってエンジン内部を漂い始めたからだ。オイルに乗って漂い始めたスラッジはそのままオイルとともにオイルパンへと戻る。そしてオイルパンに戻ったオイルはポンプによって吸い上げられて再びエンジン各部へと送られるのだが、オイルポンプの手前にはオイルストレーナーがある。オイルストレーナーとは茶こしのような形状をしたフィルターなのだが、このオイルストレーナーに漂い始めたスラッジが詰まってしまうのだ。オイルストレーナーが詰まれば、当然オイルポンプはオイルを吸い上げることができない。ちょうど急須の茶こしにお茶の葉っぱが引っ掛かり、急須からお茶が出なくなるのと同じ理屈である。オイルポンプがオイルを吸い上げることができなくなれば、もはや目前にあるのはエンジンの焼き付き、という最悪のシナリオだけだ。それ以外にも各部品のクリアランスに漂い始めたスラッジが一気に入り込み、焼き付きを起こしてしまった、とも考えられる。それまで静かに眠っていたスラッジがフラッシングによって目覚め、にわかに活動を始める。スラッジが大量に溜まってしまったエンジンにフラッシングを行うことはかなり危険な行為なのである。このディーラーのサービスマンはそんなことも知らなかったのだろうか。

 大量のスラッジは放っておいても、フラッシングを実施しても焼き付きの危険性が高い。ではどうしたらいいのかというと、これは完璧を期するならもはやエンジンをバラすしかない。エンジンをバラして各部を洗浄する。そして洗浄後にオーバーホールも合わせて実施すれば、エンジンは再び元気に生まれ変わる。以前に『エンジンの焼き付きは人間の心筋梗塞に似ている』と述べたが、重度の心筋梗塞の場合には手術が必要になってくるだろう。これはエンジンにも全く同じことが言える。大量のスラッジは『手術』をして取り除くのが一番ベストな方法である。
 もっと簡単な方法ならヘッドカバーを開けてスクレーパーやドライバーなどを使ってスラッジを取り除き、その後にヘッドカバーを取り付け、エンジンオイルを注入してエンジンを始動。少しアイドリングさせた後にエンジンオイルを抜き、オイルパンを外し、今度はオイルストレーナーを洗浄、という手段も考えられるが、僕はこの方法を勧めることはできない。スクレーパーやドライバーでスラッジを完璧に取り除くことなど不可能だし、残ったスラッジがエンジン内部のどこかで悪さをする可能性が残ってしまう。それに大量のスラッジが発生したエンジンというのは、エンジン内部の各部品が相当なダメージを負っている。仮にスラッジをきれいに取り除くことができたとしても、オーバーホール無しではそのエンジンはあまり長くはもたない、と思うからだ。

 大量のスラッジが溜まってしまったら、それこそ進むも地獄、退くも地獄、である。オーバーホールするのもエンジンを載せ替えるのも金がかかる。かといってクルマを買い替えるのもこれまた金がかかる。しかもこれは想定外の出費、ということになるだろう。オーストラリア在住のこの方はさらに最悪なことにエンジンの焼き付きにまで発展してしまった。もはや決断を下す時間的な余裕も無い。この方は「エンジンが焼き付いた責任はディーラーにあると思っているが、ディーラー側は責任を認めようとはしない」、と嘆いていた。気持ちは痛いほどよく分かるが、日本ならともかく外国では話し合いによって責任を認めさせることはまず不可能だろう。残念ながら日本以外の国では罪を自ら認め、謝罪をする、という文化はほとんど無い。だからこそ裁判、というものが頻繁に行われているのである。そしてもし仮に裁判を起こしたとしても、この方に勝ち目は無いと思う。そもそもエンジン内部にスラッジを発生させてしまったのは誰の責任なのか。こう問われたら、反論の余地は無い。

 たとえ丈夫なエンジンであってもオイル管理が悪ければエンジンの寿命は縮む。逆に粗悪エンジンであってもそのエンジンに適したオイル管理をしていれば寿命は延びる。
 これはすべての人に言えることだが、エンジンを生かすも殺すも、結局はあなたのオイル管理によってすべてが決まる。

 

スラッジが溜まりやすい、というエンジンがある  その3

2012-09-17 11:27:26 | その他
 前回までにトヨタのM型、G型、そしてホンダのC20Aターボについて話してきた。スラッジ話もそろそろ飽きてきた頃だと思うが、もう少しお付き合いをしていただきたい。

 不思議な傾向があるのがマツダである。マツダのエンジンはDOHCよりSOHCのほうがスラッジが溜まりやすく、壊れやすい。具体的に言うと2リッター4気筒DOHCのFEエンジンは丈夫なのだが、1.8リッター4気筒SOHCのF8はよく壊れた。同じようにDOHCエンジンのBP、B6は壊れないが、SOHCのB5、B3はよく壊れたのである。ルーチェの最終型であるHC系に搭載されていたJFと呼ばれるV6エンジンもスラッジお化けみたいなエンジンだったが、これもSOHCだった。マツダのSOHCエンジンはどれもこれもみな要注意である。もっとも、現在のマツダ車はみなDOHCエンジンになっているのだが。
 SOHCエンジンのほうがDOHCエンジンよりも壊れる、などというのは常識では考えられないことだ。SOHCエンジンはDOHCエンジンと比べて設計も簡単、そして作るのも簡単なはずである。簡単であるがゆえに仕事が適当になってしまったのだろうか。マツダには優秀なエンジニアが多いことでよく知られているが、優秀であるがゆえに簡単なエンジンでは仕事に身が入らなかったのか。もしそうであるとするならば、優秀なエンジニアなど必要無い。我々ユーザーには優秀であろうがなかろうが、そんなことはどうでもいいのである。たとえ簡単なエンジンであっても愚直に仕事をやり、信頼性の高いエンジンを生み出してくれるエンジニアこそありがたいのだ。確かに優秀なエンジニアがいれば研究開発が進むだろう。しかしエンジニアはメーカーのために仕事をしているのではない。我々ユーザーのために仕事をしているのである。

 スズキのF5A、そしてF6Aの初期型エンジンもひどいスラッジ病を患っていた。ともに軽自動車用のエンジンで、F5Aは550cc、F6Aは660ccである。僕が実際にいじったことがあるエンジンはF5A、F6AともにSOHCの4バルブでNA仕様のもの。ターボやDOHCエンジンは一度も触れたことがなかったため、ここではとりあえず除外しておこうと思う。
 F5Aはスズキが初めて作った軽自動車用の4ストロークエンジンである。それまでのスズキの軽自動車に搭載されていた2ストロークエンジンが昭和53年排ガス規制にパスできなくなったために作られた。したがって登場したのは1978年(昭和53年)。この1978年から2000年頃まで生産されていたから、実に二十年以上もスズキの主力エンジンとして存在していたことになる。
 最初のF5Aは確かSOHCの2バルブで、黒いヘッドカバーだった記憶がある。次にSOHCの4バルブへと進化し、そしてF6Aへと発展していく。F6AもSOHCの4バルブである。F5A、F6AのSOHC4バルブ版はともに同じデザインのアルミ製ヘッドカバーになっていた。進化の過程はだいたいこのような感じなのだが、これらのエンジンはすべてスラッジが溜まりやすく、カムシャフトにはすぐ傷が入り、タペットからガシャガシャと音が出る、という持病を抱えていた。あのトヨタのM型やG型エンジンと全く同じ症状である。たぶんリビルトエンジンメーカーはこのF5A、F6Aで相当儲けたことだろう。そのくらいよく壊れたエンジンだったのだが、ある時期から突然丈夫なエンジンへと大変貌を遂げたのには驚いた。ちょうど初代のワゴンRが登場したあたりから全く壊れなくなったのである。エンジンの外観はそれまでとほとんど同じなのだが、恐らくヘッドの設計を一からやり直したのではないかと思う。ネット上で「F6Aは名機だ!」などと言っている人を見かけたことがあるが、それは以前の出来の悪いF6A、F5Aエンジンのことを知らない人なのだろう。

 そういえば、先日ネット上でスラッジとカーボンデポジットが混同してしまっているかたを見かけた。エンジンをバラした写真を掲載して、「このエンジンはスラッジが多め」とコメントしていたのだが、明らかにそれはカーボンだったのだ。オイルによってエンジン内部にこげ茶色の汚れが付着していたのだが、この汚れの正体はカーボンデポジットである。これに対してスラッジは『へどろ』。前にも述べたが、このスラッジとカーボンデポジットは発生する温度が正反対である。さらにスラッジはエンジンに深刻な悪影響を及ぼすが、カーボンデポジットはそれほど大した問題にはならない。性質が違うものだから、きちんと区別しておいたほうがいいと思う。

 

スラッジが溜まりやすい、というエンジンがある  その2

2012-09-02 04:13:54 | その他
 前回、トヨタのM型やG型エンジンの出来の悪さについて紹介したのだが、このふたつのエンジンに匹敵するほど出来の悪いエンジンがもうひとつある。それはホンダの初代レジェンドに搭載されたC20Aターボである。初代の後期型に登場した2リッターのV6ターボエンジンで、ターボラグを解消するためにタービンのA/R比をフラップによって可変制御しているのが特徴だった。記憶力が優れているかたは『ウイングターボ』という名称を覚えているかもしれない。

 僕がいじったC20Aターボエンジンはアイドリングに不調を抱えていた。原因はプラグコードだとすぐに判明したのだが、僕はホンダが久しぶりに作ったターボエンジンに興味が湧き、問題解決後もしばらくエンジンを観察。すると、金属製のオイルパイプの中間に全くなんの役にも立っていないユニオンボルトが埋め込まれていることに気が付いたのである。そしてこのユニオンボルト一個から、C20Aターボエンジンの問題点が判明することとなった。

 ユニオンボルトとはボルトのねじ山部分に穴が開いていて、穴の中を液体が通れるようになっているものだ。通常はブレーキキャリパーにブレーキフルードのパイプを接続するために使用されていたり、ターボチャージャーの軸受け部分にオイルパイプを接続するために使用されていたりする。つまり普通は液体を通すパイプの接続に使用されるボルトなのである。なぜパイプの中間にポツン、とただ埋め込まれているだけのか。不思議に思った僕はさっそく電話をして聞いてみた。どこに電話をしたのかは全く覚えていないのだが、たぶんホンダのディーラーだったのではないかと思う。当時の僕は疑問点や教えてほしい事があると積極的にあちこち電話をしていた。些細なことでも答えを知らないと気が済まない性分だったのである。迷惑に思われていたかもしれないが、幸い嫌な対応をされたことは一度も無い。本当にありがたかった。
 結論から言うと、このユニオンボルトはスラッジ確認用のボルトだったのである。つまり、このC20Aターボエンジンはスラッジが溜まりやすく、壊れやすい。このため、オイルパイプにユニオンボルトを埋め込み、ユニオンボルトの穴にスラッジが詰まっていなければ正常。もしスラッジが詰まっていれば要注意。壊れる危険性があるよ、とサービスの人間に教えるためのものだったのだ。すかさず中古部品会社の知人に問い合わせたところ、このC20Aターボエンジンはとても壊れやすい、との答えが返ってきた。

 C20Aターボエンジンが登場したのは昭和63年である。昭和63年と聞けば、F1好きの人ならピンとくるかもしれない。そう、この昭和63年はホンダ製のRA168Eと呼ばれる1500ccV6ターボエンジンを搭載したマクラーレン・ホンダMP4/4というマシンにアイルトン・セナとアラン・プロストという二人の天才ドライバーが乗り、年間15勝という前人未到の記録をたたき出した年である。年間16戦中15勝。世界最高のF1という舞台でまさに圧倒的な強さを誇ったこの昭和63年に、ホンダはC20Aターボという壊れやすいエンジンを登場させたことになる。皮肉なことに、両エンジンとも同じV6ターボ。しかも、壊れやすいことを承知の上で登場させたのである。点検用ユニオンボルトなどというものをわざわざ埋め込む、という手法が確信犯であったことの証拠だ。エンジニアの方々は、これで良心が痛まなかったのだろうか。この昭和63年、という年はホンダという会社の光と影が極端に表れていた年であったように思う。

 ちなみにC20Aターボエンジンはわずか二年間製造されただけであっさりと幕を閉じた。二年で製造を打ち切ったエンジン、というのは日本車史上でこのC20Aターボくらいなものではないかと思う。ホンダとしては登場させてみたものの、やっぱりダメだ、ということになったのだろう。良心が痛まないのか、と前述したが、壊れやすいエンジンを何十年と作り続けたどこかのメーカーよりははるかに良心的である、と言える。

 さらに次回へ続く


スラッジが溜まりやすい、というエンジンがある  その1

2012-08-17 03:34:44 | その他
 前回、僕はオイル管理を怠るとエンジン内部にスラッジが発生する、と述べた。しかしこの点について腑に落ちない人もいたのではないかと思う。俺のクルマはちゃんとオイル交換していたのにスラッジが溜まってしまったぞ、と思った人もいたのではないか。ちゃんとオイル交換をしていたのにスラッジが溜まる。結論から言うと、残念ながらこういったエンジンは確かに存在するのである。僕はクルマの仕事をしていた時にこういったエンジンに数多く出会った。だいぶ前の話になるのだが、僕が目の当りにしたスラッジが発生しやすいエンジンというのをいくつか紹介していきたいと思う。

 キング・オブ・スラッジ、とでも呼びたくなるようなエンジンがトヨタのM型であった。直列6気筒エンジンで、クラウン、ソアラ、スープラ、マークⅡ三兄弟などに搭載されていたエンジンである。
 このM型だが、僕が実際にいじったことがあるエンジンは5M-GEU、6M-GEU、7M-GE、7M-GTEである。このどれもがみなひどいスラッジに悩まされ、なおかつよく壊れたエンジンでもあった。エンジン自体の出来が悪く、カムシャフトにはすぐ傷が入り、タペットからはガシャガシャ、と音が出始める。中古エンジンを扱っていた人や、リビルトエンジンを手掛けていた人ならばよく御存じだと思う。よく壊れたから中古エンジンも品薄で、値段も高かった。例えば7M-GTEなどは程度が良ければ35万円くらいはしていたと思う。エンジンの出来が悪いのはトヨタも十分に把握していたらしく、7M-GTEエンジン搭載車のコアサポートには『エンジンオイルは必ず3000kmごとに交換してください』と赤文字で書かれたステッカーがわざわざ貼ってあった。注意書きをするくらいなら丈夫なエンジンにしてくれよ、と言いたくなる。
 このM型エンジンの登場は1965年、たしか二代目クラウンのマイナーチェンジ以降からだったと思う。最初はただのMから始まり、2M、3M、4M、5M、6M、7M、と三十年近く作り続けられた。ちなみに3Mはあのトヨタ2000GTのエンジンである。Mにヤマハ製のツインカムヘッドを組み合わせ、製造もヤマハが行ったエンジンだ。僕は4M以前のものはよく知らないのだが、耐久性ははたしてどうだったのだろうか。『M』というだけで僕の中では粗悪エンジン、というイメージが強いのだが。

 G型エンジンもキングのM型と出来の悪さではいい勝負である。このエンジンもクラウン、ソアラ、スープラ、マークⅡ三兄弟に搭載されていた。G型はすべていじったことがあるのだが、こちらはほぼ壊滅状態で1G-GTE、1G-GZE、1G-GEU、1G-EU、つまり1G-FE以外のすべてが重いスラッジ病を患っていたエンジンだった。カムシャフトに傷が入り、タペットからガシャガシャと音が出やすい、と言う点はM型エンジンと全く同じである。
 M型、G型ともにヘッドの出来があまりにも悪かった。全体的に精度が低く、その精度の低さは例えば日産の直列6気筒エンジンであるRBと乗り比べてみるとすぐにわかる。日産のRBエンジンはどれもこれもみな静かでしっとりと滑らかに回るのに対し、M型やG型はガサガサ、ワサワサとメカニカルノイズがうるさいエンジンだった。設計が甘かったのか、それともヘッドの部品を作る工作機械がショボかったのだろうか。トヨタのことだから、設計の段階や工作機械でコストを削ることは十分に考えられる。エンジンの精度なんて誰もわかりゃしないよ、などと考えたのではないだろうか。ハイメカツインカムと称する新世代のヘッドを載せられた1G-FEはあまり壊れなかったのだが、これは設計を真面目にやったか、あるいは工作機械を新しくして部品の精度を向上させたか、のどちらかだろう。
 ちなみに日産のRBエンジンはみな丈夫だった。スラッジもちょっとやそっとではまず発生しない。このため中古エンジンも全く売れず、中古部品会社の知人だったある人はRBエンジンのことを『倉庫の守り神』と呼んでいた。倉庫に在庫していても全く売れない、という意味である。

 メカニカルノイズが少ないエンジンというのは精度が高く、丈夫であるということを意味している。僕はセルシオの1UZ-FEエンジンを初めて目にした時にそのあまりの静かさに驚いたものだが、案の定このエンジンはとても丈夫だった。メカニカルノイズが大きめのエンジンは精度が低く、スラッジが溜まりやすい、壊れやすい、と考えてほぼ間違いない。クルマを購入する際には、ぜひエンジン音を聞くことをお勧めする。排気音ではなく、エンジン音。最初のうちはよく分からないかもしれないが、慣れればしだいに分かるようになってくると思う。


 次回へ続く