ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

「転ばぬ先の杖」の再考

2020年02月23日 | 介護
「転ばぬ先の杖」とは、本当にうまく表現された言葉だと思います。

リハビリの現場で、足の痛みが長引きそうな患者さんに杖をお勧めすると、「杖を使っていると爺さんみたいだからなぁ…」、「杖なんて、おばあさんが使うものでしょ?」と、60歳代、70歳代の患者さんに言われることがあります^-^; 私、心の中では「お孫さんもいらっしゃるのですから…すでに…」なんて思ったりもしていますが^-^; それはさておき…、杖に関して同じようにお考えの読者の皆さんに、ちょっとだけ杖の良い点をお伝えします。

例えば体重が60kgの方がいらして、その方が左足を痛めていたとします。



人は歩く時、一瞬片足立ちになりますので、この方の場合、右足を前に運ぼうとする瞬間、痛みのある左足に60kgすべてが乗ることになります。
それが痛くて足をかばって歩こうとしてしまうため、左足で踏ん張る時間を少しでも短くするために右足をサッと前に運びます。
左足に100%の体重を乗せるのは辛いため、ほんの一瞬で済むように素早く右足を運ぶ…、これを繰り返していくと、右足に繰り返し衝撃が加わりますので、やがてかばっていた右足も痛くなることがあります。

そこで、右足を前に運ぶ際、右手に杖を持ち、左足に100%乗せていた体重を80%程度に減らし、残りの20%を右手に持つ杖に乗せます。 そうすると、100%の体重を乗せていた時の痛みよりもずいぶんと痛みが軽減できます。 「右手の杖」と痛めている「左足」に適度に体重を分配することで、右足を大急ぎで前方に運ばなくてもよく、さらに右足かかるはずの衝撃を回避することもできます。



痛みが長引く場合は、さらに長い目で考えて、よい側の足の痛みさえも予防するために杖をお使いになることをお勧めします。
短期間で痛みが軽減する状態であれば、短期間の杖の使用に限って、痛みが治まれば使用を終了すればよいと思います。


転んでしまい足の骨を骨折し、それがきっかけでしばらく寝たきり状態が続くことは、介護が必要になった原因の中で、認知症(18.7%)、脳卒中(15.1%)、衰弱(13.8%)についで転倒・骨折(12.5%)が4位となっています。
認知症や脳卒中はこれまでの生活習慣から徐々に進行していくものでもありますが、転倒による骨折は、ある日突然やってくる可能性があります。 ですから、転んでしまう前に、杖を使って転倒を予防する、という行動は、とても大切なことですね。

杖1本で転倒・骨折→寝たきりを予防できるのであれば、意外と安く済む予防策なのかも知れませんですね^-^

理学療法士国家試験

2020年02月23日 | その他
今日、2月23日(日)は、今年度の理学療法士国家試験の受験日でした。 全国8カ所で一斉に実施されました。



受験生の皆さんは、今日のために一生懸命勉強してきたことと思います。 皆さん、お疲れ様でした。
昨年(2019年3月)は、12,605人中10,809人が合格しました(合格率85.8%)。
今年は、何人の受験生が合格できるでしょうか? いずれにしても、これからますます少子化が進み、超高齢化が進む中、理学療法士をはじめリハビリ職員は、まだまだ必要になる職業だと思います。 需要に対して供給過多となっている、と言われていますが、実際の現場ではまだまだ必要だと思います。 現場の皆さんは、どう思われますかね^-^?

私は現在、地域で生活するご高齢の皆さんに対して、健康に関するお話をさせていただいたり、慢性期の病院で長期療養の患者さんを診させていただいたり、介護老人保健施設の利用者さん達の生活の支援をさせていただいたりしています。
そんな現場で仕事をしていますと、まだまだ理学療法士である仲間が欲しいです^-^

2025年には団塊の世代の皆さんが75歳以上になります。
2040年には団塊ジュニアの皆さんが65歳以上になります。

これからの日本には、理学療法士だけでなく、医療従事者や介護従事者に限らず、超高齢社会に対して「関心を持った人達」がたくさん必要なのだと思います。
このブログを読んでくださる一般の方、若い方、そしてすでに高齢になられている方に対しても、何らかのお役に立てることができると嬉しいです^-^

寒いとおしっこに行きたくなるのは…

2020年02月22日 | 医療
冬の季節は、布団から出られなかったり、外出を控えてしまったりしちゃいますね。
年度末はあちこちでいろいろな行事がありますが、小さなお子さんがいるご家庭ですと、卒業式など学校の体育館でしばらく過ごしていると、寒くてついついトイレに頻繁に通ってしまいます。



ところでこの、寒いとトイレに行きたくなる、という現象は、血圧と関わっているってご存知でしたでしょうか^-^?

人の体は、常に一定の状態を保とうと自動的に調節されています。 これを「恒常性」といいます。
血圧も脈拍も体温も、多少の個人差はありますが、常に自動的に一定に調節されています。

血圧は、「血液の量」と「末梢(手足など)の血管の硬さ(収縮度合)」で決められています。
血液の量が増えると、血圧は上がります。 逆に血液の量が減ると、血圧は下がります。 血液の量を測るセンサーは体の中心部にあります。
水分をたくさん摂り過ぎるとセンサーが感知して一時的に血圧は上がりますが、上がった血圧をもとに戻そうとして自動調節機能が働き、すぐにおしっこで体から出そうと反応します。
逆に脱水状態などで水分摂取量が減るとセンサーが感知して血液の量も減り血圧は下がりますが、体に水分を摂らせようと「のどが渇いた」という感覚を伝え、水分補給を促します。

一方、「末梢の血管」という手足にたくさん伸びている血管は、外気温の影響で開いたり閉じたりします。 暑い時には体を冷ますために血管を開いて(拡張)、体表から動脈の熱を発散します。 だから体がほてって見えるのですね。
そして寒い時には体から熱を出さないように血管を狭めて(収縮)、体表から熱の発散を防止します。 その時、手足に送られていた血液が減少し、減った分だけ体の中心に血液が集まってきます。 するとセンサーが感知した結果を脳が「あれ? 血液の量が多いのかな?」と感じてしまいます。 その結果、多くなった血液を減らそうとして、おしっこにして体から出そうとします。 これが、寒い時におしっこに行きたくなる、というメカニズムです。

寒い季節は汗をかく頻度も減りますので、余計におしっことして排泄されやすくなります。 そうはいっても、水分を摂らないことでの脱水は、夏だけでなく冬でも要注意です。
こまめな水分補給は、年間通して行ってくださいね^-^

スマホで認知症予防

2020年02月21日 | 介護
ご高齢の方でスマホデビューされた、という方、近年とても増えているようですね。
そんな皆さんに朗報です^-^ 
スマホを使って、いろんなことにチャレンジしてみてください。 スマホであれば、頭の体操などのゲームもできます。
「頭の体操で認知症を予防する」という、脳科学の研究もたくさんあります。 
今回は、そんな話題をご紹介します。

野内先生や川島先生らが調査した内容をまとめた論文によると、「音読や簡単な計算問題、頭の体操のゲームなどは、脳の前頭葉を活性化させる」、そしてそれは「認知症の予防に効果があると考えられる」というものです。 



「声に出して文章を読む」とか、「カンタンな計算問題をたくさん行う」とか、「脳トレゲームやテトリスで遊ぶ」など、いずれも脳の活性化につながるそうです。 

スマホなど、使い方によっては個人情報の漏洩や特殊詐欺などに注意が必要です。 けれど、良い効果も期待できます。
新しいことへのチャレンジそのものも、頭の体操になりますね。
スマホデビューなさったご高齢の皆さん、ぜひぜひ楽しいスマホ生活で、併せて認知症も予防なさってください^-^



足の筋力を簡単に測る方法

2020年02月20日 | リハビリ・医療
皆さんは、ご自分の「足の力(筋力)」をご存知ですか?

病院で働いていますと、患者さんの足の筋力は、比較的頻繁に測定します。
専用の機器がありますから、簡単に筋力が測定できます。 その結果の数値を患者さんの体重で割ると、目標としたい「筋力/体重比」が算出できます。
一般的に、普通の日常生活を過ごしていただくためには、「筋力/体重比」で計算すると、0.5程度(体重の50%程度の筋力)が必要とされています。 病院で患者さんに元気に歩けるようになる時の目標値として、まずは0.4(体重の40%程度)を目指していただきます。

しかし、病院に入院したりケガをして外来で通院したりした経験がない場合、筋力を測定する機会はほどんとありません。
そこで、足の筋力を簡単に測るための方法として、山本先生、村永先生らは「立ち上がりテスト」という方法を報告されました。

方法は簡単です。

①高さ30cmの台に腰かけて、両腕を組み体を前に傾けた状態で、両足で勢いをつけずに立ち上がることができたら、「0.35(体重の35%程度)」の筋力があると考えられます。
②高さ20cmの台に腰かけて、両腕を組み体を前に傾けた状態で、両足で勢いをつけずに立ち上がることができたら、「0.45(体重の45%程度)」の筋力があると考えられます。
さらには、
③高さ40cmの台に腰かけて、両腕を組み体を前に傾けた状態で、片足で勢いをつけずに立ち上がることができたら、「0.60(体重の60%程度)」の筋力があると考えられます。

いずれも、立ち上がった後で、その姿勢を3秒間静かにキープする必要があります。 勢いをつけてはいけません。

私達理学療法士は、筋力測定のできる機器がない場面では、この方法を使用させてもらったりしています。
皆さんも、一度お試しください^-^

ただし、「転倒」にはくれぐれもご注意くださいね。
そもそも、片足立ちが難しい方は、③の方法は控えていただいた方がいいと思います。

現在、ご自身がどの程度筋力・体力があるのか、測定してみるとよいでしょうね。
また、30cmの台から両脚で立ち上がれなかったとしても、運動を継続することで2~3ヶ月後に再度チャレンジして、立ち上がれるようになれば、運動の効果として判定できるでしょうね。

いつまでも元気なお体を維持していきましょう^0^