ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

●● 口ぐせ ●●

2017年01月20日 | 介護
私達、医療従事者・介護従事者には、一日に何度も発してしまう言葉がありますね。
その中の一つに「ちょっと待って」があります。

鳴り響くナースコールを解除して「ちょっと待っててください」
荷物を運んでいる最中に声をかけられて「少し待っていてくださいね」
リハビリ中に業務連絡が入り、いったん席を外す時に「少しお待ちください」…などなど。

一日の中で、何度この言葉を発しているでしょうか^-^;
差し詰め、お母さんが子どもに「早くしなさい」を毎日連呼しているようなものなのでしょうね*^-^*


「ちょっと」とは、どのくらいの時間なのでしょうね。
介護やリハビリに従事する立場の職員の「ちょっと」と、今にもオシッコがもれそうで早くトイレに連れていってほしい要介護状態の方の「ちょっと」は、きっと分単位以上の認識の違いがあるでしょうね。
先日、ちょっとしたニュースでお笑い芸人の7:3分けの彼が、「少し待っていてくださいね」とスタッフに言われ、何時間待てるかを実験した番組があったそうで、その彼は忠実に「待て」を守ることができる犬よりも長時間(約6時間かな?)、ロケバスの中で待っていられたそうです。すごいですね^-^;

施設に入所・入居しているご高齢の方の立場になってみると、多くの場合は毎日退屈にお過ごしなのでしょうね。施設側としては、できるだけ人件費を抑えたいために少人数のスタッフ配置で、最大限に業務をこなしてほしいものですから、息つく暇もないくらいバタバタしています。
一方、入所・入居しているご高齢の皆さんは、「楽しく、安心できる充実した施設生活」を約束されたにも関わらず、ふたを開けてみれば食事とお風呂とトイレのお世話はどうにかこうにか、ベルトコンベアー式に介助を行ってもらえてはいるものの、それ以外の「余暇時間」は、とりあえずテレビの時代劇を流しておけばいいでしょ的な対応によって、事実上ほったらかしな毎日をお過ごしになっている方が多く見受けられます。
介護スタッフの中には、自分の休憩時間や勤務後の時間を使って、勤務時間内にできなかった利用者の方々との交流を図ろうと頑張ってる人もいます。そのようなスタッフには頭が下がりますね。いつも、ありがとうございます。


日常生活を普通に過ごしていれば、介助を受ける立場であろうとなかろうと、必ず「待つ」という時間はやってきます。
介護やリハビリの施設であっても同じことです。どんなにマンツーマンの対応を行っていても、やはりお待たせすることは必ずあります。
ですから「仕方ないでしょ」と言いたくなってしまいますが…、そうではなく、お待たせしていることに対して、一言「お詫び」のお気持ちを添えて、言葉と態度で示して差し上げられるといいと思います。
「待たせちゃうのは仕方ないでしょ」をスタッフからあからさまに示されると、分かってはいますがせつなくなってしまいますね。

ご利用者の皆さんも、スタッフが忙しいのは重々承知でいらっしゃいます。
それを踏まえた上で、「大変申し訳ありません、もう少々お待ちいただけますか?」とお声をかけて、待っていただけると、お互いに気持ちよく過ごせるものですね。

そんなことをイラストに描いてみました。
スタッフもお客様も、お互いに気持ちよく、同じ空間で過ごしていきたいですね。




●● 独り言上手 ●●

2017年01月11日 | 介護
あけましておめでとうございます。
昨年からブログを始めましたが…さっそく更新を怠っておりました^-^;
どんな方々がご覧になってくれているのか分かりませんが、実際の現場の様子を私なりの視点でお伝えさせていただき、介護やリハビリの業界に興味を持っていただければ何よりです^-^

今回は、私が初めて描いたイラストをご紹介します。
介護の仕事を始めたばかりの約20年前、完全な寝たきり状態で、お話もできず、声をかけても反応のない状態のご高齢の利用者さんのお世話をしておりました。
清拭のために体を動かしても時々、痛みを感じられたかのような眉間にしわがよるくらいしかない表情の変化、オムツ交換などの時に体位変換(体の向きを変えるなど)を行うと、閉じていた目がパッと開いたりするような反応しかありませんでした。
もちろん、口からの食べ物の摂取はできませんでしたので、直接おなかに管を通した「胃瘻(いろう)」を使って、液体状の栄養を胃に直接入れていました。

ある時、ふっと思ったのですが、この方の視界に私達はどんな風に映っているのかな?と思いました。
その時に想像して描いたのが、今回のイラストです。

笑顔たっぷりの職員さんの対応なのですが…声をかけてもらえる内容が「オムツ交換」や「清拭」など、業務的な内容に限られていることに、私なりの皮肉を込めてみました^-^;
寝たきり状態で声も出せない方でも、きっと内面ではいろんなことを見聞きし、感じているのだと思います。ただ、それを表に出せないというだけで、「何も考えていない人」と決めつけるのはおかしいと、素人であった介護士時代に感じておりました。
理学療法士になって医学の知識をある程度身に着けた今では、その当時の考え方もまんざら間違っていなかった、と嬉しく思います^-^

介護や医療の現場でお勤めの方は、ぜひ、寝たきり状態で反応もない方であっても、丁寧にお声をかけて差し上げ、業務的なこと以外でもお声をかけて差し上げてくださいね。天気の話でも、季節の話でも、あなたの愚痴でもいいと思います^-^

私は介護士時代によく、後輩の介護士に「介護の仕事をする人は、独り言上手になれるといいよ」と話していました。わざわざ相手に返答を求めるような「会話」ではなく、返答が難しい方には、返答を要求しない「会話」でお話して差し上げるといいと思います^-^