ケアトリハ

介護とリハビリの仕事をしている方、目指している方、介護やリハビリってどんな世界なの、という方に読んでいただきたいです。

人が腰痛に悩む理由②

2020年06月02日 | リハビリ・医療
首や背中など、何かと体の背面は痛みやコリがたまりやすい場所ですね。
前回もお伝えしましたが、二足歩行の動物へと進化してしまったため人は、肩コリや腰痛に悩まされてしまうようになりました。

では、少しでもそれらを軽減できる方法はないのか…、と考えてみましょう。

「コリ」を起こさない体の部位の話をしてみましょう。
力こぶを作るとムキッと盛り上がる「上腕二頭筋」。 肘をまげて力をこめると盛り上がる、この上腕二頭筋が「凝ったなぁ…」と感じることは、ほとんどありません。



それは、日常生活の中でこの上腕二頭筋は、「収縮」だけでなく「弛緩(ストレッチ)」も繰り返しているからです。

筋肉にはたくさんの筋線維が束になっています。 この筋線維にも十分な酸素を送るために血管がたくさん張り巡らされています。
これらの血管は、筋線維が固く収縮すると圧迫を受けてしまいます。 「血管が周囲から圧迫を受ける」と聞けば、「血流が悪くなるのかな?」と想像することは簡単ですよね。
そうなのです。 筋収縮が強く起こると、血管は周囲にある筋線維の圧迫力に負けてしまい、押しつぶされてしまいます。
押しつぶされている時間が長ければ長いほど、血流量が低下しますので、十分な酸素が供給されにくくなります。 その結果、いわゆる「疲労物質」が蓄積されて疲れや痛みを引き起こす、と考えられています。

上腕二頭筋は「肘を曲げる筋肉」です。 日常生活の中で、肘を曲げたあとに伸ばす行為は、だいたいセットで行われていますよね?
おまんじゅうを手に取って食べる際に肘を曲げますが、その後「もう1個食べよう」として器に手を伸ばす際、肘(上腕二頭筋)は伸ばされています。 多くの人は、肘を曲げたあとに伸ばしています。

ところが、首や背中、腰の筋肉というのは、体幹が前方へ倒れないようにと常に収縮しっぱなしです。 伸ばされることがほとんどありません。



さらに、前かがみになって重い荷物を持ち上げようとすればするほど、背中や腰の筋肉は固く強く収縮しなくてはならなくなります。

この強くて持続的な収縮を継続しているという行為が、人ならではの背部や腰部の痛みにつながります。


では、どうしたら改善できるか?

一歩歩くたびに背中をそらして、もう一歩歩く時には大きくお辞儀をする、なんてヘンテコな歩き方をするのもいいでしょう…。 ただし、途中で周囲の人から「あの人大丈夫かしら?」なんてチラチラ見られること間違いなしです(^-^;

ではでは、どうしたらよいでしょうか?

それにはやっぱり、ストレッチが必要になります。
いわゆる「体操座り」のような姿勢によって、首から背中・腰をギューッと伸ばしてあげましょう。
起きている間中、ずっと収縮を余儀なくされている首から背中・腰の筋肉を、ジワーッと伸ばしてあげることで、圧迫している筋肉をリラックスしてて、押しつぶされている血管をフワッと開いてあげて、血流を促して差し上げましょう^-^

朝、目が覚めてベッドから起き上がる前に、仰向けの状態のまま両手で膝を抱えてストレッチする。 昼間、仕事などの活動の間、しゃがんで背中を丸めてストレッチする。 こんな感じで、日常生活の中にストレッチする時間を組み込んでみましょう。

こまめに首~背中・腰にかけての筋肉をストレッチしてみると、一日の終わりに感じる腰の痛みなどが軽くなっていることに気付けると思います。

ぜひぜひ、こまめに実施してみてください^0^

人が腰痛に悩む理由①

2020年05月28日 | リハビリ・医療
 肩こりや腰痛は、男女問わず多くの方が悩んでいる症状です。
 厚生労働省は、毎年「国民生活基礎調査」を実施していますが、3年に1度、大規模調査として、健康や介護に関する情報を収集しています。
 2016年(平成28年)の調査では、「病気やケガによる自覚症状」の内容として、男性の第1位が「腰痛」、第2位が「肩こり」、第3位が「せきや痰が出る」、女性の第1位が「肩こり」、第2位が「腰痛」、第3位が「手足の関節が痛む」でした。

 人は、寝ている時間以外、基本的には「立位」または「座位」をとっています。 立位や座位では、脊柱(背骨)が地面に対して垂直になった状態です。 脊柱は背中側についており、内臓や(ついていなくてもいいのに)脂肪はお腹側についています。

 脊柱を垂直に保つためには、イラストで示した様に、お腹についている内臓や脂肪を腰背部の筋でがんばって釣り上げておく必要があります。 ですから、お腹にお肉(脂肪)がつけばつくほど、腰背部の筋に負担がかかるということです。


 犬や猫の様な「四つ足動物」は、脊柱が地面に対して水平になった状態です。 内臓や脂肪は天井の梁の役目をする脊柱にぶら下がっている状態です。 その脊柱を4本の足で支えているという姿勢ですので、原則として人と同じような腰痛は起こりにくいです。 もちろん、犬や猫もブクブクに太ってしまうと、天井の梁の役目をする脊柱にも負担がかかってきます。 近年はペットの腰痛も問題になっていますね。

 今回は、「腰痛が起こるメカニズム」を、簡単にご紹介しました。
 次回は、その解消法をご紹介いたします^-^ 

階段の昇り降り運動で健康維持を図る!

2020年04月20日 | リハビリ・医療
「不要不急の外出は控えましょう」
でも、
「適度な運動は継続しましょう」

おっしゃることは分かりますが、「出かけるなと言われながらも体を動かせと」と、難しいことが、現在求められています。

そこで、「遠くまで出かけない」ながらも「運動する」という状況を考えてみました。
「自宅(マンション)や近所の歩道橋などにある階段の昇り降りで、健康を維持できないか」と思い、過去の研究論文を探しました。

ありました^-^

1994年にアメリカのLoy先生達が調査していました。
50~65歳の運動不足がちな24名を3群に分け、①階段昇り運動のみ群、②階段昇り運動+筋トレ群、③コントロール群(何も運動しない比較のための群)に分けて、それぞれの運動を12週間実施しました。
①の階段昇りのみ群の運動課題は、40分間の階段昇り運動を週3日、12週間行うというものでした。
その結果、(細かな点は省略しますが(^-^; )、①階段昇り運動のみ群は、膝を伸ばす筋力や、最大酸素摂取量(体力の指標)が、統計学的にも有意な差を持って改善しました。



しかし…、読んでいて思いましたが、正直なところ、週に3日、12週間もなかなか決意の必要な頻度ですが、さらに階段昇り運動を40分も行うなんて…調べていながらもやる気が失せてしまいそうでした(^-^;

そこで、続けて同じような別の論文を探してみたところ…最近報告された、もう少し手の届きそうな論文がありました。

2016年にカナダのAllison先生達が調査していました。
こちらの対象者は平均年齢が24歳の運動不足がちな女性31名を3群に分け、条件を変えて調査しました。
3群のうち1つの群には、「1階分の階段昇り降り運動60秒間、1分間の休憩をはさんで3回行うという運動を、週に3日、6週間実施する」という内容で調査しました。
その結果、最大酸素摂取量(体力の指標)や筋肉の量などが統計学的にも有意な差を持って改善しました。

後者のAlloson先生達の調査の対象者は若い女性でしたので、いちがいに中高年の人達に当てはまるとは限りませんが、Loy先生達の調査も合わせて言えることは、「階段を使った短時間のちょっとがんばった運動と休憩を繰り返す『インターバル トレーニング』は、お金もかからずどこでもできるエクササイズである」と言えます。

階段の昇り降り運動は、膝への負担も考慮しなくてはいけませんので、このブログをご覧の方のうち、膝に問題を抱えている方は十分注意していただくか、遠慮していただいた方がいいと思います。

しかし、いずれにしても、工夫次第で経時的にも負担をかけないで健康維持を図っていけるのでしたら、環境を整えたうえで実践してみたいと思いました^-^

ブログをいつもご覧いただいている皆さん、どうぞ無理のない範囲で、まずは1階分の階段の昇り降り運動を始めてみてはいかがでしょうか^-^?

爪楊枝で分かる簡単な感覚テスト^-^

2020年03月20日 | リハビリ・医療
爪楊枝を2本ご用意ください。
その爪楊枝をピタッと2本並べてずれないように保持してください。
その2本の爪楊枝のとがった部分である先端を、ご自分の人差し指の指先部分(指紋のある部分=指腹)に軽く押し当ててみてください。

「2本触れている」ということが、(かろうじて)分かると思います。
お歳を重ねていくと、また糖尿病などを長く患っていらっしゃる人ですと、分かりにくいかも知れません。

「2本触れている」というのが分かった人は、次に同じ様にその2本の先端を、肘から手首の間(この部分を「前腕」といいます)にそっと押し当ててみてください。



ここでは、「2本触れている」ということが分からないはずです。 もちろん、自分自身で2本の先端で触れる、ということを理解していますので「分かった気」になってしまいます(^-^;
もし今、そばにどなたかいらっしゃるのでしたら、「感覚のテストだよ」とお伝えして、指先(指腹)と前腕の2ヶ所で試してみてください。

これは、リハビリの検査にもある「2点識別検査」と言います(ちなみに爪楊枝ではやりません)。
人の体には、触れた物が何であるか、いくつあるか、どんな圧か、どんな硬さか、どんな温度か、などを感知するセンサー(受容器)があります。
この受容器は、全身に張り巡らされています。 体に異常がないか、危険な状態に陥っていないか、など、全身の情報を脳に送っています。

この受容器は、体の部位によって密度が違います。
「指先」「唇」といった、物をつかみ、口に持っていき、食べる、という赤ちゃんにも必要な、「生きるための行為」を行う部位には非常に密集して存在します。 したがって2点識別検査の正常値として、指先は3~4mm、口唇は6~7mmと報告されています。 爪楊枝を2本並べた状態での先端の距離は約3mmですので、正常な状態であれば指先でかろうじて知覚できます(できなくても「異常=問題!」ではありませんのでご心配なく (^-^; )。

それとは逆に、前腕部、背中など、生きるために優先して必要な行為をする場所ではない部分には、受容器は密集していません。 必要がないからです。
前腕では37~39mm、背中にいたっては40mmといわれています。 したがって、この様な部位で爪楊枝2本分の識別は困難となります。
背中にいたっては、指を2本並べても分かりません(^-^;

指先の感覚受容器のセンサー機能や、その感覚を脳に伝える末梢神経の機能は、お歳とともにどうしても低下していきます。 これもいわゆる「正常な変化」です^-^
ただし、「糖尿病」や、頸椎の病気やケガなどの「頸椎症」など、手や指などに伸びる感覚神経に影響を与える様な病気がありますと、お若い人でも感覚が鈍くなることがあります。

・本をめくる時、指先に当たる紙の感覚が分かりにくくなった
・物をつかんている時、昔よりも触れてる感じが鈍い気がする
・手で物をつかんでいるのに、不意に落とすことが増えてきた

こんなことを、最近感じることがおありでしたら、一度爪楊枝で簡単に検査してみてください^-^ (あくまでも簡易検査です)
糖尿病や頸椎症などの病気がもともとない、という人でしたら、いわゆる加齢にともなう機能低下かも知れませんですね。
その場合は、逆にこの様な「指先」で物の形状などの感覚を見分ける「ゲーム」的なことを繰り返してみてもよいと思います。
例えば、2~3本の鍵を用意して、目を閉じて、その鍵の鍵山を指で触れてみます。 その鍵がどこの扉の鍵なのかが分かる様になる、といった簡単なトレーニングも有効かも知れませんですね^-^
「点字を覚える」というのも、頭の体操にもなりそうですし、今後は視覚障害を持つ人へのサポートにも役立つかもしれませんね。

心不全を予防しましょう

2020年03月14日 | リハビリ・医療
心臓の病気が進行すると「心不全」という、全身に血液を送る心臓ポンプの機能が低下して、症状が出現することがあります。

心臓のポンプ機能が破綻してしまうと、全身の血液をスムーズに送れなくなります。 全身に送れなくなると血液の循環は遅くなり、全身の血管内で滞ってしまいます。 血管には小さな穴が開いています。 その小さな穴から栄養や酸素・二酸化炭素、水などが周囲の細胞に出入りします。 ところが、血管の中で血液が滞ると血液の水成分が血管の外にしみ出てしまいます。 心臓のポンプ機能が低下することで、「浮腫」が起こります。

心不全が原因で起こる浮腫は、手足や顔などでみられることが多いですが、肺の中でも起こります。 肺の中で浮腫が起こると、酸素と二酸化炭素の入れ替えである「換気」ができなくなります。 これが、心不全によって起こる「呼吸困難」となります。



心不全は、心筋梗塞や心臓の弁の病気、不整脈など、もともとの心臓の病気が長い間、心臓に負担をかけ、その結果心臓のポンプ機能が低下してしまい起こる病態です。

お年を重ねていくごとに、心不全患者は増加しています。 2020年には120万人にも達するといわれています。
心不全も、心臓を大事にいたわっていくことで予防につなげていけます。 理学療法士の私が、心不全の予防としてお伝えできるは、「生活習慣」と「有酸素運動」による予防方法です。

このブログで、これから少しずつお伝えしていきますね。