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Retro-gaming and so on

グレンダイザー

龍虎氏のブログで知ったニュース。
詳しい話はそっちのブログを参照してほしい。

ちなみに、「UFOロボ・グレンダイザー」と言うアニメは、永井豪のマジンガーシリーズ三部作のうちの一作だ、って事になっている。
ただし、実はこの作品「だけ」、はスタッフ総入れ替えになってんだ。ファンタシースターシリーズで言うと「 時の継承者 ファンタシースターIII 」がこの作品だ(笑)。
と意味の分からない説明をしておく(笑)。
じゃあ、マジンガーZとグレートマジンガーをやってたスタッフはどこへ行ったんだろう?と言うと、(当時の)新番組「鋼鉄ジーグ」を作る事になったんだよな。
つまり、スタッフの流れから言うと(原作者の永井豪も合わせて・・・ダイナミック・プロの安田達矢が加わったが)、マジンガーZ、グレートマジンガーの「続編」は鋼鉄ジーグであってグレンダイザーではない。
事実、音楽をやってた(昨年亡くなった)渡辺宙明センセのサウンドはグレンダイザーでは鳴らない。代わりに「仮面ライダー」シリーズでの実績があった菊地俊輔氏にバトンタッチされて、音楽的にはそれこそ、グレンダイザー vs. 鋼鉄ジーグの様相は「仮面ライダー」vs. 「人造人間キカイダー」になっている。
そしてマジンガーZ -> グレートマジンガー、とどんどんこなれていった「宙明サウンド」は「鋼鉄ジーグ」で高らかに鳴り響くんだ。

また、原作者永井豪のスタンスも違うと思う。
明らかに永井豪は「マジンガーZ」には力を入れていた。言っちゃえば「ギャグ漫画家としてデビューした」永井豪が、「ロボットSF作家」に転身したキッカケの作品であり、元々は少年ジャンプ掲載の漫画だった、ってのは有名な話だろう。
ところが、講談社が永井豪に接近してきて、「テレビアニメとタッグを組んだ雑誌」と言うコンセプトの幼年向け雑誌、「テレビマガジン」の目玉としてマジンガーZを欲しがったんだよな。
永井豪的には「少年ジャンプ」と「テレビマガジン」のダブル連載をしたかったらしいが、集英社側がこれを拒否。かつ、永井豪人気で原稿料が高騰してた事もあって(ダイナミック・プロはキチンとした「会社構成」になってて、交渉はマネージャーの仕事になってた)、集英社は人気コンテンツ、「マジンガーZ」を手放す事とした。
結果、当時では珍しい、「連載雑誌の引っ越し」って現象がマジンガーZには起き、これが原因で出版権が不明瞭になり、マジンガーZの単行本は、集英社、朝日ソノラマ、講談社、と3社別々に「同じ作品」がリリースされる事となるわけだ。小説では珍しくなかったが、当時の漫画界では異例の事態となった(なお、この「三社同時出版体制」から集英社が一番先に脱落する事となる)。
しかし、所詮幼年向け雑誌の「テレビマガジン」。少年ジャンプ時の「1つのエピソードを複数回に分けて連載」と言うスタイルではなく、「一話完結」へと変わり、「物語の複雑な構成」を避けるようになる。
このスタイルは、続編「グレートマジンガー」でも続き、漫画としてはどうなんだ、と言う話になる・・・それでもKCコミックスで2巻分くらいはあったんじゃねぇのかな?うろ覚えだけど。
それで「UFOロボ・グレンダイザー」だけど、もう永井豪も忙しかっただろうし、連載媒体の関係でもはや「漫画として描く」熱意も消えてたのか、早々と「原作版グレンダイザー」からは撤退するんだ。
そういう「原作者からも(ある意味)見放された」不遇の作品、が「UFOロボ・グレンダイザー」なんだ(※1)。

とまぁ、この辺が僕の知る限りのグレンダイザーのバックグラウンドだ。

ところで、実のこと言うと、僕は全く「グレンダイザー」のリメイクに期待してない。
っつーか、ぶっちゃけると「永井豪モノ」のアニメリメイクには全く食指が動かなくなってんだ。言っちゃえば「裏切られ続け過ぎて」全く期待を持てなくなってる。
ハッキリ言えば、90年代から「永井豪モノのリメイクアニメ作品」はどれも駄目だ。マトモなブツは一作もない。
だから正直言うと、「またか・・・」なだけであってヘンな期待はしないようになっちゃったわけ。

もっとキツい事を書くと、そもそも永井豪って漫画家は80年代半ばにさしかかる辺りで既に「過去の漫画家」になってた。具体的には鼻の穴を描くようになってから、だ(謎
んでこの辺から、「永井豪原作の過去の作品リメイク」ってのがダイナミック・プロ、及び一番関係が深かった東映動画のビジネスになってくんだよ。

例えば僕が好きな永井豪キャラにご存知「キューティーハニー」がある。
で、90年代半ば辺りに「新・キューティハニー」ってリメイク作品が出るのね。
結構期待して観てはみたんだけど・・・。



 
ひっじょーに絵のクオリティは高かった。そしてデッサンが狂いがちな永井豪の絵に対し、(当時の最先端の)アニメ技術でブラッシュアップした「アニメ版永井豪キャラの理想的な描画ライン」も素晴らしかった。
そこに文句の付けようは無かったんだ。
まぁ、舞台がバットマンみてぇになってる、ってのは呆れたけどそこは流そう(あと、ハニーの声が峰不二子じゃない、ってのにもショックを受けたが・笑)。
そうじゃなくって、根本的なトコに問題があった。ハニーのキャラだ。
何だろ、旧版の原作のハニーを読んでると違和感ありまくりのキャラだったんだよな。
と言うのも、このアニメ、やたらハニーが「愛の為に」って言いまくるんだよ。
あれ、ハニーってそんなキャラだっけ?
確かにキューティハニーの紋切り型は「愛の戦士、キューティハニーさ!」だ。
ただ、旧作良く読んでみりゃ分かるんだけど、ハニーのここで言う「愛」ってのは、対象が殺された「自分を作ってくれた父(如月博士)」の事であり、要はハニーってのは復讐、つまり私怨の為に戦ってるんだ。
ここだ。実は往年の永井豪キャラの最大の特徴がここにある。
永井豪キャラってのが戦う動機ってのは、極めて私的な動機、なんだよ。世界平和の為、とか抽象的な目的の為には戦わないんだ。
言っちゃえば、世界のためとか人類のためには戦わないんだ。そんなトコに永井豪キャラのモティベーションはない。

名作、デビルマンでも、主人公不動明は、親友飛鳥了の「人類の為に戦ってくれ」と言う誘いにのり、デーモンと合体してデビルマンとなる。
ただし、合体してから以降は、一番の「戦う」理由が不動明個人の「殺戮衝動」の開放だ。その時点では「人類もクソも」アタマの中にはない。そしてそこに「既に人間ならざるもの」、不動明のリアリティがあり、喜びと哀しみがある。
こういう構造が永井豪キャラの説得力のあるトコなんだよ。まず、最初に「個人」が来て、「衝動」がくる。世界平和だ何だ、ってお題目が来るけど、永井豪キャラ、ってのは建前と本音が必ず逆転する構図になってんだ。そこが魅力であり、「悩めるヒーロー」、つまり石森章太郎のヒーロー像とは決定的に違うんだ。
「永井豪キャラは悩まない」。

ところが、この90年代辺りから永井豪キャラが、「いろんな能書き」を垂れるようになっちまうんだわ。そうじゃないだろ、とか思ってて。
大体元々永井豪自身はO型だろ(笑)。理屈こねるより「勢いだけで」漫画描いてた方がエエ筈なんだ。ところが80年代半ば辺りから「賢くなった」のか、キャラが能書き垂れるようになっちまったんだわ。
それじゃダメだろ、と。
理屈垂れるキャラってのはAB型漫画家である石森章太郎の独壇場だった筈なんだ。永井豪は石森章太郎になりたかったのか・・・いや、元石森章太郎のアシスタントではあったが。
いずれにせよ、永井豪キャラは石森章太郎キャラの対極にいる筈のキャラだったんだよ。石森章太郎キャラはマジで「世界平和の為に」戦ってて、その前に個人が潰されそうになる、って危ういトコが魅力だったんだが、それは永井豪キャラではない。永井豪キャラは行動原理としてとにかく最初に私欲が来るキャラなんだ。
だから永井豪キャラは欲望に忠実な為、PTAを敵に回すキャラなんだよ。それでいいし、それが永井豪キャラの魅力の筈なんだが、90年代以降おかしくなってくんだよな。

この往年の永井豪漫画の構図ってのはすごく重要だったのね。
例えばマジンガーZ。これは主人公兜甲児の祖父である、兜十蔵博士が独力で最後に作り出した「遺産」だ。
自分の実験に付き合わせて死なせてしまった息子夫婦。つまり兜甲児・シローの両親だよな。要は自分が死ねば孫二人は天涯孤独になってしまう。
言わば、祖父のある意味、孫を想うあまりの狂った愛がマジンガーZの開発動機なんだ。








 
この兜十蔵のキャラ、ってのはこの後出てくる敵のボス、ドクター・ヘルと実は何ら変わらない。単なるマッド・サイエンティストなんだよ。
マッド・サイエンティストである兜十蔵博士が「孫を愛しく思うあまりに作った」マジンガーZ。




メチャクチャ重い「祖父の愛」、をマジンガーZの「防御力」で実感するシーン。言わずとも分かるんだ。




史上最強の「光子力エンジン」搭載のマジンガーZ、その馬力は桁違いだ。
いずれにせよ、「マジンガーZ」と言う作品はおじいちゃんっ子である甲児と十蔵の「絆」が物語のキーになっている。

この、「世界平和もクソもなく」、情念がまずは最初に来る、ってのがかつての永井豪漫画の特徴であり、「建前」を超えて「これはアリだろ」と語りかけてくるんだ。
だからこそマジンガーZは物語上、「史上最強ロボット」である説得性を持つんだ。



加えて、マジンガーZの暴力性も凄い。
っつーか、絶頂期の永井豪の漫画の特徴は「暴力」だ。マジンガーZはパワフルなロボットで、武器も豊富だが、単純な暴力性も他のロボットの比じゃない。
兜甲児の性格も相まって、その破壊力を存分に魅せてくれる。




ドグラ・マグラ戦。敵を脚で踏みつけて破壊する。




「意思があるロボット」ドナウα1との戦い。ここでのマジンガーZは残虐非道な、まさしく「魔神」さながらの容赦無さだ(相手が「女性型」だろうと構わない、と言うのが往年の永井豪漫画の真骨頂だ)。
このエピソード、甲児の弟、兜シローとドナウα1の本体、ローレライとの初恋とその悲恋はマジンガーZで1、2位を争う程の人気エピソードだ。

ガンダムファンには悪いが、「搭乗型ロボット」は登場と同時に最強に登りつめた。
ガンダムとマジンガーZが戦えばマジンガーZが勝つだろう。なんせ、太陽の表面温度6,000度を超えるようなはた迷惑な兵器、3万度を誇るブレストファイアーが装備されてる。
文字通り、「祖父の狂った愛」は地球上で使うにははた迷惑な超兵器を作り出したんだ。
恐らく、マジンガーZに勝てるロボットはマーズのガイアーくらいしかいないだろう。

マジンガーZに唯一勝てる可能性があるロボット、ガイアー。なんせ倒せば地球を巻き込んで自爆する厄介さがある(笑)。

 
繰り返すが、かつての永井豪の漫画にはまず「情念」が来る。そして、戦う理由は「世界平和の為でも」何でもなくって極私的な理由だ。
永井豪の漫画には「理屈が要らない」。
それが良かったんだけど、90年代以降の「リメイク作」だとなんかやたら「言い訳」が入るようになっちゃったんだよ。「理屈を」後付しようとし出した。
だからダメな作品ばっかになったんだ。
永井豪作品には「現代的解釈」とか「リアリズム」も要らない。思いつくままに極私的な理由により、暴力があり、PTAが眉を顰めそうな作品じゃないといけない。
言っちゃえば「永井豪作品を良く分かってない」作品ばっか、観続けさせられた。
だからもう、僕の中では本当に「永井豪作品」は過去のモノとなって、期待できねぇんだわ。
多分今回もダメだろ。ダメだと思ってる。
キツイこと書いてるけど、ホント、裏切られまくられ過ぎたんだよ。

※1: ちなみに、恐らく、だけど、「UFOロボ・グレンダイザー」くらいになると、クレジット的には「原作・永井豪」なんだけど、実態はもはや東映動画主導になってたんじゃないか。要は実際は「原案協力: 永井豪」くらいになってた気がする。
と言うのも、主人公、デュークフリードがどう考えても「永井豪キャラ」じゃないからだ(笑)。こんな王子様然(っつーか実際王子様だが)のキャラ、なんつーのが「永井豪発案」たぁ思えない。
大体、永井豪が描く「王子様」なんつーのは「ドロロンえん魔くん」であって(笑)、えんまくんがグレンダイザーを操縦しながら、スペイサーを操る「雪子姫」のケツを撫でる、ってのが「正しいスタイル」だろう(笑)。
よって、この時点では、東映動画のゴリ押しがまずあって、キャラデザとかグレンダイザーの基本的デザイン以外は永井豪は積極的に関わってなかったんじゃなかろうか。

※2: 90年代以降、唯一永井豪モノのリメイクで面白かったのは、実写ドラマ版として撮られたキューティーハニーTHE LIVEだけ、だ。

 
この制作陣「だけ」が唯一永井豪的な世界観をキチンと理解してた、と思う。
また、原作では「女幹部だらけの」パンサークローに新解釈を与えてて、それも非常に良かった。非常に優れたドラマに再構築してたんだ。
ただし、唯一残念だったのが、やはりハニーの「キャラ設計」で、ぶっちゃけ、駄作だった庵野版キューティハニーの「キャラ」を引きずっている。
ハニーはおバカキャラじゃねぇんだ。これは庵野版による最悪の改悪だろう。
結果、キューティハニーTHE LIVEは、主役のハニーより、(ハニーのプロトタイプのサイボーグが二人出てくるが、そのうち一人の)シスターミキ(演:水崎綾女)が全部持っていってしまった。


なお、アニメのキューティーハニーFも悪くはないが、これは少女漫画枠なんで、新解釈どころか、「全く違う作品」だと思っている。
言わばプロットを原作と共有してるだけの「企画モノ」って印象だ。
(なお、ラインとしては「セーラームーン」と「プリキュア」に挟まれて本放送時には苦戦した印象があるが、後年、一般的にはそれなりに再評価されてはいる)。
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