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Retro-gaming and so on

AD&D 第1版でのキャラクタメイキング

日本ではAD&Dが紹介されたのは第2版以降、となる。
従って、実の事を言うと、SSIのGoldboxなんかのシリーズで使われてる「モノホンの」AD&D第1版をプレイした事がある人はかなり限られてるんじゃないか(※1)。
だから英語での情報を除くと、AD&D第1版に準じた「キャラクターメイキング」の日本語での情報を探すのは極めて困難になっている。

さて。AD&D第1版のキャラメイクは結構メンド臭い。
Goldboxなんかだと一瞬で終わるキャラメイクもAD&D第1版のプレイヤーズハンドブックに忠実に従って行うとすると、相当な手間、ってのが事実だ。
また、Wizardryのキャラメイクがどうしてああ言うスタイル(種族によって最初から特性値が決まっている)なのか、と言うのも、AD&D第1版でのキャラメイクの煩雑さを避ける為にああしてるんだろう。
ちと見てみよう。

まず、AD&D第1版で言う「プレイヤーキャラクター」には6つの特性値とか能力値と言われるもの・・・あるいは、ステータスとかパラメータと通称では言われるが、正式名称はcharacter abilitiesなるものがある。
それはこれらだ。

  • Strength(力)
  • Intelligence(知恵)
  • Wisdom(Wizardryで言う「信仰心」)
  • Dexterity(素早さ)
  • Constitution(Wizardryで言う「生命力」)
  • Charisma(カリスマ)
 Wizardryをやった事がある人なら「なんとなく」これらの意味が分かるだろう。ただし、Wizで言う「運」はない。
これらの「数値」は全部3d6・・・つまり、6面体ダイス(要はフツーのサイコロだ)3個を振る事によって決定する。
まぁ、これはいいだろう。
ただし、コンピュータゲームではあまり気にしないが、これらダイスの「出目」によっては、選べる種族・職業、またはあるレベル以上の魔法が使えるか使えないか、が決定する。そういう「制限」が出目によって生じるわけだな。
ちと見ていってみる。

Strength(力、あるいは筋力):
いわゆる「攻撃力」に関するパラメータだが、出目によっては以下の制限がある(種族や職業に付いては後述)。

  • 力が5以下だと魔術師(Magic-User)以外の職に就く事が出来ない。
  • 力が6以下だと種族としては、ノーム、ハーフオーク、ハーフリング(ホビット)にはなれない。
  • 力が8以下だと種族としてはドワーフはにはなれない。
  • 力が9以下だと職業としては戦士(Fighter)は選べない。
  • 力が12以下だと職業としては暗殺者(Assassin)とパラディン(Paladin)は選べない。
  • 力が13以下だと職業としてはレンジャー(Ranger)は選べない。
  • 力が14以上だと種族としてはハーフリング(女)にはなれない。
  • 力が15以上だと種族としてはノーム(女)にはなれない。また、力が15以下だと、職業としてはモンク(Monk)は選べない。
  • 力が16以上だと種族としてはエルフ(女)にはなれない。
  • 力が17以上だと種族としてはドワーフ(女)、ハーフエルフ(女)、ハーフリング(男)にはなれない。
  • 18が戦士(Fighter)以外の力の最大値。
  • 18/1-50が職業戦士(Fighter)の人間(女)やノーム(男)の最大値。
  • 18/51-75が職業戦士(Fighter)のエルフ(男)やハーフオーク(女)の最大値
  • 18/76-90が職業戦士(Fighter)のハーフエルフ(男)の最大値。
  • 18/91-99が職業戦士(Fighter)のドワーフ(男)とハーフオーク(男)の最大値。
  • 18/00が職業戦士(Fighter)の人間(男)の最大値。
特筆すべき点としては、性差別的だが(笑)、種族による「女性」の最大値は「男性」のそれより低くなるよう設定されている。
まぁ、とにかく細かい。Wizardryの「種族」と「職業」の関係より設定がメンド臭い、ってのが分かるだろう。
なお、「戦士」職の18の横についてる数はパーセンタイルダイス、と言う10面体ダイス2個で一組のペア、で決定する。片方が10の位を現していて、片方が1の位を現している。

Intelligence(知恵、あるいは知力):

これに付いても、以下のような制限がある。

  • 知恵が4以下だと種族としてはハーフエルフにはなれない。
  • 知恵が5以下だと戦士(Fighter)以外の職に就く事が出来ない。
  • 知恵が6以下だと種族としてはハーフリングにはなれない。
  • 知恵が7以下だと種族としてはノームにはなれない。
  • 知恵が8以下だと種族としてはエルフにはなれない。
  • 知恵が9以下だと職業としてはパラディン(Paladin)と魔術師(Magic-User)は選べない。
  • 知恵が10以下だとレベル5の魔法を使う事が出来ない。
  • 知恵が11以下だと職業としては暗殺者(Assassin)は選べない。
  • 知恵が12以下だとレベル6の魔法を使う事が出来ない。
  • 知恵が13以下だと職業としてはレンジャー(Ranger)は選べない。
  • 知恵が14以下だとレベル7の魔法を使う事が出来ない。
  • 知恵が15以下だと職業としては幻術士(illusionist)は選べない。
  • 知恵が16以下だとレベル8の魔法を使う事が出来ない。
  • 知恵が17以上だと種族としてはハーフオークにはなれない。
  • 知恵が18以下だとレベル8の魔法を使う事が出来ない。
「なろう系」で言う「天才魔法使い」はAD&Dで言うと「知恵」が18ある者、と捉える事が出来る(謎

Wisdom(判断力、等と訳されるらしい):

これはWizardryに於ける「信仰心のようなもの」と考えていい。
いや、実際は細かい違いがあるんだけど、どのみち、僧侶系職業への影響力がないわけじゃないから、だ。
「判断力」の大小によって生じる制限には以下のようなモノがある。

  • 判断力が5以下だと盗賊(Thief)以外の職に就く事が出来ない。
  • 判断力が9以下だと職業としては僧侶(Cleric)は選べない。
  • 判断力が12以下だと職業としてはドルイド僧(Druid)は選べない。
  • 判断力が13以下だと職業としてはパラディン(Paladin)やハーフエルフで、マルチクラスで僧侶(Cleric)を選べない。
  • 判断力が14以上だと種族としてはハーフオークにはなれない。また、判断力が14以下だと職業としてはレンジャー(Ranger)は選べない。
  • 判断力が15以下だと職業としてはモンク(Monk)は選べない。
  • 判断力が17以上だと種族としてはハーフリングにはなれない。また、判断力が17以下だとレベル6の僧侶魔法を使う事が出来ない。
  • 判断力が18以下だとレベル7の僧侶魔法を使う事が出来ない。
Dexterity(素早さ、あるいは敏捷力):

これもWizardryでお馴染みだし、言っちゃえば、どのCRPGあるいはJRPGでもお馴染みのパラメータだ。
職業的には盗賊に深く関係があるが、と同時に、戦闘に於いて、敵に対して先手を打てるかどうかを決定付ける重要なパラメータとなっている。
「敏捷力」の大小で受ける制限は以下の通り。

  • 敏捷力が5以下だと僧侶(Cleric)以外の職に就く事が出来ない。
  • 敏捷力が6以下だと種族としてはハーフエルフにはなれない。また、敏捷力が6以下だと職業としては魔術師(Magic-User)は選べない。
  • 敏捷力が7以下だと種族としてはエルフにはなれない。
  • 敏捷力が8以下だと種族としてはハーフリングにはなれない。
  • 敏捷力が9以下だと職業としては盗賊(Thief)は選べない。
  • 敏捷力が12以下だと職業としては暗殺者(Assassin)は選べない。
  • 敏捷力が14以上だと種族としてはハーフオークにはなれない。
  • 敏捷力が15以下だと職業としてはモンク(Monk)は選べない。
  • 敏捷力が16以下だと職業としては幻術士(Illusionist)は選べない。
  • 敏捷力が17以上だと種族としてはドワーフにはなれない。
Constitution(生命力、あるいは耐久力):

これもWizardryでお馴染みな「生命力」だ。
これは単純に言うと、主に「死んでしまって復活する」回数を現す。
つまり、生命力が例えば初期状態で15だった場合、「おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない」は15回しか聞くことが出来ない、と言う事を意味してて、16回目にはそのキャラクターは永久にロストする。
また、1回復活すると生命力は1減る事となる。
この辺のシビアさはWizardryをやってる人にはお馴染みだろう。
生命力の大小に依る制限は以下の通り。

  • 生命力が5以下だと幻術士(Illusionist)以外の職に就く事が出来ない。
  • 生命力が6以下だと種族としてはエルフやハーフエルフにはなれない。
  • 生命力が7以下だと職業としては戦士(Fighter)は選べない。
  • 生命力が8以下だと種族としてはノームにはなれない。
  • 生命力が9以下だと職業としてはパラディン(Paladin)は選べない。
  • 生命力が10以下だと種族としてはハーフリングにはなれない。
  • 生命力が11以下だと職業としてはモンク(Monk)は選べない。
  • 生命力が12以下だと種族としてはドワーフにはなれない。
  • 生命力が13以下だと種族としてはハーフオークにはなれない。
  • 生命力が14以下だと職業としてはレンジャー(Ranger)は選べない。
Charisma(魅力):

カリスマ(魅力)はあまりCRPGではお馴染みではないパラメータだ。
事実、6以前のWizardryにはこのパラメータはない。
このパラメータはある意味、TRPGならでは、のパラメータで、「交渉事」の際に物事を上手く進める事が可能か否か、を判定する為に使われる(らしい)。
レトロゲームで言うと、この「魅力」と言うパラメータがゲームを左右したのは、ロードス島戦記のヴァリスの色ボケ姫に対する影響くらいじゃねぇか(笑)。
結果、イベントに対して、性交成功か失敗を左右する、と言うCRPG的に簡単な方法論とすると、Luck(運)に差し替えたWizardryの判断は正しかったのかもしんない。
カリスマの大小で生じる制限は以下の通り。

  • カリスマが5以下だと暗殺者(Assassin)以外の職に就く事が出来ない。
  • カリスマが8以下だと種族としてはエルフにはなれない。
  • カリスマが12以上だと種族としてはハーフオークにはなれない。
  • カリスマが15以下だと職業としてはドルイド僧(Druid)は選べない。
  • カリスマが16以上だと種族としてはドワーフにはなれない。
  • カリスマが17以下だと職業としてはパラディン(Paladin)は選べない。
これらが特性値と種族・職業との関係だ。
もう一度確認するが、まずは3d6で6つのパラメータを順番に決定して、それによって種族を選ぶ。そして出目に拠っては「なれない種族がある」と言う事だ。また、場合に拠っては(「筋力」の出目が良すぎて)性別で女性を選べない、って事がある。
この複雑なシステムを見ると、プログラミング上の手抜きなのは間違いないけど、6以前のWizardryが「性別を排除し」「種族別にパラメータを固定した」ってのはある意味正しいとは言えるかもしんない。「最低限必要な」特性値だけでなく「上限」が存在したり、と言うのは80年代で、Pascalを使ってフロッピーディスク1枚にプログラムを収めたいのだったら実装が難しかっただろう。

なお、YouTubeで外人による「AD&D第1版でのキャラクターの作り方」と言うような動画が投稿されていて、そこでは各ステータス毎に3d6を6回振って、その結果から最大値を選んでキャラを作る、とかやってたが、ぶっちゃけそれを観てて「止めといた方がいい」とか思った。
と言うのも、3d6の確率分布と言うのは次のようになるんだ。


「6回の試行のウチ、最大値を選ぶ」と言うのは一見良さそうに思えるんだけど、実際は、上の確率分布を見れば分かる通り、10か11の出目が一番出やすい。期待値は10.5だ。
と言う事はこの付近が当然一番出やすく、結果、最大値を選んでもこの周辺から殆ど選ぶ事になり、パラメータはこの付近で収束する、と言うか「平らになった」キャラになるだろう(実際動画でも殆どのパラメータが12になっていた)。
これは見方によれば「どの能力も突出してない何の面白みもない平均的なキャラ」を作っただけ、なんであんま意味が無いんだ。最初っから全部人為的に12にしたキャラを作るのと何が違うんだ、って話になるよな。
パラメータ的に気に食わない場合は、潔く全部振り直した方がいい、って事を言っておく。「リロールしろよ!」って事だな。
まぁな。Wizardryから始まってドラクエを通じ、「キャラのレベルが上がれば特性値が変化する」ってのが多いんだけど、AD&Dではレベルが上がっても特性値が上昇したり(あるいはWiz的に下降したり)はしない
レベルが上がると強くなるし、HPは増えるし、MPも増えるし、THAC0も増えるが、特性値は変わらないんだ(唯一の例外が「死んでから生き返る」事で生命力が-1される事くらいだ)。なんせCharacter Abitiliesってのはその定義上、「持って生まれたモノ」だからだ。
大丈夫。AD&Dではどんなキャラとして生まれてもレベルが上がれば、たとえ上級魔法が唱えられなくても強くなる。そもそもステータスのどれか一つが18になる、なんつーのは殆ど0%で、全部18になります、なんつーのも0%の6乗でやっぱ0%だ。
そんなスーパーキャラを作る事は事実上不可能なんで、諦めも肝心だと思ってる。

職業と性格:

さて、次に(パラメータが許せば)種族選びが来るわけだけれども、その前に、「種族毎に就ける職業と就けない職業がある」と言う辺りと、性格(アラインメント)の関係を見てみる。
あとでもうちょっと詳しく見るが、例えば単純に言うとパラディンは戦士と僧侶が合体したような職業だ。
ところが、AD&D第1版はハーフエルフと人間しか僧侶呪文を唱えられない。だとすれば、エルフがパラディンになれるわけがない。
また、AD&D第1版ではエルフ・ハーフエルフ、人間以外は魔法を使える才能がない。従って、ドワーフの魔術師なんて作ろうと思っても意味がないわけだ。



こう、ザーッと見てみると、実はAD&D第1版だと異種族(デミヒューマン)を選ぶ旨味があんまりない。何故ならエルフ・ハーフエルフを除く殆どのデミヒューマンが魔法及び僧侶呪文が使えないから、だ。
辛うじてノームが幻術士になれたり、ハーフオークが僧侶になれたりするが、幻術士もハーフオークもGoldboxには存在しないんで、やっぱイマイチ旨味がない。
前にも言ったけど、AD&D第1版は、かなり人間至上主義で、「魔法を唱える楽しみ」を重視するのなら人間一択になってしまう。
次に職業と性格の関係を見てみる。
Wizardryには善・中立・悪と言った「性格」、そして真・女神転生にはロウ・ニュートラル・カオス、と言った「属性」があったが、ぶっちゃけこれらはAD&Dのパクリだ(笑)。と言うかそれぞれ分解されて持たされている。
極端に言うと、AD&D第1版には善・中立・悪とロウ・ニュートラル・カオスの組み合わせで「性格」(アラインメント)が決定して、これによって就ける職業と就けない職業があるわけだ。

  • 僧侶: 中立でニュートラル以外だったら何でも良い。
  • ドルイド僧: 中立かニュートラルのどちらかを選択してれば後は何でも良い。
  • 戦士: 何でも良い。
  • パラディン: 善でかつロウである事。
  • レンジャー: 善である事。
  • 魔術師: 何でも良い。
  • 幻術士: 何でも良い。
  • 盗賊: 中立か悪のどちらかを選択していれば後は何でも良い。
  • 暗殺者: 悪である事。
  • モンク: ロウである事。
パラディンだけは「善かつロウ」と決め打ちになってるが、ほかはそこそこ緩い条件だと思う。

種族とレベルキャップ:

そして異種族に対するAD&D第1版のイジメはもっとある(笑)。そうレベルキャップだ。デミヒューマンにはレベル上限が課せられていて、殆どのケースで、盗賊以外の職業では割に早い時期に「成長が頭打ちに」なる。



これがレベルキャップ表になる。○が付いてれば無制限にレベルが上がるが、数値が書かれてるのが基本その種族での最大のレベルだ。
ただし、注釈があって、いくつかの種族と職業のコンビネーションだと、特性値に拠ってはこのレベルでさえ到達しない。

  • ドワーフの戦士は筋力が18の時、最大レベルが9、17の時は8、17より小さければ6が最大レベルとなる。
  • エルフの戦士は筋力が18の時、最大レベルが7、17の時は6、17より小さければ5が最大レベルになる。
  • ノームの戦士は筋力が17以下の時、最大レベルは5となる。
  • ハーフエルフの戦士は筋力が18の時、最大レベルが8、17の時は7、17より小さければ6が最大レベルになる。
  • ハーフリングの戦士は筋力が18の時、最大レベルが6、17の時は5、17より小さければ4が最大レベルになる。
  • エルフの魔術師は知力が18の時、最大レベルが11、17の時は10、17より小さければ9が最大レベルになる。
  • ハーフエルフの魔術師は知力が18の時、最大レベルが8、17の時は7、17より小さければ6が最大レベルになる。
  • ノームの幻術士は知力か素早さが17以下の時、最大レベルが5、知力と素早さが共に17の時最大レベルは6になる。
  • ハーフオークの盗賊は素早さが18の時、最大レベルが8、17の時は7、17より小さければ6が最大レベルになる。
つまり上の図だと「とある特性値が最大値の18である時」の上限値が表示されてるわけで、上の方で見たとおり、3d6で18が出る確率なんざ殆ど0なんで、フツーに異種族を使うと、AD&D第1版ではマルチクラス以外では大してメリットにならない、って事が分かると思う(※2)。

ボーナスとペナルティ:

選択した種族によっては特性値が増えたり減ったりする。



種族:

次に、今まで見てきた、種族別の特性値の最低値・最高値、男女の違い、ペナルティとボーナスが合わさった早見表を載っけておく。


今まで流してきたが、AD&D第1版では基本6種族が存在するが、実はGoldboxにはハーフオークは登場しない(NPCとして出てくるに過ぎない)。
元々ハーフオークは「悪役を演じたい人向け」の種族で、他の5種族とはあんま仲がよくない。なおかつ、基礎ステータスを見れば分かるが明らかに脳筋だ(笑)。
ってぇんで、実装もメンドクセェんで、ってんで外されたんだろう。そしてAD&D第2版では消えている(が何故か第3版では復活する・笑)。

ハーフオークとハーフエルフを除くと、大体の性質はWizardryでの種族と同じだ。
ただし、ここでは詳細を省くが、種族毎に魔法への抵抗力や毒への抵抗力が定義されていて、レベルは頭打ちになるデミヒューマンだが、全般的に魔法を含む「状態異常」に耐性が高い。これをAD&D用語でセーヴィングスロー(Saving throw)と呼ぶ。



職業(クラス):

これも、実はGoldboxでは全職業を実装していない。
戦士・僧侶・魔法使い・盗賊はお馴染みなんでともかくとして、パラディンとレンジャーは2作目のCurse of the Azure Bondsで初登場、そしてそれだけで終りとなる。
いや、実はAD&D第1版と言う原作ルールでは、それ以上登場するんだ。
今まで見てきた中でも、ドルイド僧、幻術士、暗殺者、モンクの存在に気付いただろう。
よって、一応「馴染みのない」これら職業に絞ってあとで説明しようと思うが、まずはHPの決定法に対して書いておく。
AD&Dの「HPの決定法」は、ぶっちゃけ職業が決める。そしてレベルアップの際のHPの上昇も、最初のレベル(1)でのHPの量も基本的には同じシステムで決定される。
端的に言うと、職業によって「使うサイコロの種類」が違うわけだ。
  • 僧侶はレベル9までは1レベル毎に1d8でHPが決まる。レベル10以降は1レベル毎にHPが2づつ増える。
  • ドルイド僧はレベル14まで1レベル毎に1d8でHPが決まり、レベル14が最高レベルでそれ以上は上がらない。
  • 戦士とパラディンはレベル9までは1レベル毎に1d10でHPが決まる。レベル10以降は1レベル毎にHPが3づつ増える。
  • レンジャーは最初だけ2d8でHPを決める。あとはレベル10までは1レベル毎に1d8でHPが決まる。レベル11以降は1レベル毎にHPが2づつ増える。
  • 魔法使いはレベル11までは1d4でHPが決まる。レベル12以降は1レベル毎にHPが1づつ増える。
  • 幻術士はレベル10までは1d4でHPが決まる。レベル11以降は1レベル毎にHPが1づつ増える。
  • 盗賊はレベル10までは1d6でHPが決まる。レベル11以降は1レベル毎にHPが2づつ増える。
  • 暗殺者はレベル15まで1レベル毎に1d6でHPが決まるが、どういうわけかレベル14が最高レベルでそれ以上は上がらない。
  • モンクは最初だけ2d4でHPを決め、あとは最高レベルであるレベル17までは1レベル毎に1d4でHPが決まる。
これがHPの決め方、だ。
繰り返すが「職業が使用サイコロを決める」んで、生まれたばっかのキャラクタだろうとレベルアップ時だろうと、条件は基本的には(レンジャーとモンク以外は)変わらない。

さて、軽く「馴染みのない職業」の説明をしておこう。

  • ドルイド僧(Druid): 基本的には僧侶の亜種(サブクラス)だが、僧侶呪文ではなく、「ドルイド魔法」と言う独特の(精霊系?)魔法を唱える職業。
  • 幻術士(Illusionist): 基本的には魔術師の亜種(サブクラス)だが、これも魔術師の呪文ではなく、「幻術魔法」と言う特殊な魔法を唱える職業。決して引田天功ではない(謎
  • 暗殺者(Assassin): Wizで言う忍者に一番近いかも。毒やダガーの扱いに長け、ターゲットを暗殺して対象レベルによって報酬が変わる・・・と言うような説明を見ると、あまりパーティプレイ向けじゃなく、それもあってGoldboxから削除されたんだろうか。FFの忍者なんかもWizと言うより、AD&Dのこれから持ってきたんじゃなかろうか。
  • モンク(Monk): イメージ的にはFFのモンクと思っていいけど、AD&Dの中では異色のキャラクタクラス(職業)。なんせ基本的には防具を着けず、徒手空拳で敵を倒す。ただし、HPは低いし、あまり良いトコがない。原則「難しいキャラ」なんで、Goldboxから削除された可能性が高い(そもそもGoldbox自体が、シナリオ的にはテーブルトップ版より難しいらしいし)。なお、これもFFがAD&Dから「色々持ってきた」証明の一つだと思う。
それはモンクじゃなくってムンクだ(謎

あとはマルチクラスのキャラのHPの計算方法を記しておく。
  1. キャラクタのクラスがレベルアップする毎にそのクラスのサイコロを振る。
  2. 耐久力で修正が入るなら修正を入れ、足しておく。
  3. クラスの数で割る。
  4. 四捨五入した数がHPとして採用される。
なお、おまけとして、サイオニクス(Psyonics)とバード(Bard)と言う職業がある事だけには触れておく。Wiz 6へのヒントが既にAD&D第1版には含まれていたんだ。

ザーッと駆け足でAD&D第1版のキャラメイキング法に触れるつもりだったし、そうしてきたつもりなんだけど、それでも分量が多い。
それだけAD&Dのシステムがややこしい、とは言えるだろう。大体、ゲーム始める前にリアルで30分から1時間くらいかかる作業だし、この他にも実は色々とあるわけだ。
「かいつまんで」みても「かいつまみきれない」と言うのがAD&Dのキャラメイキングなんだ(笑)。
大変だよな(笑)。
Wizではかなり簡略化してて、SSIもAD&Dの完全移植、と意気込んでみたモノの、(PC-9801版では)フロッピーディスク2枚分もの(今となっては大したこたぁないが)「大容量」でもAD&D第1版の「システム」を完全に詰め込む事が出来なかった、と言う事は如何にAD&D第1版自体が「かなり巨大だった」証拠になるんじゃないか、と思う。
少なくとも1988年の時点では、容量的な事を考えてみても、「完全コンピュータゲーム化」はやはり難しかったんだろうな、とは思う。

なお、D&Dは第4版からまるで別のシステムになってしまった、と言うのはある種有名な話だ。
古き良きAD&Dっぽいゲームを実装してみたい、って場合は、現在ではD&D第3.5版を基にしたパスファインダーRPGのルールブックを基にした方がよりそれっぽくなるだろう(※3)。

 
 
また、実の事言えばあまり評価は高くないが、Steamの方で、このパスファインダーRPGをベースとした「バルダーズ・ゲート」風のCRPGも公開されている

※1: だから言っちゃえば、角川の「コンプティーク」で、当初、「ロードス島戦記」が旧D&Dをベースに展開したリプレイにならざるを得なかったのは、当時、日本国内で入手可能なTSRの商品は、D&Dしか無かったから、だと言える。
何度か言ってるが、旧D&DはAD&Dとは違って、ドワーフやエルフ等は「種族」ではなくて「職業(と言う翻訳が変なんだけど、要するに「クラス」)」であり、「ドワーフの戦士」とか「エルフの魔術師」なんつーモンは存在しなかった。
このゲームではドワーフはあくまでドワーフ、エルフはあくまでエルフであって、それ以上でもそれ以下でもない。
(その辺がWizardryと全然違い、Wizardryは旧D&Dをベースにしてなく、AD&Dをベースにしてる一つの根拠となる)

※2: さすがにこれじゃあれだ、ってぇんでAD&D第2版ではレベルキャップが緩和され、DM(ダンジョンマスター: ゲームの進行役)との相談によっては外される事となった。
また、魔法はともかくとして、デミヒューマンも僧侶魔法を唱える事が解禁された。
Eye of the Beholderのシリーズでドワーフの僧侶なんかが作成可能になってるのは、こちらはAD&D第2版に準じてるから、だ。

※3: D&D/AD&Dを開発・販売したTSR社は1997年にウィザーズ・オブ・ザ・コースト社に買収され、その後に旧D&DとAD&Dを統合し、2000年にD&D第3版が出版された。
特筆すべきは、コンピュータ・プログラミングの世界の「オープンソース」に刺激されたのか、D&D第3版の基幹ルールを「d20システム」としてまとめ、誰でも自由に改変したり使ったりしても良い、と言う「オープンゲームライセンス」を作った事。
これにより「消滅/絶版の危機」になったD&D3.5版は全く別の会社が利用しても良い事になり、「改変作」として出たのが「パスファインダーRPG」だ。
本家のD&D第4版以降を差し置いて、同世代では「一番売れたファンタジーRPG」として結果成長した。
なお、d20システムは自由に使っていいけど、名称/商標として「D&D」と表記したい場合に限って、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社と「契約」しなければならなくなってる。
また、「マネっ子」グループSNEは、ソード・ワールド2.0以降に関して、「2d6システム」としてウィザーズ・オブ・ザ・コースト社と同様の戦略を取ろうとしたが、こっちは梨の礫でいつの間にやら消えてしまう。

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