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Retro-gaming and so on

Leela vs. GNU Go

さて、前回、ゲーム業界の立役者、任天堂三代目社長、故・山内溥氏(通称「組長」)は囲碁の大ファンで、愛好家だった、と言う話をした。



ところで、ゲーム業界の立役者、としてはもう一人有名な「囲碁愛好家」がいる。ビデオゲームビジネス、と言うモノそのものを作り上げた人、ノラン・ブッシュネル氏だ。



私自身チェスが好きで、大学のときにはよく大会に参加しましたね・・・、でも今一番気に入ってるのはなんといっても碁です。そう、「囲碁」です。
私はアメリカの初段なんですが、評価基準がアメリカでは何故か厳しいようで日本でなら二段の実力があるはずですよ-笑-。アメリカ人は日本人と違って、あまりエレガントな打ち方をしないからかもしれませんね、みんなとても攻撃的で・・・。(インタビュアーに向かって)碁は打ちますか?(「いや、ファミコンでやるくらいです」という答えに)それは大変残念だ。世界最高のゲームですね。碁の方がテレビゲームよりおもしろいと思いますよ。
リッチでエレガントで単純さと複雑さを兼ねそなえている。碁が好きなので自分の会社をアタリ(当たり)とかセンテ(先手)という名前にしたくらいですから・・・。

--電視遊戯大全より--

 
ビデオゲームの父、と呼ばれるノラン・ブッシュネル氏だが「ビデオゲームよりも囲碁の方が面白い」と言うのは、なかなかの爆弾発言だ(笑・※1)。
いずれにせよ、ビデオゲーム史に遺る「初のビデオゲームメーカー」、ATARI社の「ATARI」と言うのは実は日本語で、囲碁用語から来ている(※2)。


また、アタリの子会社、テンゲン、も囲碁用語の天元から来ている(※3)。




ビデオゲームビジネスの立役者二人、が共に碁に熱中してた、ってのはなかなか面白い偶然だ。
しかしながら、前回も書いた通り、「コンピュータが碁を打つ」ってのは少なくとも1980年代のゲーム機やPCではかなり難しかったんだ。碁は、少なくともゲームボーイアドバンスくらいの性能がないとコンピュータがプレイするのは難しい(※4)。
レトロゲーム好きな僕でさえ、レトロゲームでの「囲碁」をプレイするのは、勝てる、勝てない関係なくかなりツラい。もうとにかく、レトロゲームの「囲碁」はコンピュータの思考時間が「長過ぎる」んだ。

そんなわけで、今回はフリーで入手可能な囲碁のビデオゲームを紹介しよう。
2つある。

前者のGNU Goのリンクは殆どの人にとって有用だろうWindows版へのリンクだ。しかし、Mac版もあるし、殆どのLinuxディストロだったらソフトウェアアーカイブから簡単にダウンロード/インストールが可能だろう。
後者のLeelaはページに書いてる通り、Windows版から始まって色々と取り揃えられている。

注意点としては、まぁLinuxだとほぼ問題ないんだけど、前者のGNU Go。これは実は端末前提のソフトウェアだ。つまり素のママでプレイするとこういう状況だ。


よってGUIでプレイするには、GUIフロントエンド、と言われるブツを別途用意する必要がある。
そして「これ」ってのがあるわけじゃなくって、選択肢が結構あるんだな。
ちなみに、Ubuntu系のディストロだと、Quarryって言うGUIフロントエンドが用意されてると思う。Quarryはオセロとか、そういう「格子」があるゲーム用のGUIフロントエンドだ。



LeelaはオリジナルのGUIを持ってるが、GNU Goはそうじゃない。
人によっては「なんでんなメンド臭い事を」と思うかもしんない。
けど「プログラミングをやりたい」って人は覚えておいて欲しい。プログラムのロジックを書くのはCLIで十分なんだ、と。別途GUIが欲しい場合は「ガワは別に作れる」と。
このブログでのPythonを使ったGUIアプリ系の話を思い出そう。GUIは別でいいんだ、と言う話だ。ロジックはCLIでも構わん、と言う実例がこのGNU Goとは言える。

なお、GNU GoとLeela。どっちが強いんだろうか。
結論から言うとLeelaの方が強い。コミ6.5で両者対戦すると、Leelaが勝つ(※5)。



ただし、演算速度はGNU Goの方が速い。よってプレイヤビリティを重視して「そこそこ勝ちたい」のならGNU Go、「強いソフトと戦いたい」のならLeela、と言うのが選択肢となる。
まぁ、俺はどっちにも勝てないけどな(笑)。
いずれにせよ、両方ともフリーソフトなんで、碁をやってみたい、って人はダウンロード/インストールして気軽に楽しんで欲しい。


※1: ただし、このインタビューが行われた1987年にはノラン・ブッシュネル氏はビデオゲーム業界から殆ど引退していた。アタリをワーナー・ブラザーズに売っぱらった後だから、だ。

※2: 不思議な事に、囲碁は中国発祥の筈なのに、欧米での「用語」は日本語から来ている。中国語ではアタリは「叫吃」(huaiqi)と言うらしいが。
欧米人が「醤油は日本の調味料」だと勘違いしてるのと同じだ(笑)。中国人が「醤油は中国発祥アルね!」と怒るのも当然だ(笑)。

※3: 囲碁盤の「ど真ん中」を天元、と言う。
なお、囲碁は「陣取りゲーム」(と言うか「陣地作りゲーム」)なんで、端から遠い「中央」は陣地(枠)を作りづらく、先手の「一手目」を天元に打つ、と言うのは一般に不利、と言われる。

※4: 携帯型ゲーム機、ってぇんで「性能が低い」と思いがちだが、意外や意外、ゲームボーイアドバンスはRISC CPUを用いた32bit機で、かなり高性能でスーファミを上回ってる。
単純比較だが、1990年代前半に登場した(消えた)マルチメディア機、3DOよりも高性能だ。
また、3DOもゲームボーイアドバンスも、今のスマホのCPUとして採用されている、ソフトバンクに買収されたARMのCPUを使っている。

※5: コミ。一種のハンデ。
囲碁では先手(黒番)が圧倒的有利で、後手は従って、最初から「何目」か既に持ってる状態で打つ。ゲームが終了した時、後手は自分の陣地の「地」の目数にコミを足して、それで勝敗が決定する。
なお、長らく、それこそ少年ジャンプの「ヒカルの碁」の頃はコミ5.5と言うのが使われていたが、最近、それでも先手有利だ、と言うので、公式ではコミ6.5に改変された。
なお、.5っつーのは「引き分け」にさせない為、だ。


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