ホリディ

有楽町にて鑑賞。

『ホリディ』

ケイト・ウィンスレッド、キャメロン・ディアス、ジュード・ロウ、ジャック・ブラックと、当代ハリウッドスターが一同に会したラブコメ映画です。

---<以下、ネタバレあり>---

ロンドンで新聞記者をしているアイリス(ケイト・ウィンスレッド)は裏切られた元カレへの未練が捨てきれない、憂鬱な毎日。
ビバリーヒルズで大作映画のトレイラー(予告編)を編集する会社を経営しているアマンダ（キャメロン・ディアス）は、今カレの浮気が発覚してケンカ別れ。
そんな二人はネット上で知り合い、ホームエクスチェンジをすることに。

本作の最大のポイントがこの「ホーム・エクスチェンジ」というサービス。
これは自宅を一定期間、他人と交換してしまうというもので、欧米では古くからあるそうです。
手狭なアパートで、見られては困るものだらけの私には到底無理なシステムですが…。
現実に本作のような恋愛が発生するかはともかくとして、生活圏を丸ごとリセットして新たな生活を始めるという設定は、なかなか魅力的といえるます。

彼氏に捨てられたアイリスには豪邸＋人脈(コネ)＋やさしくてウィットに富んだ男性・マイルズ(ジャック・ブラック)というトリプルパックをご提供。
引き換えにもう不実な彼氏のせいで男なんてもうウンザリ！というアマンダには穏やかな田舎の一軒家と誠実なイケメン・グラハム(ジュード・ロウ)をツインパックで。
AMAZON並みの便利さです。

雪のロンドン郊外と、陽光まぶしいアメリカ西海岸というのは、映像的に対比が効いて良いのでは…と思いきや、さにあらず。
アイリスのほうはせっかくビバリーヒルズにきたというのに邸宅に篭って映画三昧。
便利な家電やオーディオに感激しつつも、序盤はほぼニート状態に。
ツタヤオンラインでもよかったのでは？

一方、アマンダ側には雪が降ったり、車線がアメリカと逆でびっくり(お約束？)といったネタも出てはきますが、こちらも終始ジュード・ロウと部屋で飲んだくれてSEXしてるだけ…と配役を変えれば引き篭もり同士の恋愛映画になってしまう事態に。
途中、グラハムの携帯に複数の女性と思しき相手から電話がかかってくる、という取ってつけたような複線が張ってあったりしますが、すぐに解決。
深読みしすぎると馬鹿をみることになります。
ただ、アマンダの想像(妄想？)にトレイラーっぽいモノローグが挿入される演出はちょっと工夫されてて面白い。

いまいち乗り切らない本作中、最も光っていたのはやはりジュード・ロウでしょう(おでこが、ではなく…)。
この手のロマコメではヒロインと対峙する男性は、いってみれば刺身のツマみたいなものなのですが、本作ではむしろ、このツマ美味いじゃん！有機栽培？という位にキャメロンを喰ってます。
渋みが加わりつつある容貌と、社会派からコメディまでこなす演技達者ぶりに磨きがかかってきていますね。
多少、ストーリー上無理があってもその演技に説得力があり、思わずおおっと思ってしまいました。

キャメロンも早口で捲くし立てる演技のノリはよいのですが、悲しいかなその容姿はかなり衰えてしまったような…。

もう片方の男役、ジャック・ブラックは普段の面白キャラが大幅にスポイルされていたのが非常に残念。
その割には恋愛シーンを削って挟み込んだ、アイリスと老脚本家の交流のシーンはあまりにもいいかげんでご都合主義過ぎて興醒めする内容と、ぱっとしません。
ジャックが片思いしている別の女性を出すなど、人間関係を複雑にした割には消化不良に陥っています。
ダスティン・ホフマンをカメオ出演させている場合ではないでしょう。

本筋には全く関係ないですが、ソニーピクチャーズ提供の関係から、国境を隔てた両家で登場する家電がほぼ全てSONYに統一されているのにはちょっとウケた。
さすがはグローバル企業。
世界中がアイ・ラブ・ソニー。

紆余曲折あり大団円を迎えるわけですが、平行してストーリーを展開してきた2組のカップルが一堂に会するラストシーンは、映画完成後の打ち上げの２次会にしか見えません。
無駄に長い割には特に脚本に起伏もなく、予定調和のまま完結。
逆に言うと、普通のラブコメを観たい方の期待は裏切らないかと思います。
レンタルでどうぞ。

付記：
余談ながら、知り合いに映画の予告編を編集する仕事に携わっている女性がいるのですが、本作のキャメロンとは程遠い貧乏ぶり。
ハリウッドと日本では事情が違うのか、そもそもがフィクションだからなのかはわかりませんが、ちょっと気になるところではあります。