Ben Harper の “Welcome to the Cruel World” を聴いている。 先週の土曜日は、私がたまに足を運ぶ音楽バーで、オープン参加式のライヴが催されたので、私も観覧するついでに参加してきた。 私の演目は、ポエトリー・リーディングというのだろうか、石川啄木についての話を少々と かれの短歌をいくつか詠んでみるというものだった。 そのイベントには、ある女の子もギターの弾き語りで参加している。 彼女の歌は、技術的にはあやしい部分もあるのだが、そのちょっとあぶなげなところが逆に魅力なのではないかと思う。 へんに技巧に走っていないところが好感がもてる。 歌詞もいいし、声もいいし。 私はひそかに応援しているのだが。 そのイベントでは、参加者の投票によるチャンピオン制が導入されていて、二回防衛すると、そのバーでの 「単独ライヴ権」 を獲得できるようになっている。 私が応援している彼女は、そのライヴ権をどうしても獲得したくて、なんとか 「グランド・チャンピオン」 になろうと遮二無二がんばっている。 彼女は、前回のチャンピオンであった。 「ぜったいにチャンピオンになりたい」 という執念で勝ち取ったのだろう。 この日防衛すれば、ライヴ権にリーチとなる。 当然、気合も入るわけだが。 気合が入りすぎていたのだろうか、今回の演奏はちと空回りぎみであったように思えた。 結果は、数票差での惜敗。 彼女は本当にくやしがっていた。 「次こそは、ぜったいに勝ちたい ! 」 と公言し、「どうしてもグランド・チャンピオンになりたいから、わたしを応援してください ! 」 と営業活動までしていた。 私は、そんな彼女がとてもうらやましかった。 夢中になれるものがあること。 ライヴ権獲得への情熱。 好きなことを好きと言え、くやしかったらくやしいと言える、その率直さ。 私には、いずれもない。 ただ、のらりくらりと、ごまかし やら まやかし で生きているだけだ。 本当にやりたいこと、本当に好きなことなんて、とうのむかしに、風に吹かれるように過ぎ去ってしまった。 なにかを表現したいという漠然とした思いはあっても、思ったようには表現できず、くすぶった気持ちをかかえながら、日常の雑務にうもれ、こころがどんどんどんどんすさんでいくかのよう。 これではいかん ... と、もともと小説家志望であった石川啄木が 「悲しき玩具」 としての短歌創作を試みたように、私も web 上にこのような文章を垂れ流すことを試みているわけだが、むろん、天才の域には、到底及びもしない。 比較することさえ、おこがましい。 その日、彼女は、私の石川啄木の話を受けて、「わたしには、『悲しき玩具』 はないです。 替わりのものはありません。 替わりがないから、うたっています」 と言って、自身の歌をうたいはじめた。 そこまで歌が好きなのか ! ああ、彼女のように、なにか "狂える" ものがあったなら。 なにかに "狂えた" ならば、人は強くなれるものだろうか。 世の中 "cruel world" なのかもしれないけれど、いや、だからこそ、"狂える世界" にできたなら、どんなにしあわせだろう? ―― と、さまざまな 「夢中人」 を観察し、私も、なにか夢中になれるものを模索しているのである。 # ... 他人に迷惑をかけないもので、ね。 犯罪にもならないもので、ね。 (初出: 2004.2.10 再出: 2004.6.17) |
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本当は、とても簡単な事なのでしょうけど、年齢を重ねたり、背負うものが増えたりすると、なかなか出来なくなりますよね。
つまらない、ただ腐食臭を発するだけのオヤジにはなりたく無いと、のた打ち回り足掻いたのが30歳を目前にした頃でした。
現在、週末だけですがささやかながら「狂える世界」を手に入れ、その世界が縁で知り合った沢山の人や、知らなかった新しい世界を目にすることが出来ました。(最近では、週末だけでなく平日も(笑)狂いつつありますが・・・。)
たとえ中年であろうが、しがないサラリーマンであろうが、子持ちのヨレヨレオヤジであろうが、狂いたいモノって有るんですよね。(笑)
”心の牙”が折れる音を聞くまで、中年親父は狂い続けるつもりです。
byrdieさんの「狂える世界」が早く見つかるといいですね。
(くだらない事を、長々と書いてしまい、すいませんでした。)
わたしも、「なぜ、表現するのか」「なんのために表現するのか」を知るのが好きです。
「そこに山があるからだ」的なこたえで済んでしまう場合もあるのかもしれませんが、そこからさらに、深く、奥行きのある背景がそれぞれにあるのではないかという気もします。
けっこうチャラチャラしているっぽいと思っていた人の、かくれた背景を垣間見ると、ちょっとびっくりしたり、うれしくなったり ... 。
表現している人は、キラキラしていて、すてきですよね。
しなたまさんの知り合いのかたのお話、たのしみにしています♪
簡単なことが、むずかしい ... なんとまあ、ねじくれてしまったものか ... と、われながら、やれやれとなります。
わたしも、早く、こころの底から好きだ ! と言えるものを見つけたいと思います。
(rock や、ブンガクは好きですが、音楽を聴いたり、本を読むのは、日常の「タスク」のひとつという感じです。
それがこころから好き ! ということなのでしょうか ... )
「はじめるのに遅すぎるということはない」 という ことばが好きです。
なにごとも、こころがけ次第ですよね。
ありがとうございます。
なんだ、見つけてるじゃないですか。(笑)
それが多分、心の底から好きと言う事じゃないでしょうかねぇ。
想像してみて下さい、「それ」が、生活の、いや、人生の中から無くなってしまう事を・・・。想像出来なければ、それが大好きと言う事だと思いますよ。
たとえ、(あくまでたとえです)老いてシワクチャになっても、rockでブンガクなおばあちゃん・・・かっこいい生き方だと思いますよ!
私も、空飛ぶ自転車ジジイ目指してがんばります。
そうなんですかね ...
じぶんではいまひとつ実感がないのですが、たしかに、それらがなくなってしまったときのことを考えると ... 。
どうもありがとうございます。
rock でブンガクなおばあちゃんを目指します ...
しなたまさんへのおヘンジ、なんとなく文章が変かも ...
わたしの知人のことなのですが、意外な背景を知ったことが、またおもしろかった、という意味です ...
取り合えず私は、ブログに狂ってマス・・・。
そうですか ... 太宰さんはそうなのですね。
えっと、「書く理由」は、わたしの場合、「罪」と「罰」かもしれません ... ?
わたしも、もう少しで、blog に「狂え」そうなのですが ...
# コメントのタイトルは、なんとなく頭に浮かんだので。
# David Lynch の 『Mulholland Drive (マルホランド・ドライヴ)』 挿入歌 ... 。