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女はみんな泣いている / どうか泣くなよ

2004年06月21日 14時37分42秒 | 想在
 Bob Marley の ‘No Woman No Cry’ で思い出したのだが。

 若かりしころ、この歌は、「女のいないところに、涙はない」 「泣かない女はいない」 「女はみんな泣いている」 という意味だと思っていた。

   No Woman, No Cry

 だと。

 某 CD 店のキャッチコピー「No Music, No Life」 (「音楽のないところに、人生はない」 「音楽なしでは、生きていけない」) のように、解釈していたのだ。

 ここで思い出すのは、太宰治の絶筆 『桜桃』 の、一挿話、主人公の男がふざけて言ったことばに対し、その妻が、子どもに乳を飲ませながら なにげなく返した、「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」 というひとことである。

 一見、にぎやかでたのしい、幸福な家庭を築いているように思える夫婦の危うさ、というものを垣間見せるせりふであろうか。
 ( ... と言っても、私は、まだ結婚したことがないのだが)

 どんなに幸福を装っていても、女はみな、その笑顔の裏で泣かなくてはいけないのか。 涙を胸の谷間にかくして、妻を、母を、演じなければいけないのか。 それが生きるということなのであろうか?

 そんなさみしい歌なのかと思っていた。

 しかし、あらためて、‘No Woman No Cry’ の歌詞を読んでみると、

   No, Woman, No Cry

 と、読点の位置がちがうのだ、ということに気がついた。 そうなると、意味も変わってくるのだろうか? 「だめだ、女よ、泣くな」 というような感じだろうか? そうなると、女たちを鼓舞するはげましの歌となる。

 その前後の歌詞を読むと、


   So dry your tears

   Little darling, don't shed no tears
  (この、don't shed no tears の二重否定は、Rolling Stones の ‘I can't get no satisfaction’ と同じように、打消しではなく、強調であろうか?)

   Everything's gonna be alright


 と うたっているので、やはり、「泣かない女なんていないんだ」 ... なんていうような、やや斜に構えたとも言えるような諦念ではなく、「どうか泣くなよ」 という祈りにも似た、強さとやさしさに満ちた歌なのではないか、という、じぶんなりの結論におちついたのだが。

 はてさて。

 しかし、そんなふうに、勝手にじぶんで結論づけておきながら、なんとなく、ほっとするような? ちょっと残念なような? 不思議な気持ちになった。 ―― うーん、おかしいかしら?



 * ちなみに。 日付がだいぶ変わってしまったが、先日、六月十九日は、『桜桃忌』 であった。 むろん、上記の作品、『桜桃』 から付けられたものである。



 BGM:
 Van Morrison ‘Sometimes We Cry’

Sometimes we know, sometimes we don't
Sometimes we give, sometimes we won't
Sometimes we're strong, sometimes we're wrong
Sometimes we cry
...

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (takecafe)
2004-06-22 03:18:01
「おもてには快楽を装い、心には悩みわずらう」



男も女も一緒だと思います。

ただ、男は耐えられないと、死を選びますね。

生の根拠の脆弱さに絶望するのでしょうか。
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Cry Cry Cry (byrdie)
2004-06-22 11:03:16
take さん、こんにちは。



男も女も、それぞれ、ときに涙にくれることがありますが、どうやって乗り越えているんでしょうかね。

わたしの場合、泣きたいときには思いきり泣いてしまって、洗い流そうとしているような気がします。

男性の場合、なかなか涙を見せられないところがあって、追い詰められてしまうことがあるのかもしれない、と、ふと思いました。

返信する
必ず晴れの日はやって来る。 (もけ)
2004-06-22 22:50:22
強風に立ち向かうとき、ひたすら抵抗する木は折れやすい。

柳に風と受け流すことも、また人生ですね。



泣くときもまた…



BGM:

WYNTON KELLY 'WILLOW WEEP FOR ME'
返信する
 (雲雀)
2004-06-22 23:18:44
もけさん、こんばんは。



そうですね。もがけばもがくほど ... ということもありますね。

いつもありがとうございます。

嵐の夜も、過ぎ去ってみると、さわやかな朝がおとずれることがありますものね ...



BGM:

The Kinks ‘Stormy Sky’

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no woman no cry (おらんげ)
2004-08-22 17:17:19
「いいや、違うよハニー、泣いてなんかないよ」という意味だと思います。
返信する
こんにちは。 (byrdie)
2004-08-23 11:46:22
いらっしゃいませ。

コメント、ありがとうございます。



いま、お返事書いているところなので、しばしお待ちください。



(記事にするかもしれません)

返信する
読み直してみました。 (byrdie)
2004-08-23 18:04:57
すみません、お返事遅くなりました。

わたくしの拙い英語力を駆使して、歌詞を、もう一度、読み直してみました。



なお、‘No Woman No Cry’ は、多くのかたに cover されていると思いますが、参照したのは、Bob Marley and the Wailers による original です。



http://www.songlyrics4u.com/bob-marley/no-woman-no-cry.html





No woman, no cry

No woman, no cry

Little darlin' don't shed no tears

No woman, no cry



とあるので、やはり cry の主は、じぶんではなく、woman : little darlin' になるのではないか、と思いました。

全体の流れからしても、悲しいできごとがあったけれど、希望をもって生きていこうという、little darlin' へのメッセージなのではないか、という気が ... 。

しかし、歌詞というのは、書いた本人にしかわからないものかもしれませんし、ましてや、じぶんの国のことばでないものを、正確に読み取ることは不可能なのかもしれません。

おらんげさんの解釈も、頭に入れつつ、さらに聴き込んでみようと思います。

ありがとうございました。

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Unknown (take)
2004-08-24 08:31:55
2ヶ月前の自分のコメント読んで、思ったこと。



格好つけていやがる・・・。

返信する
●take さん、 (byrdie)
2004-08-24 11:38:14
二ヶ月前のじぶんの記事を読んで、思ったこと。



格好つけていやがる・・・。

返信する

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