Run, BLOG, Run

http://d.hatena.ne.jp/bluescat/

夢をみるだけ

2004年06月19日 23時20分59秒 | 現実と虚構のあいだに
 音キチの彼女は、どこかで 『中古レコード・フェア』 なんてのが催されていたら、すぐに嗅ぎ当ててしまう。

 いつもは、夜風に吹かれながら、まっすぐ自宅に帰り、かんたんに食事をすませ、ビールをやりながら、音楽を聴きあさり、本を読んで、blog を書く ... というのが、つましい彼女の、平日の夜の慣わしであるが。 その日は仕事が早く片付いたので、なんとなく、駅前商店街のバーに立ち寄って、いっぱいひっかけてから帰った。

 商店街から、自宅方面へ向かう路地へ入ると、中古レコード店が半額セールを行っていた ! その中古レコード店は、ものはいいのかも知れぬが、中古といえども結構な値段がするため、あまり用を足すことはないのだけど。 半額とあらば、彼女が見逃すはずがない。

 六枚の CD を手に入れ、しめて、二千六百円也。 してやったり。

 その日の夜は、彼が、彼女の部屋に泊まりに来た。 二人でごろごろしながら、音楽のことを、とめどもなく話しつづけて、いつのまにかつかれて、眠ってしまった。 小学生のようだ。

 翌朝、目醒めたとき、彼女は、思い出したように昨夜の収穫について、彼に話した。

 「お、これ、いいね」 収穫の一枚を手にとって、彼は言った。

 「この曲。 おれが好きだった女の子が結婚することになってさ。 それで、その女の子のまえで、うたうんだよ。 体育館で、でっかい声で。 ―― っていう夢をみたことがあるんだけど」

 「なんで体育館で?」

 「ワカンナイ。 夢なんてさ、そんなもんだよ。 なんの脈絡もない。 あ、結婚するってのは、ほんとね」

 「ふうん」

 「でさ、目が醒めて、変な夢だったなあって思いながら、ラジオをかけたんだ。 おれ、むかしは朝、いつもラジオ聴いてたからさ。 それでさ、ラジオをかけた瞬間、おれが夢のなかでうたってた曲がかかったんだよ ! いやあ、あのときは、思わず、その女の子に電話しちゃおうかな、って思ったさ」

 「 ... 迷惑かもね」

 「そりゃそうさ。 だってさ、この曲って、知ってる?」

 「かなしい歌 ... ?」

 「そうだよ。 夢で会うことしかできない ... っていう。 ま、それ以来、この曲は好きなわけさ」

 「 ... わたしもね、昨日、お昼に、冷やし中華食べたい、と思って、中華料理屋さんに行ったの。 あっつーいなか、てくてくてくてく歩きながら、ボブ・マーリーの 『ノー・ウーマン・ノー・クライ』 を頭ンなかで再生してたの。 ほら、暑いときって、レゲエとか聴きたくなるじゃない? それで、中華屋さんに入って、席について、ふと、耳を澄ませたら、『ノー・ウーマン・ノー・クライ』 がかかってたの ! びっくりして、思わず、七百円のふつうの冷やしじゃなくて、千円の 『特製冷やし』 頼んじゃった ! 」

 ―― そんなおどろきは、きっと、「音キチ」 である彼らだけに訪れるものではない、のであろうか。 音楽は、ときに、不思議なおどろきを与えてくれる力を持っている。

 だからこそ、私たち は、音楽を聴かずにはいられない、のだろうか ... ?



 BGM:
 The Everly Brothers ‘夢をみるだけ / All I Have to Do Is Dream’
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 世界三大がっかり | トップ | 女はみんな泣いている / どう... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
きゃー (byrdie)
2004-06-21 01:55:26
しなたまさん、こんばんは。

コメントありがとうございます(涙…)

うれしいです ...



> DJ!お願いします。



ん? DJ ?! きゃー、ガンバリます ?!

返信する
いい記事! (しなたま)
2004-06-21 00:34:54
よかったぁ! コメントついてなかったので書き込んでみたw こんなのまたリクエストで、DJ!お願いします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

現実と虚構のあいだに」カテゴリの最新記事