テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

『ビューティー・コロシアム』潰し?のアンチ美容整形番組

2013-04-06 17:18:40 | 特番・スペシャル
4月1日OAのTBS『私の何がイケないの? 整形&ビューティー‼ 危険な女性の欲望SP』は、どう見てもフジの特番『ビューティー・コロシアム』のアンチバージョンだ。
『私の何がイケないの?』は、様々なエピソードや悩みを持つ女性が登場し、驚きのライススタイルを披露したり、ゲストコメンテーターが悩みに対してアドバイスするというコンセプトの番組で、今回取り上げた『美容整形』シリーズはその中の1バージョン。容姿へのコンプレックスが原因で対人関係がうまくいかず、心に深いトラウマを負った女性が美容整形を受け、人生の転機を図る…と、ここまでは『ビューティー・コロシアム』と一見同様の展開をみせる。ところがその美容整形に対するスタンスが、両者では真逆なのだ。
『ビューティー…』では美容整形を受けた女性が輝くような笑顔で登場し、性格もこんなに明るくなりました! 美容整形受けて本当に良かった♪ 的なポジティブ感満載の感想を語り、ゲストも賞賛のコメントで迎えるのに対し、『私の何が…』ではそんなほのぼのとした雰囲気はまるでない。一応華々しく登場はするが、ゲストの対応は至って冷ややか。なんで整形なんかしたの? 的な否定コメントを容赦なく浴びせかける。特別ゲストとして出演している医者やカウンセラー、学者らも、美容整形のリスクや精神面の問題点ばかりを強調する。美容整形をテーマにしていながら美容整形を否定している。

映像や効果音でも否定的スタンスが顕著だ。整形手術シーンを見せる際、右上のワイプにゲストの顔を映し出すのだが、眉間にシワを寄せたり顔をしかめたり、とにかく渋い表情のオンパレード。手術シーンなんてそりゃグロテスクだから、そんな表情になるのは当然。それが分かった上で映しているのだろうから、美容整形に対してネガティブなイメージを植え付けるのが目的かとすら思えてしまう。
効果音もそう。衝撃的なシーンやコメントのたび、細木数子の占い番組で使っていた効果音の使い回しとおぼしき「ドーン」という音を響かせ、観覧している女性客からは「えー⁉」という悲鳴が上がる(これもたぶん録音された効果音)。

だが、この番組で美容整形をネガティブにみせている最大の要因は何より、美容整形を受けた女性自身だ。今回登場した女性は整形の頻度や大掛かりさ、おまけにメンタルの病み具合に至るまで半端ではない超弩級レベルだった。
美容整形業界で「史上最強の整形モンスター」「大阪の整形サイボーグ」と異名を取るヴァニラ(年齢非公開)がその人。





メディアには初登場だというヴァニラは、フランス人形の美しさに憧れ、総額1000万円以上かけて30回にも及ぶ整形手術を受けている。それでもまだ現在進行形で、今後さらに1700万円以上かけて追加の手術も行なう予定だという。生身の人間らしさも捨て、ただひたすら究極の美を求めることのみが目的だと言うから凄まじいとしか形容しようがない。




整形内容がこれまた凄まじい。顔は全く原型を留めないほど「大改造」が施され、バストは豊胸手術でHカップにしたものを更に大きくしてJカップにして、まだこれを倍以上に大きくしたいそうだ。予定している手術のうち、もっとも大掛かりなのはイリザロフ法と呼ばれる「身長を伸ばす手術」。美容整形の専門医でさえ、この手術をしたいと申し出た人に対して「やめた方がいいですよ」とまず止めてリスクを充分説明し、それでもどうしても受けたいと希望した場合のみ手術を行なうという、禁忌中の禁忌といわれる整形手術だ。手術方法は、脛の骨を切断!して切断面を離した状態でギプスで固定。1日で1ミリづつ伸びて再び繋がり、しかも脚の部分だけが伸びて長身かつ足長スタイルになる。伸ばせるのは最大で15センチほど。ヴァニラはその上限である15センチUPを望んでいる(現在の身長156センチから171センチへ)。もちろん骨が繋がるまでは歩くことも出来ず、寝たきり状態を強いられる。15センチなら5ヶ月間は寝たきり。繋がった後も長期のリハビリが必要だろうから、不便さや苦痛は想像を絶する。




もちろんと言うべきか、ゲストからは否定コメントの嵐。なかでも中尾彬はヴァニラの人間性まで全否定。罵倒に等しいコメントを容赦なく叩きつけていた。
これほどの代償を払ってまで美容整形に執念を燃やすには、当然ながらそれだけの理由がある。ヴァニラは幼少期から父親に愛された記憶が全然ないという。赤ちゃんのころ泣くたび、母親に向かって「捨ててこい!」と言われていたらしい。学校に行くようになってからは常に無表情だったことから「鉄仮面」とあだ名されて酷いイジメに遭い、父親にそのことを訴えても「ブサイクなんだから我慢するしかないだろう!」と冷たく突き放される始末。並外れた美への執着は、その頃に形成されたトラウマを美しさによって穴埋めし、補おうとする補償作用の発現によるものだと思われるから、表面的な美をいくら追求しても切りがないだろう。ゲストの杉村太蔵の「これ以上美しくなれないと思ったとき、自ら命を絶つ選択をするんじゃないか?」との懸念は的を射ているような気がする(ヴァニラ当人もその可能性を否定しなかった)。

それにしてもヴァニラはよくメディアに出てきたなあと思う。見た目もキャラクターもインパクト絶大だから、あっという間に知名度が高まるのは間違いなく、どこへ行っても注目の的、悪く言えば晒し者状態になるのは避けられない。メディアに出てくるにはそれ相応の覚悟は必要だったろう。本人曰く「美容整形の伝道師」として「容姿に悩んだら迷わずに整形すべし」と訴えたいそうだから、メディアに露出することによってその目的(使命?)は果たせたようではある。

もう一人登場した整形女性は、ヴァニラほど極端なキャラではなかったにも関わらず、ゲストから否定コメントを浴びせられることに変わりはなかった。おまけに当人も「整形したあと鏡などを見て、今までの顔とかけ離れていて、こんなに変わってしまって、気持ちがついていかなくなって、自分のことが怖いと思った」と語るなど後悔の念がよぎってる様子(番組ではこの部分を強調したかったようだ)。『ビューティー…』みたいに美容整形外科のステマにしか見えないようなスタンスの作りもどうかと思うが、何が何でも「美容整形否定」の結論に落とし込もうとするスタンスが有りありの『私の何が…』にも違和感がある。もっとニュートラルなスタンスがあってもいいんじゃないかと思う。

望む美しさを手に入れるため、美容整形以外に手段がないとなれば、そういった手段を用いるのは必ずしも悪いことではない。もちろんやり過ぎは良くない。誰から見ても充分キレイになっているのに、それでもまだ「もっともっと美しくなりたい!」との執着から解き放たれないのであれば、メンタルに重大な問題を抱えている恐れが強い。その場合は、メンタル面のケアなど違う形でのアプローチを試みるべきだろうけど、美容整形自体を悪とみなすのには反対だ。
美しくなりたいという欲求はごく自然なものだ。なぜなら、人間(や生物全般)には「機能的に優れた形態を美しいと感じる」本能が備わってるから。だからこそ異性を惹きつけるため、美しさを求めるのは当然すぎるくらい当然なこと。これは男女とも共通の心理。よく「男に見た目は関係ない」なんて言うが、こんなものは大嘘もいいとこ。証拠にあらゆるメディアで、男性向けの薄毛治療、カツラ、植毛や増毛のCMが氾濫している。髪の毛が薄くなろうがハゲようが健康には何の支障もない。にも関わらず髪の毛の量を気にするのは見た目を気にしてるからに他ならない。女性とは気にするポイントが多少違うだけであって、男性も美しさを気に掛けるという点においては女性と何ら変わらないのだ。

だから『私の何が…』の「人間、見た目じゃありません。心の美しさが何より大事です」っていう、陳腐な道徳論丸出しの結論はどうも納得いかない(これは司会を務める江角マキコのコメント。端整な顔立ちの江角が言ってもまるで説得力なし)。
美しさを求める本能を否定するということは、優れた遺伝子を選び取る生物としての本能まで否定してしまうことに等しい。それでは人類という種は優れた遺伝子を残せなくなり、衰亡してゆくことにもなりかねない。確かに心の美しさは何より大事ではあるけれど、外見の美しさを求める本能とて大事なものだ。バランスの取れた言い方をするとすれば「外見の美しさを求めることは大事。それ以上に心の美しさを求めることが大事」っていうところじゃなかろうか? 心の美しさが大事であることを強調するあまり、外見の美しさを求めることがまるで浅はかであるかのように非難する言説がまかり通ってる現状は、どう考えてもバランスを欠いている。

実は『ビューティー…』にしても、根っこの部分では美容整形を否定しているようなニュアンスがないではない。エンディングでわざわざ「決して美容整形を推奨しているわけではありません」なんていう言い訳じみたテロップを出すし、有名人特集の回では絶対に美容整形をやらない。その時は必ず「ダイエット特集」でお茶を濁す。有名人が堂々と美容整形を受けるという社会的なコンセンサスがまだまだ出来ていない。美容整形をしたと「噂」される有名人は多数いるが、美容整形をカミングアウトしている有名人はきわめて少数派。自然かつ努力を要するダイエットは何らタブー視されないが、人為的かつ努力を要さない美容整形はアンチモラルとさえ見なされかねないからのようだ。この価値観は近年に形成されたものではない。日本では古来より、加工されていない「生成り」を尊ぶ価値観が息づいていた。対象物が無機質であってもそうだから、人体に加工を施すなど思案の外であったに違いない。それ故だろうか、かつて中国歴代王朝の文化や制度をせっせと取り入れた古代日本も、纏足の風習や宦官制度など、不自然きわまる人体改造を伴うものは遂に導入しなかった。

纏足や宦官の本家であった中国や、中華文明圏に属していた韓国などでは、現代においても美容整形に対する忌避感は少ない。中国では整形美人ばかりが出場する「人造美女コンテスト」なるものが開催されているし、韓国でも多くの人が美容院でカットするような気楽さで美容整形を受け、臆することなく整形箇所を自ら積極的にアピールまでする。日本と中韓の美容整形に対するスタンスの違いは、そのまま彼我の歴史的背景の違いへと直結する。どちらも民族としてのDNAに根差すほど奥深い背景を有しているから、少々のことでは覆らないだろう。


で、今回のツボは…ヴァニラという際立った個性の持ち主と、美容整形を巡る文化論あれこれ、ということで😁

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2 コメント

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うわっ!! (まりあ)
2013-08-27 16:53:30


もう、あとには戻れないのに。
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Re:うわっ!! (bugatti26230755)
2013-09-02 20:42:46
コメントありがとうです(^ ^)
ヴァニラはついに足を切断して身長を伸ばす手術を決断したそうです。
スケジュールの都合で来年になるらしいですが…
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