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徒然なるままに修羅の旅路

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Vampire Killers 25

2014年10月12日 22時11分47秒 | Nosferatu Blood
 
   †
 
「鮮やかな手並みね――さすがは師匠」
 聖典撃鎖の鎖で絡め取られ、そのまま簀巻きにされたパオラが地面に転がっている――先ほど投げ棄てた塵灰滅の剣Asher Dustを拾い上げて彼女のかたわらに歩み寄り、その鎖を切断しているアルカードを見ながら、妻が惚れ惚れとした口調でそうつぶやくのが聞こえた。
 その背中を躊躇いがちに見つめていたリディアが、法衣のスカートについたアルカードの足跡を払ってから、意を決した様にそのかたわらまで歩いていく――ようやく鎖のいましめが解けたパオラを助け起こす様に手を差し伸べて立たせてやってから、アルカードはふたりに視線を戻した。
「認識を改めないといけないかな――思ってたよりはずっと反応出来てた」
 え、と顔を上げるリディアに、気楽な口調でアルカードは続けた。
「あれだけれれば立派なもんさ――ましてその若さでな。個人個人の実力で論じるならフィオレンティーナお嬢さんのほうが上だろうが、極端な実力差が無いかぎり、最強のひとりよりもそこそこ強いふたりのほうが手強いなんてことは普通にあるからな」
「そういうものですか?」
 パオラの問いにアルカードがさも当然と言いたげにうなずく。
「もちろん――だって、腕は二本しか無いんだからな。どんなに戦い方が巧くなって腕力がついたところで、腕の数が増えるわけじゃない――似た様なことは、リッチーにも言われたんじゃないか?」
 君たちもあの子フィオレンティーナと一緒で、リッチーの教室の生徒なんだろう――そう続けるアルカードの言葉に、リディアが小さくうなずく。
「はい」
「だろう? 重い一撃より、防ぎにくい軽い二撃が同時に仕掛けられてくるほうが脅威だよ。ただ、今みたいな戦い方をしてる相手ならともかく、搦め手を交えてくる敵が相手だとああはいかないだろうな」
 アルカードはそう言ってから、
「ただ、知性の無い喰屍鬼グール相手やそこらのチンピラとの喧嘩なら反射神経だけでもどうにかなるが、自分たちと同等の知能と同等以上の身体能力を持つ吸血鬼ダンパイア相手だとそうもいかない――奴らが相手の戦闘は、相手の手を読んでそれに対応する必要が出てくる。そのためにはどうしても、経験からくる勘が不可欠になるからな」
 アルカードはそう言ってから、言葉を選んでいるのかしばらく考え込んだ。
「俺はこの五百年間――程度の差はあるが、苦戦したことはほとんど無い。ただ――それでも警戒しないといけない相手はいる。軍人の来歴を持ってたり、あるいは『剣』などの高位の吸血鬼や真祖の護衛をするために、本格的な戦闘訓練を受けた吸血鬼だ――そういった連中は、どんな手で仕掛けてくるかわからないからな」
 そんなことを言いながら、金髪の吸血鬼が軽く伸びをする。
「君らに足りないのは――これはフィオレンティーナお嬢さんも共通だが――、実戦の経験だな。あとこれが重要なんだが、相手が自分よりも上の相手だったときに躊躇無く動ける様な精神状態を作ることだ――萎縮してる間に殺られたら、話にならないからな」
 それを聞いて、パオラとリディアが神妙な表情でうなずいた。
「肝に銘じておきます。でも実戦経験というのは、一朝一夕に蓄積出来るものではありませんから」 リディアの言葉にアルカードは小さくうなずいた。
「そうしたいのなら、君も君の姉さんもフィオレンティーナ嬢も、訓練にはつきあおう。徹底的に訓練として技術を極めるのでなければ、戦闘の経験をひたすら積んだほうが役に立つ――その気になれば俺でもライルでも、経験を積む手助けの出来る相手はいるさ」
 そう言ってから、アルカードはかすかに笑ってみせた。手を伸ばしてふたりの肩を軽く叩き、
「よろしくな、お嬢さんがた――頼りにしてるぜ」
 それを聞いて、リディアが目に見えて明るい顔になった。冷静沈着な凛とした雰囲気の少女だが、実は結構感情が顔に出やすい。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 並んでお辞儀をする少女たち――だがアルカードの言うところの『手助け』は、口で言うほど生易しいものではない。
「やめとけよ――こいつに鍛えられると、その時間は一生思い出したくないつらい思い出になるから」 揚げ足を取ってやると、アルカードがこちらに視線を向けた。
「だからおまえは生きてる、一生思い出したくない記憶と引き換えにな」 かすかな笑みとともにかけられた言葉に、エルウッドは適当に肩をすくめ、
「俺、十四歳のときのあれは今でもトラウマになってるんだが」
「話題に出せる様なら問題無い」
 そう言って、アルカードは手を伸ばしてリディアの髪や背中についた草や土を軽く払うと、踵を返して戻ってきた。
「さて、事情の説明は終わったし、戦力も増えた。これで今日の予定は大体消化したな」
 アルカードがそうつぶやいたところで、宿舎の扉が開いてエルウッドはそちらに視線を向けた。
「どうした、アルマ?」 眠そうな目をこすりつつ宿舎の玄関から出てきた愛娘に、アルカードが声をかける。
「おなかすいた」 アルマの言葉に、エルウッドはアルカードと顔を見合わせた。
 そういえば、もう十四時を廻っている。眠たかったのもお腹が空いたのも無理は無い――ローマは明石標準時から八時間マイナス、先ほど日本に着いた四人にとっては今は午前五時なのだ。
「君たちは大丈夫なのか? 眠くないか?」 パオラとリディアのほうに視線を向けて、アルカードがそんな言葉を投げる。
「いえ。運動したばかりですし、機内で寝てましたから目は冴えてます」
「すまん」 一応謝罪の言葉を口にして、アルカードはがりがりと頭を掻いた。
「君たちの時差ぼけを考えてなかった」
「そういえば昼飯喰ってなかったな――病院の朝飯が遅かったから気にならなかったが」
「俺もだ」 エルウッドの言葉に、アルカードが苦笑してうなずく。
「どうしよう――なにか食べに行くか? こっちの町にはあまり寄りつかないからよくわからんが」 アルカードの提案に、エルウッドは軽く腕組みした――アルカードの住んでいる街と違って、この町は人口が少ないぶんあまり外食産業も無い。手近にあるのははやらない喫茶店一軒きりで――はやってないからそうなのか、それともそうだからはやらないのか、とりあえずはっきり言えることはぶっちゃけ不味い。
「否、やめとこう」
「騎士エルウッド、食事でしたらわたしがご用意しましょうか?」
 シスター舞がそんなことを言ってくる――ありがたい提案だったので、エルウッドはうなずいた。
「頼むよ」
「わかりました――あ、ところで吸血鬼アルカード」
 シスター舞に呼ばれて、アルカードが彼女に視線を向ける。舞はかすかに小首を傾げてこう尋ねた。
「吸血鬼アルカード、貴方は普通に食事をなさるのですか? もし人血をお召し上がりになるのなら、わたしたちには用意出来かねますけれど」
「否、普通に人間と同じ食事をするよ――もしよければ、俺も相伴に与りたい。ただ、お嬢さん――吸血鬼をつけるのはやめてくれないか」
 アルカードの返答に、舞が満足げにうなずいて、
「わかりました、アルカードさん――先ほどいらした皆様は?」
「いただきます」 というパオラの返事にうなずいて、舞は一礼した。
「わかりました。それではしばらくお待ちください」
 そう言って、シスター舞が宿舎の中へと取って返す――それを見送ってから、アルカードが口を開いた。
「さて、それじゃあまあ、食事の用意が出来るまでの間、もう少し稽古でもするか? それとライル、おまえもだ――入院生活で体が鈍ってるだろうからな、実戦の勘を取り戻させてやろう。疲れてるほうが飯は旨いしな」
「……本当かよ」
 アルカードの笑みに厭なものを感じて顔を顰めたとき、妻がかたわらでくすくす笑うのが聞こえた。
「いってらっしゃい、貴方――師匠、夫をよろしくお願いします」
 リディアとパオラが顔を見合わせる――フィオレンティーナが自分も参加するつもりなのか近づいていった。
「お嬢さんも参加するんなら、その格好じゃまずくないか」 アルカードがフィオレンティーナの首から下をじろじろと見遣って、そうコメントする。
 日本へやってきてからあつらえたものらしいパーカーにTシャツ、デニムのミニスカート。柔らかな色遣いが凛とした雰囲気に合って似合ってはいたが、戦闘を行うとなるとまるで役に立つまい。
「ここの宿舎に修道衣の予備とか無いのか」 という質問に、フィオレンティーナが教会の建物を振り返る。
「ちょっと着替えてきます」
「ああ」 アルカードの返事を背に受けて、フィオレンティーナが小走りに教会宿舎のほうへと走ってゆく。
 それを見送って、アルカードが軽く肩甲骨を寄せる様な仕草をした。
「ところで」 アルカードが少女たちに視線を向けて、そんな言葉を口にする。
「はい」
これ・・が見えてるか?」
 そんな質問とともに、アルカードが右手を水平に翳す。
 ――ギャァァァァァッ!
 脳裏に直接響く悲鳴とともに指の隙間から赤黒い血があふれ出し、透明の肩に流れ込む様にして曲刀の形状を形成して、塵灰滅の剣Asher Dustを形作る――エルウッドには効果が無いのだが、どうやら魔力の弱い人間には見えない様に構築しているらしい。一応不可視の状態にしているかどうかは、刃の輪郭がはっきり見えなくなるのですぐにわかるのだが。
「いいえ」 パオラとリディアがそろってかぶりを振ると、アルカードは肩をすくめて隠匿を解いた。途端に刃の輪郭がはっきりと見える様になり、先ほどよりも格段に長い刃があらわになる。
 霊体武装塵灰滅の剣Asher Dustは基本形状こそ変わらないものの、刃渡りは実体化の度に自分の意思である程度変えることが出来る――実体化した状態でサイズを変更することは出来ないので、サイズを変えるには一度消して作り直さなければならないのだが。おそらく槍遣いのエルウッドが参加することを前提にしているからだろう。
 と、そこに修道服に着替えたフィオレンティーナが走って戻ってきた――それを確認して、アルカードがこちらに視線を向ける。
「さあ早く来い、ライル――さもないと、初恋の話をばらすぞ」 構築した漆黒の曲刀を肩に担いで、ちょいちょいと手招きする吸血鬼。その科白を耳にしたアイリスが、明るい笑い声をあげた。
「是非聞きたいわ、師匠」
「そうか? なら今度ゆっくり、ライルが子供のころの話でもするか。こいつの初恋の相手はだな、なにを隠そう――」
「さあ、始めようぜっ!」 アルカードの声にかぶせる様に大声をあげて、エルウッドはアルカードのほうに早足で近づいていった――ごまかそうという意図が無かったわけでもないことは胸中でだけ素直に認めておいて、千人長ロンギヌスの槍を包んでいた布を剥がして棄てる。
 聖遺物・千人長ロンギヌスの槍――ゴルゴタの丘において磔刑に処されたイエス・キリストの生死を確認するために使われた矛が、キリストの返り血を浴びたことで聖性を帯びて変化したものである。
 柄は茨を模した細かな装飾がびっしりと施され、全長の半分を占める穂の鎬の部分に刻まれた複雑な紋様には絶えず色調を変えながら明滅する虹色の光が走っており、血を吸ってもいないというのに紅い血がぽたぽたとしたたり落ちていた。
 基本形状は槍というより斬馬刀に近く、穂先というよりは刃と呼ぶのがふさわしい巨大な刀身を持っており、実際その使い方も槍というよりは薙刀グレイヴ槍斧ハルバードに近い。
「結構――なら始めるか、少しばかり揉んでやろう」 口元に笑みを刻んで、アルカードが身の丈に届こうかという大剣をひと振りする。
 フィオレンティーナが綴じ紐を抜いた聖書のページを周囲にばら撒く――リディアが持ってきていた補給用の聖書を、移動中に受け取ったのだろう。ばらまかれた聖書のページはふわりと宙に舞い上がり、うっすらとした黄金の光芒とともに彼女の周囲を漂い始めた。
 再度参加するつもりなのかパオラとリディアもそれぞれ綴じ紐を抜いた聖典を周囲にばら撒いて舞い上がった聖書のページを掴み止め、油断無く身構える――頑張ってー、というアイリスの声が気勢を殺ぐこと夥しい。
「ふむ――四人がかりか」 アルカードが口元にゆったりとした笑みを浮かべるのが見え――そしてそれを認めた瞬間、エルウッドは地面を蹴った。
 
   †
 
「貴方頑張ってー」 お気楽極まり無いアイリスの声が、気勢を殺ぐこと夥しい――それに若干毒気を抜かれて笑みを浮かべたとき、千人長ロンギヌスの槍を構えたエルウッドが地面を蹴った。
 強烈な聖性を帯びた魔力を宿した全長三メートル弱の大身槍――十字架の磔刑台に打ちつけられたキリストの胴体をその穂先で穿ったとされる聖遺物、千人隊長ロンギヌスの名を冠するその槍の穂先を塵灰滅の剣Asher Dustで受け流す。
 千人長ロンギヌスの槍を突き出したままの体勢で、エルウッドが穂先を流されて体が流れ踏鞴を踏んだ――これが実戦であれば敵の体の外側に出た時点でアキレス腱のあたりを踵で蹴り砕いていくところだが、模擬戦闘ではそうもいかない。
 すれ違い様に足を刈り払い、そのまま方向を転換――黄金の光芒に包まれた撃剣聖典を構築しながら接近してくるフィオレンティーナに視線を向ける。残る少女ふたりはまだ離れている――警戒順位は下げていい、彼女たちが接近してくる前にフィオレンティーナを制しなければならない。
 意識せぬまま口元に笑みが浮かぶ――フィオレンティーナの視線を捉えて身構えながらその事実を自覚して、アルカードはさらに笑みを深めた。
Yaaaaaaaaaaaaa――ヤァァァァァァァァァァァ――ッ!」
 声をあげて、フィオレンティーナが振りかぶった撃剣聖典を振り下ろしてきている――アルカードは塵灰滅の剣Asher Dustの鋒を軽く横に払い、撃剣聖典の刀身を剣の横腹で撃ち据えた。それだけで剣の鋒は流されて、なにも無い空間を真直に引き裂く。
 アルカードはそのまま地面を蹴り、剣に引きずられて体勢を崩した少女の側面に廻り込んだ――フィオレンティーナの視線は追いついていない。今の動きを追えるのならば、たとえ不意討ちを受けてもカトリオーヌ・ラヴィンごときに後れは取らなかっただろう。
 側面に廻り込みながらの塵灰滅の剣Asher Dustの一撃を、撃剣聖典の刀身に叩きつける――紫色の激光とともにフィオレンティーナの撃剣聖典が叩き折られ、一瞬遅れてところどころ炭化した聖書のページに戻って崩れ散った。
 そのまま無造作に左手を伸ばして、フィオレンティーナの肩に掌を押しつける――彼はそのまま、フィオレンティーナの小さな肩を思いきり突き飛ばした。
 吹き飛ばされて転倒するフィオレンティーナから視線をはずし、パオラとリディアのほうへと向き直る――今回は純粋に訓練だと解釈しているからだろう、パオラは魔術を使おうとはしなかった。戦闘の技術アート・オブ・ウォーとして魔術は非常に重要だが、近接戦闘技術クロスコンバットはさらに重要だ。
 口元の笑みをさらに深め――
Aaaaaa――raaaaaaaaaアァァァァァ――ラァァァァァァァッ!」
 咆哮をあげて、アルカードは地面を蹴った。

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