再び立ち上がって、窓に歩み寄る――折から吹き込んできた風がカーテンを揺らし、優しく頬を撫でていった。
住宅街の真ん中にあるこの教会の宿舎では視界に入ってくるのは裏手の民家の屋根と、その向こうのアパートに遮られて半分しか見えない空だけだ。アパートの向こうには山があって、峠道を越えると大きなショッピングモールのある市街地に出る――空港から高速道路でここまでやってくる経路はそのショッピングモール近く . . . 本文を読む
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ぽーん、と壁にかけられた時計が時報を鳴らす。時計を見遣ると、ちょうど八時になったところだった。
からぁん、と音を立てて店の入り口の扉につけられた鐘が鳴る。
「いらっしゃいませ」 アルカードがそちらを振り返って声をかけ――相手の顔を確認して微笑んだ。
「こんばんは」
入ってきたのはTシャツにジーンズを穿いた三十すぎの男だった。十歳くらいの小柄な女の子と、同年代の綺麗な女性を連 . . . 本文を読む