「小太郎がゆく巻の三十四」まえがき
暑い夏を象徴するかのようなアテネ五輪メダルラッシュ。
スポーツはライブに限るとばかり、連夜のテレビ観戦。
それぞれの場面にそれぞれの感動があり、刺激を受ける。
五輪後、人は、日本は、世界は変わるかもしれない。漠然とそう思った。
◇ミニコラム「集合住宅そば物語」
3泊の夏休み中、そば三郎が暑さにやられてしまった。(泣き&反省)
ひとり残されたそば二郎は1メートルをはるか越えて、白い花を咲かせている。
収穫、間もなく。
◇知る人ぞ知る名店クイズ
今回のお店は本文中の新富町の定食屋です。
ヒント:平成通り沿いです。
(前回の答え)バー【BOO!WHO?WOO!(ブー・フー・ウー)】
※このコーナー初の正解者が出ました!うれしい。
それでは、【小太郎がゆく】はじまり、はじまり。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【小太郎がゆく】巻の三十四
タイトル:「康生と亜衣」
◆ザ・波乱◆◆◆◆
「応援してくれた方々に申し訳ない。
これまでやってきた過程は間違いじゃなかった。
だから、胸を張って日本へ帰りたい。
うまくいかない面はあったが、自分らしい仕上がりはできたと思う。
実力がなかったということです」
(日本柔道男子井上康生選手)
江戸川柳に習えば
「平成の眠りをさまたぐアテネ五輪 勝った!金だ!で夜も眠れず」
といったところか。
そんな連日連夜のメダルラッシュのさなか、
日本選手団の主将でもある井上康生がまさかの結果となった。
金メダルをとって当たり前という重圧の中、
メダルに届かなかった敗北の弁は潔すぎるくらい潔い。
◆◆シンデレラガール◆◆◆
「自分でもまさか金メダルをとれるとは思わなかった。
すごいびっくり。(中略)夢かなと思っちゃいました。
泳ぐ前に先生から、あわてず、あせらず、あきらめずと言われ、
泳いでいる間、それを繰り返していた」
(競泳女子八百m自由形柴田亜衣選手)
「とんでもないことを…」実況のアナウンサーはレース終盤、絶叫した。
日本国内ですら未勝利だった柴田亜衣選手は見事金メダルを獲得した。
関係者をも驚かせる快挙となった。
おそらく今回のオリンピックで日本が獲得した、
最も意外性の高い金メダルはこのシンデレラがもたらしたものかもしれない。
◆◆◆新富町のおかあさん◆◆
(もしかして、ハズしちゃったかな?)
最近ハマっている新富町の食堂。
猛暑の昼下がり、行列のお店を何軒か通り過ぎ、
街路樹の木陰の暖簾に誘われた。
外観も店内もお店の名前にも歴史を感じさせる佇まい。
が、ピーク時にもかかわらず他にお客はなし。
ハズしちゃったかな?
との思いが一瞬頭をよぎったが、気を持ち直して定食を頼んだ。
ややあって注文の品が運ばれてくる。
さばの塩焼き、ご飯、お味噌汁、お新香。
さらに里芋のそぼろ煮、ごぼうの甘辛煮、ほうれん草のおひたしの
三品が小鉢で添えられた。
いい感じかも・・・と気が変わる。
さばはもちろんのこと、どの皿も手作りのあったかい味がする。
一人で切り盛りしているおかあさんに聞けば、
創業八十年の老舗。自身が受け継いで六十年、
今も変わらず朝六時からお昼まで営業しているという。
客が来ないのをいいことに、都電が行き交い、
水路が縦横にありし日の昔話までお茶うけにご馳走になる。
これで六百円也。
お見それいたしました、おかあさん。
◆◆◆◆期待と現実とのギャップ◆◆
「本当は行かなくても良かったのですが、
折角なので出雲大社まで行って来ました。
噂ほど大きくも立派でもなく、想像をたくましくしていただけにやや失望しました・・・。」
島根に出かけた友人からのメール。
こうした経験は往々にしてある。
たとえば誰でも知っているダ・ヴィンチの名画『モナリザ』。
実物を見た人たちから「意外と小さかった」という声が聞かれることも少なくない。
実寸は七十七センチ×五十三センチ。
あまりの名声から想像をたくましくさせられるせいであろうか。
テレビで紹介された行列の出来る店に期待して行ってみると、
それほどでも…というような結果に終わることと、
程度の差こそあれよく似ている。
四年間、例えようのない努力を積み重ねてきた
五輪代表が織りなす感動のドラマ。
期待の有無や大小という違いがあるからだろうか、
もたらされる結果に対する我々の感情も様々だ。
「すごいっ!」「あ~ぁ…」「よくやった!」。
思わず口をつく言葉は正直である。
世の中一般の商品やサービスについても同じような構図がある。
期待や前評判の高いものであれば
期待と同等かそれ以上のパフォーマンスが求められる。
そして、その影で「意外にいいねぇ」などと評価される
サプライズものがあったりもする。
こうしたギャップがあるからこそ、アテネ五輪は人の心をひきつける。
次回『小太郎がゆく』、乞うご期待!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Marketer's Essay【小太郎がゆく】<バックナンバー>
№000 序 章「おにぎり的な私」
№001 巻の壱「うりばのちからを信じています」
№002 巻の弐「スローバックなスーパースターにまなぶ」
№003 巻の参「いちねんの計は?やっぱりうりばにあります」
№004 巻の四「数字が教えてくれるもの うりばが教えてくれるもの」
№005 巻の五「目は口ほどにものをいう 耳は目以上にものを見る」
№006 巻の六「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒」
№007 巻の七「調査とは旅すること 旅することとは見聞きすること」
№008 巻の八「お食事系外食チェーンに見る『伝えたいその想い』」
№009 巻の九「『ワールドカップ』四年に一度の祭典に学ぶ」
№010 巻の十「ショー・ザ・スピリット!ショー・ザ・ゲーム!」
№011 巻の十一「売場に並んでいるのは『信頼』という名の商品」
№012 巻の十二「敬老の日に思う『わかりやすさ』というサービス」
№013 巻の十三「ノーベル賞、損得『感情』のむずかしさ」
№014 巻の十四「コタロウ的『北風と太陽』」
№015 巻の十五「師走に見る『白いもの』雑考」
№016 巻の十六「顧客創造とは不断の手間と顧みる愛情」
№017 巻の十七「声に出して読みたい『お国言葉』」
№018 巻の十八「無記名・不特定というサービスにサヨナラ」
№019 巻の十九「そういう問題じゃない!」
№020 巻の二十「クレームの卵」
№021 巻の二十一「今どき流行のハコヂカラ」
№022 巻の二十二「花火の季節のブランド考」
№023 巻の二十三「ボーダーライン」
№024 巻の二十四「行列~待ちの効用~」
№025 巻の二十五「イライラフリー」
№026 巻の二十六「『が』商品『で』商品」
№027 巻の二十七「小レボで行こう!」
№028 巻の二十八「チャープとトリル」
№029 巻の二十九「スイッチ。その心理」
№030 巻の三十 「一(ピン)客万来」
№031 巻の三十一「ベジタブル ツチタベル」
№032 巻の三十二「『見世』るチカラ」
№033 巻の三十三「FCイズ ファンクリ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
暑い夏を象徴するかのようなアテネ五輪メダルラッシュ。
スポーツはライブに限るとばかり、連夜のテレビ観戦。
それぞれの場面にそれぞれの感動があり、刺激を受ける。
五輪後、人は、日本は、世界は変わるかもしれない。漠然とそう思った。
◇ミニコラム「集合住宅そば物語」
3泊の夏休み中、そば三郎が暑さにやられてしまった。(泣き&反省)
ひとり残されたそば二郎は1メートルをはるか越えて、白い花を咲かせている。
収穫、間もなく。
◇知る人ぞ知る名店クイズ
今回のお店は本文中の新富町の定食屋です。
ヒント:平成通り沿いです。
(前回の答え)バー【BOO!WHO?WOO!(ブー・フー・ウー)】
※このコーナー初の正解者が出ました!うれしい。
それでは、【小太郎がゆく】はじまり、はじまり。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【小太郎がゆく】巻の三十四
タイトル:「康生と亜衣」
◆ザ・波乱◆◆◆◆
「応援してくれた方々に申し訳ない。
これまでやってきた過程は間違いじゃなかった。
だから、胸を張って日本へ帰りたい。
うまくいかない面はあったが、自分らしい仕上がりはできたと思う。
実力がなかったということです」
(日本柔道男子井上康生選手)
江戸川柳に習えば
「平成の眠りをさまたぐアテネ五輪 勝った!金だ!で夜も眠れず」
といったところか。
そんな連日連夜のメダルラッシュのさなか、
日本選手団の主将でもある井上康生がまさかの結果となった。
金メダルをとって当たり前という重圧の中、
メダルに届かなかった敗北の弁は潔すぎるくらい潔い。
◆◆シンデレラガール◆◆◆
「自分でもまさか金メダルをとれるとは思わなかった。
すごいびっくり。(中略)夢かなと思っちゃいました。
泳ぐ前に先生から、あわてず、あせらず、あきらめずと言われ、
泳いでいる間、それを繰り返していた」
(競泳女子八百m自由形柴田亜衣選手)
「とんでもないことを…」実況のアナウンサーはレース終盤、絶叫した。
日本国内ですら未勝利だった柴田亜衣選手は見事金メダルを獲得した。
関係者をも驚かせる快挙となった。
おそらく今回のオリンピックで日本が獲得した、
最も意外性の高い金メダルはこのシンデレラがもたらしたものかもしれない。
◆◆◆新富町のおかあさん◆◆
(もしかして、ハズしちゃったかな?)
最近ハマっている新富町の食堂。
猛暑の昼下がり、行列のお店を何軒か通り過ぎ、
街路樹の木陰の暖簾に誘われた。
外観も店内もお店の名前にも歴史を感じさせる佇まい。
が、ピーク時にもかかわらず他にお客はなし。
ハズしちゃったかな?
との思いが一瞬頭をよぎったが、気を持ち直して定食を頼んだ。
ややあって注文の品が運ばれてくる。
さばの塩焼き、ご飯、お味噌汁、お新香。
さらに里芋のそぼろ煮、ごぼうの甘辛煮、ほうれん草のおひたしの
三品が小鉢で添えられた。
いい感じかも・・・と気が変わる。
さばはもちろんのこと、どの皿も手作りのあったかい味がする。
一人で切り盛りしているおかあさんに聞けば、
創業八十年の老舗。自身が受け継いで六十年、
今も変わらず朝六時からお昼まで営業しているという。
客が来ないのをいいことに、都電が行き交い、
水路が縦横にありし日の昔話までお茶うけにご馳走になる。
これで六百円也。
お見それいたしました、おかあさん。
◆◆◆◆期待と現実とのギャップ◆◆
「本当は行かなくても良かったのですが、
折角なので出雲大社まで行って来ました。
噂ほど大きくも立派でもなく、想像をたくましくしていただけにやや失望しました・・・。」
島根に出かけた友人からのメール。
こうした経験は往々にしてある。
たとえば誰でも知っているダ・ヴィンチの名画『モナリザ』。
実物を見た人たちから「意外と小さかった」という声が聞かれることも少なくない。
実寸は七十七センチ×五十三センチ。
あまりの名声から想像をたくましくさせられるせいであろうか。
テレビで紹介された行列の出来る店に期待して行ってみると、
それほどでも…というような結果に終わることと、
程度の差こそあれよく似ている。
四年間、例えようのない努力を積み重ねてきた
五輪代表が織りなす感動のドラマ。
期待の有無や大小という違いがあるからだろうか、
もたらされる結果に対する我々の感情も様々だ。
「すごいっ!」「あ~ぁ…」「よくやった!」。
思わず口をつく言葉は正直である。
世の中一般の商品やサービスについても同じような構図がある。
期待や前評判の高いものであれば
期待と同等かそれ以上のパフォーマンスが求められる。
そして、その影で「意外にいいねぇ」などと評価される
サプライズものがあったりもする。
こうしたギャップがあるからこそ、アテネ五輪は人の心をひきつける。
次回『小太郎がゆく』、乞うご期待!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Marketer's Essay【小太郎がゆく】<バックナンバー>
№000 序 章「おにぎり的な私」
№001 巻の壱「うりばのちからを信じています」
№002 巻の弐「スローバックなスーパースターにまなぶ」
№003 巻の参「いちねんの計は?やっぱりうりばにあります」
№004 巻の四「数字が教えてくれるもの うりばが教えてくれるもの」
№005 巻の五「目は口ほどにものをいう 耳は目以上にものを見る」
№006 巻の六「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒」
№007 巻の七「調査とは旅すること 旅することとは見聞きすること」
№008 巻の八「お食事系外食チェーンに見る『伝えたいその想い』」
№009 巻の九「『ワールドカップ』四年に一度の祭典に学ぶ」
№010 巻の十「ショー・ザ・スピリット!ショー・ザ・ゲーム!」
№011 巻の十一「売場に並んでいるのは『信頼』という名の商品」
№012 巻の十二「敬老の日に思う『わかりやすさ』というサービス」
№013 巻の十三「ノーベル賞、損得『感情』のむずかしさ」
№014 巻の十四「コタロウ的『北風と太陽』」
№015 巻の十五「師走に見る『白いもの』雑考」
№016 巻の十六「顧客創造とは不断の手間と顧みる愛情」
№017 巻の十七「声に出して読みたい『お国言葉』」
№018 巻の十八「無記名・不特定というサービスにサヨナラ」
№019 巻の十九「そういう問題じゃない!」
№020 巻の二十「クレームの卵」
№021 巻の二十一「今どき流行のハコヂカラ」
№022 巻の二十二「花火の季節のブランド考」
№023 巻の二十三「ボーダーライン」
№024 巻の二十四「行列~待ちの効用~」
№025 巻の二十五「イライラフリー」
№026 巻の二十六「『が』商品『で』商品」
№027 巻の二十七「小レボで行こう!」
№028 巻の二十八「チャープとトリル」
№029 巻の二十九「スイッチ。その心理」
№030 巻の三十 「一(ピン)客万来」
№031 巻の三十一「ベジタブル ツチタベル」
№032 巻の三十二「『見世』るチカラ」
№033 巻の三十三「FCイズ ファンクリ!」
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