MARKETER’S BLOG【小太郎がゆく】

【小太郎がゆく】はマーケター小太郎がいろんなところで出会うさまざまなヒトやデキゴトについて等身大で描いていく日常見聞ログ

【小太郎がゆく】巻の四十八

2005年11月04日 | エッセイ【小太郎がゆく】
【小太郎がゆく】巻の四十八 「レッツ タンレン!」


◆毎朝のそうじが伝えること◆◆◆◆

「おはようございます」

秋晴れの朝は、十五分ほどかかる浦和駅までの道のりも、歩いていて楽しい。

途中に、毎朝、お店の前を掃除している薬局がある。
店構えからすると、商いは三十年をくだらなそうだ。

ボブカットに黒ぶちメガネ、白衣をまとった、
印象的な女性スタッフと時おり目が合う。

最初のうちは言い出しにくかった「おはようございます」が、今は自然と口をつく。

毎朝の清掃を見続けることで、
見知らぬ店員が見知った店員に変わったことの証(あかし)。
挨拶することで自分自身にも、元気のスイッチが入る。

◆◆スタッフの発声訓練?◆◆◆

「おはようございます。今日も元気にいってらっしゃいませーっ」

薬局を過ぎ、JRの高架沿いを歩いて、
間もなく浦和駅というところに床屋がある。

そのお店は開店前にスタッフ全員が整列して、通行人に挨拶をしている。
挨拶にまじえて、営業時間を案内し来店をうながす。

埼玉都民と揶揄(やゆ)される浦和のサラリーマンやOLは、
実は地元のお店のことをあまり知らない。
通勤時も帰宅時もお店のシャッターが降りていることが多いからだ。

お店にとって、その存在の効果的なアピールは、
営業時間外であることが多いという事実に、
この床屋は気づいているのかもしれない。
単なる訓練だけではなさそうだ。

◆◆◆永六輔さんの生き方◆◆

「日に百通書きますよ。手紙を書くことがぼくの生き方だから」。
                          (朝日新聞)

タレントの永六輔さんは、多いときに年に四万五千通もの手紙を書くという。
その多くは、自らパーソナリティをつとめるラジオ番組の
視聴者から寄せられた便りに対する返事。

忙しいタレント業のかたわら、「手紙を書く」という彼の生き方は変わることがない。
そこにはこんな原体験がある。

小学校の夏休み、先生から便りがきた。
返事を書かなかった永少年を父はたしなめた。
「遊ぶのに忙しいんだ」と口答えをした彼に、父は言った。
「返事をかけない忙しさは恥ずかしい忙しさだ」。

永さんはその一言を大事に胸にしまっている。

永さんからの返事をもらったリスナーは、
タレントという別世界にいると感じていた「永六輔」を、
よりあたたかい、そしてちかしい存在に感じるに違いない。

こんなステキな飛び道具を今一度見直したい。
そう思わせる栄六輔さんの生き方だ。

◆◆◆◆レッツ タンレン!◆

「千日の稽古を鍛(たん)とし万日の稽古を錬(れん)とす」
                          宮本武蔵

球団ワーストの80敗を喫した巨人は
三年振りに原監督を迎え、来期へのスタートを切った。
恒例の宮崎キャンプも例年以上に厳しい。

「イチッ!ニッ!サンッ!シッ!」

軽いランニングでも選手の発する掛け声は大きく響きわたり、やる気の一端をのぞかせる。

「元気ありますね!」という取材のスポーツキャスターの問いかけに
「今日は元気よかったね。まぁ、あれが普通なのよ」と原監督。

スポーツニュースでこのやりとりを聞いていて思った。
(この「普通なのよ」が毎日きっちり続けば強くなるかも…)。
まったく技術的な根拠はないのだけれど。

さて、当たり前のことを繰り返し繰り返し行うことでヒトは鍛えられる。

宮本武蔵の残した言葉によれば、
稽古を続けること千日で、「鍛」の域に到達する。
この千日は奇しくも、「石の上にも三年」の三年と符合する。

薬局の掃除も、床屋の声だしも、永さんのはがきも
日々の積み重ねですでに「鍛」の領域を超えている。

当たり前のことでいい。
簡単なことでいい。

明日から、いや、今日から、何か一つタンレンを始めよう。

次回『小太郎がゆく』、乞うご期待!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Marketer's Essay【小太郎がゆく】<バックナンバー>
№000 序 章「おにぎり的な私」
№001 巻の壱「うりばのちからを信じています」
№002 巻の弐「スローバックなスーパースターにまなぶ」
№003 巻の参「いちねんの計は?やっぱりうりばにあります」
№004 巻の四「数字が教えてくれるもの うりばが教えてくれるもの」
№005 巻の五「目は口ほどにものをいう 耳は目以上にものを見る」
№006 巻の六「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒」
№007 巻の七「調査とは旅すること 旅することとは見聞きすること」
№008 巻の八「お食事系外食チェーンに見る『伝えたいその想い』」
№009 巻の九「『ワールドカップ』四年に一度の祭典に学ぶ」
№010 巻の十「ショー・ザ・スピリット!ショー・ザ・ゲーム!」
№011 巻の十一「売場に並んでいるのは『信頼』という名の商品」
№012 巻の十二「敬老の日に思う『わかりやすさ』というサービス」
№013 巻の十三「ノーベル賞、損得『感情』のむずかしさ」
№014 巻の十四「コタロウ的『北風と太陽』」
№015 巻の十五「師走に見る『白いもの』雑考」
№016 巻の十六「顧客創造とは不断の手間と顧みる愛情」
№017 巻の十七「声に出して読みたい『お国言葉』」
№018 巻の十八「無記名・不特定というサービスにサヨナラ」
№019 巻の十九「そういう問題じゃない!」
№020 巻の二十「クレームの卵」
№021 巻の二十一「今どき流行のハコヂカラ」
№022 巻の二十二「花火の季節のブランド考」
№023 巻の二十三「ボーダーライン」
№024 巻の二十四「行列~待ちの効用~」
№025 巻の二十五「イライラフリー」
№026 巻の二十六「『が』商品『で』商品」
№027 巻の二十七「小レボで行こう!」
№028 巻の二十八「チャープとトリル」
№029 巻の二十九「スイッチ。その心理」
№030 巻の三十  「一(ピン)客万来」
№031 巻の三十一「ベジタブル ツチタベル」
№032 巻の三十二「『見世』るチカラ」
№033 巻の三十三「FCイズ ファンクリ!」
№034 巻の三十四「康生と亜衣」
№035 巻の三十五「立ち組み勝ち組?」
№036 巻の三十六「ラ行変革活用」
№037 巻の三十七「うらっぽさ」
№038 巻の三十八「エコゴコロ」
№039 巻の三十九「モチ・コンのススメ」
№040 巻の四十「ポータルポジション」
№041 巻の四十一「いわて銀河鉄道の夜」
№042 巻の四十二「小は大を凌ぐ」
№043 巻の四十三「スピンオフ!」
№044 巻の四十四「しむらぁ、うしろーっ!」
№045 巻の四十五「○○屋のカレー」
№046 巻の四十六「山は逃げない」
№047 巻の四十七「北の国から2005」

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