MARKETER’S BLOG【小太郎がゆく】

【小太郎がゆく】はマーケター小太郎がいろんなところで出会うさまざまなヒトやデキゴトについて等身大で描いていく日常見聞ログ

【小太郎がゆく】巻の十八

2003年03月27日 | エッセイ【小太郎がゆく】
「小太郎がゆく巻の十八」まえがき

「あの映画に出ることで
戦争が人をいかに非人間的にするかがよくわかった」

「戦場のピアニスト」で米アカデミー賞
主演男優賞を獲得したA・ブロディの言葉。

昨日のニュースステーションで椎名林檎は
止めることなどできないのだけれど、この戦争という事実を感じるしかない
という意味のことを言っていた。

「着眼大局 着手小局」という好きな言葉がある。
目をそむけずに事実を感じて「なにかできないのだろうか」と
考えていることだけでも私は「着手」だと思っている。

それでは、【小太郎がゆく】はじまり、はじまり。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

【小太郎がゆく】巻の十八

タイトル:「無記名・不特定というサービスにサヨナラ」

◆シャレた人員配置◆◆◆◆

「生ビール、4つ!それから、黒ビールを1本、持ってきてちょーだい」

ゴルフ場での昼食は、義父のオーダーから始まる。
「いらっしゃいませ」の言葉が終わるか
終わらぬうちに発せられる注文。
笑顔で応える女性スタッフのネームプレートには
控えめに迎(むかい)とある。

「これほどサービス業に適した名前はない」
と最初に気づいたのは義父。
「珍しいですね」と聞けば「実家のあたりには多い」苗字なのだそうだ。

以来、訪れるたびに、静かに、それでもやさしい笑顔で迎えてくれる。
決して近くはない福島県南のゴルフ場に足を運ぶのは、
ゴルフコースの魅力だけにあらず。

◆◆牛角の積極的記名サービス◆◆◆

「においをお気になさらないのであれば、
にんにくハラミがオススメですね。元気が出ますヨ。
それと、4名様でしたら…」

日本一の焼肉チェーン「牛角」は、若者や女性を中心に支持され、
いまや600店を超える。
席につくと、ごく普通の20代のスタッフが満面の笑みで歩み寄る。
名札は個性的な手書きで、名前の他に「梅塩ピートロにはまってます!」
などとメッセージも添えてある。
オススメを聞けば、名札以上に雄弁なトークが返ってくる。

もって生まれた資質以上に、
厳しい店舗間競争とスタッフ間競争の中で、鍛え抜かれた迫力に、
ついつい、いつもより多めの注文となってしまう。

◆◆◆不特定多数を捨てるという決断◆◆

「器もその時の気分によって、ゴージャスにして、
ちょっとしたご褒美のつもりで…」

リビングルームをイメージした6人がけのダイニングセットで
紅茶のテイスティングが始まる。
真剣なまなざしを感じて、ガイド役のコーディネーターにも熱が入る。

毎年恒例のフーデックス・ジャパン(幕張)に足を運んだ。
今年も9万人を超える来場者があったという。

こうした集客力のある展示会では
「これだけ大勢集まるんだから、効果はそれなりに…」と考えがちだ。
ところが実際には、嵐のような試食が終わると、文字通り静けさが訪れる。
食べた側にも、その多くは印象に残らない。

それならいっそのこと、紅茶のテイスティングのように、
じっくりと興味のある来場客に訴えることに資源を集中してみてはどうか。

内容と訴求対象を絞り込む。
深く伝えられる人数は一日せいぜい40~50人。
行列は覚悟。人が人を呼び、取り巻く聴衆はガイダンスに聴き入る。

不特定多数を捨てる。
こんな発想が、マンネリ化した展示会に風穴を開けるはずである。

◆◆◆◆特定かつ多数への挑戦◆

「『お客様』と呼ばれるのと、『○○様』とお名前で呼ばれると、
どちらがうれしく感じるでしょうか」

私のよく知るホテルでは、お名前でお客様にお声かけできるように努めている。
カウンターをはさんで、ともすると慇懃(いんぎん)無礼な
関係になりがちなフロントマンとの会話も、ごく自然なものになるという。
そして、お客様のちょっとした気づきや感想がいただけるようにもなってくる。

もちろん、膨大な数のお客様の名前をすべて覚えることはできないが、
予約のお客様がリピーターか否かでも、
チェックイン時の受け答えに工夫の余地はある。

こうした挑戦はこのホテルに限らない。
ドラッグストアなどの小売業でも実践しているお店もある。

また、ある美容院では、顧客の顔写真をデータベース化していて、
接客時の声かけにも上手に利用しているという。

本来サービスとは、誰のどのようなサービスなのか、
そして誰に対してのものなのかということを、
一対のものとして考えていくべきものなのである。

このお客様だからこのサービス、
このサービスであればこのお客様、という風に。

さて、皆さんの回りにある無記名のサービス、
不特定多数に向けたサービスに
思い切ってサヨナラしてみませんか。

次回『小太郎がゆく』、乞うご期待!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Marketer's Essay【小太郎がゆく】<バックナンバー>
№000 序 章「おにぎり的な私」
№001 巻の壱「うりばのちからを信じています」
№002 巻の弐「スローバックなスーパースターにまなぶ」
№003 巻の参「いちねんの計は?やっぱりうりばにあります」
№004 巻の四「数字が教えてくれるもの うりばが教えてくれるもの」
№005 巻の五「目は口ほどにものをいう 耳は目以上にものを見る」
№006 巻の六「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒」
№007 巻の七「調査とは旅すること 旅することとは見聞きすること」
№008 巻の八「お食事系外食チェーンに見る『伝えたいその想い』」
№009 巻の九「『ワールドカップ』四年に一度の祭典に学ぶ」
№010 巻の十「ショー・ザ・スピリット!ショー・ザ・ゲーム!」
№011 巻の十一「売場に並んでいるのは『信頼』という名の商品」
№012 巻の十二「敬老の日に思う『わかりやすさ』というサービス」
№013 巻の十三「ノーベル賞、損得『感情』のむずかしさ」
№014 巻の十四「コタロウ的『北風と太陽』」
№015 巻の十五「師走に見る『白いもの』雑考」
№016 巻の十六「顧客創造とは不断の手間と顧みる愛情」
№017 巻の十七「声に出して読みたい『お国言葉』」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。