「本の町プロジェクト」ブログ

日本にも「ヘイ・オン・ワイ」のような本の町があったらいいな、から始まった物語。高遠での活動を経て次のステップを準備中。

続 有望物件あらわる

2007-03-07 22:15:29 | Weblog
※以下の記事は、古本屋『書肆月影』大塚が書きました。

藤野の「五感の湯あたりに古民家がある」という情報を前からキャッチしていたのだが、クルマに乗らない私としては誰かの力を借りねばならない。メーリングリストで助っ人を募ったところ、四人の参加となった。「ハートランド」斉木さん、李さん、そして私の三人は八王子駅集合、そこに「れいど・ばっく」平野さんが秦野からクルマで乗り付けてくれる、という段取り。

一時間ほど早めに到着した斉木さんと私は、八王子駅近くの古本屋巡りをする。
二軒目の古本屋で、集合時間が迫っても「文庫本五冊三百円」の棚の前で呻吟する私。四冊までは抱えているのだが、最後の一冊が決まらない。根が貧乏性なのだ。「もう、あきらめてくださいよ・・・。これなんかどうですか!」と斉木さんからポイと渡された文庫本、ひょいと扉を覗いたら、吉川英治のペン字サインと落款があった。これで決まり!

藤野は食事をするところが少ないので、先に駅近くの『手打ちそば 山泉』という店で昼食にする。私以外の方はもり蕎麦、私は蕎麦がき。

八王子から藤野までは、甲州街道で小一時間ほどで着く。まず最初に、今日の主目的である古民家を探すことにした。この情報は、いつも世話になっている名倉のSさんから教えていただいたのだが、「場所は五感の湯の先の吉原(キッパラ)、鉄塔の下」ということしかわからない。途中、ちょっと迷ったが、何となくそれらしきあたりにたどり着いた。でも、鉄塔は数百メートルおきにあるものの、どれが空き家かはわからない。たまたま、人影を発見したので、急いでその人めがけて走り出す。田舎で人影を見失ったら、次はいつになるかわからない。確信はないが、何となくあの家ではないか、という家を教えていただいた。

その家に行ってみると確かに人の気配がない。庭を含めて百坪くらいあるだろうか。家屋は古いが、かなり大きな平屋である。庭の樹木も剪定が行き届いている。桜の大木がある。庭には一面に、土筆が顔を出していた。「吉原」という土地自体が、山ばかりの藤野にあっては開けている感じだが、特にこの家は陽当たりが良い。まわりの山の迫り方も適度に良い。

などと銘々が勝手な感想を述べているところに、近くの方が顔を出してきた。確かに空き家に忍び込む男女四人、怪しくても一向に不思議はない。Sさんに近所の方に事情を説明するように言われていたので、家探しをしている現在の事情をお話しした。聞くとこの方は、一時期自分の家の建て替えをする時にこの家に住まわれていたようで、鍵も持っていると言う。たまに鍵を開けて、家の風通しなどを頼まれているらしい。遠方から来た旨を告げ、中を見たいとお願いしたところ、了承していただいた。

平屋だが、中は広かった。全部で台所含めて六室ほどか。外観はちょっと頼りなかったが、家の柱は思いのほかの太さだ。聞くと以前は茅葺きだったが、手入れが大変なため、銅板(?)に葺き替えたそうだ。

中を見させていただくと、それぞれがさらに気に入った感じがこちらにも伝わってくる。この家なら、「本の町 藤野」の旗揚げの拠点として問題はない。
あの家の前に佇み、中に足を踏み入れると、本を中心としたさまざまなイメージが湧いてくる。
それは、コタツにあたりながら絵本を読む少女であったり、満開の桜の下で文庫本にはらはらと散る花びらであったり、縁側に腰を掛け、コーヒーを啜りながらの古本談義であったり・・・。
そういう舞台となる可能性を、あの家からは感じ取れるのだ。

私の家選びの勘などアテにならないが、いつも文句ばかり言っている斉木さんと、紅一点の李さんが気に入っている、という点は心強い。

都内にいるという大家さんの住所、電話番号を教えていただいたので、明日電話してみるつもり。

用事があるという李さんを藤野駅で降ろし、男三人は「東尾垂の湯」へ。
その後、斉木さんを高尾駅で降ろし、帰る方向が一緒の「れいど・ばっく」平野さんと私は、また古本屋を四軒ほど回って帰った・・・。


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