介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第4024号 イギリスのソーシャルワーク法案

2010-10-25 11:38:32 | ヒューマンサービス
10月13日、イギリスのソーシャルワーカー協会BASWは、ソーシャルワークに関する基本法ともいうべき「ソーシャルワーク法案」The Social Work Billを政府に渡しています。

P 7050 2010.10.21

私自身はイギリスのソーシャルワークについては不案内ですが、ざっと見たところ重要な内容であり、翻訳ソフトではかなりひどい日本語が出てくるので、要点をまとめてみます。

全文12ページ。(写真)

【日本のソーシャルワーク】

日本では、「社会福祉法」という社会福祉関係の基本法がありますが、この法律では専門職としてのソーシャルワーカーの位置づけはしていません。他方で、「社会福祉士及び介護福祉士法」があって、社会福祉士については国家資格として定めています。

イギリスとの対比で、日本の社会福祉専門職の特色をまとめてみると、

・ 「社会福祉士」は、イギリスなどで重要な分野である「医療ソーシャルワーカー」を対象として定めていない。
・ 「社会福祉士」は、限定された分野であるために、「日本社会福祉士会」のほかに、「日本ソーシャルワーカー協会」がある。
・ このほか、精神保健福祉士や介護福祉士、保育士があり、イギリスのBASWのような強力で幅広い専門職を網羅した組織はない。
・ 介護保険制度の給付管理から発展した「介護支援専門員」が日本で要請されている機能は、イギリスにおけるソーシャルワーカーに近いものがある。


【この法案の目的】

The Social Work Billとして12ページでまとめられた資料を概観します。
* Billは「法案」で、成立するとAct「法」となります。law(法律)は、より一般的な用語。

表紙には、この法律のねらいを,
イギリス国内で専門職としてのソーシャルワークを
Recognise 認めさせ
Support 支持し
Develop 発展させる
という大きな目標をあげています。

2ページIntoroduction
の右側に、この法案の内容を5つの柱で述べています。

1 イングランドにおける専門職ソーシャルワークの機能・肩書き・役割を法律で定めることで支援する。
2 「ソーシャルワーカー総監」をおく。Chief Social Worker 「検事総長」の「総長」というイメージがありますね。
3 ソーシャルワークの業務を確実にするために「ソーシャルワーク委員会」Social Work Commissioning Board をおく。
4 ソーシャルワーク実践を支援するために「総括ソーシャルワーク局」Generic Social Work Boards をおく。
5 法律によってソーシャルワーク大学 A College of Social Workを作り、高い実践レベルを維持し、効果的な公的サービスの実現を期する。


【各章の構成】

第1章 定義
第2章 ソーシャルワーカー総監
第3章 ソーシャルワークの組織
第4章 ソーシャルワーク実践
第5章 ソーシャルワーク大学
第6章 ソーシャルワークの規制と監視及び勤務倫理
参考資料


【ソーシャルワークの役割】

第1章第1節では、ソーシャルワークの内容として、次の6項目を挙げています。

1 人々の生活を変えるよう援助することによって社会正義social justiceを促進する。

2 人々のニーズにあわせ、社会的包摂social inclusionと社会への包み込みthe cohesion of society をめざす。

3 虐待の危険にあるものや他人から危害を受けそうなものを守る。

4 人々が他人を虐待したり他人に危害を与える可能性を減らす。

5 自尊心 self respectを高め、家庭、グループ、地域内でお互いが尊敬しあうようにする。

6 家庭、グループ、地域の紛争や困難を減少させる。


以下、各章を1ページで説明しています。各章の関連に注意しながら説明を進めている。
(→以下次号。「紙芝居方式」)
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4 コメント

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ソーシャルワーク法案 (さはら)
2010-10-25 21:59:08
Bonn1979さま


情報提供、ありがとうございます。
小生の性格上、ソーシャルワーク方法論に興味を寄せることが多く、そのパートを中心に斜め読みしました。


もしかして、ソーシャルワーク実践に必要なテクノロジーやスキルはこういうものです…という大胆な宣言を期待していましたが、やはりそれは難しいようです。

別のリンクの情報を参照する限り、「Plagiarism results in social worker’s removal from practice」というタイトルの記事がBASWのHP上に掲載されています。


http://news.basw.co.uk/post/1396745522/plagiarism-results-in-social-workers-removal-from

もしかしたらこの件が、法案に絡んであるのかもしれませんね。

とりあえず、Generic Social Work というターム(小生流でいえばジェネラル・ソーシャルワーク)が出てきただけでも、努力を認めることにしましょう。


Part4 では、サービスを受給しているクライエントに対する(サービス投入)結果を改善するために、エビデンス・ベイスド・プラクティスを重視する姿勢が鮮明に出されたことは注目されてもよいと思います。


専門職組織の力量 (bonn1979)
2010-10-26 07:06:40
さはらさん

コメントありがとうございます。

私自身
イギリスも
ソーシャルワークも弱いので

貴重なコメント助かります。

少し前から
BASWの記事にひんぱんにでてきていたのです。

ソーシャルワーカーの重要さを
社会に訴えねばならない
というラインが続いていた。

私としては
政府から自立した専門職組織の
自負と気概のようなことを
一番学ぶべきでは?

と思いました。

現実は
「社会福祉士法以降」の日本は
完全に政府の指揮下ですね。
http://blog.auone.jp/sahasaha/ (たしかに)
2010-10-26 08:04:29
イギリスでは、ソーシャルワーカー志願者の学生がおよそ半減したという分析結果もあるそうですから(星野信也教授の論文による)、確かに社会へのアピールを必要とするでしょうね。


如何せん、日本は官僚(お役所)があれこれ口を出してくる事実上の社会主義システムですから、小生を含め、それに慣れきっていますね。


日本は、ケアマネージャー(介護支援専門員)の知名度が一気に上がり、反面ソーシャルワークはいまだに『(ソーシャルワーク)?なんですかそれ』という話が一般的でしょうか。


human dignityを護る仕事…こういうコンセプトが社会に広まることは大切ですね。
本末転倒 (bonn1979)
2010-10-28 22:39:05
さはらさん

重ねてのコメント有難うございます。

たしか
教科書には
ソーシャルワークの技術の一つに
ケアマネジメントが書いてありましたね。

大昔、前田大作先生には
なんどもそのことを言われました。

医療政策が医療費政策によって動き
介護問題が介護保険で動く
というのは
理念なき
日本の政策形成のいきつくところで
その象徴がソーシャルワーク問題ですね。

そういう視点から見ると
介護保険制度の日常の中にありながら
ソーシャルワークの原理面を追及されようとする貴兄の姿勢には敬服し期待しています。

PS
私も最近というか
今日あたりから
twitterを事実上やめました。
意味は認めるのですが
時間がもったいない
というか140字では誤解ばかり
という気持ちがしてきました。

純粋に
おしゃべりを楽しむのは良かったのですが。

引き続き
Social Care Worker のほうもよろしく
お願いします。

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