介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第1588号  日本の社会政策を白紙で考え直す提案【星野信也先生】

2008-09-21 21:38:23 | ネットの世界
【きっかけ】
① 今日、9月21日付、このブログ第1586号で、湯浅 誠『反貧困』を読む(その13)
を書きました。湯浅氏のポイントというべき「すべり台」社会の概念を紹介しました。

② Maa-chan さんから、この記事にコメントをいただき、この「貧困」の問題の深さを多くの方が心配していることを改めて思いました。

③ 「反貧困」は、薄い本ですが、豊富な実例と実証データに支えられた本で、まさに「格闘すべき本」と考えて、これからも少しずつ読み解いていく予定です。

④ 私のブログ BOOKMARKの2番目にリンクしている「MSW Lab Blog」 の母屋(HP)から、星野信也先生の最近の論文を知りました。

【難解だが明快な論文】
星野信也先生のホームページの左下にINDEXがありますので、
その7番目の論文名
「格差社会、Poverty & Social Exclusion」をクリックください。
*A4で7ページです。(「福祉社会学研究」5, 2008 に掲載されたもの)

星野先生は、イギリスのLSE(世界のSocial Policy 研究をリードしてきた)で学び、アメリカで学位をとられた。旧東京都立大学などで教鞭をとられた。

【日本の社会政策の分析】
日本では、「社会福祉」「社会保障」「社会政策」などの概念が縦割りに構成されていて、学会もその縦割りから脱却できない。
学問的な訓練をしていない私がこのブログでそういう垣根にとらわれず書いているのは、既存の学会にコミットしていないからでもあります。
星野先生は、イギリス、アメリカでの研究から、国際的に通ずる概念を獲得されている。

論文5ページの中ほどで、日本の政策の現状をよく整理されている。

○ 縦割り→生活保護が機能しない
○ 「社会保険主義」のまま、いま実際に起きている貧困を救えない

専門的な概念と用語が沢山出てくるので難解ですが、私が日本の「社会福祉」「社会保障」「社会政策」でこれまで読んだ文献のなかでは最も鋭い文献だと思います。

【基本的解決策の提案】
論文の後半部分p.6 で、7項目にわたる提案が示されています。
・用語は難解
・国際比較的な知恵に支えられている
・今の日本の制度にとらわれず、白紙の状態で根本的に考え直している。

【政治家の役割】
この提案は(文章や概念が難しいのですが)、日本の社会の将来を方向付ける内容です。
それだけに、学者・研究者レベルには任せない。
ましてや、官僚制度の中での思考にはなじまない。

○ このような提案を素材として、その意味するところを政治家が十分理解して、発展させ、政治家自身のことばで国民的な議論へと発展させるべきでしょう。

*自民党の総裁選の候補が、明日が投票だというので、TVでは街頭で「社会保障を守る・・」と内容の無いスローガンだけを絶叫していたが・・星野先生の提案とはだいぶギャップがありますね!

○ 国際的な制度比較や実証研究を活用すること(先生は、OECD資料を活用)、改めてモデルとしての北欧やNZなども学んでみたいと思いました。

*写真は、今夕18:05、鹿児島市内。

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2 コメント

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社会政策のあるべき姿 (おうぎや)
2008-10-17 17:18:24
先生ご無沙汰しています。

星野先生は、社会政策(ソーシャルポリシー)における「選別主義」VS「普遍主義」論は、イギリスにおいてはすでに過去形化し、現在では
無用の議論を避けるために「ターゲッティング」という用語に置き換わっている主旨を書評で展開されていたように記憶しています。
また日本で言う「中負担、中福祉」というあいまいなテーゼにも鋭い批判を寄せていました。

結局、社会政策により、その国の社会のグランドデザインがどうあるべきなのかがよくわからないままになっているのが実情ではないでしょうか。

このご時世、国民の声と現実は、今の社会政策との乖離が著しいことを物語っているようにしか見えません。そういう意味で、星野先生の論文は、現在の状況に一石を投じるものであると小生も同意いたします。
なつかしいです (bonn1979)
2008-10-17 23:00:24
おうぎやさん
コメントありがとうございます。

「社会のグランドデザイン」が見つからないまま、テレビ写りのいい芸人のような政治家や研究者の発言だけで世の中が動いていきますね。

「社会福祉概論」を担当しているものとしては、ひとごとではありませんが。

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