写真は、4月22日、介護福祉コース3年生の技術演習で。担当のQさん(非常勤講師)写す。
第22回社会福祉士国家試験問題については、これまでも触れてきましたが、もう少し丁寧に1問1問検討してみます。新しい試験問題を深く学ぶことによって、社会福祉の基礎的な勉強にもなります。
私の専門や、準備の都合で、
さしあたり、「社会保障論」から始め、順次政策系の各科目をとりあげます。
* * * * *
第22回社会福祉士国家試験問題徹底研究(その1)社会保障論
第21回までは、社会保障論として10問出題されてきたが、第22回(新カリ)では7問となっている。この7問の概観を、この「基礎編」で行っている。
第3502号 2010.01.31
この7問を順次考察する。今日は、その第1回として、問題49を解きながら考え、必要に応じて、関連サイトなどをリンクしていきます。
【問題49】
社会保障の理念や対象及びその範囲に関する次の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1 「社会保障制度に関する勧告(1950(昭和25)年)」で示された保険的方法又は公の扶助の対象となる困窮の原因とは、疾病、負傷、分娩、怠惰、死亡、老齢、失業、粗暴、多子その他、である。
2 「平成18年度社会保障給付費」によれば、社会保障財源の収入総額に占める公費負担(国及び地方自治体)の割合はおよそ5割を超えている。
3 その第22条に「すべて人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し…」と謳ったのは、アメリカ、イギリスによって唱えられ、後に連合国が承認した、いわゆる「大西洋憲章(1941年)」の一文である。
4 社会保障の所得再分配機能のうち、生活保護制度に代表されるように所得の高い者から低い者へ再分配することを、水平的所得再分配機能という。
5 我が国において公的社会保険制度と呼ばれるものは、年金、医療、労働者災害補償、雇用、介護の5つである。
【考察】
社会保障に関する概念・基礎的な制度・歴史に関する問題です。
いきなり正解ですが、選択肢5が正解ですね。疑いの余地が無い。
次いで、選択肢4ですが、所得再分配には、垂直的な再分配と水平的な再分配があるという基礎的な対概念がありますね。国語的にも、生活保護制度の場合は、垂直的な分配であることはわかりそうですね。
二宮厚美氏 衆議院の公聴会の記録を引用したブログ。
残った3つの選択肢はいずれも難易度が高い。実践では、選択肢4と選択肢5から正解に達するが、出題される可能性のある基礎知識として、それぞれ無視しない。
まず、選択肢2の「社会保障給付費」は、例年、出題されている。本年も、【問題50】に出題されています。このような統計を暗記するような要素のある出題は是非避けてほしいが、出題する側からは、毎年統計が発表されるし、正解を確定しやすいということで出しやすい。
「公費負担が5割を超えている」という点が誤りであることは、統計を見なくても社会保障の常識的な知識で類推できる。
厚生労働省発表 社会保障給付費
選択肢1の1950年勧告を原文で読んだ人は少ないと思われますが、この勧告自体は、戦後の日本の社会保障制度の発展にとって重要なので、しばしば出題されてきました。
社会保障の対象となる要因を列挙しているが、「怠惰」と「粗暴」とが違うのではないかと気がつく。
「怠惰」については、ビバリッジの「5つの悪」の1つであることを想起したい。
第22回問題22 選択肢1及び選択肢2
資料編 カテゴリ907 戦後社会保障の歴史の中での1950年勧告の位置づけについて主要な文献をリンクしています。
最後に、選択肢3の大西洋憲章ですが、この内容に社会保障に関連する条項が含まれていることを知っている人はかなりの勉強家ですね。戦時中に、戦後の国際社会の原理を謳ったこの憲章については、イギリスがちょうどビバリッジの委員会の検討が進んでいた時期とも重なり、チャーチルによって主張された経緯が第2次大戦回顧録(原文で5巻。チャーチルはこの回顧録でなんとノーベル文学賞を授与された)に詳しい。大西洋憲章は、全項で8項目からなり、社会保障に関する条項は、その6項めである。
大西洋憲章(ウィキペディア)
《2321字》
第22回社会福祉士国家試験問題については、これまでも触れてきましたが、もう少し丁寧に1問1問検討してみます。新しい試験問題を深く学ぶことによって、社会福祉の基礎的な勉強にもなります。
私の専門や、準備の都合で、
さしあたり、「社会保障論」から始め、順次政策系の各科目をとりあげます。
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第22回社会福祉士国家試験問題徹底研究(その1)社会保障論
第21回までは、社会保障論として10問出題されてきたが、第22回(新カリ)では7問となっている。この7問の概観を、この「基礎編」で行っている。
第3502号 2010.01.31
この7問を順次考察する。今日は、その第1回として、問題49を解きながら考え、必要に応じて、関連サイトなどをリンクしていきます。
【問題49】
社会保障の理念や対象及びその範囲に関する次の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1 「社会保障制度に関する勧告(1950(昭和25)年)」で示された保険的方法又は公の扶助の対象となる困窮の原因とは、疾病、負傷、分娩、怠惰、死亡、老齢、失業、粗暴、多子その他、である。
2 「平成18年度社会保障給付費」によれば、社会保障財源の収入総額に占める公費負担(国及び地方自治体)の割合はおよそ5割を超えている。
3 その第22条に「すべて人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し…」と謳ったのは、アメリカ、イギリスによって唱えられ、後に連合国が承認した、いわゆる「大西洋憲章(1941年)」の一文である。
4 社会保障の所得再分配機能のうち、生活保護制度に代表されるように所得の高い者から低い者へ再分配することを、水平的所得再分配機能という。
5 我が国において公的社会保険制度と呼ばれるものは、年金、医療、労働者災害補償、雇用、介護の5つである。
【考察】
社会保障に関する概念・基礎的な制度・歴史に関する問題です。
いきなり正解ですが、選択肢5が正解ですね。疑いの余地が無い。
次いで、選択肢4ですが、所得再分配には、垂直的な再分配と水平的な再分配があるという基礎的な対概念がありますね。国語的にも、生活保護制度の場合は、垂直的な分配であることはわかりそうですね。
二宮厚美氏 衆議院の公聴会の記録を引用したブログ。
残った3つの選択肢はいずれも難易度が高い。実践では、選択肢4と選択肢5から正解に達するが、出題される可能性のある基礎知識として、それぞれ無視しない。
まず、選択肢2の「社会保障給付費」は、例年、出題されている。本年も、【問題50】に出題されています。このような統計を暗記するような要素のある出題は是非避けてほしいが、出題する側からは、毎年統計が発表されるし、正解を確定しやすいということで出しやすい。
「公費負担が5割を超えている」という点が誤りであることは、統計を見なくても社会保障の常識的な知識で類推できる。
厚生労働省発表 社会保障給付費
選択肢1の1950年勧告を原文で読んだ人は少ないと思われますが、この勧告自体は、戦後の日本の社会保障制度の発展にとって重要なので、しばしば出題されてきました。
社会保障の対象となる要因を列挙しているが、「怠惰」と「粗暴」とが違うのではないかと気がつく。
「怠惰」については、ビバリッジの「5つの悪」の1つであることを想起したい。
第22回問題22 選択肢1及び選択肢2
資料編 カテゴリ907 戦後社会保障の歴史の中での1950年勧告の位置づけについて主要な文献をリンクしています。
最後に、選択肢3の大西洋憲章ですが、この内容に社会保障に関連する条項が含まれていることを知っている人はかなりの勉強家ですね。戦時中に、戦後の国際社会の原理を謳ったこの憲章については、イギリスがちょうどビバリッジの委員会の検討が進んでいた時期とも重なり、チャーチルによって主張された経緯が第2次大戦回顧録(原文で5巻。チャーチルはこの回顧録でなんとノーベル文学賞を授与された)に詳しい。大西洋憲章は、全項で8項目からなり、社会保障に関する条項は、その6項めである。
大西洋憲章(ウィキペディア)
《2321字》
あの問題数に立ち向かうには、まず、何より体力ですよね(笑)
試験終わる頃は、フラフラになります!(◎_◎;)
コメントありがとうございます。
こういったまじめ路線は
ほんとは好きではないですが
JUNKOさんが
まえに書いておられた
「暗記よりは理解」といった
試験勉強のためにも
こういうアプローチをしておこうと思いました。
この1問を書くのに
体力というよりは
時間を使いました。
若さにはかなわない。
経験で補うことに。