介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

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第4036号 橘木俊詔:社会保障制度をどう改革するか。

2010-11-01 04:59:50 | 政治社会
第3988号(2010.10.11)

で、橘木俊詔先生の『安心の社会保障改革』(東洋経済新報社)を紹介しました。重要な内容なので、少しずつ読んでいくといいましたが、その後、日時がたっていきます。

そこで、思いきって、主な国々の社会保障の歴史と特色を解説した部分を飛ばして、一気に、この本の結論部分である第6章を簡単にまとめてみます。
今日のタイトル「社会保障制度をどう改革するか」が第6章 pp.177-203 です。


【第5章までの要約】

1 福祉の提供には反対意見や懐疑的な見方が必ずある。
 福祉というものが経済効率からいってマイナスであるという議論があり、他方では、北欧のように福祉と経済とが両立している国もある。現実の経験と学問の世界の両方で議論は伯仲している。

2 政治家の指導力が重要である。
 世界の国々を見ると、福祉政策・社会保障制度の進展には、有名な政治家の名があげられる。これに対して、日本では政治家ではみあたらない。橘木先生は、後藤新平や武藤山治をあげています。

3 福祉思想や学問もかなり重要である。
 その政治家を動かし、政治家に信念をもたせる意味で学者の役割もみのがせない。ウエッブ夫妻、ベバリッジ、ケインズ、ミュルダール夫妻など。日本は、外国の思想を移入してきたので独創的な考えを提供して社会を変革したということは残念ながらない。

4 宗教家と宗教思想の意義も重要だ。
 ヨーロッパにおける福祉とキリスト教の関係は大きい。これに対して、東洋では、儒教は公的福祉とは関係が薄い。仏教は福祉とは(儒教よりは)親和性が高い。

5 以下は、(橘木先生は、各項目を別に挙げているが)技術的な事項なので、そのうち幾つかを列挙するにとどめます。
① 政府という公共部門の役割を重視するかどうか。(アメリカは、政府が限定的な役割を行う思想であって例外的だ)
② 財源には、社会保険料と税収の2つがある。
③ 定額拠出・定額給付か、比例拠出・比例給付かの違いがある。
④ 社会保障制度に所得再分配効果をどの程度期待するかは、国によって違う。
⑤ 福祉の民営化論が残っている。(今は下火になった)
⑥ 「ベーシック・インカム」の思想が注目されている。(橘木は、時期尚早とする)


【日本の社会保障制度改革で留意すべきこと】

*適宜、ブログ管理者が要約している。

① 年金、医療、介護の財源に関して、税をより投入すべきである。
② 生活保護制度は重要だが、年金、医療、介護、失業などの各制度の充実が優先だ。
③ 生活保護制度の役割はゼロにはならない。ミーンズ・テストの改善などの処置が必要。
④ 企業福祉の役割は終えた。
⑤ 失業保険制度の充実は重要だ。(2009年の新政権の登場で改良された)
⑥ 最低賃金額のアップは貧困の削減に寄与する。


【政府の対応は】

P 7149 政府・与党社会保障改革検討本部

が、10月28日に開催された。菅総理大臣の短い挨拶が官邸のサイトにアップされているが、具体的な内容は示されていない。


*写真は、南九州市頴娃。鹿児島の自然と食 の2010.10.30付け記事からお借りしました。
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2 コメント

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こんばんは。 (JUNKO)
2010-11-02 00:17:33
先生が噛み砕いて要約して下さり理解力の低い私も楽しく勉強が出来ます。
いつもありがとうございます。

>政治家を動かし、政治家に信念をもたせる意味で学者の役割もみのがせない。ウエッブ夫妻、ベバリッジ、ケインズ、ミュルダール夫妻など。日本は、外国の思想を移入してきたので独創的な考えを提供して社会を変革したということは残念ながらない。

このように歴史を通して現代社会を見渡しても日本は「作られた福祉」を既製服のように着せられ右往左往しているように感じます。
日本では無理なのかなあ、という考え方そのものも大きな壁を作っているように感じます。
壁を作っているのは (bonn1979)
2010-11-02 14:29:16
JUNKOさん

お読みいただいて嬉しいです。

何度かにわけて
と思っていても駄目ですね。

「日本では無理かなぁ」
というのは世界を勉強した日本のエリートの心情でしょうね。

明治のはじめ
新渡戸稲造は
ヨーロッパでキリスト教を自慢されて
「日本には武士道がある」
と、英語で武士道のことを誇った。

「代表的日本人」は
実際に、誇るべき5人の日本人を
英語で書いた。

カーター大統領だったか
この本を熟読して日本人を尊敬したという。

私が
無理と知りつつ
「Social Care Worker」を
書こうとしているのは
日本には
「介護福祉」という概念で代表される
「普通の日本人」が逆転大ホームランを
打てる日がある・・・
という希望によっています。

エリートというか既得権に胡坐をかいている人々は
「右往左往」している。

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