今夕のNHKクローズアップ現代では、NHKが全国の地域包括支援センターに質問した結果に基づき、「介護保険からもれる人」の救済問題を放映していました。
厚生労働省宮島老健局長
淑徳大学結城准教授(厚生労働省社会保障審議会介護保険部会委員)
などの発言がありました。
実態は取材によってよくわかりましたが、問題の整理が十分されていないように思われました。
【介護保険を利用できない事例】
1 受給の申請をしない(申請主義であるため)
2 申請できない状況(認知症の場合のように申請ということが理解できない)
3 介護保険料の滞納による給付制限(自己負担が高くなる。追納には期間制限)
【介護保険を利用できない場合の対応・・現行システム】
1 受給しないが何らかの対応が必要な場合・・・老人福祉法による職権による対応
2 認知症のように本人に申請する能力を欠く場合・・・民法による成年後見制度
3 介護保険の給付制限あるいは1割自己負担が支払えない・・・生活保護法による介護扶助
というふうに形式的には対応している。
【実際に機能していない理由】
これは、「介護保険法」とか「老人福祉法」とか「生活保護法」とかをばらばらに理解しても解けない問題です。
日本の法制では、縦割りのために、これらの関係法律の連携方法が法律上不明確です。
このほかに「社会福祉法」という基本的な事項を定めた法律もありますが、この社会福祉法では、関係法令の関係を明確にしていません。
こういうふうになった原因は、原案を作成する役所の縦割りにあります。
厚生労働省の内部において、これらの諸法令を総合的に調整する部局が実質上ない。
大臣官房の部局が問題を整理できたとしても、大臣以下の政治家の強い指導力が無いと実現は無理ですね。
* かって旧「厚生省」の時代には、大臣官房に「政策課」があって、政策間の調整をしていたが、行政改革による旧労働省との統合の際、このセクションは廃止されている。政策の統合機能を担当するポストはあるが組織としての調整機能は著しく弱体化した。
【ドイツの場合】
このように日本の法制上の欠陥を知ることができたのは、ドイツの法制との比較からです。
第2960号 2009.06.06
では、山下利恵子さん(当時、博士課程在学。2010年3月卒業)の論文を紹介しています。
ドイツでは、社会保障・社会福祉に関する法制は、「社会法典」という1つの法律に統合されています。(Sozialgesetzbuch, SGB)
第1章 総則 基本的な事項を定める
第11章 介護保険
第12章 公的扶助(介護扶助を含む)
この結果、各制度の隙間に落ちるような事例が理屈上でないような構成を作り上げています。
どうして、このような差ができたかというと、ドイツでは(教科書に書いてあるとおり)法律家(国会議員)が政策の大枠を決めて法律を作っているからです。(役所は、国会で決められたことを実施するための組織)
*現に、ドイツ介護保険法は、当時の社会労働大臣ブルーム(10年以上大臣だった)の精力的な努力で成立したのに対して、日本では、実質的な原案は当時の厚生省が作成したラインで決められた。
【ドイツ社会法典 冒頭部分】
Erster Abschnitt
Aufgaben des Sozialgesetzbuchs und soziale Rechte
§ 1 Aufgaben des Sozialgesetzbuchs 社会法典の目的
§ 2 Soziale Rechte 社会権
§ 3 Bildungs- und Arbeitsförderung
§ 4 Sozialversicherung 社会保険(医療保険、年金保険、介護保険など)
§ 5 Soziale Entschädigung bei Gesundheitsschäden
§ 6 Minderung des Familienaufwands
§ 7 Zuschuß für eine angemessene Wohnung
§ 8 Kinder- und Jugendhilfe
§ 9 Sozialhilfe 社会扶助(生活保護)
§ 10 Teilhabe behinderter Menschen
Zweiter Abschnitt
Einweisungsvorschriften
Erster Titel
Allgemeines über Sozialleistungen und Leistungsträger 総則的な共通規定
§ 11 Leistungsarten 給付の種類
§ 12 Leistungsträger 給付の提供者
§ 13 Aufklärung 啓蒙
§ 14 Beratung 相談
§ 15 Auskunft 情報提供
§ 16 Antragstellung 異議申し立て
§ 17 Ausführung der Sozialleistungen 実施
Zweiter Titel
Einzelne Sozialleistungen und zuständige Leistungsträger 各給付とその所管組織
§ 18 Leistungen der Ausbildungsförderung
§ 19 Leistungen der Arbeitsförderung
§ 19a Leistungen der Grundsicherung für Arbeitsuchende
§ 19b Leistungen bei gleitendem Übergang älterer Arbeitnehmer in den Ruhestand
§ 20
§ 21 Leistungen der gesetzlichen Krankenversicherung
§ 21a Leistungen der sozialen Pflegeversicherung →介護保険
§ 21b Leistungen bei Schwangerschaftsabbrüchen
§ 22 Leistungen der gesetzlichen Unfallversicherung
§ 23 Leistungen der gesetzlichen Rentenversicherung einschließlich der Alterssicherung der Landwirte
§ 24 Versorgungsleistungen bei Gesundheitsschäden
§ 25 Kindergeld, Erziehungsgeld und Elterngeld
§ 26 Wohngeld
§ 27 Leistungen der Kinder- und Jugendhilfe
§ 28 Leistungen der Sozialhilfe →社会扶助
§ 28a
§ 29 Leistungen zur Rehabilitation und Teilhabe behinderter Menschen
P 7096 関連条文 抄(ドイツ語)
*写真は、新神戸駅付近で。
厚生労働省宮島老健局長
淑徳大学結城准教授(厚生労働省社会保障審議会介護保険部会委員)
などの発言がありました。
実態は取材によってよくわかりましたが、問題の整理が十分されていないように思われました。
【介護保険を利用できない事例】
1 受給の申請をしない(申請主義であるため)
2 申請できない状況(認知症の場合のように申請ということが理解できない)
3 介護保険料の滞納による給付制限(自己負担が高くなる。追納には期間制限)
【介護保険を利用できない場合の対応・・現行システム】
1 受給しないが何らかの対応が必要な場合・・・老人福祉法による職権による対応
2 認知症のように本人に申請する能力を欠く場合・・・民法による成年後見制度
3 介護保険の給付制限あるいは1割自己負担が支払えない・・・生活保護法による介護扶助
というふうに形式的には対応している。
【実際に機能していない理由】
これは、「介護保険法」とか「老人福祉法」とか「生活保護法」とかをばらばらに理解しても解けない問題です。
日本の法制では、縦割りのために、これらの関係法律の連携方法が法律上不明確です。
このほかに「社会福祉法」という基本的な事項を定めた法律もありますが、この社会福祉法では、関係法令の関係を明確にしていません。
こういうふうになった原因は、原案を作成する役所の縦割りにあります。
厚生労働省の内部において、これらの諸法令を総合的に調整する部局が実質上ない。
大臣官房の部局が問題を整理できたとしても、大臣以下の政治家の強い指導力が無いと実現は無理ですね。
* かって旧「厚生省」の時代には、大臣官房に「政策課」があって、政策間の調整をしていたが、行政改革による旧労働省との統合の際、このセクションは廃止されている。政策の統合機能を担当するポストはあるが組織としての調整機能は著しく弱体化した。
【ドイツの場合】
このように日本の法制上の欠陥を知ることができたのは、ドイツの法制との比較からです。
第2960号 2009.06.06
では、山下利恵子さん(当時、博士課程在学。2010年3月卒業)の論文を紹介しています。
ドイツでは、社会保障・社会福祉に関する法制は、「社会法典」という1つの法律に統合されています。(Sozialgesetzbuch, SGB)
第1章 総則 基本的な事項を定める
第11章 介護保険
第12章 公的扶助(介護扶助を含む)
この結果、各制度の隙間に落ちるような事例が理屈上でないような構成を作り上げています。
どうして、このような差ができたかというと、ドイツでは(教科書に書いてあるとおり)法律家(国会議員)が政策の大枠を決めて法律を作っているからです。(役所は、国会で決められたことを実施するための組織)
*現に、ドイツ介護保険法は、当時の社会労働大臣ブルーム(10年以上大臣だった)の精力的な努力で成立したのに対して、日本では、実質的な原案は当時の厚生省が作成したラインで決められた。
【ドイツ社会法典 冒頭部分】
Erster Abschnitt
Aufgaben des Sozialgesetzbuchs und soziale Rechte
§ 1 Aufgaben des Sozialgesetzbuchs 社会法典の目的
§ 2 Soziale Rechte 社会権
§ 3 Bildungs- und Arbeitsförderung
§ 4 Sozialversicherung 社会保険(医療保険、年金保険、介護保険など)
§ 5 Soziale Entschädigung bei Gesundheitsschäden
§ 6 Minderung des Familienaufwands
§ 7 Zuschuß für eine angemessene Wohnung
§ 8 Kinder- und Jugendhilfe
§ 9 Sozialhilfe 社会扶助(生活保護)
§ 10 Teilhabe behinderter Menschen
Zweiter Abschnitt
Einweisungsvorschriften
Erster Titel
Allgemeines über Sozialleistungen und Leistungsträger 総則的な共通規定
§ 11 Leistungsarten 給付の種類
§ 12 Leistungsträger 給付の提供者
§ 13 Aufklärung 啓蒙
§ 14 Beratung 相談
§ 15 Auskunft 情報提供
§ 16 Antragstellung 異議申し立て
§ 17 Ausführung der Sozialleistungen 実施
Zweiter Titel
Einzelne Sozialleistungen und zuständige Leistungsträger 各給付とその所管組織
§ 18 Leistungen der Ausbildungsförderung
§ 19 Leistungen der Arbeitsförderung
§ 19a Leistungen der Grundsicherung für Arbeitsuchende
§ 19b Leistungen bei gleitendem Übergang älterer Arbeitnehmer in den Ruhestand
§ 20
§ 21 Leistungen der gesetzlichen Krankenversicherung
§ 21a Leistungen der sozialen Pflegeversicherung →介護保険
§ 21b Leistungen bei Schwangerschaftsabbrüchen
§ 22 Leistungen der gesetzlichen Unfallversicherung
§ 23 Leistungen der gesetzlichen Rentenversicherung einschließlich der Alterssicherung der Landwirte
§ 24 Versorgungsleistungen bei Gesundheitsschäden
§ 25 Kindergeld, Erziehungsgeld und Elterngeld
§ 26 Wohngeld
§ 27 Leistungen der Kinder- und Jugendhilfe
§ 28 Leistungen der Sozialhilfe →社会扶助
§ 28a
§ 29 Leistungen zur Rehabilitation und Teilhabe behinderter Menschen
P 7096 関連条文 抄(ドイツ語)
*写真は、新神戸駅付近で。
1と2はセットである場合も多いので、地域で支援が必要な方の把握は大事ですね。
自分がケアマネをやっている時は、このような情報はやはり医療機関からもたらされることが多かったように思います。
ですので、地域包括や居宅介護支援事業者が、医療機関に「このような患者さんがいらっしゃればご相談ください」と協力体制を築けると、「介護保険から漏れる人」は少なくなってくるのかと。自分も関わりのある医療機関にはお話していました。
局長の話は、立法の背景を語りながら今の自分の役割を語っていませんでした。「じゃー、あなたはどうしたいのか」と問いたい気持ちが募りました。「あんたの評論を聞きたいのではない」と腹が立ってきました。
問題点はわかりました。日本はどうすれば老人にやさしい国になれるのでしょうか?
確かに介護保険は大きなパラダイム転換だと思いますが、社会福祉の領域として、制度であってほしいと思ったのがその施行時の感想です。制度自体別のものと言わればそうですが、介護保険という篩から落ちてしまう人、必要な支援があってもそれを求めることできない人、契約という流れでは到底支援できないケース、様々に、措置時代、社福や在介支がその使命のもとやってきたと考えます。この改正で地域支援事業はもとの福祉課領域に戻るのではと思っています。地域包括支援センターが両方の法律にのっかる?。どちらにしても多様なニーズではなく「必要な対応や支援」ということの認識にたってほしいと思いますね。
ひろしさん
又佐さん
コメント有難うございました。
制度の問題
社会の問題
専門職の対応
いろいろのレベルがありますが
一番公的な支援を要する部分に
目が行かないのは
本物とはいえませんね
まだまだ
声をあげねば
とあせります。