サイレント

静かな夜の時間に・・・

氷河期(1)

2006-09-16 06:42:42 | Weblog



前項の亜空間を読んで、
鋭い人ならある疑問が生じたと思う。

その疑問とは、こうだ。

もし、異世界のヤクザ組織が陰で糸を引いて、
現世における耐震偽装問題を発生させたのなら、
耐震偽装で発覚した違法建築の全てにおいて、
それらの設計前の段階ですでに、
異世界ヤクザが現世の人間に干渉しているはずである・・・

そうすると、
異世界ヤクザがこの世に干渉したのは、
かなりの年月をさかのぼった過去においてのはずだ・・・

それなのに、
私がボンヤリと推測した中で、
ほんのこの近年にヤクザに転落した連中が、
その後に起こした未遂事件かもしれないと思ったのは、
時系列からいうと、矛盾してるのではないか・・・

少なくとも、
耐震偽装の違法建築が建てられたあとからでは、
異世界ヤクザが現世に干渉できるはずがない・・・

このような疑問を持った人が、
いたとしてもおかしくない。


現世的な時間感覚というか常識で考えれば、
まったくその通りである。
しかし、その現世的な時間感覚が通用しないのが、
異世界の異世界たるゆえんなのだ。

乱暴なまでに簡単にいってしまえば、
この物質世界とは違う世界、
異世界、別世界、あの世、どう表現してもいいが、
そこにおいては驚くべき事に、
過去、現在、そして未来、
これらの区別が、あまり存在しない。

これはちょっと、わかりにくいことかもしれない。

つまり、こういうことだ。
異世界の住人たちは、
この世の「過去」に干渉して、操作できるのである。
現世の当事者たちに気付かれないうちに、
自在に「過去」を塗り変えてしまうのだ。


例をあげてみたい。

ある人が、かの有名な平将門の首塚の前で、
すごく将門を怒らせるような行為をしたとする。
その人間は、将門に祟られるかもしれない。

で、その人が、
首塚で無礼をはたらいた翌日に、
職場で転勤の辞令を上司から突きつけられたとする。
全然希望していなかったような遠い地方へ。

この、本人にとって苦痛に満ちた突然の転勤の話は、
ひょっとしたら、将門の祟りかもしれない。
しかし、
よく考えるとおかしな面がある、かもしれない。

転勤辞令を人事責任者が発行したのが、
なんと、本人が上司に告げられた二日前だったりする。
平将門の首塚で無礼を働いた前日だ。
もしこれが将門の祟りだとしたら、時系列的に矛盾する。
将門の祟りとして転勤になるのにしては、
その転勤は、祟られる前の段階で決定しているからだ。

このようなことは、
異世界の住人にとっては、普通のことである。
無礼を働いたまさにその翌日に、
転勤辞令でその相手に仕返しをするのに、
過去にさかのぼって小細工をするというのは、
特に珍しいことではない。


三次元の世界を「空間の広がり」とすると、
四次元の世界は「空間」に「時間の流れ」を加えた、
いわば「時空」といえるものだとよくいわれる。

霊的な異世界は、まさに「時空」の世界であり、
日本からアメリカに旅行にいくような感覚で、
現在から、過去や未来に往来が可能・・・らしい。


前置きが長くなった。

異世界のヤクザ組織を狩った三日後に、
私に別の仕事が舞い込んできた。
クリスマス・イヴを三日後に控えた日だった。

私はこの仕事に、
みっちりと約三週間も関わることになった。
クリスマス・イヴも年末年始も吹っ飛んでしまい、
ひっそりと孤独に働いた。

静かな夜の時間に・・・