私「さて、誰をどう使うかな」
カゲ「・・・・・・」
私「・・・・・・」
カゲ「・・・・・・」
私「なんかいいたそうだな」
カゲ「・・・・・・」
私「・・・・・・」
カゲ「たまには自分でやったらどうです?」
カゲは、時に私の心臓をえぐるような、
そんな厳しいことをいう。
私「私が? 自分で?」
カゲ「そうです」
私「・・・・・・」
カゲ「ずっとやらないと忘れますよ」
それはその通りだ。
そういえばもう半年近く自分ではやっていない。
ずっと、カゲたちを使ってばかりだ。
最後に私が自ら手を汚したのは、
たしかブッチを仕留めたときだ。
ブッチを葬ってから私は仕事がイヤになった。
一時的に引退してしまった原因のひとつでもある。
ブッチとは、
私が一年以上かけて何度も争った、
かつて私の最大のライバルだった男だ。
彼はこの世に肉持ちとして生きていた。
不撓不屈の巨漢の大男だった。
彼は何度私に敗れても、繰り返し挑んできた。
どれほど傷付いても、決してあきらめなかった。
そして最後には、彼は脳出血で死んだ。
その最後のとき、私はカゲたちに任せきりにはせず、
自ら陣頭に立って動いていた。
帰ってこい!!
どんなに呼んでも、彼は二度と帰ってはこなかった。
戻ってもう一回やろう!!
私がどう叫んでも、彼は二度と戻ることはなかった。
私「わかった」
カゲ「・・・・・・」
私「今回は私もやる」
カゲ「・・・・・・」
私「ちょっとだけな」
カゲ「・・・・・・」
今回の相手は、
ほぼ間違いなく数万を超える配下が周辺にいるだろう。
いや、数万では過小評価になるかもしれない。
私が使うカゲたちのような存在が、
相手にも無数にいるはずと考えるべきだ。
私はカゲたちに陽動を任せて、
その間隙を突いて自分で動くことにした。
陽動を受け持つグループには、
核となる者が必要だ。
簡単には倒されることのない、強い者でないといけない。
「十兵衛を呼べ」
あの、柳生十兵衛を、ぜひ想像してもらいたい。
十兵衛は五本指の中のエースである。
そして同時に、
私のカゲたち全体の中でのエースでもある。