私はネットでクトゥルー神話のことを、
ごくおおざっぱに調べた。
正直いってほとんど知らないからだ。
万物の王、知の支配者、水の精、風の精、
地の精、時空の超越者、深き者ども・・・
今回初めて耳にする固有名詞が多く、
発音しずらくてとても覚えられない。
それに、
詳細はよくわからないが、いろいろ揃っている。
気になるものがあった。
時空の超越者・・・
私「こいつか?」
カゲ「・・・・・・」
私「気象の過去をいじったのはこいつか?」
カゲ「・・・・・・」
私「もしや、人じゃないのか?」
カゲ「・・・・・・」
私「こいつは肉を持って人として生きてないか?」
カゲ「・・・・・・」
古い勢力が復活して実権を取り戻そうとする場合、
だいたいは、
主力の誰かをこっそりと人間として生まれさせ、
先行して蘇らせておくことが多い。
その際、先兵として送り込まれたその人間は、
成長期に記憶を思い出すこともあれば、
成人してから思い出すこともあるし、
一生思い出さないこともある。
あらかじめ与えられた霊的な役割は、
はっきりと意識して行うこともあれば、
記憶を取り戻さないまま無意識に行うこともある。
または、
自分の意志で元々の役割を放棄や変更することも・・・
私は待っていた。
この時まで待っていた。
気象の過去操作をしたであろう誰かが、
どういう系統のどういう相手なのか、
ほんの少しでもいいので見当がつくのを、
私はこの一週間、ずっと待っていた。
時空操作で過去を塗り変えた場合、
決して避けられない、ひとつのデメリットがある。
履歴が残るのである。
履歴とは何なのか、どこに残るのか、
それらはここでは言及しない。
とにかく過去を操作すると必ず履歴が残ってしまうのだ。
時空戦で優位に立てるかどうかは、
ひとつのポイントとしては、
履歴の検索能力がどれだけあるか、ということだ。
私「列島全域の寒波について・・・」
カゲ「・・・・・・」
私「過去を操作した者の履歴を・・・」
カゲ「・・・・・・」
私は一呼吸おいた。
高ぶった気持ちを落ち着かせるためだ。
「これから早急に検索しろ」
私は努めて平静を保ちながらいった。
「もう検索は済んでます」
カゲは私に即答した。