サイレント

静かな夜の時間に・・・

氷河期(7)

2006-11-03 11:18:09 | Weblog



私「さて、誰をどう使うかな」
カゲ「・・・・・・」
私「・・・・・・」
カゲ「・・・・・・」
私「なんかいいたそうだな」
カゲ「・・・・・・」
私「・・・・・・」
カゲ「たまには自分でやったらどうです?」

カゲは、時に私の心臓をえぐるような、
そんな厳しいことをいう。

私「私が? 自分で?」
カゲ「そうです」
私「・・・・・・」
カゲ「ずっとやらないと忘れますよ」

それはその通りだ。
そういえばもう半年近く自分ではやっていない。
ずっと、カゲたちを使ってばかりだ。


最後に私が自ら手を汚したのは、
たしかブッチを仕留めたときだ。
ブッチを葬ってから私は仕事がイヤになった。
一時的に引退してしまった原因のひとつでもある。

ブッチとは、
私が一年以上かけて何度も争った、
かつて私の最大のライバルだった男だ。
彼はこの世に肉持ちとして生きていた。
不撓不屈の巨漢の大男だった。
彼は何度私に敗れても、繰り返し挑んできた。
どれほど傷付いても、決してあきらめなかった。
そして最後には、彼は脳出血で死んだ。

その最後のとき、私はカゲたちに任せきりにはせず、
自ら陣頭に立って動いていた。

帰ってこい!!
どんなに呼んでも、彼は二度と帰ってはこなかった。
戻ってもう一回やろう!!
私がどう叫んでも、彼は二度と戻ることはなかった。


私「わかった」
カゲ「・・・・・・」
私「今回は私もやる」
カゲ「・・・・・・」
私「ちょっとだけな」
カゲ「・・・・・・」

今回の相手は、
ほぼ間違いなく数万を超える配下が周辺にいるだろう。
いや、数万では過小評価になるかもしれない。
私が使うカゲたちのような存在が、
相手にも無数にいるはずと考えるべきだ。

私はカゲたちに陽動を任せて、
その間隙を突いて自分で動くことにした。

陽動を受け持つグループには、
核となる者が必要だ。
簡単には倒されることのない、強い者でないといけない。


「十兵衛を呼べ」
あの、柳生十兵衛を、ぜひ想像してもらいたい。

十兵衛は五本指の中のエースである。
そして同時に、
私のカゲたち全体の中でのエースでもある。