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第五章 分割・民営体制の矛盾の表面化と国労運動
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第二節 「分割・民営化」政策の矛盾
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二 JR各社の経営・営業政策
国鉄からJRへの移行にともなって大きく変化したのは経営・営業政策であった。その第一の柱は、収益拡大である。すなわち、増収を最優先の目標にかかげた、輸送需要の確保・増大をはかるための積極的な経営・営業政策の展開である。大都市圏ならびに都市間輸送、およびコンテナ輸送を中心とした輸送力の増強や新型車両の投入、各種企画商品の発売による新規需要の開拓などがそのあらわれであった。また、旅行センターの拡充、旅行エージェントとの協調など営業活動の積極的展開、増収をねらった関連事業の著しい拡大も、JR移行後の大きな特徴である。国鉄時代には法的規制によって、関連事業の展開が制約されていたが、「分割・民営化」とともに実施された鉄道事業に対する政府規制の緩和にともない、事業範囲に対する法的制約が解除されたことから、JR各社はいっせいに関連事業の拡大、経営の多角化に乗り出しているのである。
一方、収益拡大・増収政策とならんで推進されているのが、業務運営の効率化と経費の節減による経営効率化の推進である。なかでもとくに重点的に推進されているのが要員の合理化である。旅客6社について見てみると、各社発足時の1987年度首の18万7196人から95年度首には17万9210人へと実に8年間で約8○○○人もの削減が行われた。
こうした収益拡大と効率化の追求というJRの経営・営業政策が端的にあらわれているのが、旅客輸送サービスの分野である。すなわち、莫大な交通需要があり、複数の交通企業が乱立する大都市圏や競争的交通機関が存在する都市間においては、乗客獲得が収益拡大につながるため、この間、乗客獲得のための車両の改良や駅の改良・美化、ダイヤの増発、そして極めて日本的であるが接客態度の改善といったサービス改善をJR各社はすすめてきた。莫大な赤字と債務の重圧の前に旧国鉄経営陣の多くは経営意欲を喪失し、このため晩年の国鉄は駅や車両の改良、フロント・サービスといった乗客サービスの改善を放置していただけに、JRになってからのこうした変化はいっそう際立ち、テレビなどメディアを媒体にした各社の大々的な宣伝とあいまって、とくに都市圏の利用者に対して〝JRになってサービスが良くなった?という印象を与えている。
他方、大都市圏とは対照的に、利用者の数が少なく、JR各社にとって利益が見込めないローカル圏では、不採算路線の合理化でサービス水準は切り下げられるとともに、ローカル鉄道の放棄がすすんでいる珂えば、廃止路線について。言えば、「分割. 民営化」を前後して廃止された路線は実に83路線3157キロにも達している。路線が廃止された地域のなかで、かつて鉄道に対する依存度が高かったところでは、地域経済. 社会の衰退. 荒廃といった問題も生まれている。
ところで、増収と経営効率化を柱とするJRの経営政策は、とくに本州3社については予想以上の「経営成果」を生み出した。
すなわち、この3社は「分割. 民営化」時に政府が策定した「経営見通し」を大きく上回る増益を実現しているのである。しかし、JR各社による徹底した増収と効率化の追求は、労働者の労働条件を大きく損なっており、労働者の健康破壊も広がっている。また、スピードアップやダイヤ最優先の運行、安全確保のための投資不足や短期間で極端な合理化がすすんだことなどが原因と推定される、国鉄時代には見られなかったような異常な事故も続発しており、安全な鉄道輸送の確保という点で大きな問題を生み出している。
続く
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