恋染紅葉

映画のこと、本のこと、日々の些細なことを綴ります。

「手の中の天秤」桂望実

2013-12-03 | 本(あ~さ行の作家)
裁判で執行猶予がついた判決が出たときに、被害者や遺族が望めば、加害者の反省具合をチェックし、刑務所に入れるかどうかを決定できる制度「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が出来た。かつて、その制度の担当係官をし、今は大学の講師として教壇に立つ井川が学生たちに当時の経験談を語る。

こういう制度があったらどうだろう?
加害者のその後の様子を知ったところで、失ったものは帰ってこないし、それで気が晴れるのだろうか?
本文中で何度も出てくるように、「人それぞれ」が本当のところだろう。
何があっても、前に進むしかない。それが時間というもの。

井川が語る事例は重いものがあるが、若き日の井川と先輩チャランとの関係はほっこり温かいものがある。とくにラストは微笑ましい。
新卒で入った職場での人間関係が晩年まで続くって、幸せな出会いだったんだなあと。