噛噛堂しみじみ備忘録

鞄に本。リュックに本。
遅読、乱読、併読、積ん読、それでも中読。いえ中毒。
どうにもこうにも本とのハナシ。

相剋の森/熊谷達也

2007年02月04日 | 噛読了/総評の備忘録

本作の方が「森シリーズ第一弾」てことなのだが。
ぜひ、「邂逅の森」を先に!
2作同士に、ちょいとサプライズな「繋がり」があるのだけど、
それをサプライズにしているのは、「邂逅の森」が先にあってこそ。

 地方誌の編集者を脱皮してフリーライターの地位を確立しようとする美佐子。しかし取材テーマ「熊の捕獲」は、自然保護団体の信念と、マタギの思いとに両挟みとなり、重く美佐子にのしかかる。「山は半分殺してちょうどいい…」写真家・吉本が口にしたその言葉の意味とは…?

『自然との共生』という美辞なんぞ、
本当に『自然』と向き合わざるを得ない人々に向かって安易に吐けぬ言葉。
しかし、のっけからそれを吐き、
安易に吐けないはずの、その言葉の本質と、向き合わざるを得なくなった美佐子。。。
美佐子こそは一般都会ピープルの代表。
その美佐子の視点を通して、
我ら一般都会読者は、共に否応無くモンダイと対面していく…てな構図です。

ん?
それだけじゃあ、カチカチの自然環境問題小説じゃん?
いえいえ、どっこい、ドラマあり。
しかも多重構造の。
美佐子の恋愛については、まあ、とってつけたよな感がなきにしもあらずですが、
「邂逅の森」と、何やらうっすらリンクしはじめる気配の後半以降は、
ミステリー小説にも似て軽くジェットコースターしますし、
「邂逅の森」でも表現されたマタギの魅力に、ここで再びトキメキます。

そして、
更に、
もいっちょオマケあり。な展開。

この、もいっちょ付けときました!が熊谷達也の醍醐味か?
「邂逅の森」ほどの野太さはないけれど、ウマさはに値します。