
1993年3月録音のクインテット作品です。
今作は、秋吉さんのルーツである「ビ・バップ」に焦点を当てた企画とライナーノーツには書いてありますが、内容は1940年代のビ・バップとは一線を画します。
マイルス・デイビスの「ディグ」こそビ・バップを感じさせる選曲ですが、J.J.ジョンソンの「ラメント」、ルイス・ボンファ「カーニバルの朝」、キューバ民謡「ラ・ムクラ」(秋吉さん編曲)に加えオリジナルの「レイジー・デイ」(「塩銀杏」収録)、「ハーレクイン・ティアーズ」(「砂漠の女」収録)、アップタウン・スクロール」(「ウィッシング・ピース」収録)、いずれもビ・バップとは結び付かない曲です。
しかし、ビパップ風のアンサンブルが聴かれる曲もあります。
一方、メンバーを見て驚くのは、コンテ・カンドリ(tp)でしょう。
秋吉さんより2歳年上の、ウエストコースジャズの大ベテランです。
これまでの秋吉さんとは接点がないように思えますが、ルー・タバキンが参加していたテレビ番組「トゥナイト・ショー」のドク・セヴェリンセン・ビッグ・バンドに在籍していたとのことなので、その辺の関係かもしれません。
また、ウディ・ハーマン楽団の出身であり、チャーリー・パーカーのソロをサックスアンサンブルで演奏するバンド「スーパーサックス」の録音にも参加していたので、ビ・バップをルーツに持っているともいえるでしょう。
実際、カンドリのソロはビ・バップ調です。
つまり、秋吉さんの他にもうひとりビ・バップ世代のカンドリを加えたのがこのアルバム面白いところです。
ただ、そんなことを意識しないで聴いても充分に楽しめるアルバムです。