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蓄音機でジャズを聴く!

蓄音機とジャズを中心に、日々の出来事をつづる。

秋吉作品を聴く「ディグ」

2024-10-19 15:00:09 | ジャズ


1993年3月録音のクインテット作品です。

今作は、秋吉さんのルーツである「ビ・バップ」に焦点を当てた企画とライナーノーツには書いてありますが、内容は1940年代のビ・バップとは一線を画します。

マイルス・デイビスの「ディグ」こそビ・バップを感じさせる選曲ですが、J.J.ジョンソンの「ラメント」、ルイス・ボンファ「カーニバルの朝」、キューバ民謡「ラ・ムクラ」(秋吉さん編曲)に加えオリジナルの「レイジー・デイ」(「塩銀杏」収録)、「ハーレクイン・ティアーズ」(「砂漠の女」収録)、アップタウン・スクロール」(「ウィッシング・ピース」収録)、いずれもビ・バップとは結び付かない曲です。

しかし、ビパップ風のアンサンブルが聴かれる曲もあります。

一方、メンバーを見て驚くのは、コンテ・カンドリ(tp)でしょう。

秋吉さんより2歳年上の、ウエストコースジャズの大ベテランです。

これまでの秋吉さんとは接点がないように思えますが、ルー・タバキンが参加していたテレビ番組「トゥナイト・ショー」のドク・セヴェリンセン・ビッグ・バンドに在籍していたとのことなので、その辺の関係かもしれません。

また、ウディ・ハーマン楽団の出身であり、チャーリー・パーカーのソロをサックスアンサンブルで演奏するバンド「スーパーサックス」の録音にも参加していたので、ビ・バップをルーツに持っているともいえるでしょう。

実際、カンドリのソロはビ・バップ調です。

つまり、秋吉さんの他にもうひとりビ・バップ世代のカンドリを加えたのがこのアルバム面白いところです。

ただ、そんなことを意識しないで聴いても充分に楽しめるアルバムです。




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秋吉作品を聴く「シック・レディ」

2024-10-12 12:18:03 | ジャズ


「91(ナインティワン)」レーベルからの3作目は、1991年11月録音の「変則」トリオアルバムです。

ピーター・ワシントン(b)、ルイス・ナッシュ(drms)とのトリオに4管のアンサンブルが加わりますが、管楽器がソロをとるのはラスト1曲だけで他の7曲はアンサンブルに徹しています。

前作「クレオパトラの夢」・前々作「四季」とトリオ作が続いたので少し趣向を変えようということでしょうが、簡単にコンボとしないところがアレンジャー:秋吉敏子らしいです。

アンサンブルの4人は当時のビッグバンドメンバーで、ジョン・エッカート(tp,flh)、スコット・ロビンソン(as,bs)、ウォルト・ワイスコフ(ts)、マット・ファインダース(alto tb,bass tb,tuba)です。

収録曲は縁あるジャズメンによる5曲と秋吉さんのオリジナル3曲(1・4・6)です。

1「マイ・エレジー」
 「トシコ・マリアーノ・カルテット」や「孤軍」などで演奏されたおなじみの曲
2「トラヴェリン」ジョン・ルイス作
3「ソフィステケイテッド・レディ」デューク・エリントン作
4「シック・レディ」
 「トゥッティ・フルーティ」収録曲
5「ドント・ビー・アフレイド・オブ・クラウン」チャールズ・ミンガス作
6「レディ・リバティ」
 「ウィッシング・ピース」収録曲
7「ブルー・ボッサ」ケニー・ドーハム作
8「ノー・デューズ・ブルース」ルー・タバキン作

91レーベルは、この後もいろいろな趣向で秋吉さんのアルバムを制作していきます。

70年代のディスコメイト・レーベルとともに秋吉さんの多彩な作品を記録した功績は、ベイシー晩年の作品群を残したノーマン・グランツに匹敵するものだと思います。



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秋吉作品を聴く「モノポリーゲーム」

2024-09-15 15:43:59 | ジャズ

1998年6月録音の作品です。

前作では青森県森田村から委嘱された「フォーシーズンズ・オヴ・モリタ・ヴィレッジ」という大作が中心でしたが、今作ではUCLAとサンフランシスコ・ジャズ・フェスティバルからの依頼で作曲した「琴とジャズオーケストラの組曲」が収録されています。

この組曲は日系3世の琴奏者ミヤ・マサオカとの共演で、「京都パラドックス」・「カリビアン・ドリーム」・「アーバン・ラプソディ」の3部構成です。

これまで鼓や津軽三味線などの和楽器を加えた曲を作ってきた秋吉さんですが、それらは音楽に色彩・カラーをつける程度の意図だったそうです。

それに対して今回の依頼は「琴との共演」が前提というチャレンジングなものであり、結果として「作曲面で新なディメンションが開けた」と満足されていたようです。

他の収録曲は以下の通りです。
①ジャズ・クラブ:NHKFMの「ジャズ・クラブ」のテーマとしてNHKの委嘱で作曲したオープナーにふさわしい軽快な曲です。

②グラス・シーリング:アメリカ大統領選でも話題になっている「ガラスの天井」は、元々はシリコンバレーで働く東洋系アメリカ人たちによって使われだした、差別による「見えない出世の壁」という意味の比喩で、秋吉さんも黒人男性中心のアメリカジャズ界にあって同じような「壁」を感じたのではないか、と児山起芳氏はライナーノーツに書かれています。

③モノポリーゲーム:アルバムタイトルになっているこの曲は、秋吉さんが20年近く温めてきた「モノポリー・ゲームの面白さを生かす」というアイディアを実現したとのことです。

⑤ステイト・オブ・ザ・ユニゾン:秋吉さんにとって初となる「バンド全体がユニゾンを聴かせどころにした」曲で、うきうき楽しくなるようなラストナンバーを意図したものです。

益々意欲的な秋吉さんと結成14年となる成熟したバンドによる快作だと思います。



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この一枚「ストレート・ライフ」アート・ペッパー

2024-04-07 16:12:17 | ジャズ


いわゆる「復帰後」のペッパーは、ヴィレッジヴァンガードでのライヴ盤を別にして1980年の「ソー・イン・ラヴ」以降の作品しか聴いたことがなかったのですが、「トゥデイ」が思った以上に良かったので翌年(1979年9月)録音のこのアルバムも聴いてみたくなりました。

リズムセクションが前作のスタンリー・カウエル(p):セシル・マクビー(b):ロイ・ヘインズ(drms)からトミー・フラナガン(p):レッド・ミッチェル(b):ビリー・ヒギンズ(drms)に総入れ替えされています。
レコーディングに際してリズムセクションが変わるのは普通のことではありますが、前作がヘインズを除き新感覚のプレイヤーだったのに対し、名手ぞろいのオールスターズとのセッションになっているのが興味深いところです。特にレッド・ミッチェルの太くゴツゴツした音は魅力的です。

選曲は、オリジナルの「サーフ・ライド」、「ストレート・ライフ」、「メイク・ア・リスト」に「ネイチャー・ボーイ」と「セプテンバー・ソング」というスタンダードのパラードを加えた構成で、ラテン・リズムの「メイク・ア・リスト」にのみ前作にも参加していたケネス・ナッシュのパーカッションが加わっています。

ペッパーは、「ヴィレッジヴァンガード」でもジョージ・ケイブルス(p):ジョージ・ムラーツ(b):エルヴィン・ジョーンズ(drms)という、これも魅力的なリズムセクションと共演しています。

タイプの違う様々なリズム隊と次々にレコーディングをしているところに、やる気に満ちたペッパーの心境がうかがえます。

中古盤が高騰している昨今ですが、この時期のペッパーは1000円以下で買えるのでもっと聴いてみたいと思っています。

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秋吉作品を聴く「フォーシーズンズ・オブ・モリタ・ビレッジ」

2024-04-07 11:28:13 | ジャズ

1996年7月録音のビクター移籍後初のビッグバンド作品です。

中心になっている組曲「フォー・シーズンズ・オブ・モリタ・ヴィレッジ」は青森県森田村から依頼されて作曲したもので、「リポーズ(冬:休息の時)」、「ポリネイション(春:受粉の季節)」、「ノリト(祝詞:夏、祭りの季節)」、「ハーヴェスト・シャッフル(秋:収穫の季節)」という4部構成の大作です。

なぜ冬から始まるかというと、農村のハイライトは収穫の秋だからで、曲も秋吉さんが好きなシャッフル・リズムで盛り上げています。

冒頭の「ダンス・オブ・ザ・グレムリン」は、収録時間が長いCD時代になってアルバムの構成をコンサートのように考える、という秋吉さんがオープナーとして書いた3拍子の曲です。

組曲の後には、渡米50周年を迎えた秋吉さんが、どうしても昔のことを思い出してしまうという心の状態に素直に従って書いたという「レトロ・ゾーン」、2年前に50年ぶりの再会を果たした、学生時代にピアノを習った楊先生に捧げた「チャイナ・リメンバード(マイティーチャー、ミスター・ヤン)」が続きます。

秋吉さんとルー・タバキンのビッグバンド作品はどれも良いですが、このアルバムは特に好きな作品のひとつです。

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