トシコ=タバキン・ビッグ・バンドの10作目のアルバムは、これまでとはちょっと違った趣向のものです。
もともと秋吉さんのビッグバンドは、秋吉さんの作品だけを演奏する、というのがコンセプトでした。
ところが、このアルバムは全曲ルー・タバキンの作品を秋吉さんがオーケストレーションしたものです。
秋吉さんはこのアルバムについて、「従来の先品パターンに変化を与え、ちょうど良い息抜き」になる、「どちらかといえば肩の凝らない作品」で「たまにはこうしたものも良いでしょう」、「このアルバムを通じて、ビッグバンドによるルーの作品を味わう機会を持てることは、嬉しい限り」などと語っておいでです。
収録曲は、ドン・バイアス(ts)を追悼して書いた「ア・ビット・バイアスト」、ソニー・クリス(as)追悼の「ラメント・フォー・ソニー・クリス」、「レット・ザ・テープ・ロール」、信楽焼の狸と「証城寺の狸ばやし」にインスパイアされたと思われる「タヌキの夜遊び」、「桜の最後の花びらが落ちる風情を表現しよう」とフルートのために書いた「落ちる花びら」、ビッグバンド2作目の「ロング・イエロー・ロード」で発表された「イェット・アナザー・ティア」、全6曲です。
このアルバムは、秋吉さんにビッグバンド結成を勧め、コ・リーダーとしてバンドを成功へと導いてくれたルー・タバキンへの感謝の1作なのでしょう。