ふるさとの山が 雪をかぶる
遠くから 山の全容が見える
夏の日 登山道を登り
頂に広がる高原を 歩きまわった
放牧された牛が 草を食む中を
せり出した岩の上に 腰かけ
はるか下界を見下ろし 時を過ごしもした
それらが遠くに ひとつのかたまりとなって
輝いている
すべてを 内に含んで
我が思い出と 共に
ちょうど宇宙に浮かぶ この上なく美しい地球が
すべてを 内に含み
輝いているように
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ひとつ ひとつ
遺書を書くように
詩を綴る
やがては 永遠なる時間の中に
埋もれ 消えていく
花が 自然の中に枯れ
やがては 土に還っていくように
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余分なものを
削ぎ落として 削ぎ落として
なおそこに 残るもの
それは こうして生きて動いている
心臓の鼓動と
そうして 我が魂と
それだけは 何よりも確かなもの
そう信じて 詩を綴る
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地球が 太陽のまわりを一周する
それを 一年と定める
途切れることのない 時間の流れの中に
節目を入れ 元日とする
そうして新年を迎え 新年を祝う
そのたびごとに 新たな気持ちになる
そのたびごとに 自然さえも 神々しく見えてくる
このように のっぺらぼうの日常生活の中に
節目を入れることによって
そのたびごとに 新たな活力と希望が わいてくる
これははるか 先人が残してくれた 大いなる知恵
我々が人間として 心豊かに生きていくために
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年の暮れの 冬至の夜
長くなだらかに続く 坂の上より
見わたせば
はるか 盆地の底に
街の灯が ひろがる
空には 星がまたたく
街のそれぞれの 灯りから
家族団欒の声が 聞こえてくる
透明な大気の層が 街の上空をおおう
そこから 大いなるものの沈黙の声が
聞こえてくる
深く 静かに 豊かに
それが我が魂にまで 染み入る
すべての 生きとし生けるものの中に
慈愛に満ちて
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取るに足らぬ 私が
人生について 悩み苦しむ
我が人生は 他の者からみても
つまらぬものに 思えるだろう
それでも私は こうして生きている
人生の先に 光を見い出そうと
魂の救いを 求めて
老いてなお 私は
人生について 悩み苦しむ
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人は 時の流れの中に
とどまることなく 生きている
心は常に 揺れ動く
波がうねるように
昼が来て 夜が来るように
きょう 喜びの中にいても
あすは 悲しみの中に沈む
今この瞬間を 写真に収めても
時の流れの中に やがて色あせ
過去の中に 埋もれていく
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詩は 魂の表現方法
その詩は 言葉によって成り立つ
しかし その言葉によって
物事の真の姿が 変形していく
あなたが たったひとこと
心から 悲しいと言う
そこに 何よりも信じるに足る
詩が 生まれる
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世界文学の名作
それは 人が人として生きていくために
避けることのできない
悩みと苦しみ 喜びと悲しみ
そして 光と闇
そういうものに焦点をあてて 書かれている
そして 人が人として生きていくための
力となり 助けとなる
夜道を照らす 外灯となって
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温泉街の 細い道
その道の端に 猫が一匹
車が通り過ぎるのを 待っている
その横をまるで 幼子がいるかのように
車がゆっくりと 通り過ぎていく
何事もなく
平和な 町の中を
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年の瀬の夜
明日は 窓ガラスを拭こう
そう決めて 次の日は
窓ガラスを拭くことに 専念する
他の事を 考えることなく
そして夜は ひび割れて痛む指先に
軟膏をすり込む
こうして年の瀬の一日が 暮れていく
それが何よりも 大切なことに思えてくる
こうして生きている 身にとって
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