弱き者
取り残された者
歴史の中に埋もれていく 多くの 名も無き人々
彼らと 共に生きる
彼らの喜びと 悲しみの中に
そうして彼らと共に 歴史の中に埋もれていく
人間の人間としての 人生を生きながら
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秋の 透明な光の中に
すすきが
白や ピンクのコスモスの濃淡が
風に揺れる
色づいた柿の ひとつひとつが 光り輝く
黄金色に実った稲穂が 頭をたれる
充実した命が 大気に満ちる
豊かな ハーモニーとなって
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人生の岩場を 登る
その 確かな足場
さらなる 一歩のための
そういう 芸術作品を求める
我が 人生のために
人々の 道しるべのためにも
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同じ時代の
同じ空間に 共に生き
こうして 同じ空気を吸っている
多くの 掛け替えのない人々
笑いながらも 泣きながらも
時には 喧嘩をしながらも
彼らの息吹が 歓声が
大気の中に 消えていく
そうして 時代の経過とともに
これらのすべてが 過去の中に 埋もれていく
それでもそれらは 大地の記憶の中に
人類の記憶の中に 残されていくのだろうか
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社会の中に 人知れず
埋もれている 魂をさがす
嘘偽りのない 魂を
宝石を探すように
我が魂のためにも
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世論が 常に 正しいとは限らない
絶対多数が 正しいとは限らないように
人間である限り
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老い行く 我が心には
若き 啄木の歌よりも
老いた 茂吉の歌が心にしみる
我が残りの人生には
茂吉の歌集と
そして 芭蕉があればいい
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ひょっとした拍子に 地球に生命が生れた
そして 長い長い年月をかけ 人間にまで進化した
そうして 人間に魂が宿った
人間は 魂が宿るところ
魂のすみか
その魂というものの 不思議さ
豊かさを求め 仲間を求め 浮遊する
共に 歌を歌うために
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夏の暑さに 木陰に涼む
草の上に 腰を下ろしながら
まわりの エノコログサが ツユクサが
ヨモギが 風に揺れる
地には アリが這い コオロギが飛び跳ね
カマキリが 頭をもたげる
木の中からは セミの鳴き声が 聞こえてくる
このように すべてに名がある
種としての 名が
そして私は ヒトとして ここにいる
心臓の鼓動を 感じながら
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野道を歩きながら
ふと 立ち止まり
空を見上げて 思う
このまま 私のすべてが
大気の中に とけてしまえたならと
あとかたもなく
そんなことを夢想しながら
野道を歩く
老い行く 私の
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太陽が沈み 闇が深まると
魑魅魍魎が 跋扈しはじめる
そこここに
人の心の中にも
不安と恐れと共に
太陽の光が 夜の月を 淡く照らす
闇に 救いの手を 差し伸べるように
そうして空が 徐々に白み
太陽が 顔を出せば
光が 大気に充満し
魑魅魍魎は どこかへ 雲散霧消する
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人と人の問題の ほとんどは
どうにもならない
人の心の小ささ 狭さ
心の器が 小さいばかりに
わずかな事にも
人と人の間に 波が立つ
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言葉によって 真実に至ることなどできない
人も言葉も 完全なものではないのだから
真実は 言葉の向こうに 静かに佇んでいる
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心の ひっかかりを
でこぼこを 平らにならす
風通しが良くなるようにと
誰をも 受け入れられるようにと
そう願いながら そうできたならと
そのために 私が私でなくなったとしても
そんなことは 何事かあらんと
ちっぽけな私に 言い聞かせながら
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