クレジットカードの切り替えの関係で
月額使用料が払えず
Gooのメールアドレスが使えなくなりました
ずいぶん昔に設定してしたので
パスワードや秘密の質問を忘れてしまい
立て直せません
でも
基本的に買い物にしか使用していなかったので
他のアドレスに変更すれば問題はないです
ただひとつ
某「PBem」の最後のリアクションが…
だけども
ここ数か月の沈黙を見る限り
主催者が完全に情熱を失っており
このまま「未完」に終わりそうなので
別にいいか
クレジットカードの切り替えの関係で
月額使用料が払えず
Gooのメールアドレスが使えなくなりました
ずいぶん昔に設定してしたので
パスワードや秘密の質問を忘れてしまい
立て直せません
でも
基本的に買い物にしか使用していなかったので
他のアドレスに変更すれば問題はないです
ただひとつ
某「PBem」の最後のリアクションが…
だけども
ここ数か月の沈黙を見る限り
主催者が完全に情熱を失っており
このまま「未完」に終わりそうなので
別にいいか
馬年なのでシマウマ柄リアさん
こういうことが可能なのがリアのウリです
それはさておき
(大人の事情により)次回
「レッスルPbem」で我らがΣリアがどのような活躍するのか
…ぶっちゃけワタクシにもわかりません
原因は
牛耳る予定だった団体がどっかのお嬢様に潰されて
当初の目的見失ったから…とか
「アクション考えようにも
他のプレイヤーのアクションやら
新女の某大会とか情報全然足り無いよー
全部揃ったら手をつけよー(そのまま数ヶ月)」
…とか考えていたからですが
一番の原因は「ヤラナキャー」と思う間に時間ばかり流れたからです
すいません
とはいえ
前回時点でドラマ的にはいい感じにまとまっとったし
キャラクター的にほぼ完成しているので
自由に動くのもアリと思います
要は「ニンゲン諦めが肝心」
そんな訳で
次回アクション「リア最大最後の活躍」にご期待ください!!
予想では2月か3月か4月
そうでなければ来年の今頃には
公開できると思います
おまけ
新必殺技として用意していた
通称「サドンデスパンチ」(指輪をつけて殴る)
あと某フィストアンドなんちゃらにリアが参戦しなかったのは
リア「…反則と凶器攻撃と場外乱闘がリアのプロレスのキモやからな
あんなルールだったらリア様の価値半減や
…それに優勝したら殴る蹴るしか能の無い
サルレスラーの皆さんの立つ瀬が無くなって可哀想
(なお優勝出来るとは言っていない)」ワケではなく
当時(寿の手を逃れるため)海外にいたからです
さて、Σリアの“凱旋試合”。
<(5)休憩明け 30分一本勝負>
《沢登 真美》(Panther Gym)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
VS
《村上 千春》(Panther Gym)
&
〈Σリア〉(フリー)
休憩前の試合で起こった〈イレス神威〉の乱入事件でいまだざわつく中、リアの入場。
ウォン姉妹を引き連れてリングインするや、ガウンを早脱ぎで脱ぎ捨てる。
――おおっ。
場内から息を呑む声が響く。
その下には、丈の短いダーク系チャイナドレス。
シンディーから受け取ったヌンチャクで、華麗な演舞を見せ付ける。
――おかえりなさいリア様!
――俺たちの! リア様が! 帰ってキターー!!
――リア様ーーっ! リアッ、リーアッ!! リアアアーーーーー!!
マニア層からの熱烈な歓声に応えるリア。
もっとも、この派手なパフォーマンスが、余計にパートナーのご機嫌を損ねたのはぜひもない。
ゴングが鳴るや、千春が日向をいたぶる展開。
タッチを求めるリアだが、千春、見向きもしないありさま。
(ちぇっ! ヌンチャクで殴られたくらいで……っ)
ケチな了見、とボヤいても始まらない。
千春が青コーナーに押し返されてきたタイミングで、強引にタッチ。
「てめぇ……っ」
「後はお任せっちゅうことで」
久々の日本のリング。
さすがは聖地、リングのコンディションも、観客の熱気も申し分ない。
「さ~て、なんちゃって新人王サンに、本物のプロレスっちゅうのを教えて――」
「この……おっ!」
「ンッグッ!?」
感慨にひたる間もなく、日向が突っかかってくる。
そのまま、高速フロントスープレックス!
「つっう……!」
角度といいスピードといい、新人王は伊達ではない切れ味。
立ち上がるのもまたず、ぶっこ抜き投げっぱなしジャーマン!
「~~~~っ!!」
脳天からグサリとマットに突き刺さり、たまらず頭を抱えて悶絶するリア。
(こいつ、出来る……でも!)
――ワールドの同期・八重樫に比べればさほどでもなし、と歯を食いしばって立ち上がる。
なるほど、天下の新女で揉まれているだけあって、ポテンシャルはたいしたもの――
しかし、
「こういうのも……あるっ!」
「うぐっ!?」
指を掴んでねじりあげる反則でペースを乱し、キックを乱れ打つヒール殺法で仕掛ける。
ここは、見知らぬ相手とのギリギリの試合を体験してきた、リアの場数の豊富さが生きたといえよう。
とはいえ、圧倒するには至らぬまま決着はつかず――
○沢登 VS 千春×
(11分:ノーザンライトボム)
日向の首は取れず、「新ムーヴ」も披露とはいかなかった。
(……まぁ、しゃーない)
どだい、このカードでは無理があった。
むしろ、強引に出し切らなくてよかったとさえいえる。
それはいいとしても、
「てめえっ! 何で助けに来ねぇっ!」
「いやぁ……あんなに簡単にピン取られるって思わなくて」
「何をっ!!」
千春と小競り合いをやらかすありさま。
(いや、あんたとやりあってもしゃーないから)
適当にあしらい、マイクを握ったリア、
『なかなかやるわね、“次代の大物”さん! でもこのリア様ほどでは――』
とアピールしようとした、矢先。
「……あぐっ!?」
突然、背後からイスで殴り倒された。
「修行してきたってわりには、甘いな~。また国外逃亡したほうがええんちゃう?」
「ぐ……っ、う……!」
成瀬唯の人を食った笑み、更には――
「うっふふふ……っ♪ さよ~なら……リ~ア……ちゃんっ!」
「! アンタは……ッ!」
〈大空 ひだり〉――否、〈アトラス・カムイ〉の、ブルーボックスでの一撃!
紅く染まる視界の端で、日向もまたJ1Kの輩に袋叩きにされている。
用心棒のはずの、ウォン姉妹たちは……!?
『こ、このデカブツ……!!』
「う、ふ、ふ、ふ、ふ…………」
場外で、ラダーを両手に持って大暴れする〈大空 みぎり〉……いや〈ジャイアント・カムイ〉の蹂躙に、なすすべがない。
「な~に、うちらも鬼と違うからな。ちゃんと詫びいれて筋通すなら、堪忍したってもええんやで?」
「……っ、だ、誰……がっ!」
そんな薄みっともないマネが、できるものか。
できるのなら、とっくの昔に――
「せやろな。じゃ、腕の一本くらいは、貰っとくわ」
「…………!」
マスク越しにもわかるほど嬉々として、アトラスがスレッジハンマーを振り上げる――
「――はあっ!」
「!?」
「な、何やっ?」
突然飛来した影が、アトラスをかっ飛ばす。
いやアトラスのみならず、成瀬や、日向を襲っていた連中も、リングから追い出された。
誰の仕業かと見れば、
《ウィッチ美沙》
《YUKI》
《小縞 聡美》
〈フランケン鏑木〉
《木村 華鳥》
といった面々。
新女の若手グループであった。
『貴方たちの相手は美沙たちがしてあげるのです!
そう、美沙たち――
【レッスルエンジェルス・ドリーム】がっ!』
美沙のマイクアピールに、大きなどよめきが起こる。
レッスルエンジェルス――それはかつて、《マイティ祐希子》たちが名乗った革命軍団。
その名を襲い、新たな革命の炎を上げようとするのか。
『っ、アンタらみたいなひよっこがレッスルエンジェルスぅ? そんなん、身の程知らずにもホドがあるやろ!』
『いかにもさよう――』
と、ここで鏑木がバトンタッチ、
『確かにこちとら、クチバシの黄色いひよっこぞろい。
身の程知らず、いかにもいかにも。
されどでっかい組織に属し、ガン首並べて弱いものいじめ。
そんなチンケな輩の所業、なんで黙って見ておれましょうや。
なに、諸先輩方が出るまでもない。
かるく飲み干せるものならば、どうぞ飲み尽くしてごらんなれ。
たんと悪酔い、二日酔い、ただじゃあ呑まれぬ、干し上がらぬ。
天使と名乗るは面映いが、お見せしやしょう、ひよっこの意気地――』
と、さんざん口上述べて、
『お手前方の思い通りにはさせやせん――絶対にっっ!!』
最後は、感情を剥き出しにしての咆哮。
場内大いにどよめき、騒然となったのである。
「おやおや、そこにいらっしゃるのは、いつぞやのシグマなにがしさん」
「……っ」
「これはまさしく盲亀の浮木、優曇華の花――されどどうやら、喧嘩を売るほどの価値もなさそうなご様子」
「な……っ」
「いつぞやの件、よろこんで水に流しましょう。されば御免、お達者で」
「…………!!」
いっそブン殴られた方がマシなほどの、それは恥辱であった――
◇
してやられて泣き寝入りするほど、Σリアはお人よしではない。
やられた以上、十倍でも百倍にでもしてやり返すべし。
そんな彼女だが、PG後楽園からほどなく、よりによって【ジャッジメント・サウザンド】からオファーがあった時は、目を疑った。
何でも、京都で自主興行を開催するらしい。
それにあたって、
――貴方の人気をぜひ活かしたい。
との、申し入れ。
ふざけたことを、と思いつつも、
――逃げた、と思われるも業腹や。
つまるところ、リアはこのオファーを受けたのである。
◇
<<I・W・J 京都大会>>
▼日本 京都府京都市 寿総合文化ホール
<(1)15分一本勝負>
〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)
<(2)J1Kvs新天使軍 30分一本勝負>
《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《村上 千秋》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
【レッスルエンジェルス・ドリーム】
《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
&
《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
&
〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
<(3)ブレード上原復帰戦 30分一本勝負>
《ブレード上原》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《芝田 美紀》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《中森 あずみ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈高倉 ケイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
<(4:休憩前) -KAMUI FINAL- 時間無制限一本勝負>
《ライラ神威》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
〈イレス神威〉(フリー)
<(5:休憩明け)スペシャルシングルマッチ カラテvsジークンドー 30分一本勝負>
《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
〈Σリア〉(フリー)
<(6)ノールールマッチ 30分一本勝負>
《六角 葉月》(新日本女子プロレス)
VS
〈ランダ八重樫〉(ジャッジメント・サウザンド)
<(7)J1Kvsスーパー柳生衆・1 30分一本勝負>
《サタン神威》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《スパイダー神威》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《ダイナマイト・リン》(スーパー柳生衆)
&
〈MOMOKA〉(スーパー柳生衆)
<(8)J1Kvsスーパー柳生衆・2 45分一本勝負>
《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《栗浜 亜魅》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《保科 優希》(スーパー柳生衆)
&
《近藤 真琴》(スーパー柳生衆)
<(9)メインイベント J1Kvsスーパー柳生衆・3 60分一本勝負>
《寿 千歌》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《柳生 美冬》(スーパー柳生衆)
&
《寿 零》(スーパー柳生衆)
&
《オーガ朝比奈》(スーパー柳生衆)
◇
(斉藤……フーン、元アジアタッグ王者か)
なかなかの相手ではある。
もとより、格闘技戦として闘う気などさらさらない。
この大会には、かつての同期である八重樫や高倉たちも出場しているが、接触は控えた。
あちらにも、いろいろ立場があるだろう。
(……しかし、たまげたな)
八重樫が、リアより後の試合で、しかもあの古豪・六角とシングルマッチとは。
何でも、フィストなんとかという大会に出場、準優勝したらしい。
その結果からの抜擢であろうか。
(……あっちはあっちで、お盛んみたいやしな)
高倉は、強引に復活させたWWPWジュニアヘビー級王座を死守し、防衛線を重ねているという。
(ワールド……か)
それはもう、なくなってしまったもの。
だったら過去は過去として、未来を見るべきではないのか。
(そういや高倉、なんかのタッグ王座も獲ったらしいな)
そのパートナーは、日本海女子のルカなにがしというルーキーであるという。
そのうち、手合わせしてみたいものだ……
「あらぁ、生きてたの、アンタ」
「……おかげさまで、ピンピンしてますわ」
久々に会ったおばちゃんのように気さくな態度で声をかけてきたのは、神楽紫苑である。
「命知らずねぇ~。潰されても知らないわよ~?」
「そうそう簡単には――潰れません」
「そ。まぁ、死なないように、頑張んなさい」
「……はぁ」
◇
そして、斉藤との一戦。
今やJ1Kの中では窓際ポジションになってしまった斉藤、これ以上の不覚を許されない――と気合満々。
いかにリアとて、まともにぶつかれば、たとえ勝てたとしてもただではすまないであろう。
リアも打撃には自信があるが、斉藤と正面からやり合うなどという愚行は――
「~~~っ、やってくれたなぁっ!」
顔面にいいのを貰い、鼻血がほとばしるや、リアのリミッターがブッ飛んだ。
狂戦士さながらに猛進、激しく撃ち合う。
艦隊戦にたとえるならさしづめ同航戦(敵味方が、同じ方向に向かって移動しながら行う戦闘。お互い照準をつけやすくなる)、全力で削り合う。
が、流石に正面からでは分が悪すぎる。
「はああっ!」
「……おぐっ!?」
土手っ腹に回し蹴りを食らい、胃液が吹き出す。
そこへすかさず斉藤の追撃――
「……なんてねっ!」
「!?」
ここでリアの反則殺法、「BAD END(隠し持った黒絵の具をその場で潰し、相手の目を潰す)」が炸裂。
そこへクレイモア(水面蹴り)を食らわせ、たまらず体勢を崩した斉藤に対し、
「――はあっ!!」
気合一閃、あたかも自然に剥がれたかのごとく、チャイナドレス風コスチュームを脱ぎ捨てる!
『おおおおお……!?』
場内がどよめいたのは、一瞬、素っ裸になったのか、と思われたためか。
もとより、その下には、黒と紫のダークな雰囲気のセクシーコス。
その背中には、鮮やかな龍の刺繍が躍っている。
これぞ、“クイーン・サドンデス”、その処刑ムーヴ――
華麗なるカンフーポーズから、
「これで、あんたは――」
「――BAD ENDさ!!」
強烈無比のΣキック(バズソーキック)を振り抜く!
こめかみに食らった斉藤、声もなく轟沈――
……もっとも、これら一連のムーヴはレフェリーに丸見えであったので、試合としてはリアの反則負けとあいなった。
○斉藤 VS リア×
(8分:反則勝ち)
とはいえ、「勝負に勝った」のが誰なのかは、言うまでもない。
――リア様、最高ーーー!
――汚いなさすがリア様きたない! そこにシビれるーー!
――リアーー! リアリアーーッ!! リアアアーーッ!!!
勝者さながらに、ファンの声援に答えるリア――
と、不穏なBGMが流れ、またしてもJ1Kの面々が入場ゲートに現れる。
「まったく、学習能力ないなぁ~。ちっとは考えたらどうなん?」
「もちろん、考えてますとも……!」
「!?」
突然、成瀬が花道に突っ伏した。
イスで殴打されたのである。
その下手人は、
「オラァーーッ!!」
怒号と共にイスを振り回してるのは、アークデーモンこと、安宅留美。
思わぬ仲間割れに、たまらず撤収するJ1Kの輩。
ADはリングインするや、リアと握手。
「ちゃんと払うもんは払ってもらうぜ」
「もちろん――金の切れ目が縁の切れ目、やろ?」
こんなこともあろうかと、リアはADに前もって接触、ダブルクロス(裏切り)を打診していたのだ。
確証はなかったので、結構ドキドキしていたのだが……
「……ギャラだけなら、あちらの方がええんちゃう?」
「まぁな。だが……」
誰かの下につくのは、もうまっぴら。
それなら、やりたい放題できるほうがいいに決まっている。
「……そうやな。うちも、そうさせて貰うわ」
やりたいことをやればいいのだ。
倒したい奴、気に入らない奴は、叩き潰してやる。
さしあたり……
(……今後の目標は、一人でも多くの新人を、この手で血の海に沈めるコトやな)
もはや、リアに迷いはない。
Σリアの野望の日々は、これからが本格的なスタートであった――
◇
プロレス界をほしいままに踏み渡ろうと画策する、危険な悪魔ども。
そんな彼女たちにとって、格好のイベントが、間近に迫っていた。
「スーパー・エンジェル・クラウン?」
「いえ。<アルティメット・エンジェル・クラウン>よ」
鏡から聞かされたのは、若手レスラーによる大型イベント。
もともとは新女が開催するルーキーの登龍門的大会だが、今回は他団体の選手にも大々的に門戸を開くのだという。
――まさに、おあつらえむきやな。
気に食わない新人どもを、片っ端から血祭りにあげてくれよう。
「それから……」
「え?」
「いえ。……なんでもないわ」
その先にある、J1Kと日本マット界の“最終審判”、<ジャッジメント・ショウダウン>……
フレイア鏡ですら、その全容をいまだ知らぬのだった。
果たして、リアの野望のゆくえはいかに――
(つづく)
▼東南アジア某国 名も知れぬ島の郊外リング
先人が撒いたプロレスの種は世界に散らばり、花を咲かせている。
たとえばそう、この名も知れぬ島においてすらも。
「……リングがあるだけ、マシと思わないかんか」
今にも切れそうなロープ、薄っぺらいマットしか敷かれていないリングを眺め、〈紫熊 理亜〉こと〈Σ(シグマ)リア〉はひとりごちた。
いろいろあって日本を離れた彼女は、“ママ”と慕う覆面レスラーと共にアジア諸国を遍歴、各地のプロレス団体のリングに上がってきた。
そのなかで、彼女がいかなる経験をし、どんな成長を遂げたかは、いずれ語るとして……
(まったく、かなわんなぁ。……)
最初は二人旅だったこの“アジア放浪記”。
“ママ”がリアを残してあっさり帰国してしまったことで、いまや一人旅。
日本に帰ろうにも、旅費すらない、ときている。
しかし、アジア武者修行でたっぷり辛酸を舐めたリアは落ち込む色もなく、
(ま、リアにはこの体があるしな)
さよう、腕一本あれば、地元のプロレス団体に参戦し、ファイトマネーを稼げるのだ。
この日もそうで、身振り手振りとかなり雑な英語を駆使して出場を取り付けたはいいが、どんな相手と闘うのやら、てんでわからない。
とはいえ、地下プロレスではあるまいし、
(まさか、殺し合いはさせられんやろ)
郊外の原っぱにリングをこしらえ、観客も地べたに座ったり立ったままだったり。
こんなのどかな雰囲気で、殺伐としたものを求められるとも思えない。
じっさい、彼女の前に行われた試合は、ごくふつうのプロレス。
基礎はできているが、それだけ……といってさしつかえないレベルであった。
(ここはいっちょう、“本物”ってもんを見せてやらんとな)
『ジャパニーーズ・サドンデス・クイーン、シッグーーーマ・リィーアーー!!』
割れ気味のマイクで呼び出され、颯爽とリングイン。
言葉はわからぬが、リアの妖しい美貌に観客がアッとなるのがわかる。
更にジークンドー仕込みのヌンチャク妙技を披露してみせると、それだけで大歓声。
いい塩梅に客を温めたところで、リアと相対するのは――
(……ん?)
青コーナーに陣取っているのは、胴衣姿で、両手に木の棒を持った女。
あの棒、どこかで見たことがあるような気がするのは、思い過ごしであろうか。
(ほお、こっちもなんか演武でも見せるんかな?)
と思いきや、何のアピールも見せない。
いやそれどころか、
「っ、ちょっ!?」
ゴングが鳴るや、棒を手にしたまま間合いを詰めてくるではないか。
ここでリア、ようやく思い出した。
あの棒、すなわち“オリシ”を使う格闘術――
(……“エスクリマ”!!)
師祖ブルース・リーがジークンドーに取り入れたフィリピン武術!
どうやらこの一戦、たんなるプロレスの試合ではなく……
(プロレスvsエスクリマの“異種格闘技戦”……!)
で、あるらしい。
(……英語、もっと勉強せなあかんな)
そう痛感しつつ、Σリアはヌンチャクを構え直した。……
この試合、リアは追い込まれるも、最後は逆転の「BAD END(隠し持った黒絵の具をその場で潰し、相手の目を潰す)」で反撃、打撃のフルコースで仕留め、辛うじて勝利を掴んだのである。
対戦相手からは恨みを買った気がするが……ま、仕方はない。
◇
▼中国 上海市南京路
かくのごとく、アジアでプロレス武者修行に励んでいたリアであったが、次第に、風向きが変わってきた。
その原因は、
【IWWF-A】
の出現に他ならない。
その名の通り、アメリカの最大手団体【IWWF】のアジア支部。
アジアマーケットを制するべく仕掛けられたこの組織は、瞬く間にアジア全土にネットワークを築き、多くの団体をその傘下におさめた。
仕掛け人はIWWFの切れ者《ミス・スパイク》とも言われるが、定かではない。
ともあれ、レスラーはIWWF-Aの発行するライセンスを取得せねばならない、ということになった。
こうなると、リアは面白くない。
――それって、IWWFの犬になるってことやろ。
どうやら、自由気ままなアジアあばれ旅もここまでのようだ。
――そろそろ、日本に帰ってみよか。
年も明けたし……というわけではないが、あちらもだいぶ変わっているであろう。
そんな彼女に、
『ハーイ、リア。日本に帰るんですって?』
とコンタクトしてきたのは、
『なんや、アンタらかいな』
『アンタらとはご挨拶ね』
《ブリジット・ウォン》、《シンディー・ウォン》のウォン姉妹である。
少し前までアメリカの団体【TWWA】に属していたが、今はフリーランス。
レスラーとしての腕は確かで、とりわけアジア圏の人気は多大であったが、
『私たちも、IWWFの手先になるのは面白くないのよね』
『はぁん。……それで、うちを利用して日本で稼ごうって寸法?』
『そういうこと。貴方だって、スネに傷持つ身でしょう?』
『人聞きの悪い――』
確かに日本に帰れば、大きいところでは寿一派、小さくは新女の鏑木など、リアの首を狙う連中は少なくない。
そんな物騒なところへ戻るならば、
(この連中と組んだ方が、無難かもな)
との判断は、自然な流れであったろう。
とはいうものの、気軽に考えられる話でもない。
この連中だって、どこまで信用していいものか、どうか。
(あっさり裏切って、うちの首を千歌の奴に差し出すかもしれん)
それくらいの想像は、容易に可能なのだった。
『安心して頂戴。貴方、日本では大人気なんでしょう? 貴方を立てて、私たちはサブに回ってあげる』
『……なるほどね』
大人気――決して、間違ってはいない。
あくまで関西ローカルや、プロレスマニアの間の話ではあるにせよ。
だが帰国にしても、ただ目的もなく
「どうも~、帰ってきました~」
だけでは、インパクトが弱い。
それが許されるのは、知名度十分の大物だけであろう。
自分がそこまでではないことくらい、Σリア、冷静に判断している。
ならば、どうするか?
(まずは、情報が必要やな)
ネットを見れば、日本のマット界事情はだいたいわかる。
が、それらは所詮、「表向き」のものでしかない。
(結局は、内側のもんに聞かな)
と、いうことになる。
この場合、一番頼りになりそうなのは……
(……やっぱ、あの人かな)
◇
「ずいぶん、頑張っているようね」
リアが電話をかけた相手は、フレイア鏡であった。
現在は【WARS】のGMかつ《サンダー龍子》のパートナー。
武闘派ユニット【Silberne Drache(ジルバーナ・ドラッヘ)】を率いているという。
「そろそろ、里心がついたというところかしら」
そんなに殊勝な話でもないのだけれど。
「あいにくだけれど、今のWARSは――」
龍子、鏡らSD軍。
そして新戦力を加えた【スーパー柳生軍】。
更に、【ジャッジメント・セブン】と【寿千歌軍団】が合流してさらに強大化した【ジャッジメント・サウザンド(J1K)】による三つ巴の抗争中。
しかも、フリーのヒールとしては《ガルム小鳥遊》や《SA-KI》らの実力者がそろっており、リアの入る余地はないであろう。
「まぁ、同期の子たちと切磋琢磨したい、と言うのなら、それでもいいけれど」
WARSの〈上原 凪〉や〈ティーゲル武神〉、S柳生衆の〈MOMOKA〉、激闘龍の〈ブレイヴ・レイ〉らの新人たちと前座を温める……などというのは、
(……遠慮したいな)
試合をするのはやぶさかでないが、今さらアンダーカードで若手扱いされるのもつまらない。
では、いかにすべきか?
「そうねぇ。……」
人の悪い笑みを浮かべているのが、電話越しでも伝わった。
「そうそう。私、去年のベストバウトを貰ったのだけれど」
「あぁ……はぁ、おめでとうございます」
急な話題に?マークが浮かぶ。
「もうすぐ、その授賞式があるのよ」
「はぁ」
その会場において――
「何か、『余興』が欲しかったのよね」
「……っ」
そこまで言われれば、リアにもわかる。
「――わかりました。やらせてもらいます」
「フフ、いいのかしら? 詳しい話をしなくても」
その必要はなかった。
要するに、
「ぶち壊しにすれば――いいんでしょう?」
フレイア鏡の返事はなかった。
代わりに、
「チケットの手配はしておくわ」
補足して。
「何人分必要かしら?」
どうやら、「事」を起こすタイミングは、定まったようだった。
◇
▼日本 東京都千代田区 『ホテル・ニューイチガヤ』飛龍の間
この日、昨年度のプロレス大賞の受賞式が華やかに開催された。
なお、今年の各賞受賞者は以下の如し――
・最優秀選手賞(MVP):
《マイティ祐希子》(新日本女子プロレス)
・最優秀試合賞(ベストバウト):
《サンダー龍子》(WARS)
VS
《フレイア鏡》(フリー=当時)
(WARS福岡大会:龍子(31分45秒:両者ノックダウン)鏡)
・最優秀タッグ賞:
“災凶タッグプラスワン”
《ビューティ市ヶ谷》(JWI)
《十六夜 美響》(VT-X)
〈紫乃宮 こころ〉(JWI)
・殊勲賞:
《南 利美》(ジャッジメント・サウザンド)
・敢闘賞:
《ソニックキャット》(東京女子プロレス)
・技能賞:
《内田 希》(ジャッジメント・サウザンド)
・新人賞:
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
「ろくに試合にも出ていない半病人がMVPとは、どういうことですのっ?」
「頑丈なのだけが取りえの誰かさんとは違うのよね~」
「何ですって――」
市ヶ谷と祐希子は一触即発、
「やれやれ。バカが2人そろうと、やっかいそのものだな」
「その点は同感ね。あぁでも、バカは3人でしょう? 貴方もふくめて」
「ほお……?」
龍子と南が視殺戦を展開したり。
いつ乱闘が始まるかと、関係者はヒヤヒヤものであったろう。
対立関係にある面々も少なくない緊迫した会場であったが、ひとまず無難に進行、最後の集合写真撮影も終え、さてこれにてお開き――という段になって。
それは、起こった。
「!」
突然、照明が落ちる。
ほんの数秒で明かりは戻ったが、
「あっ!」
誰もが、目を剥いた。
見知らぬ派手な女が、新人賞を獲ったシャイニー日向を痛めつけていたのだ。
「何の結果も出してないくせに、新人王? ちゃんちゃらおかしいなァ――」
と冷笑したこの乱入者は、日向の顔面に黒い毒霧をぶちまけて悶絶させるや、
「うちの名はΣリア! 通りすがりの美人レスラーや!
あんたらの首も、いずれ頂戴いたしますんで、よろしゅうに――」
呵呵大笑するや、風を食らって撤収するわれらがΣリア。
「あははっ、面白いな~、あの子!」
「さ、さすがクイーン・サドンデス! びっくりさせられたお~」
と大ウケだったのは祐希子とソニックで、
「やれやれ、品がありませんわね。まるでどこかの誰かのよう」
「うふふ。楽しそうな子ね」
と鼻で笑ったのは市ヶ谷であり、微笑したのは十六夜である。
「アレが例の“クイーン”か。少しは骨がありそうだ」
「フフ。そうでしょう?」
これは、龍子と鏡の言。
「おやおや。海外でおとなしくしていれば、五体無事でいられたのにね」
「……気の毒に」
そんな物騒なことをつぶやいたのは、南と内田。
「麗華さまより目立つなんて……許せません!」
と怒りを露にしたのはこころで、
「あの……女っ!」
怒りを剥き出しにしたのは、被害者の日向であった。
◇
この一件を受けて。
さっそく、リアと日向の試合が組まれることになった。
その舞台は、パンサー理沙子ひきいる【PantherGym】の後楽園大会。
▼日本 東京都文京区 後楽園プラザ
<(0)15分一本勝負>
〈アークデーモン〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《木村 華鳥》(新日本女子プロレス)
*新女のルーキー木村が曲者と対決。
<(1)15分一本勝負>
《ハルク本郷》(Panther Gym)
VS
〈ブラッディ・マリー〉(プロレスリング・ネオ)
*デビュー戦の本郷に不覚を取ったBマリーの雪辱戦。
<(2)30分一本勝負>
《奥村 美里》(Panther Gym)
&
《小松 香奈子》(Panther Gym)
VS
《YUKI》(フリー)
&
〈フランケン鏑木〉(新日本女子プロレス)
*PGコンビが新・天使軍コンビと対決。
<(3)30分一本勝負>
《後野 まつり》(Panther Gym)
&
《庄司 由美》(Panther Gym)
VS
《ウィッチ美沙》(新日本女子プロレス)
&
《小縞 聡美》(新日本女子プロレス)
*PGコンビが新・天使軍コンビと対決。
<(4)30分一本勝負>
《成瀬 唯》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《ジャイアント・カムイ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《神田 幸子》(ジャッジメント・サウザンド)
&
〈アトラス・カムイ〉(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《テディキャット堀》(フリー)
&
《アルコ・イリス》(フリー)
&
《優香》(フリー)
&
《橘 みずき》(フリー)
*太平洋女子の残党がJ1Kに挑戦する。
<(5)休憩明け 30分一本勝負>
《沢登 真美》(Panther Gym)
&
〈シャイニー日向〉(新日本女子プロレス)
VS
《村上 千春》(Panther Gym)
&
〈Σリア〉(フリー)
*関西でマニアックな人気をはくしていた、元・ワールド女子のΣリアがPantherGym初参戦。
メジャー系のリングで存在感を示せるか?
<(6)セミ前 45分一本勝負>
《マスクド・ミステリィ》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《斉藤 彰子》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《森嶋 亜里沙》(プロレスリング・ネオ)
&
《ドルフィン早瀬》(プロレスリング・ネオ)
*ネオコンビがJ1Kの刺客と対峙する。
<(7)セミファイナル 45分一本勝負>
《神楽 紫苑》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《氷室 紫月》(ジャッジメント・サウザンド)
VS
《大高 はるみ》(フリー)
&
《ジャニス・クレア》(GWA)
*J1Kの個性派チームが友情タッグと対決。
<(8)メインイベント 60分一本勝負>
《パンサー理沙子》(Panther Gym)
&
《武藤 めぐみ》(NJWP-USA)
VS
《ヴァルキリー千種》(ジャッジメント・サウザンド)
&
《越後 しのぶ》(ジャッジメント・サウザンド)
*決別した武藤と結城がPGリング上で激突。
◇
(休憩明けかいな。……ま、しゃーない)
それはいいとして、バックステージでは、お世辞にも居心地はよくない。
知った顔も少なくないが、誰が味方で誰が敵なのか、さだかでないのだ。
(アークデーモン……? あぁ、ルミさんかいな)
神楽の従妹である彼女とは、かつて特撮ドラマで競演したことがある。
逆に言えば、それだけの仲なのだけれど。
(鏑木ちゃん、まだうちの首狙ってるんやろか? しつこいなぁ)
(マリーちゃんたちネオ勢は……J1Kとは仲悪そうやし、たぶん、大丈夫やろうけど)
神楽や成瀬は旧知の仲とは言え、今はJ1K側。
うかつに近づくことは避けた方がよかろう。
それより何より……
「あのー……今日は、よろしゅうたのんます」
「……チッ」
話しかけたとたんに舌打ちされた。
今日のパートナー、村上(姉)である。
以前、九州ドームで彼女たちの試合に乱入、妹の千秋や真鍋ともども、ヌンチャクでボコボコにしたことがあった。
あれから妹はJ1Kに入り、千春はPGに属している。
(あ~あ……へなたん(シャイニー日向のニックネームの一つ。「へなちょこな・ひなた」→「へなたん」となったと思われる。会社のプッシュに答えらない彼女を揶揄する意味で、プロレスファンの間で広く使われている)と一騎打ちにして欲しかったなぁ)
その方が、いろいろとやりやすかったのだが。
(まぁ、ええか)
この“査定試合”をクリアすれば、先が見えてくる。
唯一の不安は。J1Kによる妨害だが、
『安心しなさい。私たちがついてるわ』
『そうそう。一騎当千の私たちがいる以上、金城鉄壁よ!』
『……そう願いたいけどな』
正直、いかにも裏切りそうなウォン姉妹はちょっと頼りない。
一応、フレイア鏡との契約下にあるとはいえ……
むしろ、
「…………」
「あ、あの……よろしく、たのんまっさ」
「…………(コクン)」
無言でうなずく、《ザ・関取》の方が頼りになる……かも知れない。
その四へつづく
「天使轟臨」
公開いたしました
STR様おつかれさまです
遂にフリーになってしまったリア
エピソードの最後で
海を渡るみたいなことになってしまってましたが
このままでは
誰かさんではなくリアが
「流浪の道場破り」になってしまう!
彼女そういうキャラじゃないのに
今後の展開にご期待ください!!
それと
リアvs神楽の試合に関しては
カレーマンさんみたく
やりたいと思っています
つづき同様
気長にお待ちください
Wrestle Angels PBeM
Episode1 天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~
(前回のつづき)
▼日本 秋田県本荘市 本荘市総合体育館
(おっと……おセンチは禁物や)
団体を離脱し、フリーレスラーとなった彼女は、自分の食い扶持は自分で稼がねばならなかった。
試合のギャラだけでは、とうていやっていけない。
では、どうするか?
「“クイーン・サドンデス”参上ッ!! アンタはコレで、DEATHっちゃいなッッ!!」
「わーい、サドンデスのねーちゃんだー」
「あっ、アレ、LIAたんじゃね?」
「ホントだ、生LIA様だ!」
ヌンチャクを振り回しながらアピールし、集まってきた客にグッズを販売する。
これがなかなかバカにならない。
(……こういうのも悪くないなぁ)
少なくとも、寿ナントカの手下になって、はした金のためにコキ使われるよりは、ずっと楽しい日々だった。
現在は“オフィス・サドンデス”という会社を立て、窓口としている。
もっとも、彼女以外のスタッフがいるわけではないのだけれども。
▼日本 秋田県本荘市 本荘市総合体育館・控え室
さて、売り子を終えた理亜が控え室で試合の準備をしていると、団体のトップ・ハヤテがやってきた。
「こりゃどうも、社長さん」
「やぁやぁどうもリアさん、こんな遠くまでお疲れ様です!」
「いえいえ、試合が出来ればそれで結構ですから」
これは、まんざら社交辞令でもない。
若手としては知名度・人気共に高い理亜だが、女子プロレスのリングに上がるのはなかなか簡単ではない。
ウワサでは、ワールド女子を買収した寿一派が、“裏切り者”である彼女への報復を計画しているとも聞く。
そんな大げさな……と思っていた彼女も、先日グラビア撮影を機に知遇を得た《フレイア鏡》から警告を受けるにいたって、さすがに認識をあらためた。
――“西のリア”に逃げられたことに、千歌お嬢様はいたくご立腹らしいわよ。
それはそれでまんざらでもない気分だが、闇討ちなどされてはたまらない。
更には、
(……厄介なのに目つけられとるしなぁ)
新女の〈フランケン鏑木〉。
かつて、ワールドにおびき寄せるつもりで、新女の九州ドーム大会に乱入、彼女を襲撃したことがあった。
が、まさかの団体崩壊によってウヤムヤになってしまったのである。
――せやから、あの時の件、チャラにしてくれへんやろか?
共通の知人(東女の〈南奈 るい〉)を通じて彼女にそう伝えたのだったが、鏑木の返事は、おおよそ予想通りのもの。
――そちらの都合はそちらの都合。せいぜい、クビを洗ってお待ちあれ。
という、まことに親愛きわまるものであった。
それ以外でも。
鏑木もろともヌンチャクでボコボコにしてやった《村上姉妹》や《サキュバス真鍋》らも、
理亜に報復しようと虎視眈々と狙っている、とのウワサもある。
若い身空で、ずいぶん敵の多い人生ではあった。
(ま、しゃーない)
細かいことを気にしていてはキリがない。
さしあたっては、地方を回り、実戦経験を積んでいこうというハラの理亜である。
さいわい、芸能関係の仕事もぼちぼちとは転がり込んできているし。
時には、変り種もあるのだけれど……
(……こないだのアレは、参ったなあ)
◇
▼日本 神奈川県横浜市 『エンパイア・オブ・バス』
エンパイア・オブ・バスは、横浜に店舗をかまえる大型スーパー銭湯である。
高速ジェットバスや超電磁風呂、ウラウナ火山風呂やピラニア風呂などの多種多彩な風呂にくわえて、リラクゼーション施設などもそろっており、老若男女に人気をはくしている。
今日はその一角にて、きわめて面妖な闘い? が繰り広げられようとしていた……
〈南奈 るい〉(東京女子プロレス) VS 〈Σリア〉(オフィス・サドンデス)
「うわ~、おっきいお風呂~~。収録終わったら、入っていっていいですかぁ?」
東京女子プロレス所属の新人レスラーにして、大食いエロカワレスラー、略して“グラカワレスラー”の異名をもつ南奈。
女子プロレス雑誌でのグラビア活動で注目を集め、ファースト写真集をリリースする運びとなった。
すでに本編の撮影は終わっており、今日は初回特典となるDVDの特典映像の収録に出向いたというわけ。。
その目玉となるのが、セクシーさには定評のある“クイーン・サドンデス”Σリアとの一騎打ちなのだった。
「リアさん、今日は頑張りましょうね~~☆」
「まぁビジネスやから、あんじょうやらせてもらいまっさ」
『週刊レッスルG』のグラビア撮影において知り合った両者は、表紙をきわどくも濃厚なかたちで飾るなど話題をさらった。
南奈の写真集リリースも、その流れといってよい。
(うちにこそ、オファーがあっても良さそうなもんやけど。……)
所属団体だった【ワールド女子プロレス】が実質崩壊となった時点で、理亜は同期の八重樫や高倉らとは決別、フリーの身となっている。
諸事情あってあまりおおっぴらに他団体のリングにも上がれぬとあって、オファーがあればそれがいささか不本意なものであっても、ゼイタクは言っていられないといえよう。
(東京女子に恩を売っておくのも悪くないしな)
さてもちろん、この両者が相打つ以上、ただのプロレスではあろうはずがない。
泥んこプロレス、ローションプロレス、納豆プロレス……などなど、企画段階ではさまざま挙がったが、最後に落ち着いたのは、由緒ある試合形式。
すなわち、
――水着剥ぎデスマッチ
である。
女子プロレス草創期においては頻繁にみられた形式であったが、現在は黒歴史あつかいとなっており、実際に開催しようものなら、大問題であろう。
それをあえて復活させようと提案したのは、一説には東京女子の社長ともいわれる。
――風呂場なら、脱がせ合っても問題ないんじゃね?
といういたく真っ当(?)な理屈から、この試合は、対戦相手のコスチュームを脱がせたあと、棺桶ならぬ浴場へと投げ込んだ者が勝ち……というルールが設定されたのである。
<アンダーテイカーバスマッチ 無制限一本勝負>
〈南奈 るい〉 VS 〈Σリア〉
さすがにR-18というわけでなし、本家どおりに再現するわけにはいかない。
マイクロビキニの上に撮影用のコスチュームを身につけ、それを剥がした時点でOK、ということになった。
「なかなかファンの食いつきよさそうやな。うちがDVD出すときは相手してくれへん?」
「え? ぜんぜんOKだよ~~~☆ どうせなら温泉とかでもいいかも~!!」
『るいちゃん、がんばって~!!』
『リアさん、負けないで~! あ~でも、負けて欲しい~~~』
無料招待された女性ファンの声援を受けつつ、対峙する両選手。
レフェリーをつとめるのは、東京女子のマッチメイカーでもある《メイデン桜崎》である。
「……ていうか、このルールでレフェリーいります?」
「当然です。反則行為は阻止しなくてはいけませんから」
「さいですか……」
「なお、負けた方はこの浴場の大掃除をやって貰います」
「!? ちょっ、脱がされるだけでも罰ゲームやのに、そんなのまで!?」
実のところ。
これはプロレスの試合というテイではあるが、あくまでアイドルレスラーのDVDの中での企画にすぎない。
ゆえに、事前にちゃんとした段取りの打ち合わせであるとか、リハーサルなどがあるのかと思ったのだが、そんなものはいっさいなし。
完全アドリブで、この特殊な形式の「試合」を成立させねばならないのである。
当然、リングは持ち込めないので、床には直接マットを敷いただけであり、足場は不安定。
ヘタな技を繰り出せば危険きわまりない。
(……っ、まぁでも、向こうも呼吸はつかんどるやろ)
そう、プロレスとは名ばかりの収録なのだ。
ほどよくファンを喜ばせるような、いい感じのハイスパートな攻防を見せればそれで良し……
(せいぜい、向こうを立たせてやらんとな)
聞けば、このオファーは南奈の強いプッシュで実現したという。
身内に人がいないわけでもないのに、あえて外様の理亜を招聘したのは、フリーランスになった彼女を案じてのことかもしれない……それは、考えすぎか。
かくして、バスマッチのゴングが鳴る。
じっさいにはゴングは持ち込んでいないので、笛であったが。
「でええーーーーい!!」
「!?」
南奈、いきなりの強襲ドロップキック!!
理亜、たまらず吹っ飛び、受け身を取り損ねて悶絶。
「油断しとったらあかんで~~~☆」
「ぐっ、こ、この……っ!!」
育ちは大阪の南奈、軽口を叩きながら理亜にのしかかり、ポジションを奪おうと図る。
寝技の技術は互角と見えたが、先手をとられた理亜、守勢にまわらざるをえない。
かてて加えて、
「んっふっふっふ♪ こちょこちょこちょ~☆」
「おっふっ!? ンッグググ……!!」
密着してのセクハラ殺法ならば、南奈の領域!
ひごろ同僚の《吉野 三輪子》らを相手に研鑽を重ねているだけあって、そのテクニックたるや玄人はだしといってよい。
(こっ、このコ……イカサマ(非常に)あかん……!!!)
こやつ、単に自分が責めたいからこそ、理亜をブッキングしたに違いない!
このままでは、いい仕事どころか、何もできずに醜態をさらしかねない。
フリーの理亜にとって、己の価値を落とすような真似は、断じて避けねばならなかった。
「い、いいかげんに……わやく(悪戯)しんさんなッ!!」
「んふふふ~~、リアさんっ、いい反応~☆」
「~~~~~~~~ッッ!!」
必死に逃れんとするも、モモンジョウ(アリジゴク)にはまったかのごとく、南奈のセクハラ千手観音が理亜をもてあそぶ。
コスチュームを脱がすのが本来の目的であるはずだが、この時点ですでに主題がズレている。
闘いは――風呂だけあって――白熱をきわめた。
その決着のゆくえは、
「初回特典DVDをゲットして、見届けてくださいね~~~☆」
「……もう二度とアンタとは絡まへん(ゲッソリ)」
とはいったものの。
南奈の写真集はかなり好評だったらしいので、今後もオファーはあるであろう。
ただし、こちらが主導でなければやってられないけれども。
◇
▼日本 秋田県本荘市 本荘市総合体育館・控え室
「で、リアさん、今日の相手なんだけど……」
「あぁ、男の人でも問題ないですよ」
いわゆる男女混合マッチも、それはそれで経験のうちと、割り切っている。
「いや、いい具合に女子をブッキング出来たんだけど、初顔なんだよね」
「へぇ……まぁ、お任せします」
相手がどうであろうと、ギャラに見合った試合はしてみせる。
そんな自信が、理亜にあった。
(なんたって、うちは……)
あの《神楽 紫苑》と、互角に闘ったのだ。
東京で、女子プロレスの祭典『Athena Exclamation X』が華々しく開催されている頃……
大阪では、ひっそりとヒールユニット【B・G・W】の自主興行がおこなわれていた。
小規模会場とはいえ、異例のワンマッチ興行。
しかも、団体の至宝をかけた、タイトルマッチ。
▼日本 大阪府大阪市 お祭り門アリーナ
―― シークレット【B・G・W】――
<WWPWヘビー級選手権 時間無制限一本勝負>
〔王者〕
《神楽 紫苑》(ワールド女子プロレス:B.G.W)
VS
〔挑戦者〕
〈Σリア〉(ワールド女子プロレス:B.G.W)
*特別レフェリー 《中森 あずみ》
ほとんど告知もなく、突発的に開催された興行であったが、会場は【B.G.W】各選手のファン
そして
――何かある。
と感じたプロレスマニアが詰めかけ、満員となっていた。
すでに、ワールド女子の経営危機と、寿グループによる買収騒ぎは知れ渡っている。
そんな中で組まれた、この一戦。
本来なら、いくら特別興行とはいえ、まだ新人に毛が生えたレベルのリアが、団体の象徴たるベルトに挑戦することなどありえない。
そんな“常識”“お約束”が通用しない場に惹かれるのは、マニアのサガというものかもしれなかった。
『サドンデス・クイーン! Σリア選手の入場です!』
入場曲と共に姿を見せたリア、肩に大型のラダーを乗せ、入場。
緊張の面持ちなのは、タイトルマッチであるためか。
あるいはまた。
別の、思いがあるのか。
いっぽう、王者神楽はWWPWヘビー級ベルトを高々と掲げ、観客にアピールする余裕の入場。
「この試合は、両選手の同意により、場外カウントなし、反則カウントなしのノーDQマッチで行われる」
と発表され、観客がどよめく。
ここで普段なら、タイトルマッチ宣言等に続くところだが、
「――お先にぃッッ!!」
「!!!!!」
ゴング前、リアの(入場衣装を着たままの神楽への)奇襲攻撃でスタート。
椅子攻撃で神楽を流血させるや、傷口めがけて非情のキック連打。
さらに、リング下から取り出したヌンチャク・ハンマー・ハリセン・ワールド女子の看板・ゴミ箱などで攻め立てる。
「少しはやるわね~ぇ……で~もっ!」
「っっ!!」
神楽、木製バットのフルスイングで反撃開始。
チェーンでの人間絞首刑から、ハサミで理亜自慢の髪の毛を(ほどほどに)切り、揺さぶりをかける。
更に、「テーブルをよこせ!」コールに答え、テーブル貫通パイルドライバーを敢行!
ハードコア殺法では一枚も二枚も三枚も上の神楽、理亜の美貌に血化粧をほどこしていく。
「あ~らら、この程度? もっと楽しませてよ……ねっ!!!」
「~~~~っ!!」
傷口をグリグリ踏みつけられ悶絶するリア
だが、その闘志にカッカと火が点き、
猛反撃を開始。
ボディスラムで神楽を寝かせ、リング中央にラダーを設置するや、最上段に駆け上がる。
「……せぇいっ!!」
ファンの悲鳴あがるなか、神楽めがけて急降下ギロチンドロップを敢行!
命知らずの一撃で場内を沸かせ、味方につける。
さらに闘いは続いたが クライマックスは唐突に訪れた
リア、神楽の隙をついて
切り札の「BAD END(隠し持った黒絵の具を潰し、その手でかきむしり)」攻撃で神楽の目を潰す、
「……喰らえーーーーーーッ!!」
渾身のミドルキック→ソバット→クレイモア(水面蹴り)の三連打を叩き込み
ガクリとヒザをついた神楽へ目がけ、とどめのΣキック(バズソーキック)!!
「これ、で……決まりッ!!」
カバーに持ち込む理亜!
「ワン……ツー……!」
間一髪!!神楽がチェーンをロープにひっかけ、カウント3を阻止!
チェーンは神楽の体の一部である、という中森レフェリーの判定!?
「3やろーーーーーーーーーーーー!!!!?」
と興奮して中森に詰め寄るリア――
その隙を突いた神楽、
「敵に背中を見せちゃあダメよ……ッ!」
「?!!」
背後からチャンピオンベルトで一撃!!
振り向きざまに放ったリアのキックを紙一重でかわすや、
カウンターのSTO一閃!
更に、グロッギーのリアを抱えてラダーを昇るや、
「これが、餞別……ッ!!」
「…………!!!」
ラダー最上段からのデスバレーボムで、リアをマットに串刺し!
ピクリとも動かぬ理亜をカバーせず、
神楽は赤コーナーにもたれ、目を閉じて中森の数える10カウントを聞いていた。
それはあたかも、名残を惜しむかのようであった……
(28分56秒:リアルデスバレーボム→KO 神楽が王座防衛)
試合後、神楽はリングの中央にベルトを置き、無言で去った。
その態度じたいが、すべてを雄弁に語っていた……
「……あ、と……すこし、やった、な……」
全身に走る激痛にうめきながら、己の血にまみれてマットに大の字になったまま、理亜は照明に目を細める。
「……(神楽の)首…ほしかった…な……」
ワールド女子在籍中は「エロカワ」「セクシー」「強さの八重樫・ビジュアルの紫熊・お笑いの高倉」等と呼ばれ
とかくその実力より美貌とスタイルにばかり関心が集まっていた彼女。
それだけに、フリー転向の手土産に、王者・神楽からのフォール勝ちをどうしてもゲットしたかった。
(あと……ほんの少し、だったのに……)
……そのまま、Σリアはリング上で気を失った。
後日、神楽は王座返上とワールド女子退団を正式に表明。
理亜もこの試合を最後に、ワールド女子から姿を消した……
◇
▼日本 秋田県本荘市 本荘市総合体育館・控え室
あの神楽との激闘は、理亜に大きな自信を与えた。
フリーになってもやっていけるだけの、レスラーとしての、自信。
……そう、確かにあったのだ。
その試合が、始まるまでは。
◇
それは、さしたるテーマもない試合のはずだった。
男子プロレスの興行の休憩前に組まれた、いわば息抜きマッチ。
<第3試合 シングルマッチ 20分一本勝負>
〈Σリア〉(オフィス・サドンデス)
VS
《クノイチマスター》(フリー)
(クノイチ? ……知らんなぁ)
フリーになって以来、業界の情報はいろいろ集めている。
が、このレスラーは記憶にないし、ネットで検索しても出てこない。
くのいちギミックということなら、東京女子に《RIKKA》というのがいるが……
わざわざ別の名前で地方のリングに上がる意味がわからない。
(ま、リングネームなんてアテにはならんわな)
フリーのレスラーにとって肝心なのは、興行における自分の役割を把握することである。
メインならメイン、脇役なら脇役として、期待される己の役をしっかり果たすべし。
それが、プロレスラーとしての価値を高めることになるのだ。
この試合でいえば、
(それなりに盛り上げて休憩へ、ってわけやな)
休憩時間にグッズを売るためにも、いい塩梅でアピールする必要があろう。
「ほな、あんじょうやりまっか!!」
「うふ♪ お手柔らかに……ね♪」
◇
「……っ、ハァ、ハァッ……!」
試合後。
湧き上がる感情のままに、理亜は対戦相手のドレッシングルームに押しかける。
「おいっ、あんた……!!」
「あら。どうしたの~~?」
能天気な声で応じたのは、さっきまで手を合わせていた女である。
「あんた……何モンじゃ?」
「何者って言われてもね~。通りすがりのプロレスラー、としか言いようがないけれど」
「……!!」
「なぁに? なんで怒ってるの? いい試合だったじゃな~い」
「う、う…………っ」
なるほど。
確かに、いい試合だった。
会場は十分に盛り上がっていた。
見せ場を作り、お約束の攻防からのピンフォールという、文句のつけようのない展開……
○リア VS クノイチ×
(15分54秒:Σキック)
はたから見れば、何の文句もない展開であろう。
しかし、唯一納得していないのが、勝利した当の本人。
(……完敗や)
まさしく、完敗であった。
試合の勝ち負けではない。
(子供扱いされた)
そんな屈辱と困惑が、脳裏を支配している。
さっきの試合。
まるで全てを読まれているかのように、誘導された。
最初は、
――なんて楽な試合や。
――無駄な動きが減ってきたんやな。
と、我ながら感心していたのである。
よっぽどこの相手とは手が合うらしい……などと、呑気に思っていたのだ。
しかし、次第に、違和感をおぼえはじめた。
――楽すぎる。
それはまるで、誰かに指示された通りに、操られているような――
(この女…………!!)
実のところ。
そのように感じられただけでも、理亜は成長しているといえよう。
かつての神楽との闘いでは、そんな感覚はまったくなかった。
あのときも、神楽が手取り足取りリードしたことで、新人のリアがあそこまで「いい試合」をつくれた。
以後、フリーとしてあれこれ考えながらプロレスをしてきたことで、レスラーとして成長できたからこそ、相手の技量を見抜けた、といえよう。
(……っ、この女は……)
とんでもなく凄い、プロレスラーだ。
「っ、なぁ……アンタ……ッ」
「ん? なぁに?」
すっかり身支度を整えた女は、すっかり一般人というテイである。
若く見えるが、理亜の母親くらいの年代であろうか。
「うちを、弟子にしてくれへんかっ?」
「…………えぇ?」
女、キョトン、と目を丸くしている。
「……っ、頼んます、この通り!!」
この女の……
いや、この人の近くにいれば、間違いなく、プロレスの腕を磨ける。
ならば、恥も外聞もあったものではないのだ。
「ふ~ん……」
すこし思案していた彼女だったが、
「ま、いっか。あのコもあのコで好きにしてるし。一人旅も味気ないしね~~」
「! お、おおきにっ!!」
「よろしくね、理亜ちゃん」
「……っ、あの、うちは何と呼べば」
「ん? そうねぇ~」
女はウィンクひとつ、
「ママ、って呼んでくれればいいわよ♪」
「……っ、わかりました、ママ」
「じゃ、さっそく行きましょうか~。次の予定があるから」
「あ、はいっ」
もっと強くなって。
もっと凄いレスラーに、なれるのならば。
どんなことだって、やってのけるつもりだった。
「あの、ところで、次の予定って……?」
「ん? うん、明後日から上海ね~」
「へぇ、シャンハイ……上海ぃぃっっ!?」
「うふ」
「…………っ」
こうして。
Σリアの、新たな旅が始まったのである――
(つづく)
Wrestle Angels PBeM
Episode1 天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~
〔ストーリー〕
西暦20X1年、冬。
運命の悪戯が数多の邂逅を生み、神々の遊戯が無限の苦悩を閃かす。
何もかも得ることなどできはしない。
何かを得るためには、何かを犠牲にしなくてはならないのだ。
ある女は言う、過去を捨てなくては未来を得ることはかなわぬ、と。
またある女は言った、過去の己あればこそ、未来を得られるのだと。
どうあれ人は選ばざるをえない、己のゆくべき道を。
その先が頂にいたる道か、奈落の底につづく断崖か、それは誰も知りえない。
だとすれば、その選択のよりどころは。
己の心のなかにしか、ないのかもしれぬ。
“――理沙子、私はね”
“――プロレスが、大好きなんだ”
*-----------------------------
■ジャッジメント・セブン SIDE■
*-----------------------------
◇◆◇ 1 ◇◆◇
▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明 PantherGymオフィス
「プロレスが興行である以上は――」
《南 利美》がいった。
「――まず、観客が望むものを提供しなければならないわ」
それはそうです、と《内田 希》は同意した。
「ただの競技ならまだしも、プロレスは……そうではありませんし」
競技であったとしても同じことよ、と南はつづける。
「しかし、私たちは奉仕者ではなく、」
支配者でなければならない、と南は説く。
「チケット代、PPV代よりも更に上回るものを、見せつけなければならないのよ」
「……容易なことではありませんね」
「当然よ。それができているレスラーなんて、まぁ、国内では五本の指に足りるていど」
「挙げていただいても?」
「そうね、まずは私」
「…………」
真っ先に自分を挙げるあたりは、南利美の真骨頂というしかない。
「それから、お龍さん(サンダー龍子)、麗華(ビューティ市ヶ谷)、それと……祐希子(マイティ祐希子)くらいかしらね」
「……手厳しい評価ですね」
「あぁ、貴方も悪くはないわ。一流のレスラーには違いないし」
ただ超一流ではない、というだけのこと。
おそれいった自信だが、それもまんざら的外れではない。
(……祭典での試合は、まさにそうだった)
先の祭典“Athena Exclamation X”のメイン戦における《武藤 めぐみ》との二冠戦は、まさにリングを、そして会場をも“支配する”ものであった。
もとより南は実力者ではあったが、これまでは祐希子や市ヶ谷らのサポートに回っていたイメージが強い。
それが、【ジャッジメント・セブン】に加担してシングルプレイヤーとして起つやいなや、その存在感は倍加したといっていい。
内田が上戸とのタッグを解消、J7についたのも、南の影響があったことは否定できぬ。
タッグ屋“ジューシーペア”としては高評価を得てきたが、それでは飽き足らなくなってきていたのは事実。
もっとも、内田の転身の理由は、そればかりではないけれども。
「フフッ。相棒に悪い、と思ってる?」
「いえ。……別に」
「そう。まぁ、どうでもいいけれど」
「…………」
上戸に、不満があったわけではない。
……いや、まぁ、皆無ではなかったが。
今こうして反体制ポジションについたのは、己の殻を破るため、といってさしつかえない。
「私の解釈ですが」
ジャッジメント・セブンの、本来の存在価値は……
「……祐希子さんが欠場している間の、話題づくりだったのでは?」
「ま、そうかも知れないわね」
新女の、いや日本女子プロレス界のトップに立つ、マイティ祐希子。
ここ最近、故障ということで欠場を続けており、来年正月の新日本ドーム大会で復帰予定。
もっとも、その間に映画出演など芸能活動も活発におこなっており、ケガというのは表向きではないか、という声もある。
「新女ならありそうな話だけど。……ま、無傷のプロレスラーなんていないわ」
長くやっていれば、大なり小なり故障はある。
祐希子の欠場も、オーバーホールと考えれば納得はいく。
そして、その間の話題を保つための布石として……
(ジャッジメント・セブンが作られた……か)
まんざら信憑性がないでもない。
だとすれば、
(祐希子の復帰と共に、J7は消滅……あるいは、リニューアル)
それが、団体側の思惑かもしれなかった。
「ま、(越後)しのぶや斉藤(彰子)も、十分“スター気分”は味わえたでしょ」
今後しばらくは、祐希子と南によるベルト争奪を、メインストーリーとしていきたいのかもしれない。
もっとも、そのとおりに行くかどうかは、さだかではないのだ。
(つまるところは……)
新女にとって、他団体との
“共存共栄”
などは、論ずるに値しない。
あわよくばすべてひねり潰し、使えそうなレスラーのみを拾い上げ、シェアを独占したいに決まっているのだ。
まして、“世界戦略”を掲げるならば、なおさらのこと。
(その点、真っ先に狙われるのは……)
東女? いや、あそこの社長は、なかなか食えない。
最近、“あの”《井上 霧子》が加担しているとあっては、なおのこと。
WARS? なるほど、トップの龍子は、考えるより先に行動するタイプ……
しかし、いまやあの“女狐”がそばにいるとあっては、そう簡単には崩せまい。
その他の、吹けば飛ぶような泡沫団体は問題外とすれば……
やはり、JWI。
いくら《小川 ひかる》らがついていても、肝心の市ヶ谷がアレでは、どうにもなるまい。
(…………)
南利美はかぶりを振った。
感傷的になっている暇など、ありはしない。
何かを手に入れるためには……
(……何かを、失う覚悟がいる)
そう、たとえば、年来の友ですらも。
人の心は、いちど離れてしまえば……
二度とは結びつかぬのが、つねなのだとしても。
◇
▼日本 東京都江東区有明 タイタン有明 PantherGym道場
「はぁ~い、おひさ。元気みたいね~~え?」
「……はぁ」
《神楽 紫苑》の笑顔とは裏腹に、《成瀬 唯》はしかめっ面で応じた。
「なぁに~? せっかく懐かしい顔が会いにきてあげたのに、辛気臭い顔してぇ~」
「……できれば思い出のままにしときかったんですけど」
「え~? そんなつれないこと言わないでよ~~」
神楽と成瀬はもともと、【ワールド女子プロレス】の一員であった。
が、成瀬は夏ごろに離脱。
神楽もまた、ワールド女子の実質的消滅によって、フリーランスの身となった。
そして今……
「よろしく頼むわね~。同じジャスティス・イレブンの一員として♪」
「そうそう、よろしゅう……って、ジャッジメント・セブンですから! ジャスティスでもイレブンでもないですしっ」
「そうだっけ? まぁいいじゃな~い」
「…………」
どうもこの人は苦手や、と成瀬唯は思った。
こうしてまた、同じ釜の飯を食うことになるとは思わなかったが……
「な~に? 最近、新顔が増えてきて、影が薄くなってるとか~?」
「っ、ほっといてくださいっ」
当初は、越後や斉藤など無骨なレスラーがメインだったJ7。
そのため、しゃべりの達者な成瀬は重宝されていた。
が、このところ、南や内田などマイクもできる面々が参加してきたため、相対的に彼女の立場は弱くなりつつある。
そこへきて、この神楽の加入。
彼女もまた、なかなかマイクは悪くない。
成瀬が浮かぬ顔なのは、何も先輩が来たから、というだけではないのだ。
「あ、そういや、あの子の件はありがとね~~。おかげで、ちょっとは立ち直ったみたいだし」
「……あぁ、アレですか」
あの子とは、〈安宅 留美〉。
神楽の従妹にあたり、【VT-X】に所属する新人レスラーであった。
が、いろいろあって宙ぶらりんの立場となって迷走していたところ、神楽に頼まれた成瀬が、J7へ勧誘したのである。
「元々、アノ子はけっこうオモロいな~て思うてましたから。案の定、けっこうハマりましたし」
「ま~、もともと、団体に縛られるようなタマじゃないからね」
もっとも、“初陣”以降は、J7とは別行動をとることが多いらしいが。
どだい、集団行動ができないタイプとみえる。
「カネにはうるさいんで、もっと大金積まれないかぎりはここにおるんちゃいますか」
「でしょうね~~。ホント、カネには細かいから」
先日は、そのカネに目がくらんだために大恥をかき、あやうくレスラー廃業の憂き目を見たのだけれど。
「でも、ああいうのオイシイですやん。開き直ったもん勝ちですよ」
「ま~ね~。さ~て、じゃあ、お礼におね~さんが一丁揉んであげる♪」
「えぇ~~……」
成瀬唯の憂い顔は、ますます深くなる一方のようであった……
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■寿千歌軍団 SIDE■
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◇◆◇ 1 ◇◆◇
<< マット界のキーマンに聞く! 西の雄・寿千歌嬢の真意、そして野望とは!? >>
――本日はよろしくお願いします。
寿千歌:えぇ、こちらこそよろしく。
――いまや、マット界最大の重要人物と言っても過言ではない寿オーナーに、今後の展望をお聞きします。
寿:えぇ、なんでもお聞きください。
――《ライラ神威》選手ひきいる【苛無威軍団】が猛威をふるっていますが、ライラ選手以外の正体は不明です(註:正しく言えば、ライラ神威自身、本名も不明なのだが)。
いったい彼女たちは何者なんでしょう?
寿:さぁ、それはライラさんに聞いて頂かないと。
わたくしは、彼女が連れてきたファイターを受け入れているだけですから。
――なるほど、器の大きさが段違いということですね。
ところで、寿グループ傘下にはいった【太平洋女子プロレス】は、再旗揚げ戦が迫っています。
寿:かのスペル・エストレージャ(スーパースター)《ブレード上原》が興した団体ですから、可能な限りサポートさせて頂きたいと思っていますわ。
――【ワールド女子プロレス】は今後、どうなるのでしょうか。
寿:本来なら、太平洋女子同様、資金援助をして継続的に興行を続けたかったのですけれど。
ご存じのように、すくなくない選手が離脱してしまいました。
このままでは独立団体としては維持できませんので、休眠状態、ととっていただいて結構ですわ。
――雑誌でいえば、休刊、ということでしょうか。
寿:そんなところですわね。
――なるほど(休刊ほぼイコール廃刊なのだけれど)。
では、元ワールド女子の選手の処遇は?
寿:【IWJ】(注01)の興行に出てもらいますわ。
もちろん、実力がともなわない場合は、その限りではありませんが。
注01:正式名称はIndependent West Japan Association。西日本プロレス連合とでも称すべきか。ワールド女子・太平洋女子を吸収した寿千歌一派の総称。
――ワールドを離脱した選手たちに対しては、どんな感情をお持ちで?
寿:とくにありませんわ。彼女たちには彼女たちの人生があるでしょうから、こちらがとやかくいうところではありませんもの。
――ウワサでは《神楽 紫苑》選手や〈Σリア〉選手にたいしては、制裁を加えようとしているとも聞きますが。
寿:まぁ! とんだデマですわ。そんなはずはありません(微笑)。
――では、いずれ彼女たちがIWJのリングに上がる可能性も?
寿:もちろん歓迎しますわ。フフフ。
――わかりました。
(中略)
――ところで、最後にひとつよろしいでしょうか?
寿:えぇどうぞ、なんでもお答えいたしましょう。
――IWJという名称ですが、【JWI】のパクリ…いえ、パロディではないかという意見がありますが……
寿:(血相を変えて)な、なななな、何を言っていますの! あんな下品下劣な、市ヶ谷麗華ごときの団体に影響を受けたりしているはずがないでしょう!? 失礼にもほどがありますわ!! アトラスさん、やっておしまいなさいっ!
――ちょ!? おわあああああーーー!?
(〈アトラス・カムイ〉が現れ、記者をベアハッグでギリギリと痛めつける。悶絶しながらもどこか嬉しそうな気がするのは、アトラスのバストの感触ゆえであろうか)
――――『週刊ギブアップ No.8』より
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■寿ワールド女子プロレス SIDE■
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◇◆◇ 1 ◇◆◇
▼アメリカ ジョージア州アトランタ オメガ・コロシアム
【WWCA】のPPV大会、その控え室――
「そっか、元気にやってるんだ」
ケータイに届いたメールを一読し、《ファルコン香月》は、目を細めた。
「メール? 誰から?」
「ケイちゃんから」
「あぁ、あの子ね。……うまくやってるのかしら?」
《コンドル池上》は心配げに空を見上げた。
もとより控え室から、まして遥かな日本の空がうかがえるはずもないのだけれど。
〈高倉 景〉。
彼女たちが主戦場としていた【ワールド女子プロレス】の若手レスラー……であった。
過去形としたのは、今やワールド女子は実質消滅し、寿グループ傘下の一ユニットのような状態になっているためである。
香月にとっては昔馴染みであり、池上にとっても、彼女のリング復帰にあたって大きな役割を果たし――いや、そうでもなかったが、何の縁もない、という仲ではない――ただの知り合い、と言ってしまうのは、いささか薄情。
池上と高倉の関係は、まぁだいたいそんな感じであった。
「大丈夫だと思うよ。あの子、ああ見えて結構……えっと……結構……えーーっと……そう、鈍感だから」
「……それ、フォローになってないわよ」
確かに、高倉は寿一派とはもともと交流があった。
それを思えば、そう無碍にはされていないと思うのだけれども……
「だってほら、こんなに呑気なメール送ってくるんだから」
「? どれどれ……」
拝啓 香奈姉ちゃん
ただいま、アタシたちは絶賛特訓中です!
すっごく、充実した日々を送ってます!
けっこう、シンドいですけど、楽しい毎日です!
てかもう、ワールド女子のことなんて、全然思い出さないし!!
「…………」
「ね、お気楽でしょ?」
「え、えぇ……そう、ね」
池上はかぶりを振った。
高倉景に幸あれ。
願わくば、あぁ、命あらんことを。
「さ。……そろそろ、行くわよ」
「えぇ。今度こそ、ベルトを手土産に帰らないとね」
彼女たちがこれから相対するのは、なまなかの敵手ではない。
何より以前、手痛い目に遭わされたチーム。
「スナイパーシスターズ……今度は負けない!」
WWCAタッグ王座をかけた一戦。
同じ轍を踏む気はさらさらなかった。
「うんっ。ケイちゃんに、ベルト、見せてあげたいもんね」
「……そう、ね」
よしんばベルトを奪取したとて。
果たしてそれを、高倉は見ることが出来るであろうか?
それは、プロレスの神のほかは、知る由もないことなのであった。
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■フリー(ヒール軍団) SIDE■
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◇◆◇ 1 ◇◆◇
▼日本 東京都新宿区 BAR『Dead End』
「ヒールとは何だと思います?」
「いきなりだな。……そんなに深く考えたこたァねぇよ」
《フレイア鏡》の問いかけに、《ガルム小鳥遊》は鼻を鳴らして応じた。
「あら、国内三大ヒールと呼ばれるほどのお人が?」
「別に、意識してやってるわけでもないしな。言ってみりゃ、自然のなりゆきってやつだ」
「フフッ、なるほど。確かに貴方や朝比奈さんは、正統派で売るガラではありませんし」
「……自分は違う、ってか?」
「そんなつもりはありませんけど。……たとえば、そう、身近なところでは、桃子ちゃん」
「アイツがどうしたって?」
「なかなか、頑張っていますよ。彼女なりにね」
「フン。……ま、破門にはしなくてすみそうだな」
桃子……〈古城 桃子〉。
人もあろうに、小鳥遊らヒール軍団に弟子入りを志願してきた、物好きな少女。
あの気弱そうな様子からして、とうていモノになりそうにはなかったが……
「案外、根性はあったようですわね」
「ま、そういうこったろうよ」
たとえレスラーにはなれなくとも、厳しい訓練を体験することは無駄ではなかろう。
ケガをしないていどに、身体を鍛えさせてみよう……
それくらいのテンションで請合った弟子入りだったが、存外しぶとく粘り、デビューにこぎつけてみせた。
「今は朝比奈とやってるんだったな?」
「えぇ。実力相応に、小悪党っぽく頑張っていますわ」
現在、桃子は“闇堕ちティンカー・ベル”〈MOMOKA〉と称し、【WARS】内部の反体制軍団・【柳生衆】の一員として活躍している。
もっとも、まだまだ一人前には程遠い。
WARSの体制側に立つ鏡とは対立関係にあるわけだが、まだまだ眼中にない、というあつかいなのは是非もなかろう。
「彼女の場合、どう見てもヒール向きではないでしょう?」
「まぁな。……だが、本人がやりたがってるんだから、仕方あるまいよ」
小鳥遊や朝比奈のように、どう考えても正統派、ベビーフェイス(善玉)とはいかない風貌なら知らず、可愛らしいといっていい外見の桃子が、無理にヒールを目指す必要はない。
もっとも、特定の団体に所属していない現状においては、“努力する新人”のままでは上がるリングも限られよう。
「まして、意地悪な誰かさんが仕切るリングじゃあな」
笑って答えない、意地悪な誰かさん。
WARSのGMに就任した鏡は強権をふるい、柳生衆に出場停止処分を下している。
フリー参戦の選手にとっては、イコール収入減に他ならない。
「しかし、例のジャッジメントなんとかとやり合うんだろ? 駒が足りないんじゃねぇのか」
「えぇ。だからこうして、接待しているというわけで」
「そりゃ豪儀だ。……氷川のヤツにもコナかけてるらしいな」
「フフッ。お友達価格でお願いできますから」
「……世知辛い話だな」
ところで、と鏡が話を戻す。
「プロレス興行において、ベビーとヒールの対立関係は明解であるべきだと思いますわ」
「ま、そうだろうな。客もどっちを応援していいか、わかりやすい」
「えぇ。でも最近は、そのあたりが曖昧になっていますわね」
「そりゃあそうだろうな。どこぞの大物ヒールが体制側のトップに立ったりしてるくらいだ」
「……耳が痛いですわね」
鏡は体制側についたとはいえ、フェイスターン(善玉に転向)したわけではない。
「ま、それはさておき」
とあっさり自分のことはタナにあげ、
「そうした明快な対立構造がなくなっている……と、嘆くのは御老体にお任せするとして」
ないのならば。
自分たちの手で、作り出せばいいだけのこと。
「はぁん……またぞろ、悪巧みってわけか」
「フッフフフ……人聞きが悪いですね」
フレイア鏡は、グラス片手に微笑んだ。
(ま、コイツと組んでるあいだは……)
退屈だけは無縁みたいだな、とガルム小鳥遊はほくそ笑んだ。
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■フリー(無所属) SIDE■
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◇◆◇ 1 ◇◆◇
▼日本 秋田県本荘市 本荘市総合体育館
東北地方を中心に活動するプロレス団体【ゆきかぜプロレス】。
覆面レスラー《グレート・ハヤテ》が興したルチャ系団体である。
興行がおこなわれる体育館の入り口には、グッズ以外にも雑多な売店が並び、ちょっとした縁日といった風情。
(――なんや、懐かしいな)
楽しげに売店を冷やかす客たちを横目に、〈紫熊 理亜〉はひとりごちた。
“クイーン・サドンデス”〈Σリア〉という剣呑な名で呼ばれる女子プロレスラーだが、平素は美貌の女性である。
以前(といってもほんのちょっと前だが)彼女が属していた【ワールド女子プロレス】でも、興行の前はこんな風な、アットホームな雰囲気が漂っていたものである。
それはもう失われてしまって、二度とは戻ってこない日々であるのだけれど。
▼日本 大阪府大阪市 ワールド女子プロレス寮
……すこし前の出来事
「遅いで、ヤエさん」
「そうそうっ。もう準備万端ですよ!」
「……ノリノリだな、お前ら」
〈八重樫 香澄〉は頭痛をこらえるように、頭を押さえた。
それは同期である理亜と、〈高倉 景〉の異様な風体を見たためであろう。
前者はお好み焼き、後者はタコ焼きをイメージしたマスクをかぶり、サンドイッチマンよろしくポスターを前後に下げている。
もとより、伊達や酔狂でこんな格好をしているわけではない。
間近にせまったワールド女子の大会において、少しでも集客を増やすための販促活動にほかならないのだ。
「……それにしても、もっとイイ方法はねーのかよ」
「しゃあないやん。マスクかぶれるだけマシと思わな」
「……そりゃ、そうだが」
ボヤきつつ、串カツをモチーフにしたマスクをかぶる八重樫。
「いいですね~ヤエさん! これで試合に勝てますよ! カツだけに!(ドヤ顔で)」
「(無視して)おい、チラシこれでいいのか?」
「ヒイッ、スルー!?」
「そやね。あと、このアメちゃんも」
「はぁ? 何だコレ」
「ただチラシ渡してもしゃーないやん?」
「なるほど、アメとムチってわけですね! お客様にはアメ! アタシにはムチ! ……って、なんでやねーーん!」
「(流して)……ほな、行こうか」
「そうだな。オレたちもヒマじゃないし」
「……む、ムチより、ムシのほうがキッツいわァ……」
かくして、
《クイーン・お好み焼き》
《タコ焼きケイ》
《KUSHI-KATSU》
の三人は大阪の街に繰り出し、道行く人にアメちゃんやチラシを配りつつ、時おり思い出したように乱闘を繰り広げたりして、必死に大会アピールに励んだ。
流石に最初とちと恥ずかしかったが、子供たちから歓声を浴びたり、おばちゃんたちに励まされたりするのは、なかなか楽しい経験だった。
ついテンションが上がって、タコ焼きケイに本気のローキックを決めたりしてしまったのは、ご愛嬌。
「堪忍な、あんまりタコ焼きぽっかったんで……」
「その言い訳意味わからないんですけど!?」
あの頃は、そんな呑気な日々が、ずっと続くと思っていた……
(つづく)
リアの新コス
コスチューム変更の理由とか
それにまつわる新ムーヴは
次回のリアクションで明かされる!
…かもしれません
今回はリアが周りのキャラクターをどう思っているか
書きたいと思います
&リアの野望と「PBem」中で計画するも達成できなかった
「没アクション」にも若干触れてみました
《芝田 美紀》
リアにとって師匠
技・雰囲気・攻撃パターン等
彼女から教わったものは多い
受けた恩を仇で返す日々だが
リア曰く「(彼女の付き人に)なりたくてなったワケでもない」ので
悪気は感じていない
《神楽 紫苑》
リアにとってボス
人間的に好きなタイプではないが
その「一匹狼」的生き方には賛同できる
一緒に行動してもらった恩(&しごき・いじめ)を
いつかリングで倍にして返す
それが目標
《メデューサ中森》
リアにとっては先輩レスラーだが
そのギミックチェンジを成功とは思っていない
周りが見えないタイプだがレスラーとしては優秀
そのテクニックは一緒にいて大いに参考になっている
神楽ほどではないにしろ
彼女もいつかリングで(ry
〈ランダ八重樫〉
リアにとって同期
だけどプロレスに対する考え方の違い
(特に八重樫の「強さ」へのこだわりが
プロレスとは「魅せ」モノと考える
リアにはダサいとしか思えない)のため
どうにもライバルになれない
リア「リアはあの娘(八重樫)みたいな
ファイターじゃなくてプロレスラーやからな…」
しかし 前評判の高かった彼女を
新人テストのスパーリングで倒さなかったら
現在の「Σリア」は存在しなかった…かもしれないので
(新人テスト時八重樫を年下だと思っており
自分より年下に甞められたくなかったリアは
口喧嘩とスパーリングで八重樫を撃破
それが評価されて新人テストに合格しワールド女子に入団
強さと美しさ両方で新人のトップに立ち
その大いなる野望の日々を歩みだしたから)
そんな意味では恩人
リア「…”勝敗は顔で決まる”のはドコの世界も一緒やな」
(リアクション内では描かれないけど)
プロレスデビュー以降の対戦成績は
圧倒的に八重樫がリードしている
…はず
〈高倉 ケイ〉
リアにとって同期
…とはいえ5つも歳の離れているので
リング外ではカワイイ妹分
リングの上では経験値稼ぎのカモ
(特に尊敬する成瀬退団の理由が彼女だと知ってから)
とはいえ
(リアを上回る感すらある)行動力には一目置いており
「…八重樫にあの娘(高倉)の行動力の半分もあれば面白いんやけどな」
と内心思っている
そのリアクション(というかヤラレ)の必要以上と思える派手さから
花の咲くのはこれからなのに
蕾のままで潰れるんじゃ?と
その将来を心配している(少しだけ)
<フレイア鏡>
リアにとってネ申
もしくは憧れ
また美形ヒールのお手本
というか参考書のような人
彼女といつかリングで戦うのがリア最大の野望
(そのためには)ずっとフリーでいてほしかった だけに
鏡のWARS入団→龍子とのタッグ結成という流れは
野望達成の為の障害でしかなく
内心面白くなく思っており
できれば自分の手で(ry
リア「…そういえば黒河 さとみちゃんはドコいったんやろ?
(アンビバレンツ)佐藤ちゃんも?」
<成瀬 唯>
リアにとって元先輩であり
ワールド女子のレスラー中成瀬を最も尊敬していた
付き人第一希望も実は成瀬
成瀬のワールド女子退団は大ショックであり
当時リアが思い描いていたプロジェクトを破綻させた
(当初ヒールユニットは神楽・成瀬・リアの3人で組むつもりだった)が
むしろ退団後の方がノビノビとやっている印象で一安心
現在は接点がないものの
いつかまた共に仕事がしたいと思っている
リア…「正直(辞めたと聞いた時)涙出るほど悲しかった
リアがレインメーカー役で成瀬さんが外道さん役で
神楽さんとか芝田さんとか外敵とかバッタバッタ倒して
(二人で)ワールド女子盛り上げたかった…」
<八島静香>
リアにとってヒールの大先輩
世間では泣く子も黙る存在だが
リアは同じ山陰出身のため気楽に話せる存在
内心リアは八島が新女離脱したらマスクウーマンとして
ワールド女子に入団させるつもりだった
(そして二人でワールド女子のトップを奪いたかった)ので
他団体入団を残念に思っている
リア「リアと八島姐さんは温泉入ったり一緒に新女に乗り込んだ仲やのにな
…あの人のことは(ブラッディ)マリちゃんに任すわ」
他に新女の村上姉妹・マッキー上戸とも
同郷で知人関係(他 秋山美姫も同郷)
シグマ リアキャップLCR(マイクロフォーサーズ) LCR-MFT | |
クリエーター情報なし | |
シグマ |
そんなわけで
天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~第四話公開しました
STR様お疲れさまでした
(尚一部編集してありますご了承ください)
前回からさらに大きく間が空いていたので心配しましたが
無事カタチになってよかったと思います
ここでは一部補足説明
まず今回明らかになったリアコスの秘密について
(本文の中でも触れていましたが)
左右非対称なのは怪我しているからです
(考えてみれば)リアはまだデビューして間もなく
評価値でいえば600~700くらい
それに対して名のある選手は評価値800以上あるでしょうから
それらに混じって戦えば怪我はさけられないでしょう
(実際新人でケガしながら戦ってる姿よくみるし)
そういうことにしておきます
次にリアの技について
クレイモア(水面蹴り)
さまざまな形から入る水面蹴りです
Σキック(バズソーキック)
ニールセン!!
…アンタはコレで
DEATHっちゃいな!!
第四話で公開
芝田や鏑木相手に披露した
リアのフィニッシュホールドです
クレイモア→Σキックがリアの必勝パターンです
ちなみに当初は回し蹴りを連続で三発ぶち込む
「Σ三段蹴り」 とか考えていました
ケガをのりこえ
天下の新女に乗り込んだリア
しかし当の所属団体は…になってしまいました
これがリアにとって吉と出るか凶と出るか!
残り二話
どこまでその野望の道を進めれるか
乞うご期待!