<経営者保証>全財産没収防止へ 政府新指針、再起促す狙い
毎日新聞 3月19日(火)15時1分配信
中小企業が借り入れをする際に社長自身が連帯保証人となる「経営者保証」で、政府は経営者の全財産が没収されることを防ぐルールを新設する方針を固めた。会社が行き詰まっても当面の生活を支えて再起を促すのが狙い。中小企業庁と金融庁の研究会が近くまとめる報告書に盛り込み、銀行や貸金業者に一定の拘束力を持つガイドライン(指針)作りを目指す。
第三者による連帯保証については、他人の借金で生活基盤を失う人を減らそうと金融庁が11年、銀行や信用金庫への監督指針で禁止。民法改正を目指す法制審議会(法相の諮問機関)で貸金業者なども含めた全面禁止に向け議論している。一方、経営者保証は信用力も担保も乏しい中小企業への融資には不可欠との意見が根強く、今後も維持される。
経営者保証では、会社が返済できなくなると社長が個人の自宅や預金など全財産の処分を求められる例が後を絶たず、中小企業団体は「過度の債権回収は企業再生を不可能にする」と批判している。経営が安定している会社でも、個人が身ぐるみはがされるリスクが壁となって後継者を見つけられないことが多い。再チャレンジを後押しする安倍政権は1月の緊急経済対策で見直しを盛り込んだ。
今後は両庁の研究会がまとめたルールを基に、国や業界団体が新しい指針を作り、金融機関などに守らせる考え。法的位置づけはないものの、一定の拘束力を持つものになるとみられる。具体案として、研究会では経営者の自宅については「ぜいたくではないものは没収しない」とする案で大筋合意。手元に残す現金は、破産法で自己破産者に認められている99万円(標準世帯の生活費3カ月分)では足りないとして、400万円弱などの案が出ている。
だが金融機関側は「可能な限りの財産を回収しないと、株主に職務怠慢と批判されかねない」と強く抵抗しており、新ルールが保証人保護にどこまで踏み込むかは不確定だ。【種市房子、井上英介】
【ことば】経営者保証
中小企業が金融機関から借り入れをする際、会社が返済できなくなったら社長が個人で返済すると約束する、個人保証の一種。個人保証には他に第三者による連帯保証もあるが、政府は第三者保証はなくす方向で、早ければ2年後にも民法改正案を国会に提出する見通し。経営者保証は「会社と経営者の財産の区別がつきにくい」「社長に経営責任の自覚を促すためにも必要」などの理由で残すべきだとの意見が根強い。