気になっていたドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」を見てきました。
衝撃的な内容でした。この映画の内容に対しては賛否両論あるようですが、確かなことは、監督の主観による編集はあるにせよ、この映像は大筋では真実であろうということです。
経済学的な視点からは、この映像で示された貧しさはある一面だけを取り上げたものであり、一方でヴィクトリア湖周辺の諸国に大きな富をもたらしたという事実が重要だという意見もあるかもしれません。
しかし生物学の観点から言えば、やはりこのナイルパーチの移入とそれに由来する産業システムは不可逆的な破滅の構図と言わざるを得ないように思います。映画の後でオランダ人の元研究者、Goldschmidtさんの著書(丸武志訳)「ダーウィンの箱庭ヴィクトリア湖」も読みました。ここにはナイルパーチ導入以前の湖の生物多様性がいかに豊かであったかが描かれており、また導入後いかにそれらが急激に失われたかについても多くの記述がありました。かつてシクリッドの仲間はその種の数に応じた、極めて多様な生態学的役割を果たしてもいました(例えば多くの藻食魚など)。それらの多くが滅び、全て肉食魚であるナイルパーチに置き代わった生態系では(小さなナイルパーチは共食いによって大きな個体に食べられ、食物連鎖ではかつての小型藻食魚の役割も果たしているという)、湖の水質汚濁などが進行するのも想像に難くありません。もちろん湖の水質が悪くなっているのには他にも様々な原因があるようですが、その大きな一部を担っているはずです。
もう一つ本質的に重要だと私が思うのは、本来地元の人々が安価に依存していた資源(シクリッド)が無くなり、代わって日本や欧米といった経済大国の資源となっているということです。さらにこの映画が示唆しているように、魚という資源の見返りがもしも武器という形でアフリカ側にもたらされているとしたら、この産業が地元におしなべて幸福をもたらしているとは到底考えられないように思えます。
ナイルパーチの不気味なまでの巨大さが印象的でした。
一台の貨物輸送機が50トン超の魚の切り身を国外に運んでゆく。そのナイルパーチは全てビクトリア湖の固有種を食べて大きくなって、それがどんどん湖外に持ち去られる。単純にそう考えただけでも、失われた生物多様性の大きさに愕然とさせられます。
この映画では、じゃあわれわれはどうしたら良いのか?という問いへの答えはもちろん示されていません。しかしまずは現実を知ることが重要なのであり、そこから望むと望まざるとに関わらずこの破滅的システムの一員になってしまっている自分としてできることも考えていけるのかなと思いました。
衝撃的な内容でした。この映画の内容に対しては賛否両論あるようですが、確かなことは、監督の主観による編集はあるにせよ、この映像は大筋では真実であろうということです。
経済学的な視点からは、この映像で示された貧しさはある一面だけを取り上げたものであり、一方でヴィクトリア湖周辺の諸国に大きな富をもたらしたという事実が重要だという意見もあるかもしれません。
しかし生物学の観点から言えば、やはりこのナイルパーチの移入とそれに由来する産業システムは不可逆的な破滅の構図と言わざるを得ないように思います。映画の後でオランダ人の元研究者、Goldschmidtさんの著書(丸武志訳)「ダーウィンの箱庭ヴィクトリア湖」も読みました。ここにはナイルパーチ導入以前の湖の生物多様性がいかに豊かであったかが描かれており、また導入後いかにそれらが急激に失われたかについても多くの記述がありました。かつてシクリッドの仲間はその種の数に応じた、極めて多様な生態学的役割を果たしてもいました(例えば多くの藻食魚など)。それらの多くが滅び、全て肉食魚であるナイルパーチに置き代わった生態系では(小さなナイルパーチは共食いによって大きな個体に食べられ、食物連鎖ではかつての小型藻食魚の役割も果たしているという)、湖の水質汚濁などが進行するのも想像に難くありません。もちろん湖の水質が悪くなっているのには他にも様々な原因があるようですが、その大きな一部を担っているはずです。
もう一つ本質的に重要だと私が思うのは、本来地元の人々が安価に依存していた資源(シクリッド)が無くなり、代わって日本や欧米といった経済大国の資源となっているということです。さらにこの映画が示唆しているように、魚という資源の見返りがもしも武器という形でアフリカ側にもたらされているとしたら、この産業が地元におしなべて幸福をもたらしているとは到底考えられないように思えます。
ナイルパーチの不気味なまでの巨大さが印象的でした。
一台の貨物輸送機が50トン超の魚の切り身を国外に運んでゆく。そのナイルパーチは全てビクトリア湖の固有種を食べて大きくなって、それがどんどん湖外に持ち去られる。単純にそう考えただけでも、失われた生物多様性の大きさに愕然とさせられます。
この映画では、じゃあわれわれはどうしたら良いのか?という問いへの答えはもちろん示されていません。しかしまずは現実を知ることが重要なのであり、そこから望むと望まざるとに関わらずこの破滅的システムの一員になってしまっている自分としてできることも考えていけるのかなと思いました。