マイペースおくやまの進化的考察

進化の研究は楽しい!というわけで、日常の研究生活で考えたこと、感動したこと、あるいは思いつきのネタの備忘録です。

大衆化する分子系統学

2009-05-30 20:49:37 | 日常
昨日印象に残った出来事。
NHKのニュースで、新型インフルエンザの由来の話をやっていましたが、そこにちらっと分子系統樹が映りました。マスコミ向けに研究者の方がつくったポスターみたいなものが映ったようです(調べてみるとこちらにその図がありました)。ウイルスは進化が早いので、分子系統樹の応用にはうってつけの材料なのですね。それにしても、ほんの1ヶ月程度で分化した9株の間に、13kb中「わずか」4塩基の変異が生じるとは、、、速い!

分子系統学なんて世間の関心から相当縁遠いところにあるような気がしていましたが、よく考えてみるとそうでもありません。むしろ一番分かりやすい進化生物学の応用例ですね。原理自体も簡単なことだし、そろそろ高校生物で分子系統樹の基礎的な概念と見方くらい教えてもいいのではないでしょうか。

そういえば私もこれから高校生の教育に関わる機会がたびたびありそうなので、「ナルホド系統樹」みたいな短いレクチャーを準備しようかな。

それにしても、今年1月中旬にSan Diegoでひいたひどい風邪(咳、頭痛、発熱、関節痛全て有り)の正体が気になる、、、。ちなみにSan Diegoはカルフォルニア州にあるメキシコとの国境の街で、徒歩でメキシコに入れるので有名です。
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奇跡のシダ植物フロラ図鑑

2009-05-20 10:57:08 | 研究
珍しく立て続けのエントリです。
昨日、素晴らしい本を頂戴しましたので簡単に紹介します。

東海大学出版会 国立科学博物館編 国立科学博物館叢書8:南太平洋のシダ植物図鑑

本書はニューカレドニア、バヌアツ、フィジー、サモアという植物好きなら誰でも一度は行ってみたい(ちなみに私は残念ながらどの島にも行ったことがありません)憧れの島々の、極めて網羅度、完成度の高いシダ植物図鑑です。

本書をざっと読んでまず目を引いたのが、分類体系に基本的に最新の分子系統の知見を反映させていることです。各科の見出し文には、従来の分類体系との違いが述べられていますので、これまでの分類体系に馴染みがあった読者にも、「今はそうなっているのか!」というちょっとした驚きとともに、検索にはそれほど不便を感じることが無い構成になっています。また私も含めそれほど旧分類体系に馴染みの無い初心者ならば、これをシダの多様性を把握するための教科書として用いることが出来ます。南太平洋にはイヌナンカクラン属(科)をはじめとした、陸上植物の多様性を理解する上で重要でありながら日本に分布しないグループも分布するため、まだ見ぬ植物を想像しながら本書を読み込むのも楽しいものです。

次に圧倒されるのが、掲載されているほぼ全種について描かれた精密な線画の数々です。検索表とこの図によって、本書の種同定のための実用性は揺るぎないものとなっています。

このような本が出来上がったのは、ひとえに日本シダの会の個人及び組織のレベルの高さが群を抜いているためなのでしょう。同様の本を種子植物で作るのはかなり困難でしょうが、本書は例えばこれから国内フロラについて図鑑を作成する際にも指針となる重要なマイルストーンだと感じました。

シダを研究材料として用いることがある専門家はもちろん、これから本格的に植物を勉強したい学生にも、本書はお勧めです。タダで入手した立場で言うのもなんですが、8610円は決して高くないです!


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チャルメルの奇妙な研究第4部「リジェクトされてもくじけない」

2009-05-17 10:15:18 | 論文紹介
昨年末のエントリーの時も含め計3回リジェクトされた論文がようやく日の目を見ました。

Okuyama, Y. and M. Kato 2009. Unveiling cryptic species diversity of flowering plants: successful biological species identification of Asian Mitella using nuclear ribosomal DNA sequences. BMC Evolutionary Biology 9:105 doi:10.1186/1471-2148-9-105

例によってレフェリーが計7人ついたので、全員のコメントに対応したらディスカッションの部分はほとんど原型が無くなって(というか段落を3つくらい加筆させられた)、長大な論文になってしまいました。「長い論文は読む気がしない」と言わずにどうか読んでやって下さい。

論文の内容としては、おおむね昨年(2008年)の進化学会ワークショップでお話しした内容で、東アジア産チャルメルソウ属チャルメルソウ節の全種を使って徹底的に掛け合わせ実験を行い、種間での接合後生殖隔離(F1雑種の花粉稔性)を計測すると同時に接合後生殖隔離の大きさがどのように種間の塩基配列の違いの程度と相関するかを解析したものです。


もう一つのポイントは、チャルメルソウ節の「生物学的種」と考えられるまとまりが、適切なDNA配列を用いることでかなりはっきりと単系統群として認識できることを示したことです。この辺が私が「種」は存在するのだという立場を強めた理由です。あくまで自分の材料においての話ですが。

また本研究で日本に産するチャルメルソウの仲間にはまだまだ隠蔽種が存在することも示唆しました。ちなみに近い将来あと2種増える(私が記載する予定)ことは決定的です。

さて、種の実在云々の議論はこの論文では述べていませんが、実際には私の本心は『「種」らしきものがはっきり見える(種が存在する)場合もあればそうでない場合もある。進化生物学において大事なのは、どのような条件(進化生物学的パラメータ)の下で種が「顕在化」するのか?を明らかにすることである』といったところでしょうか。

いずれにせよ、Coyne and Orrの名著Speciationにも述べられている通り、本論文は数少ない(特に植物では)遺伝的距離と生殖隔離の大きさとの関係を調べた研究例です。どうかうちの子をよろしくお願いいたします。
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寝GW

2009-05-06 20:46:34 | 日常
ようやく今月から茨城県民になりました。
んで今日はつくば周辺の買い物ポイントを探索しました。
しかし、京都とも北上とも違って、つくばは郊外型の超巨大ショッピングセンターが目立つのですね。ある意味便利ですが、なんだかアメリカみたいであまり好きにはなれません。とりあえず論文執筆の拠点に出来るTully's Coffeやスタバがあるのは北上よりいいところなのですが。

それと、北上では当たり前のように売っていた種々の海の幸(ナマコとかホヤとか、新鮮な魚)が全然売っていない!辛うじて切り昆布は少し売っていましたが、サラダで食べるにはちょっと鮮度が悪そう、、、。やはりというか、僕は貴重な環境に住んでいたのですねえ。

さて、この数日のまとめ
Q. あなたはゴールデンウィークに何をしましたか?
A. ・・・何もしませんでした。

それでも、今年は半ば諦めていたチャルメルソウの交配が少しはできたので、良しとします。いや、あかんやろ、、、。

私の性格:他人に甘いが、自分にはもっと甘い
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