東松山在住のカトリーヌが大好きな素敵なモノや暮らし。
ちょっぴり知的創造空間ただようフリージャーナル。
珈琲アトリエAsとイタリアのバール
「類似性と共通性」カトリーヌ的考察
イタリア滞在中、毎日のようにお世話になるのがBAR(バール)だ。
どんな田舎町に行ってもバールはある。喫茶店のようで喫茶店では
ない、コーヒーが飲めて軽食がとれるのは基本だが、様々な機能、
サービスを提供する所なのだ。個人経営の店が多い。
定義はちょっと難しい。さながらコンビニのようなものとも言える。
イタリアに24時間営業の店はない「夜中に店を開けていて何の意味
があるのか、夜は眠るもの、朝になったら行けば済むことではないか」
というのがイタリア人の考え方。ソフトドリンク、アルコール飲料、
ブリオッシュ類(イタリア版クロワッサン)はどこにでもあるが、
ケーキ屋、ジェラート屋、タバコ屋、デリカ、レストランなどと合体
して様相、実体を変える。場所によっては切符や絵葉書き、地図や
タウンガイド、トトカルチョ(サッカーくじ)なども売っている。
ワインやオリーブオイルもございますよ。おもちゃや水着やビーチ
サンダルだって何でもござれだ。旅行者にとっては、ミネラルウォー
ター1本だけでも買えるし、トイレの使用場所としても利用価値は
大きい。イタリアではトイレが使える複合施設やデパート、スーパー
が町中にはほとんどない上、公共トイレも少ないからだ。
イタリア人にとってのバールは日に何度も立ち寄る所、各々にお決ま
りのバールがあるという。基本的に日本のカフェのようにゆっくりは
せず、立ったままでエスプレッソをひっかける。
立ち飲みは一杯約1ユーロ(100円前後)。腰掛けると値段は数倍になる。
裕福な人もそうでない人も美味しい一杯のコーヒーを飲めるというのが、
立ち飲みの良さだ。「○○バールにいます。」と張り紙をしてコーヒー
ブレイクしている商店街の人もいる。ゆっくり腰をかけておしゃべり
やトランプ、サッカー中継に興ずる人々の姿もイタリアならでは、よく
見られる光景だ。寄り合いの場所、サークル活動の拠点としても機能する。
何れの場合にも共通して言えるのは、店の人とお馴染みさん、顔見知り
同士の間で世間話が繰り広げられるという点だ。要するにバールとは、
イタリア人にはなくてはならないコミュニケーションの場。人が集まっ
てコミュニケーションが取れれば、何かが生まれないはずはない。
文化、芸術だって発信される。大型店と一線を置く個人店の良さはまた、
店で提供される商品にも表れる。店主が自ら選んだ美味しい物や、眼鏡
にかなったモノを置くことは(客の声も聴く)すなわち安心安全の提供だ。
地元の生産者やコミュニティーとの密接な太い繋がりは互いにとっても
メリットとなる。
カトリーヌが珈琲アトリエAsにイタリアのバールを感じ、居心地の良さ
を味わえるのは、こうした「類似性・共通性」からなのである。
人と人が自然と向き合える魅力ある空間。顔が逢えば会話が生まれる。
文化の発信地であり、コミュニケーションの場であり、来る者が元気を
もらって笑顔で帰っていける、アズさんはヒューマニティー(人間味)
に満ちている。東松山に暮らして十数年、アズさんで繰り広げられる
日常は、まさに・・・カトリーヌの好きな「イタリア的人間生活」。
【挿絵について】
優しい息吹を吹きつける「西風の神ゼフィロス」と薔薇の花を蒔く
その妻「花の女神フローラ」。この男女の神は、ルネッサンス期の
画家ボッティチェッリの代表作「ヴィーナスの誕生」に描かれた
もの。海の泡から生まれた「美の女神」を祝福し、岸辺へと誘う
シーンである。ゼフィロスは春の訪れを告げる豊穣の風、フローラ
は彼と結婚して花々を生んだ。
同通信の編集人ミカエルが、ヨーロッパの美術館巡りで一番衝撃的
だったのがこのフィレンツェで見たボッティチェッリだったという。
不思議なことに、カトリーヌはまだこの傑作と対面してはいない。