先週、世の中がM-1グランプリ直前で大騒ぎしている中、小さなニュースが日本中に衝撃を与えた。
林家三平の笑点降板だ。
2016年5月29日の日曜日
春風亭昇太さんの後任として、現れた男だ。
あの日、ちょっと用事があって、長距離運転をしている日だったから、とてつもなく印象に残っている。
昭和の喜劇王と言われた初代林家三平の次男坊であり、兄こぶ平と弟一平として、テレビに出ていた時代もあった。
こぶ平は、タッチなど、あだち充のアニメ作品で主人公の相方役の声優を担うことが多く、声優としては一定の地位を築き、落語も「そんなに上手じゃない」と言われながらも、「泣かせる芸をする」とそれなりの評価を受けていた。
林家正蔵の名前を継ぐ時も、「まだそれほどの実力を持っていない」と言われながらも、なんだかんだでうやむやのまま、ことが進んでいった。
一平が、父親の林家三平の名前を継ぐ時も「兄以上に、実力がないのに、三平の名前を継ぐとは・・・」と、日本中からバッシングを受けていた。
しまいには「初代三平の妻であり、2人の母親である海老名香葉子のゴリ押しでしかない。そもそも、初代三平もテレビには出ずっぱりだったけれど、たいして面白くなかったし、人気があった訳ではない」とあちこちで言われるようになった。
あるくくまもんも、一平に対して、「たいして面白くない」という評価だったので、笑点の新メンバーになったことは衝撃だったしショックだった。
それから5年半
二代目林家三平はどうしようもないくらいの非難を浴び続け
ネット上では常に「三平はつまらない」という意見が大勢を占めていた。
あるくくまもんも、同じ意見だったので別に何とも思っていなかった。
・・・というか。
林家三平がつまらない理由って、とてつもなくシンプルなんだよね。
どうしようもないくらい「間が悪い」
そう
「タイミングが悪い」
間やタイミングの話は、少し前にも話したけれど。
本当に、三平は話し方が悪い。
M-1グランプリで優勝した錦鯉のツッコミの渡辺隆さん
錦鯉の動画を見ると、よく分かることがあるんだけど。
まさのりさんが意味不明なボケを長時間やって、会場が
シーーーーーーーーーーーーーンとしちゃって
誰がどう見ても「これ、ヤバすぎだよね。みんな引いてるよ」と思うのに
隆さんの一言で大爆笑になる。
0.1秒早くても遅くてもいけない。
人を笑わせるためには、絶妙のタイミングというものが存在する。
早口過ぎてもダメだし、ゆっくりすぎてもダメ
人を笑わせるためには、絶妙の話す速さというものが存在する。
それは
コントでも漫才でも落語でも浪曲でも一緒。
人に笑いを取らせるために喋る場合って、
「何を喋るか」とか
「どんなネタをするか」とかも大事だけど。
それが笑いに変わるかどうかってのは、結局は「間」だし、「タイミング」なんだよね。
でね。
三平さんの喋りって
そもそも聞き取りにくいってのもあるんだけど。
面白いネタを言う時の、間がすっごく悪いんだよね。
ネタ自体はすっごく最高だし、うまいものが多いのに、全部喋りで台無しにしちゃっているんだよね。
速すぎたり、タメがなかったり、活舌悪かったり、無駄にドヤ顔だったり
正直「つまらない」というより
「こんなに面白いこと言っているのに、どうして何も感じないんだろう?」っていう驚きの方がいっつも感じていること。
逆に言うと
それが改善されれば、すごく上手な噺家として笑点に戻ってくる気もする。
別に期待してないし、戻ってこなくてもいいと思っているけれど
面白い人になって帰ってきて、番組を面白くしてくれるのであれば問題はない。
さて。
この三平降板問題。
先週、2021年12月19日の番組で発表されたんだけど。
18日まではネット上で
「そんなことないだろうけれど、三平卒業だったら嬉しい」
「三平が来てから笑点がつまらなくなった。」
みたいな意見が主流派だったのに。
19日の発表以降
ネット上の意見の主流派は
「そもそも、つまらない三平を起用したプロデューサーが悪い」
「三平がたいした噺家じゃないのに、香葉子に忖度したのが全ての問題」
みたいになっていった。
「三平がつまらない」のは当然だとして
それを知った上で起用した番組側の問題だと言うのだ。
正直、これには大賛成。
2006年に春風亭昇太さんが、歌丸さんの後継として加入した時も
2004年に林家たい平さんが、こん平さんの代役として加入した時も
最初は批判があった。
でも、二人は徐々に力を見せて、批判を叩きのめした。
知らない人がいるかもしれないけれど、昇太さんもたい平さんも90年代から「若手大喜利」で前座として笑点に出続けて、若手としては好評を博し続けていたのだ。
「いきなり知らないのが出てきた」ではなく
「あぁ、あの若手の子が上がってきたのね」というものだった。
元々、面白い2人だったので、徐々に大喜利での評価も上がっていった。
そこが、昇太さん、たい平さんと、三平さんの大きな違いだろう。
最初から、若手大喜利の出演者の中から、面白い人を選んでおけば、こんなことにはならなかったのだ。
ただ。
三平さんにももちろん、ダメなところはある。
「日本人が笑点に求めているもの」を読み切れなかったことだろう。
大喜利では、面白いかどうか以上に、
「キャラに合ったネタ」を見たいとか
「出演者同士のケンカ」を見たいとか、そういう気持ちが強いのだ。
たい平さんは
秩父出身者というキャラで、大月出身者の小遊三さんと「どちらが田舎か」を罵り合う。
友達がいないキャラの円楽さんに、「僕だけは友達だよ」と、言う。
恐妻家というキャラで、みんなから「たい平の家のようにはなりたくない」と言われる。
そんなポジションを作り上げた。
昇太さんは
活舌の悪さを前面に出して、みんなから「何言っているか分からない」と怒られまくり
当初、50代になっても独身だったことから「そんなことはいいから早く嫁を貰え」とか「そんなんだから嫁がもらえない」とか馬鹿にされまくり
結婚後も、「そのうち離婚するぞ」みたいなことを脅されるようになっている。
そんなポジションを作り上げた。
かつては
歌丸さんが楽太郎さんに「俺を罵れ」と言って、司会の円楽さんを含めた3人での罵倒合戦があったり
人気の陰りがみられた山田隆夫さんを、こん平さんが意図的に「座布団運びはもうすぐクビ」と言って、突き飛ばさせたり
現在の円楽さんが、若手の昇太さんとたい平さんを「ブラック団」に入れて、一緒に歌丸さんをバカにしたり
そうやって、先輩たちが自分をいじるチャンスをたくさんくれていた。
でも
三平さんはそれができなかった。
自分自身をキャラを確立できなかったし
他の先輩たちがくれている「俺をバカにして笑いを取れ」というチャンスを次々に台無しにし続けていた。
同じ林家である、木久扇さんに対して
「もう、ボケがひどすぎて、介護しなくちゃ」みたいなかかわりができていたら、もっと違ったんだろうなぁとは思ってる。
元々実力が大してなかった人間が
タナボタでもらったチャンスを活かせなかった。
だから、没落していった。
今回の件は、それだけでしかない。
だけど。
今回の件で、あるくくまもんが理解できない&納得できないこととして
降板が決まる前は
「三平つまらない。早く降ろせ」と言っていたのに
降板が決まった瞬間に
「いなくなってみると可哀想だな。あいつも、ある意味被害者だ。降板も決まったことだし、これ以上、彼を責めるのはやめよう」
と態度をコロッと変える大量の日本人。
本当に、これだけは理解も納得もできない。
「やめれば問題が解決するって訳じゃないでしょ?」と。
「一番の膿は消えたかもしれないけれど、彼はまだこの世界に存在するんだ。一度批判したのならば、彼の今後をきちんと注視していく義務があるだろう」と。
あるくくまもんは思う。
降板したからと言って、彼の「つまらなさ」がなくなった訳ではない。
一度、彼の芸を批判したからには、降板後もその芸の批評をしていく義務がある。
だから、あるくくまもんは、彼の降板が決まった後も
そして、昨日の最終出演を見届けた後も、こう言い続ける。
「三平はつまらない」と。
いつか、本人の芸を見て
「三平師匠、あの時は大変失礼しました。芸の神髄を見させていただきました」と
あるくくまもんが頭を下げる日が来る・・・
のかな。
そして何より
2022年正月放送の笑点で、発表される新メンバーが
「面白い」人であることを
否。
「面白い」ことができる可能性がある人であることを
心から期待したい。
・・・
どうしよう、あるくくまもんが指名されたら!?