第十一話「俯瞰」
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「酒吞童子」
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「こんな状態で寝れるわけねぇ!!」
「だって俺!!三つ目になっちまったんだぞ!!・・」
「半狂乱になるのって!!ふつうだべさ!!・・」
身に起きる出来事を冷静に受け止める事をできるほど心の大きい人間ではない・・うん。
「はいはい・・ふふ・・」
結衣ははいはいと言った感じで顔で僕の狂いぶりを見ている、いや、こいつ楽しんでいる・・。
暫く眺めていたが、思いついたように小声で歌い始めた・・。
「かぁごめがごめ♪がごのなぁかのとりぃわ~~♪」
「いついつでぁ~~る♪・・・♪」
結衣が囁くように小声で歌い始めた・・その声に吸い込まれるように僕は瞼を閉じ何時しか深いに眠りに落ちかけた・・
でも悔しいぞ!!あまりにも簡単に・・くぅ何時か仕返ししてやる・・zzz。
「ここは?・・どこだ?・・」
「あっそうっか・・結衣の歌声で眠りにはいった・・ん???」
「夢の中にいる自分??・・確かに体は見当たらん・・」
フワフワしてとても心地よい空間に浮かんでいる感じがする・・随分前に立岩上空を舞っていた感覚に似ている。
よく理解はできないが下に地上があるような感覚に捕らわれた、本能だろう、足元に目線は行く、真っ白な雲が永遠に広がる。
ゆっくりと下降をしているのは理解できた。
広大な景色は僕の恐怖心を忘れさせていた、いや夢だと思っているからだろうか・・・。
少しすると、足元の雲の小さな割れ目のあたりまで下降してきた、地上の景色が少しづつ見え始めた。
僕はどうやら、どこかの山頂付近の上空に降りようとしている。
ドローンで映し出すどこかの番組のようにとても綺麗な風景だ、山林の緑は鮮やかで少し視線を広げると遠くに海も見えてきた。
随分地上に近づいて行く感じは不思議なくらい心地よい。
足元から自分が舞い降りようとしている付近に神社のような建物が見え始めた。
それは近づけば近づくほど勘違いだと理解した。
屋根はないものの、城石が積み上げられそれで囲い込む先には洞窟の入り口のような穴が見えた。
その近くの景色が見渡せるくらいの上空までくると下降が止まった。
山のふもとからそこにを目指す二人の人影が視界に入って来た。
少し場面が変わった、洞窟の中に立て込んだ立派な屋敷があり奥に独りの武将のような青年が目を閉じその修行僧の様子を心の目で追いかけている、
そして指を握りなにやら呪文のような囁きを始めた・・するとどうだろうあたり一面は霧に覆われはじめ、二人の修行僧は途方に暮れ始めた、
しかし修行僧は錫杖を振りながら、お経を唱えた・・それと同時に霧は払われて行く。
「ふむ・・ま、この程度で引き下がる者でもやはりないか・・」
青年は呟くと、両手を空にかざし何やら叫んだ。あたりに雷雲が立ち込め激しい雨と雷があたり一面に振り出した。
呪文を駆使しようとも、山の中の雨と落雷には行く手を阻まれた二人の修行僧は流石に慈悲を叫んだ。
「若狭の王ょ、我等は救いを求めてやってまいりました・・是非、是非慈悲を・・」
その青年はにやりと微笑んで、雷雲と雨を止め、洞窟の入り口までの道のりを霧を晴れるように導いた・・
「やはり、只者ではないか・・よかろう・・」
僕は少し思い出した、この後若狭の王は騙し打ちにあい酒吞童子という鬼に変化し、今や最強の敵となってしまった景色だ。
この修行僧は源頼光に勅命を受けた藤原保昌達だった。
「人は憎しみに覆われると鬼になるの・・・・」
「若狭の王はとても霊力の強い武将だった・・だまし打ちを受けて封印され続けたけれど・・」
「良心という念と憎しみという念を分けて時の流れに流したの・・」
「時を経て酒呑童子の良心という念を猫さんに授けたってわけね・・」
「ちょっとまった!!、若狭の王つまりは今の酒吞童子と同じになった??って理解で良いのか?」
「彼の首は立岩に、そして体は眞名井神社に・・その全てが整った時・・鬼獄稲荷神社で一つになる・・」
「という事は・・敵はクビ部分でこの第三の目は体って・・??いや、反対か??」
ま、どちらにしてもこれで互角に戦えるって事か・・なんか難しい気がするがそういう事になる・・・アハハハ・・。
「ちょっと待った、結衣!!この幻想から解き放してくれんと・・忘れてしまうかもしれん!!」
「大丈夫だょ、起きたら覚えているはず・・へへへ・・。」
結衣の意味深は微笑みは、今もって信用にならんが・・あ、この目は自動解除?・・
「少し両目を閉じて、息を深く吸いこむと第三の目は開くはずだょ・・」
その声を聴きながら、幻想の中の僕は意識を失った。