ありがとうから始まる♪

まずは、ありがとうって言ってみよう、そこから変わる事もあるかも・・

起こり

2022年06月12日 | pink spider

第十話「鬼族」
________

「起こり」
_______________________________

「連れて行きなさい・・」
「どうやって連れて行くんだい・・」
「結衣のようになれるわけもないだろうしさ・・」

菊姫は社の中の拠り所である「石」に映し出された・・立体映像でしかない。
封印されてたわけだから動けるわけもない・・
白い着物で手はだらっとだらし伸びきった髪は腰まである時折風に吹かれて、
目らしきものが見えたり見えなかったりしている。
ビジュアル的に凄くおどろおどろしいのだが、
僕等のやり取りをお見ながら微笑んでいるように感じるのは僕だけだろうか・・。

「ひひひ・・おじいちゃんからの伝言なんて聞いてる・・」
「猫さん知っていればもっと早くにここに来てたと思いませんか・・」
「なんかさ呪文を代々伝授されてるとかさ・・」
「ないですょ、そもそもご先祖のおじぃちゃんがそんな凄い人だったって今知ったくらいですから・・」
「でも連れていかないと真名井神社に行っても意味がないわけでしょ・・」
「あっそうだ、あきちゃんあれだ!あれだよ!!」
「あれってなんなんですか、あれって・・」
「結衣と鬼族と戦った時のあれだょ・・」
「え・・般若心経を上げるってやつですか・・」
「でも、あの時は無我夢中でしたし、しかもゆきさんもいたしね・・」
「どうやってこうなったか・・全然覚えてないですょ・・」

結衣は横目で僕等のやり取りを聴きながら知らん顔をして楽しんでいるようだ。

「人生はなんでもそうだけど考えていてもさ、妄想の領域から出る事なんてありえないなんだょ・・」
「全ては因果応報!実践して見なきゃさ、次のヒントも生まれないってもんだ!!」
「取り合えず、あれだ、そそ、あれ、般若心経からやってみようぜ!!」

「そうですね、とりあず般若心経からですかぁ・・・」
「猫さんってなんか雑ですね・・ほんと・・」
「馬鹿野郎!雑ってなんだ!名案だょ名案!」
「閃きの天才と呼びなさい!!」

「はぁ・・・なんだかんだと言って僕がやるわけですからね・・」
「じゃ行きますょ・・ほんとに良いんですね・・ほんとに・・」

少しずれかけていたズボンを引き上げベルトを締め直した。
その次いでにお尻をボリボリ搔きながら片手を菊姫の前に差し出し・・

菊姫は両肩を少し揺らしながら頭を少し上下している・・

「え、笑いをこらえてますょ!!猫さん・・あってます本当に!」

「なんだって般若心経は万能のお経と呼ばれていて、あのお釈迦様から頂いた有難いお経や・・」
「間違うわけがないだろう」
「いやね、猫さん菊姫さんが言うには、解放の呪文であるって言ってましたょ・・」
「そうかぁ、じゃ般若心経でないか・・もう少し聞かせてもらおうか。」
「ちょっとわからんのですが、なんでも無に帰すお経だといっていたような・・・」
「ほな、それは般若心経に決まっているやないか・・」
「般若心経は万能のお経やからね、ほな、般若心経で決まりや」
「でもね、菊姫さんは解放されて、邪は消えていますから無に帰す必要なないと思うのですが・・」
「そうかぁほな般若心経でないかもしれせんな・・もうちょっと聞かせてもらおうか・・」

「あんたら!!ミルクボーイの漫才もじって遊んでないでささっとせんかい!!」
結衣の不意打ちの突っ込みにみゆきも思わず爆笑してしまった。

結衣は急に真面目な顔になりあきちゃんに言った、
「成仏された悪意のない者に対してのお経は構えてはだめですょ・・」
「不意に相手の心に届くようにあげなきゃ相手は邪に帰ってしまうのよ・・」
「つまり、武道で言う、、起こり、、のように・・」
「あれ何時あげたの?いつ読み始めたの?という風に・・」
「助あげようとか、なんとかしなきゃと考えて初めてはいけないの・・」
「相手の目を見て、体の動きを見て、心の隙にそっと入るように届けるように・・」

その言葉を聞くとあきちゃんすっと存在感が薄れていった、空気のような、
とても爽やかな風になったように透明感があるのに物体として感じれない存在になっていた。

頭の奥の方から急に囁き声がはじまった・・
「魔訶般若心経・・・」
構える暇もなく、動く事も出来ないまま般若心経しか聞こえない・他の雑念を考える時間も暇も与えない・・
静かで心の中で響き始めた。

菊姫は映像から立体になり始めた・・すると、ポンと社の石から産まれた子供のようにはじき出された。

「これは、、起こり、、という間合いなの・・」
「業を幾多となくこなし、お経を鍛錬した者しか成しえない技なのょ・・」
「覚えておいてね・・・」

なんか僕からすると、結衣が二人になったような感覚だったが・・ま、いいかと思ってしまった。
「さ、真名井神社の神様がお待ちでしょうからいきましょうか?」
素直に「うん」と車に乗り込むあきちゃんと僕は少しほっとした。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 摩利支天 | トップ |  »

コメントを投稿

pink spider」カテゴリの最新記事