「日常」

「日常」

親父の遺品というか、無造作に不揃いの木片が積まれていて、というか結構な量がある、軽トラック一杯分くらいはあるだろうか、
バイクが２台くらいのおける駐輪スペースがあり、そこに山積みになっている、しかもそれは玄関の横のスペースだ。
生前は何かに使うんだろうくらいに考えていたが、主人亡き今、木片達は必然的に待機状態となっていて当然気になり始める。

「なんとかしなきゃ」という心の声が大きくなってきた、それもそうだろうその声を聞きながら３年は暮れているからな・・・。
「なんとかしなきゃね・・」もそろそろ「なんとかしろ・・」と自分と心の声との格闘が激化し始めたが・・
人間傍観癖がつくと行動に移せないものだと悲観してしまうが、本当だ。

人は今困らない事は確信犯のように放置できてしまうものだと戒めながら放置していた・・。

依頼でホームセンターの駐車場で待ち合わせ、歩きながら雑談をしてご自宅拝見と要件を伺い、ある程度の解決方法を見つけて要件は終わった。
僕の場合、案件の記憶はほとんど残らない、そう言う方法だから仕方ないのだが、何処かで不安になる。
ある時に偶然、潜在意識に記憶を残す方法を発見した、トレースという方法だ。

要件が終了したら直ぐに独りの時間を持つ、ただ景色を眺めたりしてその場所の風景に自分を溶け込ませて行くだけの作業だが、
気持ちが風景と同化すると、要件のやり取りが映画として映しだされ始める、昼間の野外映画鑑賞のようになる勿論無音だが。

意識すれば何度でも同じ映像は繰り返される、映像を何度も何度も観て行くうちに登場人物達に音声が入るようになる、
音声と映像が一致すれば、要件の内容のほぼ全部が自分の口でなぞる事が出来るようになる。
知識不足であったり、スキル不足をチェックでき反省点も見つかる貴重な時間を創る事ができる。

多分この時間は全てを思い出している、相手の表情、反応、自分の発言もだ、同化が解除されないように気を付けながら簡単なワードでメモを取る。
もと解り安く、奥深い言葉のプレゼントができるようになる為に自分磨きの大切な作業だ。

書き出されたメモを読み返しても、案件の全てを思い出す事はないが、単語であるとか、知識を得る方法は調べる事が出来る。
聞き方、話方もこのメモで改善するヒントを得る事が出来る。

もっと面白いのは、この作業で潜在意識に記憶される、あとはトリガーとなるワードをメモしておけば、
カウンセリングという特殊な環境に入ってもその場で蘇るさせる事が出来る。
しかもこの状態は顕在意識と潜在意識の行き来のバランスは非常に良いので相談者さんの要望に直ぐ対応できる。
潜在意識で動く方が楽なのだが、日常はどうしても顕在意識に支配われて行く、案件の記憶が無くなるの仕方ないかも・・。

トレースが終わると気分転換がしたくなる、ホームセンターは恰好の場所だ、スーパーなどはどこかお客さんの動きが激しい気がするが、
ホームセンターに来るお客さん達はどこかゆっくり動いているように感じるから、なんか良い気がする。

日頃はウインドショッピングなんてしないが、ついつい店内を歩きたくるそんな気分も悪くない。
なんの前触れもなく突然「なんとかしろ・・」という声が聞こえ始めたのだ、気がつくとマキタの電動ノコをとりあげレジに並んでいた、
そして数か月がたち、ま、それでも直ぐ動かんのは・・罪悪感でしかないが、やっと先日開封し、
木片達に命を吹き込まそうと汗をかける様になった、物置棚を制作中だが・・直ぐ傾いたり、ひし形になったりと悪戦苦闘中・・
不思議な事に失敗すればするほどなんか楽しくなってきて今は日常になっている。

行動はできるタイミングは必ずやってくるもので、意識の隅に「なんとかしろ・・」とだけ記憶のメモをしておくといいかも。