「月夜」
月読命に激怒され切り刻まれた保食神(うけもちのかみ)の亡骸は地上に落ちた。
行き過ぎた行為に天照大神は激怒し月読命を闇の世界に封じ込め、世界は闇と光の世界に分断される事となる。
地上に落ちた保食神の肉や骨は、やがて腐りその亡骸は、形を変え新しい神、植物や木々と生まれ変わって行くが、
無限に増え続け、やがてこの世界は森や植物で覆われていった。
闇の世界だけに姿を現す事を許された月読命は天照大神が沈む夜になると月となって姿を現す。
夜空に雲がないか見上げ、雲がなく月明りがあると、玄関を開け、
「わくっ」としながら、カシャカシャと椅子を持ち出し、月を見上げながら今日の特等席を探す。
少し冷めた紅茶を用意し、勿論空き缶で作った灰皿も忘れない。
人間の気配を感じない神聖な空間は月読命との対話の時間となる。
結果的に森林に覆われて空気が誕生し、保食神は姿を変えこの地上の主となった。
行き過ぎた行為を詫びるかのように、貴方は見守る事となった。
良かれと思いお節介をやく事があるが、それは必ずしも良かれになるとは限らないかもしれないし、
悪かれとなる事の方がもしかして多いかもしれない、どちらにしても、見守る勇気を持つ事は大事であり、
責任という覚悟は必要である。
「何処かの誰かのように、やられたらやり返すを繰り返していては、新しい世界は見えないだろう」と囁くように
保食神は地上の王となり、天照大神に月読命を「許してやってよと夜明けに花を咲かすのである。」
そんな物語を呟きながら、時間を止める僕がいる。