ありがとうから始まる♪

まずは、ありがとうって言ってみよう、そこから変わる事もあるかも・・

2022年06月12日 | pink spider

第十話「鬼族」
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「絆」
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僕の運転には癖がある、エンジンを一度空ぶかししてからギアを入れる・・
自分の癖に気がついたのは結衣が何時も指摘するからだが・・

今日は何も言わず、菊姫と結衣はお互いが見つめ合い沈黙を保っている。
僕には心の会話をしているように思えた、割り込む隙もないので放置することにした。

みゆきは何時ものふざけもなく、ただただ菊姫を静かな、少し意味深な目線で見つめているだけだ。
助手席のあきちゃんは・・座り込むや否や寝込んでいる。
そりゃそうかもしれない、結構今回は大活躍だったからな・・。

少し走ると漁港添いにアスファルトを無理矢理突き抜けそんなに高くはないが2~3mの高さの樹木が生えている。
歩道のど真ん中にあってあえて歩道は広げてあり、その樹木を迂回して歩くそんな不自然は光景が視界に入ってきた。

結衣はふと、僕に呟いた、
「届かぬ思いは、やがて神に語り掛け始める・・その声を聴こうと神が意志を示した時、そこに樹木が芽生える」
そう言い終わるとまた沈黙に戻った。

「わっ聞こえたのか!!」と思ったが、
この雰囲気の中で僕は質問を辞めた、悪ふざけのない車中は初めてだったからだ。

突然お腹がなった、そして現実に戻った。

「今日は何月何日で、今何時だ・・。それより腹へった!!」
「あぁーーーそして眠い!!」
「結衣、俺らなんやかんやいって2日間この騒動で寝てないぞ・・」
「このまま眞名井にいってまた事件が起きたらさ・・俺ら餓死!!餓死する!!」
「それに1時間もしたら夕方になっちまう!!」

僕の叫びで沈黙は破れてしまったが、菊姫は沈黙を保ったままだ。

「そうね、人間は食べて寝なきゃ死んでしまうもんね・・フフフ♪」

そんな嫌味聞いている余裕は僕にはなかった、
信号で運よく止まったので、右に指示器をだした、まさに本能ってやつだろう・・
ミップルという4Fくらいあるスーパーがあり駐車場もあり、
フェンス越しではあるが港も見える場所がある事に僕は思い出した。
人は追詰められると限界を超えるというが・・ま、大袈裟だな・・。
でも、次を思いだしていた・・
2Fに確かマクドがあった!そう閃いた僕はアクセルを強く踏んだ・・
「なんか食べに行くのか!!・・」
あきちゃんの寝言がこだまする・・起きたのかと思って横を見ると寝息を立てていた。
思った事を寝ながらききやがった・・悟りの成果か・・
ま、どうでもいいや人間食べなきゃ寝なきゃね・・。

ウィンカーはカチカチとなり信号は青になった。
ブンと空ぶかしをしギアを2に入れ走り出す。

数分で駐車場にたどり着いた、ダッシュで2Fに走りこむ、
丁寧な挨拶をしてくれる店員さんに早送りの魔法をかけたい気持ちを抑えながらセットを四人分注文した、
本能は怖いものであきちゃんは2人分食うと瞬間に判断したからだ。
その足でキャンプ用のテントも買い込んだ、人間追い込まれるとゾーンに入るらしい。

買い物が終わりやれやれと車まで帰ってくると、ギラギラした目で僕を待つあきちゃんが待っていた、
これは今流行りの名なんとかの呼吸ってやつか?

駐車場のフェンスの向こうにちょっとした公園があり動物組はシートを広げ休憩する事にした、
みゆきは一応人間組?に入れておこう・・ま、食べるしな・・。

飲み物まで気が回らなかったので3人共コーラにしたが、不満は出なかった、
もっとがっついて食べるかと思いきや、やっぱりハードだったんだ、2人もゆっくりとかみしめるように食べ始めた。
良い時間だ、このまま時がとまれば良いのにとつくづく思った。

僕はアメリカンスピリットを取り出し、最近お気に入りの龍の彫が入ったジッポを取り出し、
そのままあおむけになって火を灯しタバコをふかす。

太陽は少しづつ海に近づいていた、その向こうで時折波の音が聞こえる。

過去から現在にいろんな争いがある・・
人類が始まってから今に至るまで終わらないチキンレース・・
僕はあのソロモンの知恵に触れた事があった事を思いだした、
この星の誕生は、太陽の爆発で飛び出した、粒子と粒子がぶつかり合いそれが光源となり光を誕生させた、
そしてそのぶつかり合いは回りの粒子も巻き込み引力となっていろんな原子を取り込んで科学反応を引き起こし、
鉄、マグネシウム、ウランなどの加工物を生成させながらどんどん自転がはじまり球体化していった、
今で言う核連鎖だ、原子力発電のような出来事がこの暗黒の宇宙で始まった。

しかし、ここで大事な事はこの粒子のぶつかり合いには一つの意志によるものだ、偶然やたまたま始まったものではない、
少し表現が難しいがここでは神の意志としておこう。

ぶつかりあった粒子と化合物の化学反応は膨大な熱を発生させるが、宇宙のマイナス温度はそれを急激に冷やした、
故に表面が冷えちょっとした卵の殻のように膜ができた、それが僕等がいる大地の始まりだ。

ある思考で始まったこの塊は、地表に創造物をどんどん具現化させて行く、
山、海、森・・そして意志を持つ生物・・。
そこでいろんな挑戦を始めた、創造の連鎖だ、そうやって地球という星になっていった。

争う事ない平和な世界・・きっとこの星はぶつかり合う事で生まれてきたが、虚しさも感じ始めてきたのかもしれない、
感情というものを創造し、勝ほう負ける方、両方の気持ちも理解できるようになってきたんだろうきっと、
地球を産んだ意志はこれに興味を抱き幾度となく挑戦することが始まった。

爬虫類に最初は託したが、それは破壊しか誕生しなかった、そこで新しい生物に託す事にし人類を創造したが、
おしい所までいって共に奪い合うようになる、
しかし地球を産んだ意志は1%未満の可能性ではあると感じたがそれにかけてみることにした、
何度も文明を栄えさせ、そして最後はお互いが殺し合うという繰り返しを見つつも、
人類にまだ可能性を感じていてくれる。

それは僕等に輪廻転生というステージをくれた、そこで沢山の失敗と経験を貯蔵するデータバンクのような世界だ、
そのお陰で僕等はリセットを繰り返しながらも次のステージに進めていられる。

でも近年、そのデータバンクと繋がる事の出来る人類も創造するようになった、
それが、ゆき、であり結衣だろう。

その出会いは、桔梗のようにづっと過去から現在まで絆で繋がっていて、
彼(地球)の夢を叶える為今も戦っている・・・。

そんな事を考えながら、何時しか僕は眠ってしまった。
結衣は僕の寝顔に人差し指をペロッとなめそのまま額に差し込んだ・・
「ご苦労さん、少しは休んでね・・」
と、つぶやきながら・・。

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