水が流れる

2018年05月24日 15時06分09秒 | マーロックの日記

                           ―――  ピチュ ♪ 

                                               ァァァァァァ   ・・・・・・・

               チャポポポ

「・・・水だ」

「うん」

「流れたね」

「うん」

細いホースから、勢いよく水が流れてくる。

遅く目覚めた私は、水を補給するための滑車と、それを通すロープを張っていた。

川と大タープは、200mくらい離れてる。

25人と18匹いて、必要な水の量は多い。

電動のろ過ポンプも用意しているけど、水汲みは時間がかかる。

手動のはいくつもあるから、みんなで一気にやればそれなりに速い。

マッチョさんたちは、工具とかペグとか、自由に使えるようにいろいろ買って荷台に置いていた。

私がロープの滑車を通して試していると、チーフさんが来てホースの事を教えてくれた。

彼女が、使えるときがあるかもしれないと買っておいたらしい。

細めだけど、200m巻きのと100m巻きのがあった。

ホースをつなぐ部品も用意してあったので、300mホースにした。

「これだと楽だね」

「うん」

発電機はあるけど、晴れていれば太陽発電のパネルはみんな持って来てる。

電動のろ過ポンプで川からどんどん送れば、楽に水タンクを一杯にできる。

透明な細いホースなので、滑車様に張ったロープに何か所も吊って人よりも高い場所を流れるようにした。

60cmのペグを川の側の石に打ち込んで、木の枝を利用してロープを張っている。

大タープ側は、トレーラーの屋根の出っ張りを利用してずれないように張った。

高さを合わせるために別のロープで下に強く張っていたけど、それは外した。

           チャポポポ

「・・・・」

川は雨で増水していたけど、ナノフィルターを通してきれいな水になってる。

水タンクの方にも、簡単なフィルターを付けてる。

万が一に備えて、飲料水は荷台に結構ある。

シャワーや洗濯とかでたくさん水いるけど、これなら快適に過ごせそう。

              ジジ  ・・・

「うまく流れました」

しばらく水の流れを見ていたリフが、川側にいるマッチョさんにトランシーバーで教えた。

                     ――  わかった   ジジ  ・・・

返事が聞こえた。

もう夜。

壁づくりをしていたマッチョさんも手伝ってくれた。

川がまだ増水するかもしれないし、ある程度水を流したら今日はポンプを大タープまで戻す。

大きめの、空気を入れるタイヤの台車にポンプはのせてある。

よく進むから、運ぶのは簡単。

ホースは宙に吊ったまま、置いておく。

トレーラーの水タンクにはかなり入る。

こちら側のホースの端っこが、透明だし何か付けたい。

後で、カールさんに頼んで3Dプリンターで作ってもらおう。

キャップも一緒に作れば、使わないときにもいい。

給水作業のために張ったタープがあるから、普段はそこにホースの端っこを引っ掛けておく。

「じゃぁ、もう行くよ」

「ありがとう」

              ―――

チーフさんは去った。

彼女は客船の船底で働いている、エンジニア。

発電機の管理は、彼女に任せてある。

工作も得意で、頼めばだいたいのものは作ってくれる。

部品があれば。

女性は9人いるけど、その中では一番体が大きい。

保安官助手のプルームさんよりも、体力はありそう。

荷台には、他にもいろいろ置いてある。

何か便利なものを、作れるかも。

                 チャポポポ

水が流れる音。

                                           ――― ァァァァァァ

大タープに雨があたる音の方がよく聞こえる。

                       ポチャ  ・・・

水がとまった。

          ジジ   ―――    もう止めます   ・・・・

マッチョさんの声。

今回のはテストで、明日の朝から水汲みに使う。

「はい」

リフが返事した。

今日もゴムさんとの勉強は休んで、手伝ってくれた。

                  カタン

フタを閉める。

ホース全体をロープに吊っているわけではないから、それよりホースが長い必要があった。

トラックの家部分にも届いてほしかったし。

でも、ややホースは長さが余分にある。

水タープからトラックの前までロープを張って、滑車で吊ろうか。

ホースの端っこ部分を、滑車で滑らせて移動させれるように。

「チュン」

森の小鳥が見てる。

クチバシでつついても、ホースは平気だろう。

私たちが来てから、夜も明るいから遊びに来ているみたい。

空の木箱を置いて、休める場所を用意してあげようか。

「これ、束ねてぶら下げるよ」

「うん」

私が小鳥を見ていたら、リフがホースを持って水タープの方に去った。

                         ―――   ・・・・

雨の中、グリやヘテロたちはまだ土壁を作ってる。

少しでも早く、予定してる部分を完成させようとしてる。

大タープの周りに、コの字型に作ってある。

川のある方だけ開いているけど、そこにも小さな土の壁をいくつか作ってある。

水汲み中に、森側から襲ってきた場合の隠れる場所にするため。

それほど高さはないけど、ライフルで襲われても防御壁になる。

発電機やキッチンのある部分は、直接トレーラーの側に土袋を積んで守る。

今度襲われても、荷台に避難せずにトレーラーのキッチンに隠れることができる様に。

壁を作っていたグリたちは、シャワーを浴びたいだろう。

水タンクはいっぱいで、大丈夫。

        ―――

私はドラム缶の方に向かう。

太陽が沈んで気温は少し下がったけど、それほど寒くはない。

風はまだ暖かく、霧も晴れない。

この霧だと、私たちを襲ったサングラスの連中もあまり行動できてないんじゃないかな。

           チュン ♪

ドラム缶の横に置いた、小枝を集めたワゴンに小鳥がいる。

休んでいるのかな・・・・

                         ピピピ ♪

                                          ァァァァァァァ  ・・・・・・

                  ジャリ  ・・・


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